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2023年1月号特集

Vol.298 | バイリンガル育児の総仕上げ

成功の鍵はルーティン化

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-2301/
船津洋『バイリンガル育児の総仕上げ』(株式会社 児童英語研究所、2023年)


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バイリンガル育児は仕上げが肝心

バイリンガル育児は仕上げが肝心 バイリンガルの方が、モノリンガルよりは言語能力が高いということは、言語学の素人でもわかります。それはそうでしょう。日本語しかわからない人は日本語の情報しか取れませんが、英語もわかる人は、英語からも情報が取れるわけです。日本語でしかニュースを視聴できなければ、偏向した情報しか得られませんが、海外からの視点でも情報を取れるのであれば、世界の景色はまったく違うものになります。

 外国語を知ることでの言語力向上のメリットは、情報アクセスのチャンネル数が増えるだけではありません。知覚できる(母語とは異なる外国語の)音素の知識も増えるし、韻律と呼ばれる音素の並び方や音節構造の違いなどの知識も増えます。このように、母語以外の音の知識が倍増することで、第三、第四外国語の習得も楽になります。

さらに、個人の言語能力自体の向上も期待できます。バイリンガルの方がモノリンガルよりも意味理解に敏感であることも研究で示されていますし、手話も含めたバイリンガルたちの実験でも、バイリンガルの方が言語能力が高いことは示されています。(『パルキッズ通信2022年5月号』参照)

 人の「おつむ」の良し悪しは、言語力に依存しています。つまり、バイリンガルであること自体が、「頭の良い人」になるポテンシャルをはらんでいるのです。


L2英語が閾値をクリアすれば、あとはL1国語力の勝負

L2英語が閾値をクリアすれば、あとはL1国語力の勝負 しかし、ですよ。颯爽と英語を話すものの、まるで内容が伴っていないニカ国語話者(あえて「バイリンガル」とはしていません)もいます。どういうことでしょうか?彼らの言語能力の低さの課題は「日本語だけでなく英語も聞いたり話したりできる」ことによって「セミリンガル・ダブルリミテッドになった」ことにあるのではなく、おそらく、母語である日本語の能力にあると思われます。
 カミンズ(Jim Cummins, カナダの言語学者)の言うところの「相互依存仮説」によれば、母語(L1)とL2(第二言語)は表面(音や文法)では形が異なりますが、深層では共通の領域を持っているそうです。つまり、内容の伴わない二か国語ペラペラ話者たちは、幼児のように表層の「聞いたり話したり」する能力は有しているものの、深層の「理解したり思考したり」する言語能力が低いのでしょう。”BICS : Basic Interpersonal Communication Skills、生活言語” であって、”CALP : Cognitive Academic Language Proficiency、学習言語” ではない言語力しか持たないわけです。(『パルキッズ通信2022年5月号』参照)

 また、同じくカミンズの「言語閾値(いきち)仮説」によると、冒頭で述べたようなバイリンガリズム(英語ペラペラ人ではない方)の恩恵を受けるためには、L2の能力が必要最低限以上ある、つまり「閾値」を超えている必要があるとのことです。そして、L2がめでたく閾値を超えると、L1の言語能力をL2にも援用できるようです。

 つまり、バイリンガル教育を行うにあたって、先ず重要なのは「言語閾値仮説」で説かれるところの「閾値を超えたL2能力」を身につけさせることです。そして、一度L2が閾値を超えれば、「相互依存仮説」で説かれるように「L1である国語力」を高めることで、L2の能力も高まることになります(英語力を高めることで国語力を高めようとするよりは、その逆の方が日本人にとっては楽でしょう)。

 「相互依存仮説」で重要となるL1の国語力は、是非「地頭力講座」と「幼児教室プログラム」で伸ばしていただくとして、問題は「言語閾値仮説」です。
 パルキッズたちは、英語のリスニングによる知覚の閾値は軽くクリアしているのですが、リーディングによる知覚の閾値をクリアできずに、足踏みしているケースが見られるようです。これが結果として英語力の自覚や発揚につながらず、本人や親を失望させる原因となります。しかし、インプットのみからでも得られる高い英語力に関しては、『パルキッズ通信2022年12月号』で書いた通りです。

 英語を聞き取れるようになったら、なんとなく分かるだけの「ふわっとした英語力」を「地に足のついた英語力」に昇華させるために、英文を読めるように育てないといけません。これが、重要なポイントです。

 そこで、今回は、年初にあたり「英語力の総仕上げ」、つまり「閾値をクリアしているL2英語力を身につけさせる方法」を探ることにしましょう。


「読める」ことが言語能力を飛躍的に高める

「読める」ことが言語能力を飛躍的に高める お子さんの日本語の発達を見てください。「読む」能力をまるで本能のように身につけていくではありませんか。
 もちろん、日本語の「語彙を豊かに」して、日本語の「理解力を高める」ことは大前提ですが、この二点がクリアできていれば、子どもたちは自然と文字に関心を持つようになります。そして、気づけば読めるようになっています。

 逆に「語彙を豊かに」「理解力を高める」ことをせずにいる家庭では、いくら文字書きプリントをさせてもなかなか文字読みは始まりません。いくら課題の音読をしても、一向に教科書を理解できない子もいます。極端なケースでは小学4年生になってもカタカナを読めない子もいるのです。
 幸い最近では、 “ゆとり” やそれ以前に言われたように「小学校入学まで文字を教える必要はない。名前が書ければ良い」などという驚くべき指導は幼稚園では行われないようです。しかし、文字教育に関心を持たない幼稚園もあるようですので、どうやら就学前の文字教育は保護者責任で行われているようです。
 結果、近年では、年中さんにもなれば多くの子がひらがなを読めるようになり、それに少し遅れてカタカナの読みも追いついて、さらには幼稚園のうちに小学低学年の漢字も読むようになります。

 そして、文字を読めるようになると、子どもたちの日本語はそれまでの日本語とは異なる体系を形取ることになります。
 曖昧だった音の境界が明確に定義され、音の境界がくっきりすることで語の知覚が容易になり、その頃から爆発的に語彙が増えていきます。

 一口に言えば彼らには「言葉が見えるようになる」のです。「日本語はテレビだ」と故・鈴木孝夫先生が上手いことをおっしゃっていますが、確かに、同音異義語を文字で識別できる漢字かな混じりの日本語の体系は視覚に頼るところが大きいのです。

 もう少し説明すると、以下のようになります。
 文字を読めるようになる前の子どもたちは、音声のみを頼りに日本語を知覚しています。ところが、その音声が実に曖昧模糊としているのです。例えば「いー」と言いながら少しずつ口を開けていくと、あるところで突然「えー」の音になります。さらに口を開けていくと「あー」となります。
 音の境界はくっきりしていて、 “突然” 「い」が「え」となって聞こえ、そしてついには「あ」となるのです(ちなみにパルキッズたちは、「え」と「あ」の間に英語の [æ] を聞き取ります)。重要なポイントは、それらが視覚を通した文字の形でカテゴライズされることです。

 子どもたちは、しばしば聞き間違いをします。「たきぎ」を「たきび」と聞いたり、「南北朝」を「まんおくちょう」、「わたしゃ音楽家」を「がちゃぽんがくか」、あるいはアブラハムの子どもたちを「ひとりはよっぽであとはちみ」と歌ってみたりと様々です。
 これが、文字を覚えて書くようになると、かわいらしい無邪気さが少しずつ薄れていきます。文字を覚えてカテゴリー化ができるようになると、文字に意識が向くようになり、「よっぽ」は「のっぽ」であることに気づくようになり、言い間違いも減るのです。

 つまり、音声が「聞こえる」だけでなく「見える」ようにもなるわけです。

 読めるようになると、子どもたちは「マンゴー」を「まんごう」、あるいはこの長音の正字法を過大拡張して「こおり」を「こうり」、「シリーズ」を「しりうず」、「おかあさん」を「おかうさん」などと書いたりもします。
 このように、時々間違えながらも、聞いた音を視覚記号へとカテゴリー化するようになると、境界が曖昧な音の世界の景色がはっきりしてきます。そして、何しろ音が「見える」わけですから、周囲の音に埋もれている語を次々と “発見” して自らの語彙に蓄えていくのです。


文字記号を音声に変換

文字記号を音声に変換 人の情報認知の始まりは、音声からです。つまり、

 「音声記号」⇄「意味」のやりとりで、聞いた音をイメージする、逆に頭に浮かんだイメージを音にすることを通して思考や会話を行います。

 子どもたちに文字読みが始まるということは、そこに、

 「(標識や文字など)視覚記号」⇄「音声記号」のステージが加わって、

 「(標識や文字など)視覚記号」⇄「音声記号」⇄「意味」の体系になることを意味します。

 日常に溢れる様々な記号体系を知覚できるということは、知識の世界の広がりを直接に意味します。道路標識も意味がわからなければ、単なる模様付きの看板で、目にしても気にもとめないでしょう。楽譜も読めなければ、そこに躍る記号群は単なるお玉杓子です。記号を音にできるようになるから、ようやくメロディーやハーモニーなど楽曲独自の「意味(イメージ)」を伴うようになるのです。
 文字も同じで、すらすら読めるようになれば、それすなわち「音声記号」となるのですから「意味(イメージ)」もついてきます。

 しかし、たどたどしく読んでいるうちはそうではありません。「視覚記号」→「音声記号」の変換作業に夢中になってしまい、その先にある「音声記号」→「意味」までは手が回らないのです。これは我々が「読力はあるが読解力に欠ける」「読めるが理解できない」と本誌で繰り返し指摘しているところです。

 このあたり、日本人の英語力と通底していますね。日本語なら隣の席の雑談も集中して聴こうとしなくても、自然に耳に入るでしょうし、料理をし “ながら” 「英語子育て大百科」を聞いて理解することも可能です。
 しかし、無意識に直感で理解できる知覚力がなければ、いくら英語のニュースや漫談をかけ流してみても、それらは雑音にしかなりません。耳に入ってこないのです。

 「音声記号」→×「意味」このように、意味理解につながりません。

 日本人は、英語の音を直感的に理解できないばかりではありません。日本人にとっては、英語の文字も「自然と目に入ってくる記号」ではないのです。読もうと思えば読めないことはありませんが、無意識のうちにも自然と目に入るまでには至っていない。そして、このように、頑張って読んでいるうちは直感的な意味理解までつながらないのです。

 「視覚記号」(努力)→×「音声記号」…×「意味」

 楽譜を読める人にとって、譜面は音の世界です。譜面が音に変換されて頭の中で鳴っている楽曲は、それぞれが独特の意味(イメージ)に変換されるのです。同様に、努力なしにほぼ無意識で日本語を読めるようになれ(自動化すれ)ば、その人の頭の中では文字が音声となって鳴り、日本語の音声メッセージは直感的に理解できる(あるいは理解することに専念できる)のです。

 「視覚記号」(無意識)→○「音声記号」→○「意味」

 言語あるいは標識などの場合、まず「音声記号」⇄「意味」の回路が確立していることが大前提です。そして、文字などの記号を読めるようになるということは、それまでの

 「音声記号」⇄「意味」のみの理解のステージから、

 「(標識や文字など)視覚記号」⇄「音声記号」⇄「意味」へと世界を広げた理解のステージへと進むことになるのです。そして、子どもの英語力もここまで育てれば「閾値を超えた言語力」と呼んでも過言ではないでしょう。
 今回の目標は、この点のクリアです。


2つのタブーを押さえれば、何をするべきかが見えてくる

2つのタブーを押さえれば、何をするべきかが見えてくる さて、では、どのようにして「閾値を超えた」読解力を備えた英語力を身につけさせるのでしょうか。

 このように書くと、あるいはここまで読み進めると「早く読解力を身につけさせなくては」という思いを抱いたり「フォニックスやプリントをやらせよう」と考えてしまう方もいらっしゃるでしょうね。

 そして、いざ取り組ませてみると、ぐずぐずしていたり、いつまで経ってもすらすら読めるようにならない。そんな我が子に苛立ちつつ、親子共にストレスを抱えてしまう。そんなケースも少なからず見てきました。

 ここで、2つの禁忌(タブー)をお伝えしましょう。

 「急がない」「やらせようとしない」、この2つです。言い換えると英語の読解力を育てるためには、「慌てずゆっくり時間をかけて」「インプットと考えて一緒に取り組む」ことが必要となります。

 最近の民間教育、その現場は殺伐としています。とにかく「早くマスターさせる」「次々とレベルを上げる」ことに注力しているようです。そして、その結果、学習スタイルが「単純作業の繰り返し」から「とにかくミスをさせず」「いかに早く処理できるか」などということが中心になってするように思えてなりません。
 僕に言わせれば、概念を理解できれば「繰り返しの単純作業」など不要で、文字も「きれいに書く必要はなく」読めれば良く、問題も「大いに間違えれば良い」。間違えることに戦々恐々として思考の幅を萎縮させるよりは、間違えても良いから自由奔放に思考させれば良いのです。間違えるからこそ人は学ぶものです。

 そして、じっくり・ゆっくり・たっぷりと思考錯誤を繰り返すうちに、子どもたちは物事の本質を「覚え」るのではなく、しっかりと「理解」していくのです。そして、一度「理解」してしまえば、「覚え」ておく必要がないので、一生消えない。脳の使用の経済性も満たしています。

 学習の順番なども関係ない。血肉になるまで理解できたら、それが学校の求める「正解」でなくても、それで良い。そして、なによりも、「急がず焦らず」「すべてをインプットと考え」て子どもの(特に失敗を中心に)成長を見守る姿勢が大切でしょう。

 そして、そのように育てられた子は、勉強をタスクと捉えず、学習をルーティン化して次々に新しい概念を身につけていきます。

 いきなりタスクとかルーティンという言葉を持ち出しましたが、インプットを中心に時間をかけて成長を見守られた子は、どのような学習姿勢を持つようになるのか、以下、勉強のタスク化ではなく、学習のルーティン化という考え方を軸に見ていくことにします。


学習のルーティン化が知識獲得の鍵

学習のルーティン化が知識獲得の鍵 「勉強・学習」とは「学問・技芸などを学ぶこと」です。それでは、その勉強や学習に、子どもたちは日々どのように取り組んでいるのでしょうか。

 さて、「タスク」とは期限付きで振り当てられた日常的な「作業」のことです。これを子どもたちが日々行なっている「勉強・学習」に当てはめると、大体今日の学校教育や学外教育の基本形となります。つまり、「期限付きで割り当てられた作業をこなす」ことを「勉強」として子どもたちは日々こなしているわけです。
 タスクの主体は「(先生などの)割り当てる人」と「(課題などの)割り当てられる内容」と「こなす人」です。ここが重要。先生がいて課題があって、それらが一律に子どもたちに割り当てられるのです。子どもたちが自発的に課題を選んで学習するのではありません。子どもたちに主体性は必要ありません。

 余談ですが、割り当てられたタスクをこなしていれば「勉強・学習」の目標は達成できるのでしょうか?タスク化された「勉強」から得られるものはといえば、応用が効きにくい技術や知識を、一時的に記憶したり正確に処理する能力でしょう。これに関しては本誌にて繰り返し書いているので今回は省くことにします(『パルキッズ通信2022年9月号』『パルキッズ通信2021年2月号』)。

 他方の「ルーティン」化です。1日の一定の時間を消費することにおいては、タスクもルーティンも同じですが、ルーティンとタスクでは「時間の使い方」がまったく異なります。
 タスクとしての勉強は、時間を決めて行われるのに対して、ルーティンとしての学習は時と場所を選ばないのです。食事中、移動中、遊んでいる時、ピアノを弾いている時、寝ている時、いつでもどこでも学習が進むのです。このルーティンとしての学習のあり方が、時限付きのタスクとは異なり、「勉強・学習」の目標とするところの「学問・技芸などを学ぶこと」にグッと近づくことに繋がります。


「学習」をルーティン化するとはどういうことか

「学習」をルーティン化するとはどういうことか ルーティンとしての学習とは、タスクとしての勉強のように、時間を決めて漢字の書き取りや計算問題をこなしたり、年表を覚えたりするのではなく、日常生活にそれらの学習対象の概念を組み込みながら習得していくという考え方です。
 例えば、タスク化すれば「毎日何時から何分間ピアノの課題曲を弾く」ことになりますが、ルーティン化すると、頭の中で演奏しているピアノを「起き抜けに、または帰宅後すぐに実際に弾いてみる」ことになります。つまり、隙間時間に考えているのです。
 数学の課題を暇があれば頭に思い浮かべていたり、ふとした瞬間に日本史のふたつの出来事の関連に気付いたり、それこそ、寝ている時にもピアノの鍵盤を指で弾いていたりします。
 読者の皆様も、そんな経験のひとつやふたつはあることでしょう。何かに夢中になっている時は、時間が過ぎるのも忘れて、寝食も忘れて取り組んだことがありませんでしょうか。暇さえあれば、そのことを考えていたりしませんか。その感じが、学習のルーティン化です。

 「勉強・学習」を、社会人の日常に置き換えて考えてみると、わかりやすいかもしれません。日常的な作業を繰り返しても、作業はエンドレスで与えられます。そこから得られる能力とは、与えられた作業を早く、そして正確にこなす能力です。これはタスクですね。
 そして、タスクに疲れ切った社会人たちは、暇な時間には学ぶことをせずに休む。頭を休ませるために、酒を飲んだり、ゲームをしたり、趣味に没頭したりするわけです。
 一方、その余暇を学習に使う人たちもいます。そんな人たちは、次々と新しい概念を身につけて自らの思考力・判断力を成長させていきます。ひとつの会社の中で競争に勝ち抜くことがキャリアアップだと信じられている日本では奇特なタイプですが、彼らこそが本当の意味でのキャリアアップの実践者でしょう。そんな人たちは、常に何か考えているのです。


人の脳は放っておいても考えてしまう

人の脳は放っておいても考えてしまう いかがですか?「英語を勉強することなく自然と学習できれば?」「四則を始め、代数も幾何も解析も日常生活の中で嵩感覚として身につけられれば?」「国語の能力もプリントを使用せず親子の会話の中で身につけられれば?」「ピアノもバイオリンも、スキーも料理も日常の中で身につけられれば?」こんな楽なことはないでしょう。

 こう書くと、「そうか!ではそういう教室へできる限り通わせよう」とか、あるいは「そんなすべてを教えられる時間も能力もない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 それは勘違いです。そんなことは言ってはいません。そもそも年がら年中、子どもと一緒にいるわけにもいきませんし、すべてのことを教えるなど時間的にも能力的にも不可能です。
 そこで、重要になるのが、子どもの脳の使い方です。人の脳は放っておくと何か考えてしまう性質を持っています。もっとも、その「考えてしまう性質」を見事に無力化するのが、テレビやインターネットなどのメディアであり、テレビやソーシャルメディアのフィードをぼんやり眺めたり、ゲームに夢中になることで、「考えてしまう性質」は封印され、時間は見事なまでに無為に過ごされていくわけです。これに関しては、『パルキッズ通信2022年9月号』をご参照ください。

 この「放っておくと考えてしまう」脳の性質をうまく利用すれば良いのです。
 「考える素材」が与えられていない子どもたちは、時間を持て余します。知識が少なければ思考も浅薄になりますし、言語力が伴わなければ思考力も低いままです。そして、親が面倒を見ていないとすぐ「飽きてしまう」のです。すると、親はゲームやスマホを与えたり…いやはや…。

 簡単な話です。彼らに「考える題材」を与えていくのです。それは、数でも文字でも、大好きな乗り物のことでも、スキーのことでも、旅行のことでも、ピアノでも、仏像でも、食べ物のことでも何でも構いません。
 日常の生活の中で、様々な件に関して話し合う習慣を親子で身につけていくことで、考える題材は子どもの頭の中に(それこそ親にとってもたくさんの学習に)満ち満ちていきます。

 そして、思考の素材が頭の中にたっぷり入っている子どもたちは、テレビやインターネットを与えなくても、暇であることがありません。
 お子さんが、ひとり遊びなどに夢中になっているかと思いきや、ぼんやりと、何やら上の空の状態になっていることがありませんか。このような時にこそ、彼らの頭の中では「考える素材」が蠢いているのです。幼稚園であったことを思い出しているのかもしれませんが、家族で話し合ったことや、気になることに関して何か考えていることもあるでしょう。

 そして、ある瞬間にふと「ああ、そうか」と物事を理解するのです。

 このように、脳の「考えてしまう性質」を活用するために、子どもの脳にたくさんの「思考の材料」を放り込んでおくと良いのです。すると、彼らの脳には未解決の課題、つまり学習目標が豊富に存在することになり、あとは放っておいてもそれらの課題の学習が日常に組み込まれていく、つまりルーティン化されていきます。

 タスクは(他人から割り当てられようが、自分で割り当てようが)意識的です。他方、ルーティンは無意識で、気づけば取り組んでいるような性質です。タスクは環境が変わると中断することもままありますが、一度ルーティンになると「しないと座りが悪い」のです。

 それでは、以下、本稿の主題である英語の閾値仮説をクリアするための英語の文字読みを、学習のルーティン化の中でどのように取り組んでいくのか見ていくことにしましょう。


「パルキッズ」の読解力育成プログラム

「パルキッズ」の読解力育成プログラム 「パルキッズ」では英語の読解力育成のために、様々なプログラムを用意しています。「I Can Read(アイキャンリード)」や「I Love Reading(アイラブリーディング)」などの暗唱用の絵本教材は、アウトプット機会の促進の意味もありますが、もっぱら読解力育成のためのプログラムです。
 これらの絵本の使用開始年齢は1歳半くらいですが、インプットの意味では0歳からスタートすることも可能です。インプットだけ先にしておいて、アウトプットとなる暗唱は後回しで良い、ということです。
 絵本のインプットが「パルキッズ」のインプットに加わることで、幼児期特有の「英語の音素知識・韻律知識の獲得」の増進に役立つのは言うまでもありません。

ドリルでは「フォニックスドリル」「ライミングドリル」あるいは「サイトワーズドリル」などが用意されています。「フォニックスドリル」は、アルファベット26文字のフォニックス読みを学ぶ教材です。「ライミングドリル」は、文字単位でなく単語単位ですらすら読めるようにする学習法です。そして「サイトワーズドリル」は、フォニックスやライミングのように文字を読むのではなく、単語を一塊(ひとかたまり)として直感的に読めるようになる訓練用の教材です。
 取り組み開始可能年齢は1歳半ですが、急ぐ必要はありません。4歳くらいになれば体力や集中力もついてくるので、1日2~4枚のペースで取り組めるので、フォニックスもライミングも3、4ヶ月でクリアできます。

そのほか、最新版の「パルキッズ」では、オンラインレッスンに読解力育成プログラムが組み込まれています。(2022年12月以前のバージョンでは、プリスクーラーとキンダーにそれぞれ連動した「Do the FUN 単語1・2」が提供されています。)
 また、「I Can Read(アイキャンリード)」などのオンラインレッスンでも、サイトワーズのインプットとアウトプットができるようになっています。

「パルキッズ」はもちろん、英語そのものを耳から身につけるようにデザインされています。つまり、「パルキッズ」単体でもバイリンガル育児(Heritage Listener [継承語学習者] になれる。『パルキッズ通信2022年12月号』参照)ができるようになっています。
 ただ、それだけでは英語教育は完結しないので、上で紹介したような様々な読解力育成の取り組みが、教材の中に組み込まれていたり、別売りのプログラムとして提供されています。

 それらすべてに共通するのは、インプットという考え方です。以下、見ていくことにします。


絵本もドリルも「インプット」、オンラインレッスンも「インプット」

絵本もドリルも「インプット」、オンラインレッスンも「インプット」 読解力育成を考えると、まず思い浮かぶのはドリルでしょう。皆様も市販の文字書きドリルなど活用されているはずです。ただ「ドリル」と聞くと、幼かりし我が身を振り返って「子どもが自分でするもの」と思い込んでいる世代も少なくないかもしれません。
 また、絵本も「暗唱」教材なので「これは是非とも暗唱させなくては」と思い込み、一向に暗唱が口から出てこない我が子(特に男の子や長子)に愕然とする向きもあるでしょう。
 同様に、「オンラインレッスン」と聞くと「これは本人に取り組ませねば」という思いに駆られるのでしょう。そして「まだ小さいので、自分でできるようになるまでオンラインレッスンは始めません」などという声も少なからず聞こえてきます。

 はっきり申し上げましょう。その考え方では、うまくいきません。なぜなら「インプット」を阻害するからです。

 「本人にやらせる」と考えるから「できないから、まだやらせない」となります。すると結果として「インプット」の機会を与えないことになってしまうのです。

 ドリルも絵本の暗唱もオンラインレッスンも、すべては「インプットなのだ!!」と考えることが大切です。
 ドリルを一人でやらせるのではなく、母親が手を添えて取り組ませる。それはインプットになりませんか?うまく書けなくても、書き順を間違えても良い。それだけでも「文字に触れる」大切なインプットの機会ですね。

 絵本は、暗唱が口から出てこなくても、音声を与え続ければ、それは間違いなくインプットです。『パルキッズ通信2022年12月号』では、インプットから身につけた外国語は消えないことを書きましたが、子どもたちは、インプットされた内容も記憶のどこかに消えることなく残しているのです。そして、1年後でも2年後でも、あるいは数年後、十数年後でも、改めてそれらの情報に触れると覚えていたりするのです。
 しかし、「暗唱が出ない」「上手に取り組めない」「筆圧がない」から、という理由でインプットを止めて仕舞えば「はいそれまでよ」。ひとつも学習は進みません。

 オンラインレッスンも同様です。ドリルと同じく、まずは母親が手を添えて一緒に取り組んであげましょう。オンラインレッスンに毎日少しずつ取り組む。この習慣づけが大切なのです。言語習得のためのインプットには、繰り返しが必要です。そのためには、日々少しずつ取り組むことが大切です。
 「正答率が低い」などと言っては、親子揃ってストレスになるだけです。「正答率などどうでも良い」のです、まだこんなに小さい子が「取り組んでいるだけでスゴイ、えらい!!」と驚き、感心し、褒めることが大切です。まだ取り組めないから、などと言っていては、インプットすら始まらないことは改めて言うまでもないでしょう。

 このように、母親が手厚く「伴走」して「助走」させることが大切です。この母親の「伴走」による「助走」を抜きにして、いきなり「一人でやらせよう」とするとうまくいきません。
 母親の「伴走」と「助走」により、いつしか一人でオンラインレッスンやプリントに取り組めるようになります。そして、日々淡々とインプットを繰り返すことで、頭の中のひとつひとつの情報が少しづつ繋がり、次第にネットワークが完成すると「あ、これわかる!」「これ読める!」となるのです。

 これすなわち、学習のルーティン化の始まり始まり。


まずは読めること、書くこと。きれいに書くことは二の次三の次

まずは読めること、書くこと。きれいに書くことは二の次三の次 学習の型に囚われて、そもそもの目的を見失うこともあるでしょう。重要なのは、覚えることではなく理解すること。そして、新しい概念を次々と理解し続けることです。それが学習のルーティン化ですが、それを阻害するのが、いわゆる「お勉強」です。
 せっかく楽しく学習しているのに、それが一気につまらなくなるのは、細かい点を注意される時です。皆様も身に覚えがあることでしょう。こっちは新しい概念を学ぼうとしているのに、重箱の隅を突くような些細なことを指摘されて「×」をもらう。できたことより、できなかったことを指摘される。先生の教えた道筋通りでなければ、答えが合っていても評価されない。

 子どもたちは学校に行けば、多かれ少なかれそのような目には遭うのです。なので、せめて家庭学習の「パルキッズ」ではそのようなことは避けていただければ幸いです。

 重要なのは、目標を達成すること。そして、今回設定している目標は、「英語をすらすら読めるようになること」です。それ以外のことは余事と一蹴しバッサリ切り捨てましょう。

 ゴールは、読めるようになることです。しかも、今すぐ読めるようになる必要はなく、インプットし続ければいつしか読めるようになります。
 プリント学習をしているならば、字の綺麗さはどうでもよろしい。極論すれば、書き順すらどうでもよろしい。アルファベットはたったの26文字、大文字・小文字合わせても52文字です。書き順などは、あっという間に矯正できます。どうせ中学に入ったら嫌ほど直されるわけです。
 それよりも何よりも、今は「読めること」が大切。そのためのインプットなのですから、いかにストレスなく継続できるのかに注力しましょう。


 さて、年初にあたり、英語教育の総仕上げに関わることをつらつらと書いてまいりました。まずは日々のインプットから子どもたちに培われているバイリンガル力を、「閾値仮説」に準えてクリアさせるために、英語の読解力を身につける。
 そして、一度L2(英語)が閾値を跨いで次の次元へと学習が進めば、「相互依存仮説」のステージへと歩みを進める。このステージで英語力を伸ばすためには、英語力に注力するのではなく、日本語の能力を伸ばせば良いことも冒頭で触れました。
 さらに、成果の程が不明な記憶に頼った勉強ではなく、頭の良い「考える子」に育てるために必要な学習のルーティン化に関しても、英語の仕上げに準えて書いてまいりました。
 さてさて、本年も本誌「パルキッズ通信」や「英語子育て大百科」などを通じて、皆様のお役に立てる情報をご提供していく所存です。「パルキッズ」ともどもご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

付記・・・「放っておくと考えてしまう」そんな性質を持った脳に「考えるための素材」をいかにして日常生活に組み込みつつ与えていくのか、その方法に関しては「地頭力講座」で、また、直接的なインプットの教材には「幼児教室プログラム」をはじめとした幼児教材関連をご参照ください。また、小学1・2年生の漢字のインプット教材の「漢検マスター」などもご用意しております。


【編集後記】

今回の記事をご覧になった方におすすめの記事をご紹介いたします。ぜひ下記の記事も併せてご覧ください。
「生活言語」と「学習言語」
子どもの教育に悩むたった2つの理由
単語は塊かたまりで読め!
絵本の作法
見えるとわかる!色んなことを見える化しよう

【注目書籍】『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)

特集イメージ9 児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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