おうち英語とフォニックス
英語の入口ではなく、「読み」の入口
フォニックスは、英語の文字と音の対応を学び、すでに知っている英語音声を文字へつなげるための読みの方法です。「英語を始める=フォニックス」ではなく、「聞いて知っている英語を読むためにフォニックスを使う」と考えると、その役割が分かりやすくなります。
フォニックスは英語音声をゼロから学習する方法ではなく、身につけた音声と文字を結ぶ読みの指導法です。
耳で知っている語が多いほど、フォニックスの規則が機能します。
かけ流しで音声の土台を作り、絵本・文字に出会ったうえでフォニックスの規則を学ぶ。
フォニックスとは、文字と音の対応を学ぶ方法
フォニックスとは、英語の綴りと音の対応関係を学ぶ読み書き指導です。たとえば cat を見たときに、c・a・t がそれぞれどのような音に対応し、それをどのようにつなげて読むのかを学びます。つまり、フォニックスの中心は「文字列を音へ変換すること」です。
ここで大切なのは、フォニックスが英語の音声学習そのものではないという点です。英語圏の子どもは、フォニックスを学ぶ前から cat や dog という語を耳で知っています。意味も分かっています。そのうえで、耳の中にある /kæt/ という音と cat という綴りを結び付けます。
フォニックスは、英語そのものの入口ではありません。既に身につけた音声言語から文字言語へ進むためのかけ橋です。
フォニックスの本来の位置づけ
英語を「学ぶ」ための方法ではなく、「知っている音声と文字を対応させる」ための読み指導です。英語音声の経験が先にあることで、フォニックスの規則が意味のある知識として機能します。
英語を聞いて知っていれば、フォニックスはすぐに学べる
聞いたことのある語を文字で見たとき、フォニックスは非常に合理的に働きます。眼の前の文字と耳にある音の規則がつながることで、意味まで一気につながるからです。
反対に、英語音声への経験がほとんどない状態で文字と規則だけを先に覚えると、子どもは「この文字はこの音」と規則を暗記できても、その音が実際の英語の中でどう聞こえるのか、何を意味するのかまでは分かりません。
フォニックスの規則を知ることと、英語を聞いて理解できることは別の力です。
第二言語学習者にも、フォニックスは有効
フォニックスは英語母語児だけのものではありません。第二言語として英語を学ぶ子どもにも、文字から音を復元する decoding(解読)の力を育てるうえで役立ちます。
未知の単語を見たときに、文字列からおおよその音を組み立てられることは、読みを進める大きな助けになります。また、耳で知っている語であれば、綴りを見て「あの語だ」と気づくことができます。
英語の音声の知識も、フォニックスも知らない子は、これをローマ字で代用します。すると文字列を正しい英語の発音に解読できないのです。
decoding(解読)の力
未知語の文字列からおおよその音を組み立てられるようになります。
「あの語だ」という気づき
耳で知っている語の綴りを見て即座に認識できるようになります。
問題は「するかしないか」ではなく「いつ・何のために」
どの段階でフォニックスを使うかが、効果を左右します。
「読める」と「発音が良い」は同じではない
フォニックスを学ぶと、英単語を見て適切な音形に近づけて読めるようになります。この意味では、フォニックスは発音に関係します。
しかし、文字を音素へ変換できることと、英語らしい音声として話せることは同じではありません。実際の英語では、文字で表される母音や子音だけでなく、強弱のリズム、音の連結、弱化、脱落、イントネーションなどが関わります。
単語を一つずつフォニックス規則どおりに読めても、連続した英語音声を聞き取り、同じリズムで発話できるとは限りません。フォニックスが直接支えるのはまず文字から音への変換であり、英語の音声知覚や自然な発音全体には、大量の英語音声経験が別に必要です。
フォニックスが役立つこと、役立たないこと
◎ 文字列を見て、おおよその音形で読む力
◎ 綴りと音の対応規則を理解する
△ 英語のリズム・連結・脱落などの音声知覚
△ 自然な英語発音・スピーキング能力全体
ローマ字を英語読みに持ち込まないためにも役立つ
日本の子どもは、小学校でローマ字を学びます。ローマ字は日本語をアルファベットで表す方法なので、a・i・u・e・o を「あ・い・う・え・お」に近い音として扱います。しかし、英語はローマ字のように読んでも、音声を正しく復元できません。
英語の but を「ブット」、name を「ナメ」のように読むのは、ローマ字の読み方を英語の綴りへそのまま当てはめているためです。この点でフォニックスには、「ローマ字の規則と英語の綴りの規則は違う」と子どもに気づかせる意味があります。
- but
- →「ブット」(日本語的な読み)
- name
- →「ナメ」(日本語的な読み)
- cake
- →「カケ」(日本語的な読み)
- but
- → /bʌt/(短母音 u)
- name
- → /neɪm/(サイレント e で長母音)
- cake
- → /keɪk/(サイレント e で長母音)
特に小学生は、ローマ字知識を持っているため、英語の文字と音の関係を別の体系として整理することには価値があります。
おうち英語では、まずは音声入力
おうち英語でフォニックスを使うときに大切なのは、先に英語音声への十分な経験があることです。子どもは、毎日の英語音声を通して、英語の音・リズム・音のまとまりに触れます。この音声・音韻の土台があることで、フォニックスを使って「知っている音」と「文字」を結び付けやすくなります。
大切なのは、英語初心者の段階で文字だけを先行させすぎないことです。音声、意味、文字、語彙、読解は互いに関係しながら育ちます。
絵本とフォニックスは、役割の違い
絵本とフォニックスは役割が違います。どちらか一方を選ぶものではなく、それぞれが別の方法で読みの力を育てます。
📚英語絵本
- 音声・絵・場面・意味・文字をまとまった英語として経験する
- 知っている物語を繰り返し見聞きする中で文字にも注意が向く
- 文字読みへの自然な入口となる
- 極端な例では、絵本だけで音声と文字の対応を理解して読める子もいる
🔤フォニックス
- 文字と音の対応規則を体系的に学ぶ
- 初めて見た単語を文字から音へ変換する力(decoding)を育てる
- 知らない語を読もうとするときに音を推測できる
- ローマ字と英語の読み方の違いを整理できる
サイトワーズや読みの経験も必要
英語の読みは、フォニックスだけで完成するわけではありません。頻繁に現れる語を何度も読み、音と綴りの対応が定着すると、毎回一文字ずつ解読しなくても素早く認識できる語が増えていきます。
また、実際の文章を読むことで、単語だけでなく、句や文のまとまり、語順、意味のつながりも経験します。フォニックスは重要な読みの道具ですが、最終的に必要なのは、実際の英語を読む経験です。
フォニックス
文字と音の対応規則を学び、初見の単語を読む力の土台をつくります。
ライミング
単語の始まりや終わりの「韻」を通して、文字の塊の音節や誤単位の規則を学びます。
サイトワーズ
高頻度語を瞬時に認識できる語として定着させ、流暢な読みを支えます。
絵本などで実際の英文を読む経験
単語・句・文のまとまり、語順、意味のつながりを読みながら経験します。
まとめ
フォニックスは、英語の文字と音の関係を学ぶ有効な読みの方法です。しかし、その役割は英語の音そのものをゼロから作ることではありません。フォニックスは英語の入口ではなく、音声入力を「読み」へつなげるかけ橋です。
よくある質問
フォニックスはおうち英語に必要ですか?
フォニックスは、英語の文字を読む力を育てるうえで有効です。ただし、すべての子どもに最初から必須という意味ではありません。英語音声に十分触れ、聞いたことのある語が増えてきた段階で取り入れると、知っている音と文字を結び付けやすくなります。
フォニックスをやれば発音が良くなりますか?
文字を見て、より適切な音形で読めるようになるという意味では関係します。ただし、英語らしい発音能力全体がフォニックスだけで育つわけではありません。英語のリズム・連結・脱落などの音声知覚には、大量の英語音声経験が別に必要です。
フォニックスをやれば英語が聞けるようになりますか?
フォニックスだけで英語が聞けるようになるわけではありません。リスニングには、大量の音声経験と、英語のリズム・連結・弱化・脱落などへの知覚経験が必要です。
何歳から始めればよいですか?
年齢だけでなく、英語音声への経験を見る方が適切です。聞いて知っている語が増え、文字に興味を持ち始めた段階が一つの目安です。
ローマ字を覚える前にフォニックスをした方がよいですか?
必ずしも順番を固定する必要はありません。大切なのは、ローマ字と英語では文字と音の規則が異なることを区別することです。
