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2021年1月号特集

Vol.274 | 『パルキッズ』インプット·メソドの徹底解説

超効率な英語習得法の仕組み

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-2101/
船津洋『『パルキッズ』インプット·メソドの徹底解説』(株式会社 児童英語研究所、2021年)


1.英語を身につける人とそうでない人の違い

私たちの失敗が子どもたちに引き継がれる現状

特集イメージ1 私も含め、今の親の世代は中学校から文法·訳読方式のいわゆる「学校英語」で、少なくとも中·高の6年間、大学へ進学すれば8年間は英語を勉強してきました。
 「学校英語」が「使える英語」に思うように結びつかないことへの不満は今に始まったことではなく、50年以上前から叫ばれ続けています(「英語が出来ないただひとつの理由」2018年3月号)。そして、家庭学習用教材(今日のサプリ)や英会話(昨今ではオンラインを含む)への期待は低くなく、多くの人たちがそれらの「学校英語」(文法·訳読式)以外の英語学習法を試してきました。
 当時から、それら「学校英語」以外の学習法でも、期待するほどの成果が上がらないことは暗黙の了解(「小学校英語。得する人と損する人」2017年6月号)で、英語をどうしても身につけたい(必要のある)人は「留学」という最終手段を講じて英語の習得へと乗り出していきました。そして、留学した多くの人たちは、私を含め英語を身につけて帰ってくることになりました(「だれにも聞けないお金の話」2012年10月号)。

 今日ではかつての「中学からの英語」は過去の遺物です。小学校高学年を中心に、あるいは早ければ小学1年生からALTや国語の教師が英語を教える時代となってしばらく経ちます。それどころか、今までは評価対象でなかった「小学校英語」も、今後は評価対象の教科となります(「外国語習得に成功するたったひとつの方法」2019年2月号)。
 ところが、小学校からの英語をすべての子どもたちが体験するようになってから20年ほど経過しますが、依然として子どもたちの英語力が高まったという話をあまり聞きません(「四技能よりも二技能」2017年11月号)。
 常識の範囲で考えても分かることですが、文法·訳読式にいくら英会話やCLILを代表格とする、様々な学習法を加えても成果が上がらなかったことは、私たち親の世代ですでに証明済みなのです。結局、留学しか手がないのは、今も昔も変わりません(「“CLIL”って何?効果あるの?」2020年5月号)。
 
 しかし、小学校での英語必修化によって生じた全く新しい事態があります。小学校で評価対象となるならば、中学受験にも受験科目としての「英語」が課されることとなることは火を見るより明らかなのです(「中学受験に英語の時代到来!」2018年2月号 )。
 そんな中、小学校から教科化される英語や中学受験の英語科目に直面する子どもたち、特にその親たちの心配は増す一方です(「小学生と英語教育」2010年6月号)。その親の心配は、民間の英語熱に現れています。十年ほど前は、小学生人口の10%程度だった小学生の英検受験者数が、今日では25%にも上ることが、子どもと英語の関係に悩む親心の現れでしょう(「気づかずにどんどん広がる教育格差」2012年11月号)。


超効率で英語を身につける子どもたち

特集イメージ2 繰り返しになりますが、英語を身につける最も確実な方法は留学です。私自身、高校生の時に交換留学で1年間アメリカに滞在して英語を身につけました。より正確に言えば、渡米してから4ヶ月ほど経ったときから、英語を日本語に訳すことなく直観的に理解できるようになりました(「留学生に起きた魔法を家庭で起こす」2020年1月号)。
 このように、英語を聞き取って日本語に訳すことなく理解できることを指して、便宜的に「英語耳」や「英語脳」が育つという表現を使っていますが、留学して数ヶ月で、そのような「耳」や「脳」を習得したことになります。その後は習得した「英語耳」と「英語脳」を使って、効率よく学習が進み、友人も増え、日常生活もさらに充実したものになっていきました。

 留学と似たような効果を、日本にいながらにしてもたらす学習法も少なからず存在します。外国人の子女向けのインターナショナルスクールがその代表格です。しかし、様々なコスト面やデメリットを考えると、「子どもに日本での高等教育は受けさせず、英語圏で大学まで進ませること」を前提として考えていない、大半の日本のご家庭にピッタリの学習法とは言い切れないでしょう(「英語子育てQ&A」2019年10月号ハワイアンジャーナル )。

 しかし、留学もせずに、さらにインターナショナルスクールに通うことなく、英語を身につけてしまう子もたくさんいるのです。小·中学生で英検1級や準1級に合格する子たちは、決して珍しい存在ではありません。

 そんな子たちに共通しているのは「インプット」という側面です。子どもたちは大量の英語のインプットをうけると、自然と脳が英語を分析して、脳内に英語の文法と語彙を身につけてしまい、まるでネイティブのように英語を操ることができるようになるのです(「インプット方式で『 “自立した” 英語力』の習得を」2020年12月号)。
 この言語の習得能力に関して、現代の言語学ではヒトがその進化の段階で突然変異で「ことば」を獲得したと考えられています。つまりヒトとして生まれたからには悉く、遺伝子として生活環境に存在することばを身につける能力を持っていると考えられているのです(「コトバのチカラ」2018年7月号)。

 学校英語をはじめとして、近年の英語教育は、本来あるべき英語教育とは逆の方向に進んでいます。次のセクションで述べますが、外国語習得の本質はアウトプットではなくインプットなのです。しかし、日本の英語教育の現場は官民揃ってアウトプットに舵を切っています(「“CLIL”って何?効果あるの?」2020年5月号)。  留学生が英語を身につけたのは、英語を「話した」からではありません。その生活環境の中で、たくさんの英語を「聞き」そして「読む」というインプットによって、英語を身につけたのです。また、留学することなく、あるいはインターナショナルスクールに通うことなく英語を身につけることのできた少数の人たちにも共通しているのは、アウトプットよりも多くのインプットの存在なのです。


2.英語のデキる人は必ずやっていた「超効率」なインプット・メソドとは?

アウトプットは上達に、インプットは習得に不可欠

特集イメージ4 まず基本的なことから。言語の習得に不可欠なのは、アウトプットではなくインプットです。
 では、アウトプットには意味がないのか?と言えば、そうではありません。”言語の習得” にはインプットが不可欠ですが、習得した “言語の上達” のためにはアウトプットを欠かすことはできません。しかし、言語の基本的な回路すら習得していない段階でのアウトプットは、非効率で、成果の程も見通せないのです。
 このように考えるとどうでしょうか。アウトプットとは、歌の練習のようなものです。正しい発音で、正しいメロディーで、しかも表現を付け加えながら唄うことは、英語を話すことにそのまま置き換えられます。つまり、正確な発音やパラ言語情報を発信するための表現力を身につけるには、アウトプットが必要なのです(「『対話』はもう時代遅れ?」2015年12月号)。
 英語でドラマをする、スピーチをする、あるいは会話術を上達させるためには、その内容もさることながら、滑舌の良さや表現力が求められます。それらの練習には、アウトプットが必要であることは言うまでもありません。
 しかし、それ以前にまずは英語を英語のまま理解できる、あるいは英文を日本語に訳すことなくスラスラ読める、そんな能力があることが前提と考えるのは、いかにも常識的だと思います(「英語習得におけるアウトプットの果たす役割」2020年10月号 )。

 そのような正確な発音(「ことばを身につけるのは複雑で簡単?!」2016年8月号)や、表現力などのパラ言語以上に、そもそもの文章力やその前提となる思考力がなければ、それは単なる役者に過ぎません。役を演じることも大切ですが、それ以前に、本人が思考を元にした内容を持っていることが大切であることは言うまでもないでしょう(「パルキッズのための英検·作文必勝法!」2018年9月号)。
 そして、そのような思考回路を英語で育てるためには、大量のインプットに拠る以外に方法がないことも直観でお分かりいただけると思います。


最新の言語学でも「インプット」重視が常識的

特集イメージ5 かつての言語学は、言語を観察してその規則を探ることをテーマとしていました。ここから、学校の英語文法が生まれたわけです。
 しかし、前世紀の半ば頃から様子が変わってきています。文法のルールを探すことよりも、どのように子どもが言語を身につけるのか?世界中の言語に共通する、ヒトが生得的に持っている「言語習得プログラム」とはどのようなものなのか?そのようなところの解明へと関心が移ってきました。
 もちろん、そんな中で、外国語習得に関する研究も盛んに行われています。例えば、アメリカの言語学者・クラッシェン(Stephen Krashen,1941~)の「獲得と学習モデル」ではまず、外国語の「学習」と「獲得」を別の概念として分けて考えています。そして、「いくら外国語を学習しても、その先にその外国語の獲得は無い」と仮定しています。加えて「インプット」のみが外国語の獲得を促すことができるとしています(「英語を『学習』する?『獲得』する?」2016年1月号)。

 また、外国語習得における「インプット」の役割の重要性についての別の研究では、良質かつ大量の外国語の環境が、ネイティブ並みの外国語力習得のベースになっていることが示唆されています。学習開始年齢よりも、インプットの質と量が外国語習得のレベルを左右するというわけです(「英語が身に付く人とそうでない人の決定的な違い」2018年8月号)。


語学 vs. 言語としての英語

特集イメージ6 『デジタル大辞林』に拠れば、”語学”とは「言語を対象とする学問」や「外国語の学習」のことで、他方の”言語”は「音声などにより、意志·感情などを表現·伝達したり、理解するための約束·規則」とあります。
 日本人にとっての英語は “語学” の対象でした。つまり学問の対象で、外からその言語を眺めて勉強するわけです。しかし”言語” の方はというと、コミュニケーションや思考のツールで、日本人にとっての日本語のように、それを勉強するという対象ではなく、日常的に使用することばのことです。
 もちろん、『パルキッズ』の学習法が目指しているのは「言語」としての英語の習得であって、「語学」としての英語の勉強ではありません。
 
 学校英語に慣れた私たちは、”ABC”から英語を学ぶものだと疑いもしませんが、ネイティブにとってはそうではありません。ネイティブの子どもたちは、アルファベットを知るずいぶん前から、言語としての英語を身につけてしまっているのです。日本人の子どもたちも、”あいうえお” を知る前に日本語を聞いたり話せたり、あるいは日本語で考えたりしています。これが「言語」です(「子どもはどうしてコトバを身につける?」2017年1月号)。
 子どもたちの生活環境に存在する一定量の日本語がインプットとなって、子どもたちは「言語」として日本語の回路を身につけているわけです。外国人を悩ませる日本語の動詞の変化や、助詞の使い分けすら、わずか3歳の子でも間違わずに使いこなすわけです(「パルキッズお悩み解決夏休みスペシャル」2020年8月号)。
 一方の「語学」は、”ABC” から始まります。そして、現在形を学びます。ちなみに、アメリカ人の子どもは、”go”よりも先に”gone” を理解します。また、学校の英語文法とは英語ネイティブの外国人にとっては奇妙なもので、”I my me mine” などは、彼らには呪文かと響くようです(「英単語の和訳を覚えても英語は身につかない!」2010年1月号)。  学校文法が悪いわけではありませんし、後述しますが、小学校高学年以上になれば、ある程度の文法知識を持って日本語に訳しながら英語を学習するのは致し方ないことです。しかし、繰り返しますが、いくら学校英語を勉強しても、その先に使える英語の獲得はないのですから、なんとも残酷な話ではありませんか。


国語力と日本語力

特集イメージ6 前節で述べた「語学」と「言語」の関係は、「国語」と「日本語」と置き換えることができます。普段、日本語を使いこなしている日本人も、「国語」という教科となると、途端に成績の優劣が生じます。これは「国語」が「語学」であることと関係しています。「語学」としての「日本語」は、日本人ですら正しく理解したりテストで良い成績を取ったりするのに苦労するわけです。繰り返しますが、「国語」が苦手な日本人でも「日本語」は使いこなせます(「迷ったら日本語のことを考えよう」2016年5月号パルキッズ塾)。
 そして、『パルキッズ』が目指しているのは、その「誰でも使いこなせている日本語」のように「英語」を身につけさせることなのです。
 
 留学生や帰国子女は、押し並べて英語を身につけて帰ってきます。彼らが身につける英語力とは、日本人が学校英語で勉強している英語とは異質のものです。  留学生たちは、最初は学校英語よろしく、耳にしたり目にしたりした英語を日本語に訳して理解していますが、半年も経つ頃には、もはや英語を日本語に訳すことなく、英語のまま理解できるようになります。「理解する」という意思すら必要なく、我々が耳や目にする日本語を即座にイメージとして理解できているのと同様に、英語も即座に、しかも自動的にイメージ化されるのです(「英語にかかるコストと成果のお話 ご存知ですか?」2012年12月号)。

 留学生や帰国子女たちのように、日本語を介さずに英語を理解できる能力のことを「自立した英語力」と呼んでいます。このような英語力が身につけば、聞き耳を立てなくても、隣に座っている外国人たちの会話が耳に入ってくる、あるいは、海外のニュースをそれとなく聞いていても、自分の関心のある話題にのみ集中できるようになるわけです。私たちが日常的に使っている日本語と同じです。
 他方の学校英語で身につく能力は「日本語に依存した英語力」と呼べます。いちいち日本語に訳すわけですし、そもそも聞き取れないわけですから、耳から聞いただけでは理解の糸口すら掴めません(「インプット方式で『“自立した” 英語力』の習得を」2020年12月号)。
 
 このように、留学生や帰国子女たちが獲得する英語力に備わっているのは、学校英語で教わるところの「文法·語彙」ではなく、「シンタクス·レキシコン」と呼ばれるものです。「シンタクス」は「統語法」、「レキシコン」は「心内辞書」と呼ばれ、前者は語の並びの規則のことで、後者は語の意味や活用·変化などの在庫のことです(「スピーチチェーンとは」2018年10月号)。
 これら無意識の言語知識は、インプットによって自然の頭の中に作り上げられます。もちろん、インプットによる言語の回路(シンタクス·レキシコン)の習得が、幼児期に限ったことで無いことは、留学生や帰国子女のケースを見れば明らかでしょう。
 
 ところで、ひとつ興味深いことがあります。なんと、『パルキッズ』で育った子どもたちが、ネイティブより優れたリスニング力を発揮したのです。
 一部の音を入れ替えた英単語を作成し、その音声を被験者に聞かせ、その差異を感知できるかどうかを測定する実験をした結果、留学未経験者よりは留学生の方が、留学生よりは帰国子女の方が、さらに当然ながら、帰国子女よりは英語ネイティブの方が高いスコアを上げました。しかし、『パルキッズ』の卒業生たちは、そのネイティブのスコアすら上回ってしまったのです(「パルキッズで育つ子の英語力の本当のところ」2019年1月号)。
 想像するに、これは彼らが英語に加えて日本語の音声の知識も豊富に持っていることから、英語の音声には詳しくとも日本語の音声に関する知識の乏しい外国人被験者のスコアを上回ったのかも知れません。

 それでは、以降、どのようにしてインプットから英語力が身についていくのかを概観することにします。


3.母語のように育っていく英語力: 3つのステージ

英語を聞き取れるようになる

特集イメージ6 私たちはそれを「リズム回路」と呼んでいますが、英語を聞き取るためには連続音声をセグメント毎に分節する能力が必要となります。
 はじめて耳にする外国語は、その外国語を知らない人にとっては、どこからどこまでが単語であるのかも分からないはずです。そして、単語の手がかりが掴めないのですから、意味が分かるわけはありません。
 英語もしかり。英語は日本語とは音素と音節の構造が異なります。さらに言えば、音韻も異なります。細かい説明は避けますが、ざっと言えば音素とは子音と母音のことです。日本語には f, v, th などはありません。
 音節構造とは子音と母音の組み合わせ方で、日本語は特殊拍(ンで終わる音や詰まる音など)を除けば開音節で(子音)+母音が音節(aとかka)の単位です。しかし、英語では(子音)+母音+(子音)が許されています(”dog”)。さらに、日本語では限定的な子音連続(”strongest” の最初の str と最後の st など)も許されているのが特徴です。日本語では、それら子音の間に母音が入ってしまいます。
 さらに、日本語はモーラという単位で「タタタタタ···」と話されるのですが、英語は「タンタタンタ···」と強弱をもって発話されます(「幼児はメロディーで英語を聞き分ける」2018年5月号)。  これらの日本語と英語の音素や音節、韻律構造の違いが、さまざまな問題を引き起こしています。英語では、単語同士がくっついてしまう子音誘引などの現象が頻繁に起こります。つまり、文字として読む英語では分かち書きされている単語も、人の口から話されるとくっついてしまうのです。そして、一度くっついてしまった英単語の連続を切り離すことができないので、英語の音声がダンゴ状に聞こえてしまうのです。(「だからできない!英語の発音」2017年5月号)、(「たった26文字で変わる英語力」2012年9月号)

 幼児は胎内にいるときから母親の声を聞いていて、生後半年くらいになると日本語の聞き取りができるようになります。つまり、生後半年もすると、日本人の子どもたちにとって、日々耳にする日本語の音声は「単語の連続」として知覚されるのです(「英語のかけ流し、効果のある人·効果のない人」2019年4月号)。
 これと同じことをするのが、『パルキッズ』の日々のインプットです。これによって、1年ほど英語による音声のインプットが行われれば、子どもたちは英語のリスニングができるようになります。つまり、英語の音声は、彼らの耳には「単語の連続」として響くようになるのです。従来の学校教育+αで、散々英語のリスニングに苦労させられてきた(/いる)我々にとっては、これだけでも充分すごいことではないでしょうか。


仮語彙から語彙化へ

特集イメージ6 十分な英語のインプットが行われると「英語のリズム回路」を身につけますが、同時に聞き取った英語の音声を記憶していくことが行われます。ここで、蓄積される英単語のことを「仮語彙」と呼んでいます(「パルキッズのかけ流しで身につく英語力」2019年1月号パルキッズ塾)。

 仮語彙とは、音だけ知っているけれど、意味までは分からない語のことです。幼児たちは、聞き知った語を繰り返し異なる文脈で耳にすることによって、語の意味を推測しながら学習していきます。そこで学ばれる単語の意味は「語の価値」と呼ばれます。
 英語を学習する際に、単語帳を作って「英単語=日本語訳」と、代表的な日本語訳との対で英単語を覚えたりしますが、「語の価値」とはその語の持つ「イメージ」のようなものです。例えば、「イヌ」という語は「四つ足のワンと吠える動物」という価値の集団で、「イヌ」と聞いたときに1人1人が思い描くイメージは異なります。子どもたちは、聞き知った語に対してこのイメージ付けを行うのです。これを「語彙化」と呼んでいます(「子どもの英語はこんなにカンタン!」2012年2月号)。

 『パルキッズ』の学習の中で、子どもたちは、かけ流しによるインプットで「リズム回路」を身につけ、その後1年から2年目にかけて「仮語彙」をどんどん増やしていきます。ここまでは英語の音声を流すだけで達成されます。
 同時に、「語彙化」はオンラインレッスンなどで行われるフラッシュカードでも行います(「幼児期に語彙を増やす3つの方法」2013年11月号パルキッズ塾)。
 『パルキッズ』では、フラッシュカードだけで3000語、文からは5000語ほどをインプットします。これだけ豊富なインプットがあれば、基本的な英語での日常生活における語彙に関しては問題なくクリアしています。

 ここで、少しだけ気をつけなくてはいけないことがあります。英単語を覚えるというと、どうしても名詞や動詞、あるいは形容詞に偏りがちです。それらは、比較的簡単に「語の価値」を身につけられるからです。
 特に、名詞の語彙化は「即時マッピング」と呼ばれるほど簡単に行われます。極端な話、一度見聞きすれば単語とその価値を覚えてしまうのです(「パルキッズで育つ子の英語力の本当のところ」2019年1月号)。  しかし、動詞は名詞よりも習得が難しく、さらに副詞や前置詞はなかなか身につきません。これも日本人の英語下手に大きく影響しています。数の限られている前置詞や副詞ですが、とても頻繁に現れるので、そこを理解しなければ英語が分かるようにはならないのです(「英語頭を身につける」2011年6月号)。

 また、英語の聞き取り能力や、価値で身につけた英単語に関しては、その測定がとても困難です。学校英語のように、「コレを覚えたら次はコレ」という具合にはいかないのです。
 日本語の発達を考えていただければわかりますが、最初の3年間、あるいは4年間(3·4歳頃)の日本語の能力を測定するには、テストするわけにもいきませんし、本人も曖昧にしか理解できていないので、本人に尋ねるわけにもいきません。つまり、本人の様子を見るしかないのです。
 また、一度は英語が口から出てきた子どもたちも、発音が悪くなったり、暗唱をしなくなったりします。これは、子どもの言語発達においては、日常的に観察される現象で、日本語の場合にはほとんど気になることもありません。ただ、なぜだか英語に関しては、とても気になってしまうようなので、ひとつ覚えておくと良い項目でしょう(「『成果が見えない…』と思ったママへ」2015年8月号)。


4.生活言語から学習言語へ

読解力まで育てないと英語は消える

特集イメージ6 幼児期の英語教育の最大のメリットは、インプットが楽なことでしょう。なにしろまだ柔軟な幼児期であれば、耳からのインプットができるので、音源のスイッチを入れるだけの「超効率」で英語を身につけることができます。これが、小学高学年以上になるとそう簡単にはいかないわけです。
 しかし、耳から理解できる英語力を身につけて、英会話はできるようになったとしても、その後、成長と共に英語以外の勉強が忙しくなって、英語の会話の機会が失われていくと、子どもたちはあっという間に英語を忘れてしまうのです。これは、幼児期に海外に滞在した帰国子女にもよくあることです。一度は身につけたネイティブ並みの英語が消えてしまうのですから、勿体ない話です(「幼児期に身につけた英語力は消える!?」2012年3月号)。

 日本では、文法訳読に対する反発から「英会話」のほうに揺り戻しが起きていることの弊害のひとつでしょう。
 そもそも、大きな勘違いは、「大学まで出ていれば、英語の読み書きはできる」と思い込んでいることです。果たしてこの命題は真かといえば、まったくそんなことはありません。多くの日本人は、英語を聞いて理解できない、しゃべれないだけではなく、読んでも理解できないのです。これは、ペーパーバックの1冊でも開いてみれば明らかなことでしょう。大半の日本人は1、2ページで投げ出してしまうのではないでしょうか。

 そして、「読解力」を軽視するあまり「しゃべれる」ことばかりに意識が向いてしまい、幼児期にある程度の英語を身につけさせたとしても、それでお終い、というケースが珍しくないのです。


生活言語と学習言語

特集イメージ6 言語の運用力には「生活言語」と「学習言語」というくくりがあります。これは移民の多いアメリカでは、よく研究されていることです。
 親と共に移住してくる子どもたちは、1年ほどすると日常的な英会話はできるようになります。もちろん親より早い時期に、より正確に英語を聞き取れるようになるわけです。ただ、識字率の点では問題も多く、日本では99%の識字率がありますが、アメリカでは人口の15%が識字能力に問題があるとも言われています。  そんなアメリカでは、移住すれば日常会話レベルの英語を身につけるのには問題がないが、例えば高等教育などその先のレベルの英語力を身につけることが課題とされているのです。そして、それら2つのレベルの言語の運用力がそれぞれ「生活言語」と「学習言語」と呼ばれています(「『生活言語』と『学習言語』」2018年4月号)。

 日本における英語習得になぞらえると、英会話までできるようになる段階を「生活言語」と呼べるでしょう。そして、そのレベルの英語力は使わないでいると消えてしまうのです。
 しかし、耳からの英語力だけではなく、スラスラ読める、目からの英語力を育てて、それをキチンとした読解力まで育てていくと、それは「学習言語」へと次のステージの言語運用レベルとなります。そして、ここまで来ると、しばらく使用しなくても消えてなくなることはありません。

 なぜ「学習言語」は消えてなくならないのか。その理由は想像するに以下のようになります。
 耳からの英語は、言わば雲を掴むような理解のされ方なのです。例えば、日本語には母音は5つしかありませんが、英語には9つあります。つまり、日本語より細かく知覚しているのです。しかし、音声とは儚いもので、発されては一瞬のうちに消えていきます。それらの音声は、あくまでも勘で処理されているに過ぎません。言ってみれば、うろ覚えなのです。その儚い音声を記録するのが文字なのです(「英語やっててよかった!」2020年11月号)。

 そして、一度耳からの英語が目からの英語へとレベルアップすると、それは消えずに残り、さらにそこから英語力を向上させることができます。
 つまり、「英語耳」と「英語脳」が育ち「生活言語」をクリアしたら、次は目からの英語力を育て「学習言語」へと繋げます。そして、橋渡しをするのが「読解力」なのです。
 私たちは、一応の目安として生活言語の習得を「英検準2級」取得レベル、そして学習言語の習得を「英検準1級」取得レベルと想定しており、その中間に「英検2級」を置いています。
 それゆえ、『パルキッズ』の学習の最初のゴールは「小学生のうちに英検準2級取得」としているのです。これがクリアできれば、中学受験で英語学習が中断しても消えることはなく、そのまま「多読」によって準1級合格までの道が見えてくるのです。そして、準1級レベルの英語力を持っていれば、少なくとも日本においては英語力としては十分で、さらに留学を考えてもアメリカの大学でも何とかやっていけるレベルです。
 その入り口がインプットによる「英語耳」「英語脳」の涵養であり、平行して行われる「読解力」の育成なのです。


読解力の育て方

特集イメージ6 読解力の育成法には様々あります。年齢や性格によって、得手不得手があるので、子どもの様子に合わせて読解力の育成に取り組む必要があります。しかし、『パルキッズ』の学習では、基本的には「絵本の暗唱」の取り組みを通して読解力を育成することを推奨しています(「『英語を読めること』の本当の意味」2020年9月号)。
 絵本の暗唱とは、日々の音声のインプットによって記憶してしまった英文を、絵本をめくりながら暗唱することで、自然と読解力を身につけさせるメソドです。絵本の暗唱は日本語にも有効な方法なので、必ず取り入れていただきたい取り組みです(「絵本の作法」2019年5月号)。

 さて以上、幼児期の外国語習得のあり方から、生活言語レベルの英語力を学習言語レベルの英語力へと昇華させることの意義とその方法について書いて参りました。そこに、背骨として存在するのが「インプット·メソド」です。インプット重視で、幼児期の英語教育に取り組むことを心がけてください。  特に幼児期の英語習得に有効なインプット·メソドですが、もちろん、小学生や中学生の学習にも取り入れることが可能です。以下、簡単に小学生以上のインプット·メソドの取り入れ方について書いて参ります。


5.子どもから大人まで有効なインプットメソド

小学生に有効な倍速学習

特集イメージ6 前段で少し触れましたが、留学生でも、ネイティブ並みとはいかないまでも、日本語を介さずに理解·思考·発話する「自立した英語力」を身につけて帰ってきます。私もその生き証人の1人です。若かりし頃、大量の英語に目から耳から触れることによって、学校英語の延長には存在しなかった英語の獲得に至ったわけです。もちろん、その当時はインプットによる外国語習得などは自覚したことはありません。留学体験は、後から考えてみれば「インプット」による英語習得体験だったわけです。
 これは私に限ったことではなく、英語を習得した留学生、帰国子女、あるいは超優秀な一部の純ジャパ(留学することなく英語を身につける例外)たち(「英語やっててよかった!」2020年11月号)も、話を聞くと、あるいは想像するに、どうやら大量の英語を目から、耳からインプットしてきたことによって、英語を身につけるに至っているのです。
 つまり、「インプット·メソド」は日本にいてもできることになります。そして、高校生でもできたのですから、小学生にもできないことはないのが話の筋でしょう。

 しかし、それでは、とばかりに『パルキッズ』による音声のインプットをすればよいのか、となると単純にそうとは言えません。小学校高学年以上に対して、耳からのインプットに意味があるならば、毎日洋楽を聴いているミュージシャンや洋画を観ている評論家などは、とうに英語を身につけていて良いはずですが、どうやらそうではないケースが多いようです(「英語が身に付く人とそうでない人の決定的な違い」2018年8月号)。
 つまり、ある一定の年齢を過ぎると、いくら英語を聞いてもそれはインプットにならないのです。しかしインプットの成功が英語習得の鍵を握っているので、インプットの方法を工夫する必要が生じます。

 小学生は幼児期と異なり、日本語の音韻知識が豊富なので、その知識が英語の習得に干渉してきます。小学校高学年あたりから、耳で聞いた英語をリピートできずに、日本語風の英語を口にするようになるのはそのためです(「英語のかけ流し、効果のある人·効果のない人」2019年4月号)。
 そんな小学生にピッタリの学習方法は「倍速学習」です。英語の音声の早回しを活用することで、英語に対する抵抗が取れて、脳が自然と英語のまま処理できるようになります。つまり、インプットされるようになるのです。それにより、小学生でも耳からのインプットが有効になります。さらに、約束·履行の繰り返しで学習習慣を身につけることで、自らひとりで英語を身につけてくるようになります。親としては、これほど楽なことはありません(「勉強する子に育てる方法」2018年1月号)。


中学生には素読

特集イメージ6 中学生以上の英語習得は、音声からのインプットでは留学でもしない限り絶望的です。英語の音は、彼らの耳には雑音でしかなく、聞き取りの切っ掛けすら掴めないので、インプットになり得ません。
 しかし、そんな中学生以上でも英語のインプットは可能です。耳からのインプットは諦めるとして、目からのインプットを実践すれば良いのです。

 ところで、目からのインプット、つまり読書による英語力の育て方に関しては、すでに100年以上も前に夏目漱石によって指摘されています。「文法の初歩を修めた者は、分からないところがあっても辞書などひかずにひたすら読め」と、論語の素読のように英文を読むことが勧められています(「100年前に完成していた英語習得の王道」2013年7月号)。
 英語の素読とは、声にしながら次々と英文を読むこと、意味など考えずに目の前の文字を音声に変換することに専念して、ひたすら読み続けることを言います。英文素読には、少なくともある程度以上は英語が読めることが必要とされます。それゆえ、中学生以上の取り組みなのです(「素読で育つ『英語の読解力』」2018年11月号)。
 注意点として、素読では適当に英文を読んでいても正しい英語のインプットにならないことです。耳からの英語と同様に、正しい英語を入力しなければ、脳の言語習得スイッチは入りません。そこで正しく英文を読むための知識として、フォニックスの学習が欠かすことができないのです(「たった26文字で変わる英語力」2012年9月号)。
 英文を正しく読み続ける素読を実践すると、不思議と英語を日本語に訳さず理解できるようになります。理由として、素読ではかなりのスピードで読み進めることになるので、日本語に訳している暇がないということが挙げられます。さらに中学生が読めるような素読用の英文は、そもそも日本語に訳さずに理解できる程度の簡単なものなので、日本語に訳すクセを取り払うには、素読の取り組みはピッタリなのです。

 このようにして、素読を通して「英語を英語のまま理解できる」ような回路が育てば、あとは「学習言語」に繋げるだけです。多読のステージに移っていけば、英検準1級も夢ではなくなるのです。
 
 現在、日本の英語教育は混迷を極めています。しかし、学校教育の中心に英語教育が据えられていることは昔から変わらず、結局学生の英語力で進学できる大学はほとんど決まってしまうのです(「いま、学校英語は大混乱?!」2014年12月号)。
 中学入試では英検準2級、大学入試では英検準1級を持っていれば、試験科目の「英語」としては満点の扱いを受けられるか、あるいは、優遇制度がなくても一般入試で9割以上は得点できるので、自分の入りたい大学に入ることができます(「どうなる?『英語』と『受験』」2016年3月)。
 また、英語力は「地頭の良さ」とも密接に関係しています。そもそも思考力のベースになるのは知識の量ですが、その知識の源泉となるあらゆる科学的情報の多くは、日本語の世界でなく、英語の世界に存在しています。混迷する世の中を活き抜くための信頼できる武器が、知識を活用する「地頭」の良さであることは紛れもないでしょう(「地頭の良い子の育て方」2020年4月号)。  さらに、就活や転職においても英語力は有利に働きます。またバイリンガルであること自体が、企業が新卒に求める「コミュニケーション力」の基礎となる言語力の向上を見込めるので、その意味で二重に英語の習得にはメリットがあるのです(「『稼げる子』に育てるために」2013年1月)。


 さて、今回は、『パルキッズ』の根底となるインプット·メソドに関してまとめてみました。また、最後には、英語力を持つことが豊かな人生に繋がることにも少し触れました。1人でも多くの読者が「インプット·メソド」の有用性に気づいてくださり、実践を通して、子どもたちに実用性のある英語力を身につけさせてくださることを心より祈っております。

【編集後記】

今回の記事をご覧になった方におすすめの記事をご紹介いたします。ぜひ下記の記事も併せてご覧ください。
英語が身に付く人とそうでない人の決定的な違い
留学生に起きた魔法を家庭で起こす
「発信力」がなければ未来は危うい?!
なぜ、勉強しなければいけないの?
夢を叶える親の心得


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特集イメージ9 児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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