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2023年12月号特集

Vol.309 | 変わる英検、たったひとつの攻略法

ライイティング対策はこれだけで大丈夫

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-2312/
船津洋『変わる英検、たったひとつの攻略法』(株式会社 児童英語研究所、2023年)


英検が変わる?!

英検が変わる?! 来年度から「英検」が変わるようですね。まずは、3級以上の筆記の問題形式に変更があり、その後どうやら、2年後には英検準2級と2級の間に新たな級が作られるとか。主催者側からすれば、細かく分ければ受験者が増えるわけですから、大いに結構なことだと思います。また、受験者側からしても、細かくステップが作られることで、少しずつクリアしていくことも可能になるのでしょう。
 この新しい級の設置に関しては、どうやら準2級と2級の間には壁が聳えている “らしい” ことが関係しているようです。高校1年で準2級を取った後に、高3で2級が取れるそうなのですが、その間に壁があるとか。確かに、中1で5級、中2で4級、中3で3級と1年刻みで進むのに、準2級と2級の間には1年間のギャップがあるようにも見えます。
 しかし、そんなことを言ったら、2級と準1級の間には相当な壁があります。これはもはや壁というよりギャップですね。2級まで順調に登山してきたと思ったら、そこには断崖絶壁があり、普通の方法では越えられなくなる。留学でもしなければ、なかなか、向こう側までは行けないわけです。
 我が社では、上智大学の外国語学部学生をインターンとして受け入れていますが、外国語学部に入ってくるのは大抵、英検準1級の持ち主です。コロナ禍で高校での留学が叶わなかった学生が多くいて、ここ数年は留学経験者がガクッと減っています。それでも準1級を取得しているわけですから、彼らは「純ジャパ」(海外経験が無いが英語に堪能な学生)です。英語に関しては、もはや “猛者” と呼んで良いでしょう。
 しかし、そんな彼らも英検1級となると、手こずるようです。今年の春に卒業した学生たちと、それ以前に卒業した学生たちには留学経験者が多く、英検1級の保持者の割合も高かったのですが、来春卒業する子たちは英検準1級のまま卒業してしまう子が多いようです。
 インターン生たちには「英検1級を取得するように」と受験費用の肩代わりなどの措置も採っていますが、なかなか1級の子は少ない。以前は8割ほどのインターン生が英検1級を持っていましたが、今では2、3割程度まで減少しています。もちろん、純ジャパで英検1級を取得できる子もいますが、やはり、留学するという要因が英検準1級、1級の合格にはかなりの効果をもたらしてるようです。
 ちなみに、英検3級の合格者は、おそらく毎年30万人程度でしょう。毎年30万人ずつ英検3級の合格者が増えるということは、毎年の人口増(出生数)に対して3割程度ですので、学年人口の3割ですから、英語偏差値(そんなものがあるとすれば)換算で55くらいです。同様に、準2級は同59、2級は64、準1級は73、1級は78となります。偏差値で見ると、なにやら生々しいですが、2SD(2標準偏差)で偏差値70相当ですので、やはり、2級と準1級の間のギャップは相当チャレンジングなものです。それに比べれば、3級の偏差値55から準2級の59などは大した壁ではありません。誰でも乗り越えられる程度の壁でしょう。


高まる英検の需要

高まる英検の需要 少子化に歯止めがかかりませんね。巷でも「子どもは贅沢品」とか「結婚は嗜好品」などと言われているようです。ちなみに、デジタル大辞泉によれば、

ぜいたく‐ひん【×贅沢品】生活に直接必要のない高価な品。奢侈(しゃし)品。

だそうです。子どもをとって「生活に直接必要ない高価な…」と例えるのが適切かどうかはわかりませんが、確かにお金がかかるのは間違いありません。海外旅行や貴金属、高級車のように、生活に直接必要なお金が “最低限” 十分に回っている人たちでないと手を出せないという点では、頷けます。
 これを見ると一面で「日本も豊かになったな」と感じてしまいますが、同時に「大丈夫かいな?」とも感じます。豊かになったというのは、子どもを持たなくても生活が回るという点です。子どもというのは、途上国においてはセーフティーネットです。自分が働けなくなった時に、面倒を見てくれる存在が子どもなのです。社会保障が充実してきたおかげで、子どもというセーフティーネットを持たずとも、老後を迎えることができるようになったのですから、一面では、豊かですね。しかし、世代間の分断、社会の分断が進み孤独死等の問題がある現状を考えると、やはり心配になってしまいます。

 閑話休題。

 先進国では人口が減りますが、通常人口減を補って余りあるほどの付加価値の増加や生活の質の向上が伴います。日本はその点では一般的な先進国ではないようです。それもそのはずでしょう。日本が経済大国であった理由のひとつが、その人口の多さにあります。国内需要でも十分に回る経済圏があって、さらに円安を武器に輸出で稼いでいたわけですね。ところが、国内の経済が停滞して需要が伸びない。そこに円安です。資源の多くを輸入に頼るので物価高が生じる。でも給料は上がらない。その上で、日本経済の強みであった「人口」という要素がどんどん乏しくなっていくわけですね。これは大変なことです。
 しかし、民草としては、そんな現状を眺めているしかないわけです。そこでどうなるか。子どもを持てる余裕のある家庭では、我が子を「稼げる子」に育てようとするわけです。つまり、バブル以降30年以上にわたって経済の停滞する日本において、我が子が少しでも苦労をしないようにと、せっせと教育するわけです。

 そこで、「英語」がキーワードとなってきます。


結局は「英語」

結局は「英語」 近年、進む少子化に危機感を感じる大学では、一般入試ではなく、総合型選抜(AO入試)などで生徒の囲い込みを試みるようです。推薦枠を大きくとって、高校に振り分ける。高校の先生からすれば、ワンランク下げた大学でも構わない、自分の担当する子の大学進学が決まってくれれば肩の荷が降りるわけです。また、学校推薦は辞退などすれば、後輩に迷惑がかかります。つまり辞退できないわけです。
 また、学生の側からしても、ワンランク下げても進路が決まることは喜ばしい。受験前のあの追い詰められた空気から逃れられるのですから、総合型選抜・推薦入試はありがたい。さらに保護者も、受験生がいるという、あのピリピリ感を少しでも避けられるのでありがたい。ここに、大学、高校の先生、受験生本人、保護者の何と四者の思惑が一致するのですから、一般入試の割合が下がるのは必然です。

 そこで、英語がキーワードとなります。

 総合型・推薦で受験する場合には、慶應や早稲田でも似たり寄ったりですが、上智大学の外国語学部を例に取ると、英検準1級と総合のGPA(Grand Point Average: 成績の平均点)4、並びに英語のGPA 4.3以上がクライテリアです。GPAに関しては、まぁ、真面目に学校に通ってもらうとして、すでに述べたように、英検準1級の方は真面目に取り組むばかりではどうにもならない。そこで、英語教育の早期化、英検の重要性の増加という現象が起こるわけです。
 大学の一般入試では、英語が重視されています。これは国公立・私立関係ありません。英語と国語、それと専門の選択科目、これらで評価されます。「英語が苦手」な段階で、一般入試はおろか、総合型選抜・推薦入試の芽も絶たれるわけです。もちろん、志望校のレベルをどんどん下げれば話は違いますが、それではそもそも「子どもの将来のために良い大学へ」という当初の目的が達成されないわけです。繰り返しますが、結局は「英語」と相成るわけです。


英検の何が変わる?

英検の何が変わる? さて、それでは、件の英検。一体何がどう変わるのでしょうか。また、パルキッズ生たちへの影響は如何なるものなのでしょうか。引き続きその辺りを見ていくことにします。
 まずは、英検の何がどう変わるのか。一口に言ってしまえば「筆記が増える」となりましょう。
 「書かせる」というのは、○○発見器の役割を果たします。話すということは、物理的な制約を受けます。例えば、面接で話をする。質問に答える。面接官はどんどん掘り下げていきます。つまり、「この学生はわかっているのか?」を判断するために掘り下げるのです。しかし、面接官の能力には限界があります、また、面接という限られた時間の制約も受けます。さらには音声はテキストと異なり、生じては消えてゆくという儚い性質を持っています。
 他方、書かせる方はといえば、対話形式で面と向かう必要もなければ、時間の制約もない。音声と異なり消えて無くならないので、繰り返し読むことができます。
 2023年10月号の『パルキッズ通信』でも触れましたが書く作業とは、想定した相手に自分の考えを伝えることであり、読む作業とは書いた人とのある種のコミュニケーションであり、書かれた内容から、書いた人の思考を読み解く作業です。熟練した読み手であれば、ちょっとした表記の揺れから、そこには書かれていない行間も読み取ることができます。
 つまり、面接を受ける者なり、受験する者なりの「頭の中」を曝け出すのが、書く作業であり、評価者は書かれたものからそれを書いた人間の思考を評価すれば良いのです。評価者の技能や執筆者の表現能力によって評価に揺れは生じますが、その点をクリアする手筈が整っていれば、「書かせる」作業はとても効率よく、書いた人間を評価することに使用できるのです。
 加えれば、文科省が「思考力・判断力・表現力」などと掲げているものですから、英検協会からすれば、その方針に追従するのは当然のことでしょう。

 畢竟、筆記問題を増やして、受験者の「思考力・判断力・表現力」を評価しよう、ということになるのでしょう。しかし、圧倒的に中学生の受験者数が多い3級や、高校生の受験者比率の高い準2級や2級ならまだしも、学生と社会人の比率が半々の準1級や圧倒的に社会人の受験者比率の高い1級にまで「思考力・判断力・表現力」となると、なにやら社会人がとばっちりを受けている感は否めないでしょう。純粋に英語力を測定するのではなく、「思考力・判断力・表現力」のような要因も入り込んでくるのは、一人前の大人になった社会人にとっては「大きなお世話」と感じるのは、果たして僕だけでしょうね。


筆記が倍になる

筆記が倍になる さて、経緯はともかくとして筆記問題は増えるわけです。では、具体的に何が変わるのか見ることにします。
 細かい配点やら評価の仕方は存じませんが、筆記が倍になり、従来の与えられたテーマに沿った作文と、もう一本、何か書くことになります。
 3級と準2級では、シチュエーションが与えられたメール文とその内容に対して、指定された点に関して自分の意見を表明したり、さらに相手に対する質問などを作文したりします。
 現在わかっている範囲と前置きしての話ですが、具体的には、3級では2つある質問のいずれかに対して15~25語程度で答えることなります。15語だと、もはや短文です。復文や重文だと25語も超えてしまうかもしれません。質問を上手に選択して、端的に答える必要がありそうです。
 準2級の場合には、質問に対して理由を添えて答えるのと同時に、2つほど追加の架空の質問を作文することになります。こちらは40~50語ですので、少しゆったりしますが、程度の問題です。問いに対する自らの答えとその理由を書けば軽く25語、さらに2つ質問を考えて25語程度で書くのは、かなりタイトです。さらに3級と準2級は、試験時間が少し延長されるようです。
 続いて、英検協会が「壁がある」とする2級からは要約課題が科されることになります。要約の方法に関しては、少し詳しく下に書きますが、簡単にいえば与えられる地の文を三分の一ほどに圧縮する作業となります。2級では150語の課題を50語程度に、準1級では200語ほどの文を70語ほどに、1級では300語ほどの文を100語程度に要約することが求められるようです。また、2級から1級までは試験時間は据え置きで、筆記問題の一部が削除されることになるそうです。

 はてさて、この変化、一部世間では衝撃に揺れているなんてこともあるようですが、パルキッズたちにとっては、どのような影響があるのでしょうか。以下、パルキッズたちの英検対策を見ていくことにしましょう。


パルキッズたちの英検筆記問題対策

パルキッズたちの英検筆記問題対策 さて、パルキッズたち、彼らの得意な分野は、リスニングと長文読解です。かくいう僕自身、リスニングと読解とライティングは問題ないのですが、どうしても語彙が苦手。苦手の語彙を他の技能がカバーする形で1級は一発合格でした。そんなことはどうでも良いのですが、やはりパルキッズたちもリスニングと読解においては、あまり問題がない。ところが、語彙と筆記は少々トレーニングが必要となります。
 その場合、最も効率が良いのは、筆記に時間を割くことです。語彙は、やはりたくさん読書をすることでしか強化することはできませんが、筆記は意外と簡単です。筆記ができないと悩む人たちは、筆記問題クリアの簡単な方法を知らないだけです。実は、筆記問題は出題される地の文のパターンが決まっていて、そのお決まりの課題に対して、お決まりの答えを書くだけでOKなのです。
 例えば、制服に賛成か否か、校則については?あるいは留学や環境問題、級が上がれば、社会保障や国際政治のあり方についてなど、出題される内容はほとんど決まっています。多様性と二極化、あとは最近では、SDG’sなどに関するものです。アカデミアはその辺の話題が好きですので、関心がない学生も、発奮してその辺りの問題を一通り考えておくことで、大抵の課題はクリアできるでしょう。
 また、回答の書き方に関しても、これまたパターンが決まっています。基本的にアーギュメンタティブと呼ばれる形式で書けばOKです。つまり、まず自分の立場を述べる。その上で、その立場を取るに至った根拠を2、3点少し詳しく説明すれば大丈夫です。

 基本的に重要なのは、書く練習をするのではなく、大量の英文に触れる習慣と、日常的に思考の整理をする癖を身につけることでしょう。大量の読書に関しては、準2級から2級対策の「7-day English」、あるいは2級から準1級対策の「The Book of Books」などをご活用いただければようでしょう。また、思考の整理術に関しては「地頭力講座」で日々研鑽してください。

 それではつまらないので、エッセイの書き方とサマライズの仕方を簡単に説明することにします。


エッセイの書き方

エッセイの書き方 どうもエッセイを書くのが苦手だという人が少なくないようです。英検の試験内容の変更に関しても「筆記が増える」ことを問題視している人も少なくないようです。そもそも筆記が苦手な上に、その苦手な筆記が増えるのが困る、ということらしいですね。大学生でも記述が苦手な学生は多いようで、上智ではよく聞く話ですが、英語学科を選んだ理由が「卒論を書かなくて良いから」なんてこともあります。22歳にもなって、たかだか2万字(英語で1万語)程度の小論すら書けない学生がいるわけです。
 エッセイは、自分の思考をとことん整理して、人に伝えるミディアムです。卒論も書けない(書かない)というような人たちが、果たして社会に出てから、責任ある一人の社会人として自らの考えを誤謬がないように的確に人に伝えることができるのか、甚だ疑問です。何かイベントを起こす時、変革を起こす時、新企画を進める時など、必ず必要になるのは、思考の整理術とそれを的確に伝える技術です。それらの技術が凝縮されているのがエッセイの骨子なのです。
 エッセイには、様々な種類があります。以下、エッセイの主な種類です。
・Narrative Essay(物語性エッセイ) – ある出来事や体験を物語るエッセイ。
・Descriptive Essay(記述的エッセイ) – ある場所や物、人物などを詳しく記述するエッセイ。
・Expository Essay(説明的エッセイ) – 情報や事実を提供するエッセイ。
・Argumentative Essay(論証的エッセイ) – ある主張を証明しようとするエッセイ。


Ethos, Pathos, Logosの活用

Ethos, Pathos, Logosの活用 以下、それぞれのエッセイの書き方を見ていくことにしますが、その前にひとつ大切なことを述べておきます。アリストテレスの「修辞論」で確立されて以降数千年にわたり、Ethos, Pathos, Logosという3つのキーワードが、ものを書く人間の思考の整理、あるいは記述の方法論として使われ続けてきています。もちろん、みなさんご存知でしょうが、簡単に説明しておくことにします。

・Ethos(エトス)は、話し手の信頼性や品格を指します。書き手が読み手から信頼を受けるためのものであり、その専門性や道徳性を示すことで権威を確立します。たとえば、「英語子育て大百科」において、僕が「これってさぁ」とか「じつはね」と始めたら、「ここから何かのエビデンスが出るぞ」とか、「経験則からの教訓が始まるぞ」を意味し、説得力を増そうと試むわけです。
これがエトスの活用です。
・Pathos(パトス)は、感情や情熱に訴える要素です。読み手の感情や価値観に触れ、感情的な反応を引き出すためのものです。同「英語子育て大百科」において、僕が「うちのチビがね」とか「考えるだけで嫌になるんだけど」などと出てくると「お、共感に訴えようとしているぞ」とご理解いただければよろしい。これパトスです。
・Logos(ロゴス)は、論理的な論証や事実に基づく根拠を指します。明確な証拠や理論、事実に基づく論理的な説明を用いて読み手を説得します。こちらは、もはや基本中の基本。「パルキッズ通信」でも「英語子育て大百科」においても、何においても僕は「論理の人」であることを心掛けているので、「理屈っぽいなぁ」と感じられる向きもあるかもしれませんが、ここが味噌だと心得てください。


エッセイの種類ごとの書き方

エッセイの種類ごとの書き方 順に見ていくと、Narrative Essay(物語性エッセイ)とは、ある出来事や体験を物語るエッセイです。小説などはこのジャンルに属します。例えば、旅行記や体験記、日常の些細なこと、人に読まれるのを前提としたジャーナルなどもこの類です。ナラティブは引用符をつけたり論拠を提示するなどの制約が少なく、自由気ままにに書くことができます。
 たとえば、旅行の土産話などはナラティブで人に伝えることになります。土産話は対話の形式を取りますが、話す相手を想定した上で、自分の経験や特日とすべき出来事、学んだことなどの伝えたいトピック、伝える順番などを整理して、相手が「見たことも聞いたこともない新たな知識」をイメージできるように、できる限り細かい描写をしつつ書き下せば立派なナラティブの出来上がりです。子どもたちに日記をつけさせたり、夏休みの思い出を整理して語らせたりすれば、それは立派なナラティブエッセイになるのです。
 このタイプのエッセイでは、論理から外れたり、飛躍があると、一気に興醒めです。つまり、パトスに訴えつつ、ロゴスを踏み外さないように心がける必要があります。

 次に、Descriptive Essay(記述的エッセイ)、ディスクリプティブです。このタイプのエッセイは、ナラティブのようなひとつのストーリーではなく、特定の事柄や出来事について、掘り下げて書くタイプのエッセイです。まずは、何について描写するのかを決めます。人が興味を喚起しやすく、自分自身で詳細に記述できるものを選びます。
 例えば、旅行先で訪れた「山の上のカフェ」を記述するとします。その体験や記憶を、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通して描写します。
・視覚: カフェの造作、床の作り、テラスの構造、席の素材、装飾品など
・聴覚: 鳥の声、客の話し声、水のせせらぎ、木の揺れる音など
・嗅覚: 土や木など自然物や空気の匂い、コーヒーや紅茶の香りなど
・味覚: クッキーやケーキ、コーヒーや紅茶などの甘さ、塩加減、酸味など
・触覚: 頬に感じる冷えてパリッとした空気、木製ドアや椅子の手触り、カップの重さなど

 書くことが整理されたら、そのカフェの外観(色、建物のスタイル、位置など)、そのカフェを選んだ理由、内部の様子(家具、装飾、雰囲気)、訪れる客たち(家族連れ、サラリーマン、服装、表情、行動など)、メニューや提供される料理・飲み物の描写、そして、最後に、このカフェを訪れることで得られた感情や特別な点を書きます。ここで、書き手に試されるのが語彙の豊かさですね。
 Descriptive Essay の成功の鍵は「具体性」です。読者がその記述を元に、頭の中で鮮明なイメージを描けるような詳細な描写を心がける必要があります。上記のステップやポイントを基に、読者に場面や情景を感じさせるます。つまり、主にパトスに訴えかけるのがこのタイプのエッセイです。

 Expository(説明的)エッセイのポイントは何といっても客観性です。研究論文などは、このタイプに属します。このエッセイの目的は、トピックを明確かつ客観的に説明することです。このタイプのエッセイを書くのには、知識は当然のことながらバックグラウンドとなるエトスが必要となります。日本では大したバックグラウンドもない人間が、「テレビに出ている」というエトスのみで様々な発言を繰り返したりしますが、そのような人たちは自由に意見を発言しているだけなので、Expository エッセイ的な信頼性はないでしょうね。
 このタイプのエッセイは、論文や小論など学術的な場で必要とされことが多いので、専門職やものを書くことを生業とする人たちには習得が必須とされる技能ですが、一般的に、高校までの学生や、事務員的なサラリーマンには必要のない技能です。このタイプのエッセイではパトスに訴えることはせずに、純粋にエトスとロゴスを武器に淡々と書き進めることが求められます。
 Expository Essay の成功の鍵は「客観性」と「明確さ」です。情報を正確かつ分かりやすく伝えることを心がけ、読者がトピックに関する深い理解を得られるように書きましょう。


アーギュメンタティブ エッセイ

アーギュメンタティブ エッセイ さて、物語ならパトスとロゴスの Narrative、説明や詳細記述ならパトスの Descriptive、学術論文やアカデミックな小論、あるいは専門的な事柄の記述ならエトスとロゴスの Expository エッセイの形式をとることを述べてきましたが、続いて件の英検です。
 英検の筆記に求められているのは、ナラティブやディスクリプティブ、ましてや専門的な知識を要する Expository エッセイではありません。以下に述べる、アーギュメンタティブ エッセイです。そこで、求められるのはエトス、パトスと根底に横たわるロゴスです。英検対策をするならば、このタイプのエッセイの書き方をマスターしておけば間違いありません。

 Argumentative(論証的)エッセイは、特定のトピックや問題について、ある観点や立場をとり、その立場を論じるエッセイです。つまり、専門的に決着がついているような内容でなく、いまだ議論の余地が残されているトピックがこのタイプのエッセイの題材となります。例えば、学校でのスマートフォン使用の問題、制服などの規則の問題、環境問題、人権問題、多様性や二極化の問題、メディアリタラシーのあり方など、ありとあらゆるトピックが対象です。
 英検の筆記で科されるのは、ほとんどんがこのタイプの作文です。英検では、すでにトピックが与えられているので、まず決めなくてはいけないのは、どの立場をとって議論を展開させるか、です。立場を間違えると、議論の展開が行き詰まることもあるかもしれないので、気分で立場を選ばずに、十分に説得力のある論陣を張れる立場を取ることが大切です。
 例えば、制服に賛成か反対か、というお題があって、賛成の立場を取るならば、「制服を着ることで身分がある程度特定されるので問題行動の抑止になる」「毎日着るものを選ばなくて済む」「初期費用はかかるが、それ以降の被服代は抑えられる」などが論拠として挙げられるでしょう。または、制服に反対の立場を取るのであれば、「生徒の多様性を奪うことになる」「毎日服を選ぶことで養われるある種のセンスを磨く機会が奪われる」などの論陣を張れるでしょう。
 可能であれば、賛成と反対の両方の立場から論を構築できるのがベストです。その上で、共感を得られやすく、十分に論理的で、論拠が明確な論を展開することが肝要です。つまり、このタイプのエッセイでは、パトス、ロゴス、エトスのすべての要素を織り込むことが成功の鍵となります。

 パルキッズでは「英検オンラインレッスン」を提供していますが、ライティングのトレーニングではそれぞれの級に30ずつのトピックを用意しています。そして、それぞれ賛成、反対の立場から論ずるようにアドバイスしています。また、それぞれの立場のサンプルの論陣も用意されています。このタイプのエッセイのトピックは無限にあるわけではなく、上で述べたようにパターンが決まっています。従って、最も手っ取り早いライティング対策は、「英検オンラインレッスン」で用意されているトピックについて、両方の立場で書いてみること、さらに、用意されているサンプルを十分に読み込んでおくことです。極端な話、丸々覚えてしまえば、大抵の問題のパターンには十分対応できるでしょう。もちろん、たくさん書く、さらに両方の立場でものを考える練習を繰り返すことで、論陣の張り方のコツなども自然と身についていきます。


ひとつのパラグラフの役割は、次のパラグラフを読ませること

ひとつのパラグラフの役割は、次のパラグラフを読ませること せっかくここまで書いたので、パラグラフの展開について簡単に触れておくことにします。エッセイを書く際、コヒーレント(一貫性)とコーエシブ(結束性)な文章を書くことが求められます。特に、パラグラフの始めにあたるトピックセンテンスは、そのパラグラフの中心となるアイディアを伝える役割を持ちます。そして、そのアイディアを具体的に説明・補足するのがパラグラフの内容となります。
 まずは、トピックセンテンス(Topic Sentence)で、そのパラグラフの主要なアイディアや視点を示します。読者がパラグラフの内容を予測する手助けとなります。その後、本文で、トピックセンテンスで示されたアイディアを、具体的に説明・補足・証明するための文、具体例、詳細、データ、統計などを使用します。最後に、次のトピックへの遷移部も加えられればバッチリです。
 例えば、「猫は独立した性格を持っている動物である」がトピックセンテンスで、「我が家の猫は、ひとりで過ごす時間を好むことが多く、飼い主からの注意や指示を無視することもしばしばある。また、猫は、新しい環境や他の動物との関わりにおいても自分のペースを崩さない。」などが本文となります。そして、最後に「これらが猫の性格ですが、犬は少し異なる性格を持つようです」などで繋ぎます。この最後の一文は、次のパラグラフのトピックセンテンスに位置付けることもできます。
 どのエッセイにおいても、このトピック内における一貫性と、トピック間の結束性が重要となり、これらを欠くと、読み手の理解は妨げられ次のセンテンスに読み進められないことが起こります。エッセイにおけるパラグラフの役割とは、「次のパラグラフに読み進めさせること」のひと言に尽きますね。


サマリーの書き方

サマリーの書き方 さて、最後です。来春の英検から筆記問題の内容に変更が加えられます。すでに述べたように、3級と準2級はメール文に対する答えを作文することですが、2級以上はサマライズ(要約)が課されることになります。メール文は会話文のようなものですから、慣れれば書けますが、サマライズには少しコツが必要なので、最後に述べておくことにします。

 英文要約には、元の文章の中心的な情報や主要なポイントを簡潔にまとめるスキルを要します。ここでは、英文要約の基本的なアプローチを紹介します。
 その前に一点注意です。パラグラフの指示に「自分の言葉で」とある場合には、剽窃を避けるためのパラフレーズが必要となります。剽窃とは、すでにあるテキストをそのまま “コピペ” することです。これは、アカデミアでは、単位の剥奪はもちろんのこと、最悪の場合、退学や取得済みの学位の剥奪などにつながります。インターネットの便利さにあぐらをかいて、人の文章を盗むような行為は、知らず知らずのにうちに、悪気なく行われることが珍しくありません。
 ”コピペ” はもってのほかですが、サマライズの場合も同様です。キーワードを使用する程度であれば、場合によっては問題とされませんが、フレーズレベルのコピーもNGです。その場合に必要となるのがパラフレーズです。パラフレーズとは、元の文章の意味を変えずに、自分の言葉で言い換える技術です。以下のステップでパラフレーズを行います。
・単語の置き換え : 同意語や言い換え可能な表現を使って、単語を変えます。
・文の構造の変更 : 受動態を能動態に変えたり、文の順序を変更するなどして、元の文とは異なる構造にします。

 さて、「自分の言葉で」の指示がある場合には、単語の置き換えやパラフレーズも駆使してサマライズを進めます。サマライズの方法は以下の通りです。
・まず全体を読みます。文章全体を一度読んで、主要なポイントやテーマを理解しましょう。
・文を何度か読み返し、重要と感じる部分やキーワード、具体的なデータ等をマーキングします。
・要点をまとめ、パラフレーズを活用して簡潔に要約文を作成します。
・要約を書いた後、元の文章と比較して、重要な情報が適切に反映されているか、そして自分の言葉になっているかを確認します。
 サマライズは要約ですので、あくまでも元の文章を端的に表していることが求められます。つまり、元の文章の意味やニュアンスを損なわず、余計な修飾語や詳細を削除して、文章を簡潔にし、主要な情報やポイントをしっかりと取り上げることを確認しましょう。

 以上、英検の重要性から、ライティングの重要性、さらにはエッセイの書き方とサマライズの方法について書いてまいりました。上手にエッセイを書くための特効薬はありません。ひたすら練習する以外ありません。ただし、がむしゃらに書いても、これまたどうにもなりません。上記の点を押さえつつ、自分の書いたものを見返すことを繰り返すことのみが、エッセイ上達の道です。
 ところで、パルキッズの「英検オンラインレッスン」が来年1月から様変わりします。語彙やリスニングについては変更はありませんが、ライティングの部分が大きく変わります。今後は、AI(OpenAI)の言語モデルに、エッセイを評価させる機能が付加されます。つまり、受講生の作文に対して、パルキッズの考え方を十分に学習させたAIの先生が指導をすることになります。従来は、サンプル文を参照しつつ自分の文章を書く練習のみで、評価はできませんでしたが、今後は、AIの先生から即座にフィードバックを受けられるようになります。皆様の英検対策に、ぜひご活用いただけることを願っています。


【編集後記】

今回の記事をご覧になった方におすすめの記事をご紹介いたします。ぜひ下記の記事も併せてご覧ください。
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【注目書籍】『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)

特集イメージ9 児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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