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2020年7月号特集

Vol.268 | ことばを伸ばす親の話し方

ことばの能力は親の姿勢ひとつでこんなに変わる

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-2007/
船津洋『ことばを伸ばす親の話し方』(株式会社 児童英語研究所、2020年)


 まずは結論から。子どものことばの能力を伸ばす方法は、

 「最大の敬意を払いつつ、より多くの情報を、より正確に子どもと共有する」

 たったこれだけです。これを心がけるかそうでないかで、子どものことばの発達にはそれこそ数倍の差がついてしまいます。
 ということで、今回は「子どものことばが自然と伸びる」ような親の心がけについて書いていくことにします。その前に、少し御託を。


ことばの能力が人生の豊かさを左右する

特集イメージ1 ことばの発達は、親にとってはとても繊細なトピックです。ことばの発達に関してはいろいろなことが言われています。女の子の方がことばの発達が早いというのは一般的に言われることですし、言語学の実験でも男女差は実験結果に影響を与えるカテゴリーと考えられています。ことばの発達のゆっくりな子の親は「ことばが早い子の方が小学校に入ってからの成績が良い」と言われれば心配し、あるいは「中学生になるまでには幼児期の差がなくなる」と言われれば安心しと、揺れ動くのが親の心情でしょう。

 結論から言えば、ことばの理解は早いに超したことはなく、また理解力も高いに超しません。理由は読み続けていただければ、追々分かっていきます。ただ、「ことばの発達」自体の判別をつけるのが難しいところです。

 ことばの発達は本来、理解力を表す「知覚面」やその後、脳の中で活発に行われる「思考力」で計測されるべき対象ですが、どうしても発話における「産出面」ばかりに目が向かってしまいます。すると、

 喋ってくれない=ことばが遅い

 と、漠然と感じていらっしゃる方が少なくないのです。
 「喋る」ことは、ことばの発達のほんの一面しか表していません。優れた理解力を持ち、大きな語彙と深い思考力を持っている子でも、寡黙であれば、彼らはあまり「喋らない」ものですから、ついには「ことばが遅い」と誤解されることすらあるのです(理系の深い思考の人が発言の機会を逸し、野暮ったいイメージを持たれることがあるようですが、それと同じです)。逆に理解力も思考力も語彙にも乏しい子が、無内容でも、よく喋れば(現にそんな大人も少なくありません)、それだけで親は安心したりもします。

 これでは、子どものことばの発達を正しく把握しているとはまったく言えません。

 では、正しくことばの発達を把握する方法はあるのか。これまた難しい質問で、”MCDI : McArthur Communicative Development Inventory、マッカーサー乳幼児言語発達質問紙” など、子どものことばの発達を測定するキットがあったりはします。ただ、ほとんどのご家庭では、ことばの遅い子も幼稚園に入る頃には、ある程度以上のコミュニケーションが成立することから、健診で指摘されるなどのことがなければ問題視されずに、子どものことばはそれぞれの成長を辿ることになります。
 赤ん坊の身体の発達を心配する親の心と似ていて、成長曲線の±2SD(ざっと両極端を除く真ん中の95%)に収まっていれば、親としてはホッとする感じです。つまり、何か話してくれるし発達遅滞を指摘されてもいないので、ことばの発達に関して、親が心配しなくなってしまうのです。
 しかし、それで良いのでしょうか。確かに、大抵の子はいずれことばを話すようになりますし、日常に差し支えない程度のことばの運用はできるようになります。それゆえに見逃されてしまいますが、真ん中の95%といっても、上の方と下の方では天と地ほどの差があります。このことばの能力の差が、後の学習や生き方に大きな影響を与えるのは、常識で考えてもあるいは直感的にも明らかでしょう。


ことばの能力は語彙に依存する

特集イメージ2 考えるまでもなく、語彙が豊富であることが「ことばの運用」において有利であることは自明です。なぜなら、語彙が人の思考の幅に大きく影響するからです。パルキッズ通信2020年4月号』でも述べているので詳細は避けますが、1,000語しか知らない子に比べて10,000語知っている子は、世の中に対する理解力が違います。一葉の風景画から、ある子は10の情報を取り出せる他方、ある子は100の情報を取り出せるとしたら、語彙の重要性は言わずもがなでしょう。

 一般に日本人の成人の語彙は40,000語などは言われます。英語話者の平均もその程度のようなので、そのくらいあれば、日常生活はもちろんアカデミックにもある程度以上は耐えうる語彙と言えるのでしょう。
 もちろん、それ以上の語彙があれば、よりクッキリと詳細に世界が見えるでしょう。逆に語彙が乏しければ、理解できる幅も限定的です。大ざっぱな世界の把握しかできません。当然ながら思考の幅も深さも制限されます。知らないことは理解できないし、それらに関して考えることすら叶わない、というわけです。

 これが子どもたちの場合には「勉強嫌い」に直接繋がります。

 「知ることは本来楽しい」ことです。これは帰納的に「勉強も楽しい」ことにつながります。ただ、「知ること」の取っかかりとなる「理解」ができなければ、楽しくも何ともありません。そして、その「理解の幅」を決定するのが「語彙」なのです。

 それでは、その語彙、ひいては「ことば」全体の能力を高めるために、親のできる心がけを具体的に見て参りましょう。


親の心がけ

特集イメージ3 ことばの能力は、生涯際限なく成長していきます。もちろん、成長を止めない限り、という前提付きです。そのことばの能力が最も伸びるのは思春期から社会人になるまでの期間です。もちろん例外も少なくありませんが、一般に社会に出てしまうと、大学にいるときのようには強制的な読書はしなくなります。
 これを出口と考えると、入り口は小学校への入学でしょう。つまり、学生である12年間が、その後の人生の語彙のあり方を左右する期間と言えるでしょう。幼児期はその準備期間です。準備期間を充実させておくと、スムーズに学齢期の語彙の拡張へと進めます。また、すでに学齢期に入っている子どもなら、なおのこと親の日常的な語りかけで語彙を膨らませ、思考を深めることができます。

 さて、繰り返しますが、キーワードは、

 「最大の敬意を払いつつ、より多くの情報を、より正確に子どもと共有する」こと。

 ここには3つのことが書かれていますね。それでは、ひとつずつ順に参ります。

1.「最大の敬意を払う」こと。



親子だけど別人格と心得ましょう

特集イメージ4 「子ども」ということばに罪はありませんが、「子どもっぽい」とか「拙い」というニュアンスが含まれた語であることは間違いありません。しかし、そんな語感に惑わされず、我が子とは接しなければなりません。
 そのコツは、一言で言えば「最大の敬意」を払って接すること。もう少し具体的に言うと、「上司や老人に接する」ような姿勢で子どもに話しかけることとも言えます。

 想像してください。
 例えば、1日の終わり、忙しい終業間際に、パソコンが苦手な上司が、表計算ソフトの使い方を尋ねてきたとします。面倒ですよね。そんな時、「今忙しいから」と無碍に断れますか。「自分でやりなさい」と突き放せますか。そんなことはできないと思います。あるいは「また明日にしてください」とスパッと断れますか。たとえ気持ちはそうでも、なかなか口にするのは難しいのではないでしょうか。
 もちろん、限界はあります。その後のスケジュールも考えると、上司が使い方をマスターするまでずっと付き合うことは不可能でしょう。しかし、とりあえず、「どんなことですか?」と尋ねるくらいはするでしょうし、簡単に解決することであれば、「これこれこうです」と手短に説明するでしょう。また、最後に「今日は用事がありますが、また明日お願いします」と対応するのではないでしょうか。
 はい、もうご理解いただけましたね。子どもが話しかけてきたら、それはその子にとっては意味のある話題なのです。適当にあしらわずに、上司に接する自分の姿勢を想像し、そのように我が子に接してみましょう。

 まだまだあります。
 世間ではしばしば「褒めて育てる」などといわれます。「なるほど」と唸ってしまい、褒めることを心がける人も少なくないと思います。「褒める」こと自体には問題はないと思います。しかし何も褒めるようなことをしていないのに、無理矢理褒める必要もないと思います。さらに、褒めるというのはどうにも「上から目線」の匂いがぷんぷんします。

 こんなご時世ですので、こんな例はどうでしょう。
 里帰りできず、でも孫の顔を見せたい自分が居ます。でも、爺婆はメカ音痴。パソコンも使っている様子はあるものの、何をしているのか分からない。LINE もできない。スマホは持っているけど、専ら電話機として使っている…。そんな親からある日、LINEの友達登録があって、さらにさらに FeceTime や Zoom のお誘いが来たらどう感じますか。「すごい!」と感じることはあっても、「上手にできたねぇ」「偉いねぇ」「頑張ったねぇ」と上から褒めようという気持ちは起きにくいのではないでしょうか。
 この「すごい!」と感じる心が大切なのです。褒めるのではなく、驚く。自分にとっては当たり前のことでも、相手にとってはすごく大変なことなのかも知れません。それを自分基準ではなく、相手の基準でもって想像してあげる。すると「すごい!」となるのです。
 これも、もうご理解いただけましたね。子どもも同じ。上から目線で褒めるのではなく、このように、我が子をよく眺めてください。積み木を5段積めた。上手に丸を画けた。一人で靴を履けた。お箸で食べられた…。これらの「すごい」を発見し、驚く気持ちが大切です。その気持ちを子どもに伝えてあげましょう。俄然、子どものやる気が出ること間違いなしです。


「無視してやること」もやさしさ

特集イメージ5 子どもはプライドの高さにかけては大人顔負けです。次に、こんな例はどうでしょう。
 日本語の覚束無い外国人の同僚が、ところどころ妙なことばを使いながらも一生懸命日本語でコミュニケーションしようと試みています。そんな同僚が噴飯物の日本語の使い方をしたら、あなたは笑いますか。そんなことはしないはずです。逆に「(異国の地で)よく勉強しているな」と畏怖の目を持って眺めるのではないでしょうか。
 子どもの日本語も同じです。まだ発展途上ですし、これは次のセクションで述べますが、それよりも重要なことは、子どもたちの頭の中にある内容を理解することです。そのためのコミュニケーションです。

 子どもたちはとてもプライドが高く、2歳にもなれば、笑われることに屈辱を感じるようになります。そして、それが「自分はできない」というコンプレックスにも繋がりかねないのです。
 日本語の覚束無い外国人の同僚に接するように、子どもたちの日本語を畏怖の念を持って見守ってあげましょう。

 くどいようですが、もうひとつだけ例を挙げます。
 上司が、飲み会で面白くもないダジャレを連発したらどうしますか。もしくは、酔いも手伝ってか、妙な持論を展開しだしたらどうしますか。もちろん、セクハラやパワハラは問題外ですので、あくまでも許容範囲内だと仮定します。しかしながら、上司が面白くも何ともない発言や、若干事実誤認の発言をした場合、それを言下に否定したり、発言の真意を問い詰めたり、そんなことをしますでしょうか。
 琴線は人それぞれ、人によっては同じ発言でも敏感に響いたり、まるで無意味だったりします。しかし大抵の場合、そんな発言はいちいち真に受けず、軽く流してしまうのではないでしょうか。
 子どもの発言も同じです。「あまのじゃく」発言だったり、反抗的だったり、事実と異なったりすることもあるでしょう。そんな時には、「ふーん、そうなの。」と軽く受け流すか、あるいは無視してやるのが一番です。あくまでも戯れは戯れ。ことばの練習をしているわけですし、間違いからしか人は学べないわけです。どんどん間違えた発言をさせてあげましょう。それにくどくどけちをつけて、子どもが無邪気にことばを発することを止めてしまうような言動は慎みましょう。

 さて、子どもも上司と同じ。プライドだけは一人前(?!)です。教えようとすると、すぐに嫌がるようになります。しかし、対等に接している、あるいは一緒に考える姿勢で接すると、あら不思議、一気に積極的に学ぼうとし始めるのです。
 子どもには上司や年長者たち、あるいは外国人に接するような心構えで接すると良さそうです。すると、自然と上から目線ではなく、対等な目線、あるいは寄り添うような姿勢のことばが口から出てくるようになります。
 子と親は、対等なのです。同時に「社会に出て役に立つ人間になるまで一時的に親が預かっている存在」です。「自分の子」のように自分の意のまま自由になるという意識は脱ぎ去り、未来の社会を支える偉い人格として最大限の敬意を表して接すると良いのです。

 すると、そのような親の考え方は親自身の行動や言動にも変化をもたらします。自然と以下のような事が生じます。


親の丁寧な姿勢は子どもの自信に繋がる

特集イメージ6 親も人間ですので間違えたことを言うかも知れません。また、間違えた判断をするかも知れません。心にもないことが口をついて出るかも知れません。そんな時、子どもに対して「最大限の敬意を表す」姿勢を持って接すれば、自然と「謝る」こともするでしょう。
 また、子どもの成長を注視していると、親よりも優れている点をどんどん見いだすことができます。すると、自然と「敬語で話す」気持ちが持ち湧き上がるかも知れません。
 さらに、命令するよりも「お願いする」ような語りかけをすることができるようになるかも知れません。

 すると、どうなりますか?

 そうなのです。親の話す通りに、子も話すようになります。親が子に対して発した言葉が、そのまま子どもの口から、お友だちや先生に対して発せられるのです。親が誠心誠意、最大の敬意を持って子どもに話すことで、子どもの発言が丁寧に、そして、品が良くなります。
 さらに、このような親の姿勢を、子どもは「大切にされている」と知らず知らずのうちに感じるようになります。これが「安心」へとつながり、さらには「自信」へと育っていくのです。


 まずは、「最大限の敬意を表して」子に接することを心がけてみましょう。

2.「より多くの情報を」心がける



親子版「ホウレンソウ」

特集イメージ7 親と子の会話を増やすことが、子どものことばの発達に好影響を及ぼすことは言うまでもありません。しかし単に「会話をしろ」といわれても、トピックを見つけられずに戸惑う方もいらっしゃるでしょう。そんな時の救世主として、ひとつに先の『パルキッズ通信2020年6月号』で特集した「絵本」があります。
 しかし、絵本がなくても、子どもとの会話のトピックはいくらでもあるのです。

 そのコツが「親子版ホウレンソウ」です。「ホウレンソウ」とは、おなじみ「報告・連絡・相談」のことで、円満な社会生活を送るにおいて必要なコミュニケーションの頭字の複合語です。子どもとの場合には、厳密には「報告・連絡・相談」ではないかも知れませんが、姿勢として、自分がしていること、相手がしていること、これからすること等の情報を共有するという意味でご理解いただけると良いでしょう。

 小学生にもなれば、双方向でホウレンソウが可能です。「今日は何があった?」「晩ご飯は××時よ」「週末は何か予定ある?」などなど、お互いの行動の共有をします。
 幼児期であれば、一方的に定義してやることから始めるとよいでしょう。自分の行動や子どもの行動を定義して伝えてやるのです。例えば、子どもがひとり遊びしているのであれば、「ボールで遊んでいるね」「楽しいのね」「積み木で何作ってるのかな」などと定義してやります。
 これは、年齢と共に少しずつ詳細な内容にしていくと良いでしょう。最初は「上手に積めたね」で十分ですが、「3個積めたね」「四角の積み木の上に丸い積み木が載っているね」など基礎概念をプラスしましょう。
 また、日常の行動も「上手にできたね」「おいしいのね」「嬉しいのね」「楽しいのね」、あるいは泣いていたら「うまく行かなかったのね」「痛かったのね」「悲しいのね」「寂しいのね」と子どもの気持ちを想像して、代弁してやります。

 子どもがむずかる、あるいはイライラする理由は、ひとつには現在自分が置かれている状況を正しく理解できない点にあり、また、ひとつには気持ちを伝えることができない点にあります。
 それらの状況や気持ちを理解し表現できるようになるためには、それなりの語彙が必要となりますので、その部分を育てていくのです。


チャンスを逃すな

特集イメージ8 これは、子どもの行動や心理状態の定義だけに留めることはありません。親の行動も定義してやりましょう。
 「今ご飯作っているのよ」「ちょっとお仕事中ね」「今お着替えしてるのよ」など日常的なことから、おむつ替えのシーンをひとつひとつ丁寧に説明してやる、あるいは、お風呂に入っているときに、洗っている身体の部位を良く眺めながら、言葉にして説明するのです。自分の行動の説明も、ひとり遊びの時と同様です。晩ご飯からお味噌汁。お味噌汁からその具材など、説明することは山ほどあるはずです。
 このように行動をことばにすることに慣れて、余裕ができると不思議なもので、今まで見えなかった子どもの変化に気づいたりします。すると、それは前のセクションで述べたところの「驚き」にも繋がります。

 スーパーへの買い物などは、またとないチャンスです。できる範囲で買い物リストを、事前に伝えておいて、実際の買い物カゴに入れる際に、ひとつずつ「ニンジン3本」「ナメコひとパック」「豆腐」に「卵」と口に出してやるのです。
 少し大きくなったら、子どもを本日の「ちくわ担当」「ニンジン担当」「ヨーグルト担当」など責任者に任命するのも良いでしょう。子どもたちにとっては、お手伝いは本能のようなものです(もっとも、早い段階でこの本能を刺激する取り組みをしないと、発揮されないまま思春期に入ってせっかくの本能も埋もれてしまいます。この点、早期の英語教育に似ています)。
 また、買い物の行き帰りも、散歩がてらなるべくゆっくりと周りの景色を眺めながら、子どもと景色を共有すると良いでしょう。子どもたちは大人と視線が違うので、我が子の意外なものの見方に驚かされることも珍しくありません。


子どもが話しかけてきたら

特集イメージ9 また、これは重要なことですが、子どもが話しかけてきたら、必ず耳を傾けるようにしましょう。前のセクションで述べた「上司との接し方」と同じです。軽くあしらってはいけないどころか、そんなことをしたら大変もったいないのです。子どもから話しかけてくるというのは、願ってもいないチャンスです。
 家事の途中でも、手を止めて子どもに付き合ってみましょう。ほんの30秒ほどの会話でも、子どもは納得して、またひとり遊び、あるいは宿題に戻るかもしれません。忙しくて手が離せないときでも、少なくとも、あとで聞く約束をして、手が空いたら自分から先ほどの話題を子どもに振ることが大切です。
 これは、小学生になっても、中学生になっても同じことです。子どもが話しかけてくるのは、何かしらの意味があるのです。相当なことがない限り手を止めて、小休止がてら子どもの話に付き合いましょう。
 親子は、一度話をしなくなると、再開するのが難しくなります。そして親子の会話は、途絶える期間が長くなれば長くなるほど、再開の壁が高くなります。気づいた今こそが、親子の会話のチャンスなのです。

 その際のコツです。まず、子どもの発言が終わるまでは、途中で遮らないこと。そして、言い終わったとみたら、彼らの言ったことを繰り返しましょう。そして、繰り返した内容が正しいかどうか子どもに確認する。相手が頷けばそれでよし。会話は次へと進みます。この繰り返しです。これは、小さい子にも大きくなった子にも、等しく必要な姿勢です。


子どもの精神の安定に繋がる

特集イメージ8 また、「親子版ホウレンソウ」にはオマケの効果がついてきます。子どもの精神に安定をもたらすのです。ホウレンソウを繰り返すことで、いたずらに不安の心が湧き上がるのを押さえることができます。
 これは、今目の前に起こっていることを定義したり、子どもの話に耳を傾けたりすることに限りません。親が自分の未来の行動、あるいは子どもの未来の行動を定義してやることで、子どもたちはより正確に状況を理解できるようになります。
 たとえば、ひとり遊びしている1歳の幼児なら「お母さんはトイレに行くね」「すぐ戻るからちょっと待っててね」と事前に予告してやれば、母親の不在に気づいても「ああ、今トイレにいるのか」と理解できます。
 また、もう少し大きくなったら「あと10分で出かけるから玩具をバッグに入れてね」「靴を履いてね」と伝えておけば、自分で靴を履きに玄関へと行くかも知れません。いざ出かける直前になって慌てて「ほら、早く靴履いて!」とせき立てるよりは、余程、物理的にも精神的にも余裕を持った行動に繋がります。

 このように、母親が子どもや自身の行動を定義してやることで、子どもたちは自分の置かれている状況を理解できるようになります。これは幼児期に限らず、小中学生になっても同じです。そして、自分の位置が把握できれば、それは安心感へと繋がるのです。
 もちろん、最後に述べた、行動を予告してやることも、心の準備に繋がることは付け加えるまでもないでしょう。

3.「より正確に」子どもを理解する。



親子でより正確な理解の共有を

特集イメージ9 さて、より多くの情報を共有することの大切さについて述べて参りましたが、量もさることながら、その質の担保も重要です。親子でのコミュニケーションに限らず、コミュニケーション全般において最も心がけなくてはいけない点は、お互いの思考や世界に関する情報を、正確に理解することでしょう。
 言語には限界があって、脳内のイメージを完全に記述することはできません。例えば、好きな景色を説明しようとしても、なかなか言語化は困難です。また、自分では上手に表現できているつもりでも、先方の脳にはまったく別のイメージとして伝わっている方が自然なのです。例えば、『雪国』の冒頭「国境の長いトンネルを抜けると…」から導き出されるイメージは十人十色です。
 特に、ことばの運用能力がまだ未熟な幼児たちが、親の言うことを正しく理解できているかどうかは、常に疑問に思っておいた方が無難ですし、同時に、子どもの脳内のイメージも親は勝手に想像しているだけで、正確に理解できていないと心得た方が、より現実を正しく反映しているといえるでしょう。

 しかし、そんな言語の限界はありつつも、できる限り正しいイメージ共有を心がける姿勢だけは必要です。これができないと、年齢と共にどんどん子どもの思考は親のイメージから離れてしまって、ついには「我が子ながら何を考えているか分からない」などということにもなりかねません。
 それを避けるためには、2つのことが必要です。まずはイメージを可能な限り正確に理解するために、不明瞭な点を掘り下げることです。それともうひとつ、これが極めて重要ですが、子ども自身が「自分の考えを親に伝えたい」と思い続けてくれることです。


もうひとつ掘り下げてみましょう

特集イメージ10 大体において、人は「面倒くさがり」にできていて、繰り返されることは同じこととして分類します。つまり、決めつけるのです。特に、育児は毎日のことなので、ややもすると「またこれか」と子どもの言動を決めつけてしまい、その中に潜む微細な変化に気づかずに過ごしてしまいます。もったいない。
 まずは、子どもの言動を「おなじことの繰り返し」と決めつけずに、もうひとつ掘り下げて会話を進めてみましょう。
 例えば、洗面所からハンドソープの容器を持ってきたとします。これに対して「またか」と感じるのは自然です。子どもは大人のものが好きですから、いろいろな物に手を出します。そこで「ほら、元の場所に戻してきなさい」と言うかも知れません。
 ところが、実は洗面所の父親が「これ空になったから、ママのところへ持っていって教えてあげて」と依頼したことを、忠実に守っていたのならどうでしょう。
 それは、叱り諭すことではなく、褒め称えるべきことですね。このように表面的な行動や言動でもって、子どもの真意を決めつけるのではなく、「どうしたの?」と子どもの行動の真意を尋ねるような心構えを持ちましょう。

 そもそも、子どもの行動や言動に「なぜ?」「なんだろう?」と関心を持つことが肝心です。

 子どもの頭の中で何が行われているのか、知りたくない親はいないでしょう。子どもたちには何がどう見えているのか、分かったときのスッキリ感は親であることの特権です。
 そのためには、もうひとつ掘り下げて、聞いてみる。「どうしたの?」「そうなのね、それでどう思うの?」などなど、子どもからより詳細な情報を引き出すようなことばがけを心がけましょう。

 しかし、子どもを正確に理解するだけでは片手落ちです。こちらの考えや世界のことも、できる限り正確に伝えなくてはいけません。しかも、子どもから尋ねてくるようであれば、繰り返しになりますが、それは逃してはいけないチャンスです。
 子どもに質問されたら、なるべく正確に伝えなくてはいけません。幼児期であれば、例えば「あれなあに」と尋ねられたらものの名前だけでなく、機能も分かる範囲で伝えましょう。さらに、正確な名前などが分からなければ、(最近は便利なものがあるので)その場で写真でも撮っておいて、後に調べてから、子どもに写真を見せながら伝えてあげると良いでしょう。
 あとで言っても忘れているかもしれない?そんなことはありません。子どもの記憶力は優れていて、1歳児でも概念化できている内容であれば、過去のことはほとんど記憶しています。忘れてしまうのは一人、親の方だけです。


「聞いてもらえるから話したくなる」

特集イメージ11 我が子が何を考えているのか、頭の中を正確に理解する。同時に親のこと、あるいは世界のことも正確に伝える努力をする。これが子どもとのコミュニケーションをとり続ける上で必要なことのひとつ目でした。  そして、もうひとつは「親に伝えたい気持ち」を持たせ続ける工夫です。

 皆さんは、どんな人と話をするのが楽しいですか。まぁ、面白い話をしてくれる人の話を聞くのは楽しいでしょうけれども、もっとも好ましい話し相手は、聞き上手な人ではないでしょうか。
 聞き上手な人にもいろいろありそうですが、単に自分の話に共感してくれるだけでは物足りないと感じるかも知れません。私の場合には、何でもかんでも「うん、そうそう」「分かる」「なるほどね」と相づちを打たれても、「果たしてこの御仁は私の言わんとする処を理解しているのかしら」と訝るだけです。  そうではなく、これまた私の場合と限定しますが、自分の状況やイメージを正確に理解しようとしてくれる人、自分の気づかなかった点まで突っ込んで質問してくれる人、自分ではまとめきれなかった思いを整理してくれる人が、優れた会話の相手です。

 「教育」の訳語として ‘education’ がありますが、これらは元を辿れば異なる2つの概念です。 ‘educate’ はラテン語の ‘ex (外へ) duco (導く)’ の意で、今日の学校教育のように何かを教え込むのは ‘teach’ の方です。つまり ‘educate’ は「教育」ではなく、頭の中にあるものを引き出す意味があります。
 日本では「教育」は行われますが、「外へ導く」 ‘education’ はほとんど行われていない印象があります。これは当然です、先生方も忙しいので、一人一人から引き出すことなどできません。そもそも教えることが仕事ですから。つまり、「外へ導く」ことができるのは、我が子のことを一番よく分かっているはずの親しかいないのです。
 そもそも教えるというのは一方的で、教わる方はあまり面白くありません。さらに、すでに触れましたが、子どもはプライドが高く、教え(’teach’)ようとすると逃げます。2歳児でも嫌がります。しかし、引き出そう(’educate’)とするとどんどん乗ってくるのです。

 「聞いてもらえるから話したくなる」これは、ヒトが言語を獲得してから、人間の本能の一部となっているかのように、多くの人々に共通する感情です。幼児までその感情を備えているのですから、これはもはや本能といっても過言ではないでしょう。

 聞き上手を心がけて、より正確に子どもの思考を理解し、こちらのイメージを伝える努力をしましょう。これが習慣化すれば、子どもとの会話は途絶えることなく続くことでしょう。
子どもの思考をもう一歩掘り下げる具体的な方法に関しては、拙著『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)の第7章に詳しく書いています。そちらをご参照ください。


最後にひとつだけ。「大いに楽しみましょう」

特集イメージ12 さて、ここまで、

 「最大の敬意を払いつつ、より多くの情報を、より正確に子どもと共有する」こと

について、3つに分けて書き進めて参りました。

 まずは、最大の敬意を払うこと。子どもを未熟な存在と見ずに、対等かそれ以上の存在と位置づけて、敬意の念を持って接すれば、親の語りかけも自然とぞんざいさがなくなり丁寧になります。そして、それがそのまま子どものことばとして育っていくのです。
 その土台の上に、できるだけ多くの情報を、可能な限り細部に至り共有し合うことが子どものことばの能力を高めていきます。それには、やはり、子どもの脳内で行われていることに関心を持つことが鍵を握ります。そして、子どもの行動や発話を細部に至り観察する余裕が生まれれば、子どもの脳内では親の想像を絶するほど複雑なことが行われていることに気づき、驚異することでしょう。

 「ことば」ほど強烈な教育ツールはなく、それこそ、親の話した通りに子は育つのです。この事実を真剣に受け止めている人、あるいは、この事実に気づいている親は未だに少数派の印象です。かく言う私自身も、子どもに対して、ネガティブなことばがけをしたことは1度や2度ではありません。そして、ネガティブなことばがけは、それこそネガティブな育児に通じるのです。常に自戒を心がけたいものです。

 最後にひとつだけ。

 育児は「夏の思い出」のようなものです。過ぎ去ってしまった後に、繰り返し繰り返し、人生の至るところで「あの頃」は思い出されます。しかも、辛さではなく、楽しかったことばかりが脳裏に浮かびます。
 そうなのです。まっただ中にいると気づきにくいのですが、振り返ってみれば、育児ほど楽しいことはありません。
 日々の忙しさにかまけて、余裕が作れないことも理解できます。しかし、今は辛くても、その辛い時期などあっという間に過ぎ去ってしまうのです。そして、その辛い時期こそが、育児において本当に満ち足りたひとときなのです。

   子どもと会話を楽しむための時間を作りましょう。話しかけてきたら、すぐに手を止めましょう。家事は少しくらい手抜きをしても、あとで取り戻すことができます。ただ、育児をしている、子どもと関わっているこの黄金期だけは、2度と取り戻すことができないのです。今、子どもたちがまだ手元にいるこの時期を、大いに楽しんでいただければ幸いです。


【編集後記】 今回の「ことばの育て方」を読まれて如何でしたでしょうか。親の心がけ1つで子どものことばの能力に数倍も差がつくというのは、読んでいて身が引き締まる思いがしますね。会話を掘り下げる具体的な方法はなかなか難しいのですが、それを英検の筆記問題の対処としてメソド化したものが「子どもの英語『超効率』勉強法」の幻の「第7章」に収録されています。既に本をお持ちの方は、是非内容をご確認下さい。また、まだこの本をお持ちでない方は、プレゼントがもらえるアマゾンキャンペーンを実施中ですので、これを機会に是非ご一読戴ければ幸いです。詳しくはこちらをご覧ください。

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「考える子」を育てていますか?〜子どもの優秀さを決める「親の語りかけ」とは
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特集イメージ9 児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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