10万組の親子が実践した幼児・小学生向け「超効率」英語学習教材のパルキッズです。


カートを見る
ログイン
パルキッズCLUB

パルキッズ通信 特集 | , ,

ヘッダー

2025年12月号特集

Vol.333 | パルキッズたちに最適な英検対策

英語の回路ができている子の最後の仕上げ

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-2512/
船津洋『パルキッズたちに最適な英検対策』(株式会社 児童英語研究所、2025年)


「意味と音声」の交換に「文字」を加える

「意味と音声」の交換に「文字」を加える 言語習得の出発点は、文字ではなく「音声」です。

 幼児が日本語(母語)を習得するとき、文字を知らなくても言葉を理解できるように、英語でもまず「音声」と「意味(表象)」を結びつける回路の構築が大切です。これは単なる耳慣らしではなく、音波から音声を引き出し、音声から語を切り出し、語の連続から意味を引き出す認知のシステムです。
 パルキッズたちは、このシステムを毎日のリスニングを通して自然に構築していきます。「としお君」や「ケイ君」たちの会話を聞いたときに、「ジャングルジムから落ちた」「運動会だった」と頭の中に情景や感情、行動が浮かぶようになれば、「英語を理解する回路」が育っているのです。英語の学習初期では、音声を十分に聞き込むこと(もちろん無意識のうちに)で、この「音声 ⇄ 意味」の回路が強化されます。
 念のため付け加えておくと、子どもたちは英文の意味を日本語に置き換えるのではなく、音声をダイレクトに意味(イメージ)として理解するようになります。
 例えば、 “Look at the sky!” は「空を見て!」と直訳的に処理するのではなく、声の抑揚やリズムとともに、空を見上げる動作につながります。こうした音声とイメージの結びつきが、のちの文法理解や読解力の基盤になるのです。
 ところが、そんな彼らもひとつの壁に行き当たります。それは、音としてわかることを文字として認識できないという壁です。耳では理解できているのに、書かれた英語になると、それは「何かの記号」としか認識できません。つまり、音声と文字の間に、まだ“橋”がかかっていない状態です。
 多くの子どもがなかなかクリアできないこの架け橋ですが、その理由は単純明快です。英語の文字と音声の関係が、日本語の場合ほど単純ではないからです。
 日本語では、文字(かな)と音がほぼ一対一に対応しています。例えば、「か」は常に /ka/、「し」は常に /shi/ です。一方、英語では、音と綴りが一対一ではなく、複数の関係をもちます。例えば、同じ ‘o’ という文字が、/ʌ/ や /ɑ/、/oʊ/ など、異なる音で読まれます。また、反対にひとつの音声 /oʊ/ は ‘o, oa, ou, ow’ など、複数の綴りで表されます。従って、音声から文字への解読(encode)、文字から音声への符号化(decode)を、勘ではなく体系的に身につけることが重要になります。
 このプロセスをクリアしないと、せっかく英語を理解する回路を身につけたパルキッズたちも、英語はいつまでも「聞けるけれど読めない」「話せるけれど書けない」という状態のままです。逆に言えば、音と文字の対応関係を身につけることができれば、子どもたちの英語は、“音の世界”から“文字の世界”へと拡張されていくのです。


decodeとencodeのトレーニング:文字を「音声に解読する・符号化する」

decodeとencodeのトレーニング:文字を「音声に解読する・符号化する」 この秋、発売となった「Spells to Sounds(スペルズ トゥ サウンズ)」は、文字のdecodeと音声のencodeの体系を身につけさせることに特化した教材です。
  decode(文字→音声) の技術習得は、文字の並びを見て、どのような音が生まれるかを予測する練習です。このプロセスは、いわば「文字を音に“解読”する作業」と言えます。
 これができるようになると、リーディングが一気に変わります。読むことが“音声を再生する行為”になるため、子どもは黙読していても自然に頭の中で英語の音が流れるようになります。つまり、リーディングが心の中でのリスニングになるのです。
 これは日本語で本を読むときに、頭の中で声が再生されるのと同じ状態です。もちろん、これは幼児や小学生に限らず、中学生や大人でも、英語を身につけたい人たちすべてに取り組んでもらいたいトレーニングです。特に、すでに音声から英語を認識できるパルキッズたちにとっては、眼の前の英文が音声に変換される技術の獲得ですから、一度身につけてしまったあとは、英文読解とは、文字を読んでいるようでいて、実際には音声で理解していることと同じなのです。
 「Spells to Sounds(スペルズ トゥ サウンズ)」では同時に encode(音声→文字の符号化) の技術も身につけられます。
 自分が聞いた音、あるいは自分の中で組み立てた英語の音を、正しい綴りに符号化する能力を育てることは、言語習得において非常に大切です。なぜなら、発音とスペリングの対応を理解していないと、正しく聞き取れても正しく書けないからです。
 スペルミスは、英検等の試験では減点対象となります。しかし、音声と文字の関係を理解し、正書法への符号化の力がつくと、ライティングでのスペルミスが大幅に減ります。さらにスピーキングでも発音が安定し、intelligibility(明瞭性)が高まります。英語を「書けるようになること」と「伝わるように話せること」は、じつは同じ回路の中で行われているのです。


Graphonics(グラフォニクス)とは

Graphonics(グラフォニクス)とはSpells to Sounds(スペルズ トゥ サウンズ)」が基づいているのは、Graphonics : grapheme-phoneme interface(正書法・音韻インターフェース)の考え方です。
 フォニックスが「文字と音の規則」を教えるのに対して、Graphonicsは「音節の中での音と綴りのパターン」の構造理解を重視します。  英語のアルファベットは表音文字と呼ばれますが、実際には例外だらけです。私たちは、最早慣れすぎていて疑問に思うことすらありませんが、一部の語は、もはや表音文字とはいえない暗号のようになっています。
 例えば、’are, autumn, come, do, does, have, friend, great, hour, island, key, listen, one, people, said, some, two, you, food, foot, blood…’ など、フォニックスやライミングの規則では到底処理ができません。そこで、サイトワーズ(塊で読めるようになる必要がある語)を丸暗記する学習法も一般に行われています。しかし、これらの難読語が初学者向けの語に多いということが、パルキッズたちの読みの力の涵養の足かせになっているのです。
 このように、英語の読み方には例外が多いのですが、実は統計的に規則性を持つ音声と綴りの関係が数多くあります。
 例えば、“igh” はほとんどの単語で /aɪ/ と読まれる、“tion” は /ʃən/ になる、“ea” は前後の文脈で /iː/ または /ɛ/ になる…などです。余談ですが、こちらはフランス語やラテン語由来のものが多いのが特徴です。また、上に挙げた ‘come, some’ なども、ひとつのパターンになっています。
 一般に、子どもたちはこうしたパターンを体験的に蓄積し、次第に「英語らしい読み方」「自然な音の推測」を身につけますが、Graphonics の学習では、例外を例外のまま暗記するのではなく、綴りの背後にあるパターンを習得させます。
 解読と符号化を繰り返すことで、子どもたちは英語を音と文字の両側から再構築するようになります。文字を見ると音が浮かび、音を聞くと文字が浮かぶ。この状態になると、英語の4技能は別々の能力ではなく、ひとつの能力(文字↔音声)の別の側面となります。具体的には、以下の状態になるのです。
リーディングでは、文字を音として再生しながら理解する。
ライティングでは、頭の中の音声を正しい文字で表現する。
スピーキングでは、文字的な意識(スペリングや構文)をもって発音が安定する。
リスニングでは、音声が綴りとして視覚化される。これはそもそも「パルキッズ」で身につけている能力。
 正しく読めることは、単に正しく読めるだけではありません。正しく読むことはすなわち、「読む」「書く」「話す」「聞く」の4技能を統合するプロセスなのです。


言文一致の英語

言文一致の英語 英語が言文一致の言語であることは、教育的にも大きな利点です。なぜなら、スピーキングの力がライティングに直結するからです。話せることは書ける、読めることは聞ける、というこの関係が成立するのは、英語が音声と文字を同一の文法構造で扱う言文一致の言語だからです。
 日本語はかつて、言文一致の言語ではありませんでした。古文にあるような、あるいは漢文にあるような書き方と読み方は、日常の会話とは異なっていました。世界にも、アラビア語のように、言文不一致の言語はあります。
 しかし、ありがたいことに英語は言文一致の言語です。英語学習において、この言文一致性を意識することで、学習効率が劇的に上がります。つまり、リスニングやスピーキングのトレーニングは、同時にライティングやリーディングの訓練にもなるのです。従って、4技能を身につける練習は不要で、2技能に集中すれば良くなるのです。言文一致の英語では、4技能を別々に伸ばすよりも、共通する回路、つまり、「聞いたり読んだりして理解する回路」と、「話したり書いたりして思考を外在化させる回路」の2つを意識して鍛える方が効率的です。
 英語教育では長年、「読む・書く・聞く・話す」という4技能をそれぞれ独立した能力として扱ってきました。しかし、実際の言語運用の中でこれらの技能が別々に働いていることはありません。私たちは、聞きながら話し、読みながら考え、書きながら自分の言葉を組み立てています。  つまり、4技能とは独立した4本の柱ではなく、ひとつの思考回路の中で連動する働きなのです。このような視点に立つと、英語学習は驚くほどシンプルになります。
 「4技能をすべて伸ばす」のではなく、理解(reception)と表現(production)という2つの心理的回路を整えることが本質だとわかります。この2つの回路を支えるメカニズムを明確にすることで、英語の学び方は大きく変わります。

 そもそも、なぜ英語では4技能を2技能に還元できるのでしょうか。
 日本語は文語(書き言葉)と口語(話し言葉)の体系が分かれた、二重構造の言語と言われますし、すでに述べたように、かつての日本語は言文一致ではありませんでした。しかし、明治期からの先人たちの苦労によって、言文一致はほぼ達成されています。もちろん、「行くよ」「征くのである」など文法や語彙の違いはありますが、小学生の日記も口語で書かれますし、論文もそれをそのまま読み上げてもおかしいことはありません。これらの差は、ほぼ「レジスター」と呼ばれるスタイルや語用に関わるものです。
 もちろん、英語にも正式な場と、砕けた場では語彙も異なりますし、レジスターも異なります。しかし、ニュース原稿でも “He said that…” や “It’s likely that…” のように、話し言葉の文体がそのまま書き言葉に使われますので、英語は日本語以上にしっかりとした言文一致の言語と言えます。
 この言文一致性こそが、4技能を分けて学ぶ必要がない最大の理由です。話すことと書くことは、表現手段(mode)が異なるだけで、使用している文法構造や語彙の基盤は同じです。つまり、英語の「口」と「手」はgrapheme-phoneme interface(正書法・音韻インターフェース)を通しているかいないかだけの差で、同じ頭脳で動いているのです。


正書法インターフェースと概念系インターフェース

正書法インターフェースと概念系インターフェース 我々は、言語の回路を意味(表象)と音韻の交換を中心に、音韻と文字のインターフェース、並びに概念と意味の間の思考インターフェースとして以下のようにモデル化しています。

概念 ⇄ 意味 ⇄ 音声 ⇄ 文字

 以下、順に説明していくことにしましょう。

概念 ⇄ 意味 ⇄(「パルキッズ」系)⇄ 音韻 ⇄ 文字

 まず、満足な言語使用のベースとなるのが「意味 ⇄ 音韻」インターフェースです。耳から入った連続音声を語に分節して、さらには背後にある文法構造を参照して音声に載せられたメッセージを心の中に意味として内在化させるプロセスと、心内表象を語と文法構造に落とし込んで、音声として外在化させるプロセスで成り立っています。
 これらは生後間もなく発達しはじめ、連続音声の分節や具体的な日常表現の理解などの原始的な回路は、3歳くらいには確立されます。その後、成長とともに語彙は豊かになりますし、より複雑で抽象的な事柄へとレベルが上っていきますが、基本的には3歳くらいの時点で身につけた回路をベースに、我々は言語を使用しています。
 意味とは、心の中で構築する表象(イメージ)のことです。例えば、「アイスクリームを食べたい」「冬より夏が好き」「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」というのは、それぞれひとつの表象です。音韻情報としてはひとつの表現ですが、これを受け取ると、人は各自の背景記憶(経験による記憶)に参照して、それぞれが異なるイメージを心の中に浮かべます。
 このレベルの処理は、直感的に行われます。「昨日の晩ご飯、なに食べた?」という問いに対して、「寿司」を思い浮かべる人もいるでしょうし「ハンバーグ」を思い浮かべる人もいるでしょう。このように極めて原始レベルの言語に対する反応で、多くの場合、思考のプロセスを経ずにこの処理は行われます。

 「パルキッズ」は、この「意味 ⇄ 音韻」インターフェースを、英語において構築するための教材です。4技能風に言い換えれば、リスニングとスピーキングの技術に相当します。 概念 ⇄ 意味 ⇄ 音韻 ⇄(文字教材系)⇄ 文字  次に発達するのが「音韻 ⇄ 文字」インターフェースです。日本語(母語)では、幼稚園から小学低学年で、まずは文字の解読の学習が始まります。特に意図しなくても、子どもたちは文字に関心を持ちはじめ、少しずつ読めるようになります。最近では、熱心な親御さんが増えて、せっせと絵本やプリントを与えるなどして、この能力を早期に獲得する子が増えているような肌感覚がありますが、これは大変結構なことでしょう。
 英語の文字体系は、音素を表す「アルファベット」ですが、日本語の文字体系は音節を表す syllabary と呼ばれる音節文字の「かな」です。すでに述べたように、アルファベットとは異なり、一対一の対応なので、学習は楽に進みます。ただ、音節文字なのでアルファベットの倍以上に数がある点と、ひらがな・カタカナの2系統ある点が、学習を少し困難にしています。さらに、そののちには、表語文字としての漢字をマスターしなければなりません。しかし、漢字をマスターすることで、かなのみの記述よりも格段に「意味 ⇄ 音韻」インターフェースのやり取りが楽になるので、ありがたい体系です。日本語においては「漢検マスター」がこの部分のトレーニングとなります。
 すでに述べたように、ここがパルキッズたちに学習の壁として立ちはだかりますが、英語においての「意味 ⇄ 音韻」インターフェースの構築は「Spells to Sounds(スペルズ トゥ サウンズ)」をはじめ、ロングセラー教材の「アイキャンリード」「アイラブリーディング」「フォニックスドリル」「ライミングドリル」「サイトワーズドリル」などが受け持ちます。

概念 ⇄(幼児/国語プログラム・地頭系)⇄ 意味 ⇄ 音韻 ⇄ 文字

 最後に、「概念 ⇄ 意味」インターフェースです。 前出の「意味 ⇄ 音韻」インターフェースは、音声から心の中に意味をイメージするという、直感的な言語使用が中心でした。しかし、年齢が高まるとともに“かなりの程度の差をもって”抽象的な思考をするようになってきます。
 小学校低学年生の日記を読んでみると「今日は朝6時に起きました。ラジオ体操に行きました。みんなとプールで遊びました。楽しかったです。」程度の記述が少なくないでしょう。これは普通のことで、年齢とともに語彙や表現は豊かになるかもしれませんが、単純な日記であることには変わりません。これを、レポートレベル、論文レベルに概念化、あるいは抽象化していくのが、高機能の「概念 ⇄ 意味」インターフェースです。
 この「概念 ⇄ 意味」インターフェースが、いわゆる「頭の良い子」と「そうでない子」を隔てていると言っても過言ではありません。『「地頭力」を鍛える子育て』(大和出版)などで考え方を理解していただき、さらに「地頭力講座」や「幼児教室プログラム」「国語教室プログラム」を活用して積極的に育てれば、抽象的な思考能力はどんどん高まります。逆に、言語刺激を与えず放置すれば、なかなか伸びることはありません。
 この点に関しては、筆者が提唱する「地頭力」と深く関わってくるので、引き続き詳しく説明することにします。


思考の整理を司る「概念 ⇄ 意味」インターフェース

思考の整理を司る「概念 ⇄ 意味」インターフェース まずは、英検を例に「概念 ⇄ 意味」インターフェースの役割を見ていくことにしましょう。英検は、単なる語彙や文法知識の確認ではなく、心内表象を英語で表現する力を測るテストの側面が、特に3級以降、級を追うごとに、かなりの割合を占めるようになります。ライティングやスピーキングの問題は、子どもたちが自分の頭の中で「考えを構造化する」プロセスを評価されます。
 これが、日本語話者にとっては、とても苦手な技能なのです。我々には罪はありません。かつては子どもだった我々含めて、日本の子どもたちは、このような「考えを構造化する」プロセスを鍛えるトレーニングを受ける機会がほとんどないのです。
 このプロセスを私たちは「再帰的概念化」と呼んでいます。「再帰的概念化」とは、「ひとつの事柄をとある視点から概念化し別の意味を付ける」抽象化・意味づけの作業を、様々な視点から繰り返し行い、その事柄を構成するいくつかの素元的な要素に還元させるという考え方です。

 例えば、「中学生のスマートフォン使用」について考えてみましょう。それはどんな子だってスマホは使いたいでしょう。だからといって、無条件に与えることには抵抗のある方もいるでしょう。そこで、子どものスマホの使用について様々に思いを巡らせます。「一般的には何歳から使わせるのだろう」「我が子が通う学校での学生の使用の割合は」「そもそも学校に持っていってよいのか」「校内での使用が認めらているのか」「金銭的コストは」「トラブルに巻き込まれる危険性は」「使用制限を設けるべきか」「スマホ中毒になるのでは」「1日の使用時間は制限すべきか」「オンラインゲームの利用はありかなしか」などなど、様々な思考を巡らせると思います。
 その結果、どうなるでしょう。子どもにせがまれ、あるいは「みんな使っているから持たせないと可哀想」とスマホを持たせる。そして、いつの間にか常にスマホを見ている生活になり、ろくに勉強もしなくなる。イライラして叱りつけるが、一向に改善しない。そして、ついに親の根気も果てて、子どもの好きにさせるようになる…?
 さて、みなさんならどうしますか。

 ここで、子どもを巻き込んで、「再帰的概念化」を行います。まずは、様々な可能性や問題点をリストにします。そもそも中学生にスマホが必要なのかどうかを判断しなくてはいけません。子どもたちは成長すれば、いずれはスマホのお世話になることでしょう。あまり禁欲的に制限していると、いざ自由になったときに歯止めが効かなくなる可能性もあります。いずれは、うまく付き合わなくてはいけないツールですので、子どもとスマホの関係を、どのように親が構築するのかが重要となります。
 このようなケースでは、まずスマホを持つことの利点と欠点あたりからリストにするとよいでしょう。利点なら「連絡が取りやすい」「調べ物に役立つ」「便利なアプリがある」などでしょうか。逆に欠点は「中毒になる可能性」「トラブルに巻き込まれる可能性」「コストの問題」等が挙げられるでしょう。
 また、使用すべき機能についても「連絡機能やブラウザに限定するか」「娯楽はどうするか」「ソーシャルメディアは制限するか」など検討する必要が出てくるでしょう。
 別の角度から見ると、「何に使うのか」「いつ使うのか」「どのように使うのか」という視点も生まれます。データ通信は「無制限」「制限付き」「Wi-Fiのみ」など、どうするのかも考えなくてはいけません。さらに、全体的に「使用制限を設けるか否か」「規則が守られなかった場合の罰則を設けるか否か」なども考慮する必要があります。

 これらを構造化するのが「再帰的概念化」となります。ちなみに我が家では、中学生になると同時に、ひとつの制限の下で与えていました。これに関しては、ここで種明かしをするのは控えておくことにします。

 さて、皆様なら、これら様々な変数をどのように構造化しますか。


人は日常的に再帰的概念化を行っている

人は日常的に再帰的概念化を行っている「再帰的概念化」とは、別の言い方をすれば、自分の中の概念をいったん外に出し、それをもう一度内側に取り込んで考え直すことです。例えば、あるトピックについて「自分の意見」を、英語で書こうとする場面を想像してみてください。
 最初は日本語でおおまかに考えたことを、英語の構文や語彙に当てはめようとします。すると、「どの単語を使えば正確に伝わるか」「文法的にどう表現すれば自然か」といった問題が次々に浮かびます。この過程で、私たちは自分の考えを再び内省的に見直しています。
 これは伝える相手によっても異なります。同じ内容でも、仲間と話すときと、子どもと話すときでは、伝え方も変わるはずです。例えば、子どもに話す場合には、「そもそも子どもに伝えるべき内容か否かの判断」「子どもの理解力の推察」、そして話しながら「理解しているかどうかの確認」など様々な思考を巡らせています。そして、それらはパターン化していきます。つまり、友だちと話すとき、子どもと話すとき、上司と話すときなどの「レジスター」を自ら作り上げていくのです。

 また、表面的な事象を見て、その背後に潜む原因を探ることも、この再帰的概念化のプロセスを経ます。日常的なトラブルにおいても、表面的な事象の裏には、その原因が潜んでいます。トラブルを解決するに当たって、表面的な事象に対処しているだけでは、規則ばかりが増えていって、結局どうにもならない、ということも少なくありません。
 働き方改革しかり、外国人移民問題しかり、社会保障や税金の話もしかり、環境負荷問題もしかりです。眼の前の事象を解決すべく知恵を巡らせるような泥縄式の対応では、問題は一向に解決せず、複雑化するのみです。ある問題が起きているときに、単純に何かを禁止するのではなく、そもそもなぜそのような問題が起きるのかに目を向けて、その原因を突き止める。そのような思考も、再帰的概念化のプロセスです。
 このような「思考を言語化し、言語化された思考を再構築する」認知的な往復運動を我々は絶えず行っています。その回路が、「概念 ⇄ 意味」インターフェースであり、一言で言えば「思考の広がりと深さ」により、繰り返しますが、「ひとつの事柄をとある視点から概念化し別の意味を付ける」抽象化・意味づけの作業を、様々な視点から繰り返し行い、その事柄を構成するいくつかの素元的な要素に還元させる作業なのです。

 少しややこしい話になりましたが、これが英検のライティングや面接に必要な能力です。英検では「好きな季節の問題」「趣味の問題」「好きな教科の問題」などの初級の設問から、「制服問題」「校則問題」「部活問題」「宿題問題」など中級の設問、さらには、上で述べたような「社会保障問題」「移民問題」などの様々な設問が与えられ、それらに即座に答える能力が求められます。
 その際、思いつくままに意見を述べるのではなく、それらの問題を様々な切り口から検討し、問題のいくつかの根源的な要因に還元する能力、そして、それを整然と陳述する能力が求められるのです。

 そして、繰り返しますが、この再帰的概念化の能力は、意識的に鍛えられることがなければ、向上することはありません。トレーニングをしなければ、ただ単に思いつきで自分の頭に浮かぶ表象をつらつら述べるだけに留まることになります。


「英検オンラインレッスン」の設計

「英検オンラインレッスン」の設計 パルキッズの「英検オンラインレッスン」(3級以上)に付属の「AIライティング対策」「ライティング対策プリント」は、この再帰的概念化を実際にトレーニングするように設計されています。
 与えられた「お題」について、代表的な回答例が与えられています。学習者は、まずは提示されている英文を丸暗記するやり方でも良いでしょうし、もちろん自分で考えることも実践することもできます。提示されている例から、さらに再帰的概念化を行い、自らの考えを深化させることもできます。
 また、学習者の回答をAIが評価するシステムになっているので、即座にポイントの選択、絞り込み、全体の構造や文法的なフィードバックが得られます。
 また、過去に出題された問題からも分かるように、英検で取り上げられる「お題」はある程度限定的です。「英検オンラインレッスン」では、それらを網羅的に取り上げているので、事前にAI先生とブレーンストーミングができるという設計です。
 また、もうひとつユニークな点は、「〇〇について、あなたはどう思うか」という設問に対して、賛成と反対、両方の回答例が用意されている点です。ひとつの事象は、視点によっていくつもの見方ができます。まるでディベートのような体験をできるようにデザインされているのです。

 最後になりますが、このたびのバージョンアップにより「英検オンラインレッスン」には、3級・準2級・2級を対象に「AI面接レッスン」が追加されます。
 パルキッズたちは、4年間のかけ流しの取り組みを終え「パルキッズジュニア」まで進んでいれば、すでに「意味 ⇄ 音声」インターフェースを身につけています。英検5級から3級に向けては「Spells to Sounds(スペルズ トゥ サウンズ)」などを活用した「音声 ⇄ 文字」インターフェースを身につけるトレーニングと「英検オンラインレッスン」に取り組まれると良いでしょう。あるいはすでに4、3級を取得済みであれば、「AI面接レッスン」が加わった「英検オンラインレッスン」と合わせて、親御さんのための「地頭力講座」を活用していただき、お子様の「再帰的概念化」能力のトレーニングにぜひお役立てください。


【注目書籍】『地頭力を鍛える子育て』(大和出版)

特集イメージ9 子どもが「読めるのに、わからない」状態を家庭から終わらせる——。
言語学者・船津洋が提唱する“地頭力”とは、認知×非認知×メタ認知の三位一体の力。本書では、日常の会話や体験を通じて「理解・思考・判断」を育む具体的な方法を提示。学力だけでなく、生きる力を伸ばす実践書です。


アマゾンで本を購入する


次の記事「教育コンテンツとエンタメを正しく仕分けし、成果につなげる家庭の学び設計」


まずは資料請求
今なら3つの特典つき

プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

この記事をシェアする

関連記事