OUCHI EIGO GUIDE
おうち英語と英文法
日本語を話せる子どもは、 日本語文法を説明できるでしょうか。
幼児は、「主語」「述語」「助動詞」といった日本語文法を説明できなくても、日本語を聞き、話し、かなり複雑な文を理解しています。 英語も、最初から文法用語を覚えなければ理解できないわけではありません。 むしろ、まだ日本語の文法用語さえ十分に理解できない幼児・小学生に、中学校で学ぶような英文法を先取りして説明すると、英語そのものを理解する前に、日本語で規則を丸暗記する学習になりやすくなります。 おうち英語では、まず英語を大量に聞き、英語を聞いて分かる土台を作る。その後で英文法を「すでに知っている英語を整理する知識」として使います。
「文法を使える」と「文法を説明できる」は違う
日本語を話すとき、私たちは毎回、これは主語、これは目的語、ここは過去、などと考えているわけではありません。
幼児も同じです。
「ぼく、きのう公園に行った」「これ、ママが買ってくれた」「雨が降ったら行かない」といった文を使えても、過去形、条件節、格助詞といった文法用語を説明できるわけではありません。
つまり、文法を無意識に使えることと、文法規則を言葉で説明できることは別です。
ことばを身につける過程では、まず大量の用例に触れ、語の並びや文のパターンを使えるようになります。その後で学校教育などを通して、すでに使っている言語を文法用語で整理します。
日本語でも、文法学習は「日本語を身につけた後」
子どもは、日本語を何年も聞き、話し、理解した後で、学校で文の構造や品詞、活用などを学びます。
つまり、日本語では、ことばを使えるようになる→読む・書く経験を増やす→文法的な説明を学ぶ、という順序です。
日本語を話し始める前に、「名詞とは」「助詞とは」「動詞の活用とは」と教えることはありません。
それでも子どもは日本語の語順や助詞の使い分けをかなり正確に身につけます。
この事実は、明示的な文法説明が、言語を理解するための最初の条件ではないことを示しています。
幼児・小学生に中学校型の英文法を持ち込むと、負荷が高くなりやすい
中学校型の英文法では、主語、動詞、目的語、現在形、過去形、三人称単数、不定詞、現在完了などの概念を、日本語で説明します。
しかし、幼児や低学年の子どもは、日本語でも「主語とは何か」「現在完了とは何か」という抽象的な説明を十分に理解できるとは限りません。
その状態で英文法を先取りすると、理解したから覚えるのではなく、先生や親に言われた規則を覚える学習になりやすくなります。
たとえば、「三単現のときはsをつける」「過去のことだからed」「toの後は動詞の原形」という規則を言えても、実際の英語を聞いた瞬間に意味が分かるとは限りません。
文法問題は解けるが、英語そのものは聞き取れない、という状態が起こり得ます。これが、現在の英語教育の現状でもあります。
つまり、幼児・小学生に対する文法教育は現在の英語教育を先取りしているに過ぎないのです。
英文法を先に教えると、日本語訳に頼りやすくなる
英文法を日本語で説明するには、どうしても日本語訳が入りやすくなります。
This is a book.「これは本です」 I went to school.「私は学校へ行きました」
のように、英文を日本語へ置き換えたうえで、この語が主語、この語が動詞、これは過去形、と分析するからです。
すると子どもは、英語を聞く・読む→日本語へ訳す→文法規則を当てはめる→意味を理解する、という処理を身につけやすくなります。
もちろん、文法や訳読そのものが悪いわけではありません。中学生以降に複雑な英文を分析したり、正確な作文を考えたりするときには役立ちます。
しかし、幼児・児童期のおうち英語で最初からこの処理を中心にすると、せっかく大量の英語を英語の語順のまま処理できる時期に、日本語を経由する癖を強める可能性があります。
幼児・児童期には「音声知覚」を作れる時間がある
幼児や小学生には、大人より自由になる生活時間が多く、家庭で英語音声を長時間流しやすいという大きな利点があります。
さらに、幼児期は新しい音声パターンへ適応しやすい時期です。
この時期にしかできないことは、「中学英文法を早く終わらせること」ではありません。
家庭生活の中に英語音声を置き、日本語とは異なる英語の音、強弱リズム、連結、弱化、脱落、語のまとまりへ大量に触れることです。
英語の音を英語として処理する土台は、数十時間ではなく1000時間単位の経験として考える必要があります。
また、最終的に使えるレベルの英語を身につけるためには、英語を聞き取れる「音声知覚」の形成が不可欠です。
幼児・児童期の比較的余裕のある時間を、文法問題の先取りだけに使ってしまうと、大量音声経験により「音声知覚」を形成する機会を失います。
折角のおうち英語です。まず幼児期のこの時間を音声知覚形成に使うのが賢明でしょう。
幼児期の時間を音声経験へ変える子どもは、文法規則を「用例」から学んでいる
明示的な文法用語を知らなくても、子どもは文の規則性を学びます。
たとえば、I want water.、I want this.、I want to go.、I want more. のような表現を何度も聞くと、「I want …」の後にさまざまな要素が入ることに気づきます。
This is a dog.、This is my book.、This is good. のような用例からも、語や句の組み合わせを経験します。
子どもが最初から「SVO」「補語」「不定詞」と分析しているわけではありません。
大量の用例から、よく現れる語の組み合わせや文のパターンを抽出し、少しずつ使える範囲を広げます。
この無意識の文法知識と、学校で学ぶ「文法用語による説明」は区別して考える必要があります。
英文法は「英語が分かるようになってから」で遅くない
英文法は不要ではありません。ただし、順序が重要です。
英語を聞いて内容が分かる。簡単な英文を読める。英語の語順のまま意味を追える。
この状態が育ってから文法を学ぶと、文法用語は「知らない英語を日本語で暗記する規則」ではなく、「ああ、この英文の構造はこう説明するのか」と、すでに知っている英語を整理する道具になります。
たとえば、過去形を耳で何度も経験している子が後から「これは過去形」と学ぶのと、過去形の英語をほとんど聞いたことがない子が「過去形は-ed」と暗記するのでは、文法知識の意味が違います。
おうち英語では、文法を先に詰め込むのではなく、英語そのものを先に経験します。
文法が役立つのは、読み・書き・試験で精度を上げるとき
英語をある程度理解できるようになると、明示的な文法知識にも価値が出てきます。
長い英文の構造を確認する。似た表現の違いを整理する。自分で書いた英文の誤りに気づく。学校の文法用語と結び付ける。英検や入試の問題形式へ対応する。
といった場面です。
ここでは文法が、英語をゼロから理解するための杖ではなく、すでにある英語力を整理し、精度を高める道具になります。
文法は後からでも学べます。
一方、幼児期に生活の中で何千時間もの英語音声へ触れられる時間は、後から同じ条件で取り戻すのは、留学でもしない限り困難です。
小学生では、文法より「音声+読解」を先に
小学生は少し抽象的な概念や文字を理解できるため、英文法を教えたくなる気持ちもわかります。
しかし、小学生から始める場合にも、英語音声→意味理解→文字→音読→読解を先に一つの流れとして作ります。
読める英文が増えてくると、文法的な規則も、実際の英文の中で少しずつ理解できるようになります。
英文法を全く教えないという意味ではありません。
必要になった文法を、その都度、短く伝えることには意味があります。
しかし、中学校の文法単元を単純に小学生へ前倒しすることは、おうち英語の可能性を最大限に引き出すことには繋がらないでしょう。
小学生に合った英語の進め方まとめ
子どもは、日本語文法を説明できるようになってから日本語を身につけたのではありません。
まず日本語を大量に聞き、理解し、使えるようになり、そのずっと後で文法を学びます。
おうち英語も同じ順序で考えます。
大量の英語音声→聞いて分かる→文字と結び付ける→読んで分かる→必要に応じて文法で整理する。
幼児・児童期に優先したいのは、中学校英文法の先取りではありません。
比較的時間に余裕があり、英語音声へ大量に触れられる時期だからこそ、まず英語の音声知覚を育てる。
英文法は、英語を聞いて分かるようになってからでも遅くありません。
よくある質問
文法を教えないと、文法的に正しい英語は身につきませんか?
子どもは、明示的な文法用語を知らなくても、大量の用例から語順や文のパターンを学びます。文法説明と、無意識に身につく文法知識は別です。
英検を受けるなら、早く文法を教えた方がよいですか?
級や問題形式によって明示的な文法知識が役立つ場面はあります。ただし、幼児・小学生では、先にリスニングと読解の土台を作り、必要な段階で文法を整理する方が自然です。
小学生なら英文法を始めてもよいですか?
始めてはいけないという意味ではありません。ただし、中学文法の先取りを中心にせず、まず英語音声と意味、文字、読解を結び付けます。
文法を後回しにすると学校英語で困りませんか?
英語を聞いて理解し、読める土台があれば、後から文法用語を学んだときに、すでに知っている英語を整理する知識として理解しやすくなります。
日本語訳は使ってはいけませんか?
日本語で確認すること自体を禁止する必要はありません。ただし、すべての英文を必ず日本語へ訳してから理解する方法だけに依存しないことが大切です。
このページを親記事として、目的や学習段階に応じた各テーマを詳しく解説しています。
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