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2019年8月号特集

Vol.257 | 男の子の育て方

母親には理解できない男子の行動

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1908/
船津洋「男の子の育て方」(株式会社 児童英語研究所、2019年)


育児の悩み

特集イメージ1 私は、街で男の子を連れている母親を見かけると、もちろん声には出しませんが、心の中で「ご苦労さま」と声をかけています。男の子を二人連れた母親を見かけると、「ありがとうございます」と密かに感謝の意を表しています。日本の未来を担う(かもしれない)優秀な子に育ててください、という願いを込めていることは言うまでもありません。そして、男の子三人連れの母親を見かけると「きっと来世では良いことがありますよ」と付け加えます。これに関しては説明の必要は無いでしょう。
 男の子の育児には、女の子のそれに対して、より困難が伴うようです。同じ女性ですから、女子の振る舞いは理解し、かつ共感できるのでしょう。しかし、男子の子育ては別物です。もちろん男子とて成長に伴い、社会性を身につけるに連れて、人がましくなります。しかし、幼児期の彼らは本能のまま、まるで制御されていません。そんな男子の振る舞いは、女性の理解の範疇を超えており、共感の対象ではないはずです。
 それはそうです。電車の音が聞こえれば「ソウブセン!」と叫び、どこか遠くで微かにサイレンが聞こえれば「キュウキュウシャ!」と叫び、街でパトカーを見かければ目は釘付け、まんじりともしない。消防車でも見かけようものなら、目を丸くして「もう1回!」という。いや、そういうわけにもいきませんので…。
 珍しく静かにしているなぁと思ったら、夢中で積み木を並べている。いや、積み木以外のものも並べる。食事中にも、食べやすいように小さく刻んだ人参や大根を一列に並べている。耳を澄ませると「コッコン、コッコン」、「デンシャ」と呟いている。
 もう少し大きくなると、レゴで「なにか」を作っている。母親の目にはそれがなんであるのかは分からない、しかし、本人には「なにか」が見えている。小さくちぎった紙を4つに折ったものを無数に作っていたりする。それは一体何か?と尋ねてみると「カエル」だと言う。そうかと思えば、どこで拾ってきたのか、箱の中の石を眺めては悦に入っている。…彼らには一体何が見えているのでしょう。
 本当に、男の子を子育て中のお母様方には頭が下がります。
 放っておくと喧嘩が始まる。ことばで言ってもなかなか反応しない。何度言ってもおなじことを繰り返す。すると、だんだん母親の声が大きくなるのも仕方がありません。男の子を育てている母親が「凜」としているのは必然です。ということで、今回は男の子について書くことにします。


男子の特性

特集イメージ2 男の子は女の子に比べて、身体が弱い。心も弱い。おつむも…。以上の3つの特性を持って生まれてきます。
 順不同で参りますが、まず、知性を育てるのに時間がかかります。中学校の成績などを見ると傾向が現れていますが、大体において女子の方が成績が良い。上位の多数を占めるのは女子です。ただし、上位中の上位にいるのは男子であることが少なくありません。つまり、なかなか壁を乗り越えないが、壁を越えれば突き抜ける…。男子はそんな知能の持ち主なのかも知れません。
 また、身体が弱い。女子は生まれつき強いのでしょう。この点は、福岡伸一さんの『できそこないの男たち』あたりを読んでみると、男子としては絶望的な(しかし最後には明るい)思いに見舞われます。本当によく熱を出すし、病院にもお世話になる。しかし、これにもひとつ壁があるようで、幼児期・児童期にそれを越えてしまえば、筋骨隆々、頼りがいのある男子ができあがっているのも不思議です。
 このように、知性や身体に関しては育て方次第で健全に育つ男子ですが、どうやら心の問題だけはいつまで経っても克服できないことが多いようです。何歳になっても、悲観的でくよくよしたり、それを隠すために虚勢を張ってみたり、酒におぼれたりするのも男子…。精神面に関しては、とうてい女子には敵わないのが男子です。


我が家の「男の子の子育て」

特集イメージ3 さて、好き放題に書いておりますが、あくまでも経験を元にした「個人的な見解」として、気楽にお付き合いいただければ幸いです。
 私は、職業柄、20代の頃は英語に限らず、知育全般また身体面の発達や情緒面での発達を含め、さまざまな知識を自然と得てきました。やがて、子どもも儲けて実際に知識を実践へと移したわけです。
 人は分かっているようで、未来のことはあまり分かっていません。最初の子のときには、健康にさえ産まれてくれれば、性別などどうでもよい、などと考えていました。できれば「男子が良いなぁ」くらいの思いでした。そして、長男誕生。その後、少し欲が出て「次は女の子が良いなぁ」と期待したものの、見事に裏切られ、引き続き次男誕生。
 そして、男子の子育てが本格化します。
 たまに女の子のいるご家庭にお邪魔すると、愕然とします。普段は気づかないものの、やはり男の子ばかりの家庭は、なにやら柔らかさに欠ける、一種殺伐とした空気があったりします。もちろん、これは悪いことではありません。男子を育ててみたからこそ言える自虐的表現であって、現実では、散々育児を楽しませてもらいました。
 思い返せばいろいろなことがありました。以下、参考になれば幸いです。


いろいろ弱い男子

特集イメージ4 しかし、男の子は弱い。繰り返しになりますが、身体面でも知性の面でも最初は弱く、精神面は最後まで弱い。
 まずは身体面から行きましょう。
 ほんの今までキャッキャと遊び回っていたかと思えば、何か元気がない。熱を出しているわけです。まぁ、熱が出るのは自然なことです。身体が自分で治そうとしているのですから、大いに結構なことです。
 特に幼児は熱を出しやすい。そんな時に覚えておくと良い標語(?)があります。尊敬するあるお医者さんに聞いた話です。
 『赤ければ青信号、青ければ赤信号』
 大人ならちょっと熱が上がるとしんどくて大変ですが、子どもはそうでもないようです。38°Cくらいなら元気に遊んでいたりします。39°くらいの熱も軽く出してしまいます。そのあたりから顔も身体ももう真っ赤です。
 しかし、赤い限りは基本大丈夫。「青信号」です。我が家では慌てて病院へ連れて行くことはせずに、水分を取らせて、小まめに着替えさせる。キャベツの葉っぱを頭にかぶせてあげたこともありました。しばらくするとロールキャベツを作るには少し堅いくらいの茹でキャベツができ上がります。
 そんな調子で、いつでも病院へ行けるように準備はしつつ、見守っていれば、大抵は翌朝にはけろっとしていたものです。
 また、この時期(つまり夏)にかかりやすいのが熱中症です。倅たちも何度かやらかしました。特にプールではうっかりしがちでした。日中、夢中で遊んで、夕食も普通に済ませたかと思ったら、寝かしつけると泣き始め、火が付いたように泣きます。頭が温まってしまっているのでしょう、本来あるべき「頭寒足熱」が逆になってしまっているのでしょうね。
 そんな時には、足を氷水につけてやったものです。身体が勘違いして「足が冷たいぞ!足を温めろ!」となるのかどうかは定かではありませんが、不思議と5〜10分で頭の熱が引いていって、気持ちよさそうにうとうと…、そして、すうっと寝入ってしまいます。ひとの身体とは不思議なものです。
 もちろん、キャベツとか氷水は民間療法なので、ちゃんと医師の指示に従ってください。あくまでも我が家では様子見の応急処置として採用しただけのことです。


「青ければ赤信号」

特集イメージ5 特に小さいときに気をつけるべきは、便秘です。  気づくと1日出ていない、2日出ないとかなり心配です。松田道雄先生の『育児の百科』によれば、2日くらいはまったく心配ないそうですし、もちろん大抵は杞憂に終わります。しかし、直面すれば心配です。普段からの水分補給には、特に夏場には、目を光らせておいた方が良さそうです。
 特に生活のリズムが崩れると、便秘になりやすくなってしまいます。長男が1歳半の時、家族でハワイ旅行に行ったのですが、何やら元気がない。気づけば3日出ていませんでした。念のためにと小児用のイチジク浣腸を携行していたので、仕方なくそれを使いました。使わないには越しませんが、文字通り、背に腹は代えられず。そして、スッキリしたら元気になりました。子どもとはゲンキンなものです。
 長男は身体の弱い男子でしたが、3歳になる頃にはある程度安定してきました。それまでは気が抜けませんでした。
 次男は順調に育ってくれたのですが、これまた、気を抜くといろいろなことが起きるもので、もう、天地がひっくり返るほど驚いたことがあります。
 兄弟とは不思議なもので、同じものを食べさせて、同じように育てても「便」の種類には個性があります。長男の軟便に対して、次男は硬便。切れが良いのなんのって、まるで山羊かウサギのそれのようで、おむつの頃には楽でした。
 楽だったのですが、気を抜いてはいけません。ある日、わざわざ出先まで電話が(その当時まだ携帯電話を持っていなかったので)かかってきました。おしりから大量の血が出たとか…。
 慌てて病院に駆けつけてみると、可哀想に、青ざめてぐったりとした次男がいました。普段から活発でニコニコしている子だったので、その様子を見ると、もう気の毒で心配で、検査の結果を待つ間も気が気ではありませんでした。
 検査結果は腸重積。幸い、バリウムで小腸を押し出して、切らずに済んだことは、今考えても神様仏様に感謝感謝です。本人はもう社会人ですが、胃のレントゲン検査は避けなくてはいけないことは言うまでもありません。


男子は心も弱い

特集イメージ6 男子が弱いのは、身体ばかりではありません。気も弱い。心も弱い。だから誘惑に弱く「甘いささやき」にはあっという間に負けてしまいます。
 女の子は3歳にもなれば、既に女性の特長を備えています。独立心旺盛で、責任感があり、負けず嫌いだったりします。かたや男子は、というと…。
 まぁ、よく泣きます。本人もなぜ泣いているのか分からないのでしょう。だから、ちょっとしたこと(冷蔵庫を開けたり、パソコンの電源を入れたり)で、けろっと笑顔になったりします。
 我が家では、基本は母乳育児でしたが、次男がお腹にいたこともあり、夏だった(暑かった?)こともあり、長男は1歳半で断乳でした。そもそも、そんな年齢だと歯も生え揃いつつあり、大人と同じ食事も摂れるし、また母乳も栄養面での意味はないので、さっさと断乳しても良かったのですが、何となく母乳が続いていました。
 もちろん、母乳には精神面での支えという意味もあります。我が家では、母親が嫌でなければ無理に止める必要は無いのではと考えました。次男坊は、なんと4歳を過ぎてもおっぱいに吸い付いていた次第です。
 乳児なら、3時間おきに目が覚めれば授乳をするのは仕方がありません。しかし、1歳を過ぎても、お腹が減っているわけでもなく、大した用もなさそうなのに、2時間毎におっぱいを求められると、いくら可愛い我が子でも、ねぇ。ということになります。
 そして、おっぱいをあげないと、足下にまとわりついてくる。台所で食事の準備中、包丁を持っているところに、足下で引っかかって転んだりしたら大事です。それでも、くっついてくる。もしくは近くにいるわけです。
 終いには、トイレにまで付いてくる!ママの大モテ期です。あまり続いては嬉しくもないかもしれませんが。
 一体、何が不安なのでしょう?
 ひょっとすると、成長していること自体が不安なのかも知れません。1歳半から2歳くらいというのは、言語の面でも著しい発達を遂げる時期です。知恵が付いてくるというのは、物事が理解できるということです。
 母親と自分が物理的に離れていても、その概念がなかった1歳くらいまでとは異なり、知恵が付いてくれば、何かと不安になるのでしょう。そして、母親にくっついて回るわけです。
 これは、男子に限ったことではないのでしょうけれども、現実を受け入れることができる女子とは違い、目の前のことを消化しきれずにグズグズするのが男子なのかも知れません。


定義してやると安心する

特集イメージ7 そのように気が弱い男子ですが、心も弱い。意志薄弱です。
 先に述べたように、成績優秀者は女子が多いことからも分かります。女子は「やらなくてはいけない」と理解したものはちゃんとやります。乗り物や生き物の図鑑を前に、思いに耽っている男子とは違います。
 そんな頼りない男子ですが、育て方ひとつで大化けする可能性を秘めています。
 思いに耽る男子も、捨てたものではありません。乗り物好きは、物理に繋がるのかも知れない。もちろん勝手な想像ですが、そんな男子たちが交通網を充実させていくのかも知れません。これまた、根拠はありませんが、生き物好きは生物学や化学へとつながり、人類の寿命を延ばすことに貢献しているのかも知れません。
 産業革命から200年。人類の有り様はそれ以前とは様変わりしました。手作業が機械化され、大量生産できるようになると、価格も下がり、ありとあらゆるモノがありとあらゆるヒトの手中に収まるようになったのです。まぁ、その代わりに様々な負の歴史もあるわけですが…。
 もしも、女性だけの世の中だったら、戦争もなく平和で賑やかな社会だったことでしょう。ところが、男子がいたことで、今の世の中になったわけです。良いことも悪いことも生み出す男子ですが、うまく育てれば世の中を変えるような力を発揮するようになるわけです。男子の育児とは、斯くも責任重大ですね。
 では、いかに育てるべきか。男子は、放っておけばサボり出します。好きなことしかしません。これでは、今の競争社会で優れた教育機関への進学は難しく、せっかくの才能の芽を摘んでしまうかも知れません。放って置いても、理解してやってくれる女子とは違います。つまり、「私(母親)とはまったく違う生物」なのです。一体、その正体不明の生き物を相手に、いかにして「やる気」のスイッチを入れたものでしょうか?
 答えは簡単。我が家の場合には「君はこんな人」「君はこうなるんだ」と彼らを定義してあげました。例えば、ボンヤリしていて成績が上がら無くても、ぐじぐじ言わずに、スパッと「大器晩成だ」と言ってやれば良いのです。
 勉強全体のモチベーションに関しては、小学校の頃から、将来の自分がどうなっているのかを考えさせます。「君は医者かな」、「いや弁護士に向いてるかも」、「いや金融かな」、「30歳では独立して起業しているな」など、何でも良いんです。職業の話をしてあげましょう。
 同時に、そのためには「少なくとも東大かな」とか、「MARCH以上は、ね」などなど、これも何でも構いません。「大学へ進んで、勉強している自分」を想像させるのです。望むらくは、より具体的にどの学部へ進んで、なんの勉強をしているのか、そのあたりまで妄想させましょう。
 そうこうしているうちに、自然と勉強する男子に育ちます。
 もちろん、サボり上手な男子ですし、中高生になれば様々な誘惑もあります。うまく行かないこともあれば、親に反抗してみることもあるでしょう。そんな時こそ、より具体的な話をしなくてはいけません。
 親と話ができる限り、子どもたちは、多少ふらふらしても、大枠では目標に向かって進めます。そのためにも、特に小学校高学年から中学校の始めの頃までは、親子での会話を絶やさないように、特に休日などはできる限り、さらに父親を巻き込んで、様々な会話が親子間で交わせる環境を整えておくことが大切です。


男子は知性もゆっくり育つ

特集イメージ8 男子は総じて「ことば」が遅い傾向にあります。女子に比べて「どれだけ」かは個人差がありますが、話す能力に関しては、数段低いかも知れません。話すより重要な、知覚(理解)に関しても劣っています。もちろん、男子の中でもずば抜けて優れた言語能力の持ち主もいれば、女子の中でも言語能力に劣った人もいます。
 今は亡き私の恩師も、「女の子は耳元でささやけば理解するが、男子には見せてやらないと分からないのだよ」と仰っていました。確かにその通り。男子には言い聞かせても分からない、見せてやらないと理解できないのです。
 言語能力も、ヒトの他の能力と同様に生来のものではなく、生まれてからの環境にほとんど依存します。しかし、言語能力に関しては平均的に女子の方が優れているようで、心理実験を行う際にはその点も考慮されるとか…。こうなると、男子を子育て中の方はため息ばかり出てくるかも知れませんが、そこはやり方ひとつでどうにでもなります。
 いつだったか、言語学の専門家たちを交えた飲み会がありまして参加させていただいたところ、雑談の中で「もっと小さい頃に話しかければよかった」とポツリこぼした博士がいました。子どもたちが理解を示すかどうか、そんなことは関係なく根気よく話しかけ続ける。日本語の言語環境を与え続ける。こんな基本的なことが、結果として、子どもの言語力を高めます。
 ということで、まず重要なのが言語、しかも母語の運用力を高めてやることです。
 言語を「コミュニケーションのツール」と考える向きもありますが、それよりも何よりも我々は言語を「思考のツール」として使用しています。
 言語がなければ思考ができません。お腹が空いたらものを食べる動物と、人間との違いを決定付けているのは言語の有無です。動物は直感的に「今」を感じることしかできませんが、言語を持っている人類は、「過去」に学び「未来」に思いを馳せることができます。これはすべて言語のおかげです。
 そして、その言語力が思考力と直結し、極論すれば、言語力の限界が思考力の限界なのです。

 もう少し付け加えると、目の前に広がる景色からどれだけの情報を取り出せるのかは、言語力に依存します。同じ景色を眺めても、子どもの目に映るものと大人の目に映るものでは、情報量が桁外れに違うのです。それはすなわち、どれだけの概念を知っているかという知識の問題です。つまり、知識が多ければ多いほど、ひとつの景色から取り出せる情報量が多くなります。そして、それを司っているのが言語です。
 小さい頃から、たくさんのことば掛けを受けて、たくさんのことばを身につけている子は、より深い思考ができます。
 例えば、「電車」という言葉だけ知っている子には、線路上を走る鉄塊の連なりは「電車」にしか見えません。しかし!ですよ、その一階層下には「都営地下鉄」「JR在来線」「新幹線」「私鉄」などがあり、その下の階層には、「丸ノ内線」「総武線」「東海道新幹線」「小田急線」などがあり、さらにその下の階層には列車の型番や、列車の愛称などもあるのです。
 「電車のことをそんなに知っていて何になるんだ!」などとは言わないでください。男子にとっては、これは言語であり概念であり、科学なのです。世の中が、いろいろなものでできている。そして、そのいろいろなものは、ヒエラルキーを成している。さらに、下層へ行けば、それらを成す工業製品や素材にたどり着きます。それこそ科学なのです。
 ということで、壮大な話になりましたが、科学の根源を成すのが言語であることはお分かり戴けたと思います。そして、その言語を豊富に持っている人が、深い深い思考の持ち主となるのです。


言語と数学

特集イメージ9 電車から科学へと、ずいぶんとえらいことになって参りましたが、本稿もそろそろ佳境にさしかかっております。もう少しお付き合いください。
 さて、言語力ですが、日本語力が思考力の基礎を成すのは言うまでもありませんが、それだけだと少し物足りません。そこで登場するのが、英語です。我田引水ではありません。今の世の中バイリンガルでなければ、思考の幅が制限され、情報収集力に劣り、表現力の足まで引っ張られてしまうのです。まずは、日本語でたっぷり語りかけつつ、『パルキッズ』でバイリンガル育児をしてください。
 ただ、バイリンガルであるだけでは、まだ少し足りません。何が足りないのかというと、数学的な思考です。そして、そのキーワードが「嵩(かさ)」です。


「嵩」

特集イメージ10 フランス語では「シニフィエ」「シニフィアン」、言語学の世界では「意味」「記号」と呼ばれたりする概念があります。「意味」とは対象となるモノやコトで、「記号」とはそれらの名前です。
 具体的には「四つ足でワンと吠える動物」そのもの自体が「意味」です。そしてそれを「イヌ」という「記号」で我々日本人は呼んでいます。英語圏の人たちは、これに “dog” という「記号」をつけています。
 記号は音声が基本です。つまり「イヌ」という音が、意味(対象となる「犬」)を指し示すことになりますが、記号にはさらに音声とは別のレベルの文字記号があります。「いぬ、イヌ、犬、inu」などがそれです。
 少しややこしいと思われるかも知れませんが、これが日本人の数学下手の原因のひとつだと、私は考えています。
 算数では「1, 2, 3…」というアラビア数字=記号に、「イチ、ニ、サン」という音声記号とのペアを割り振っていきます。そして、筆算や方程式など様々な計算が行われるわけです。ところが、ややもすれば、記号上でのやりとりに終始して、意味が伴わないことが少なくないのです。
 例えば、「98」と「99」の記号の違いは識別できても、それらの嵩(量)の違いを識別できないのが我々の大半ではないでしょうか。テーブルにばらまかれている十円玉が20個なのか19個なのかの違いも、直感的には分からない人が多いでしょう。これは、記号は分かるが意味が分かっていないということです。幼児期であれば「ドッツカード」などで、この意味を記号と結びつけることが可能です。
 もちろん、「98」と「99」を瞬時に見分けられるようなことができなくても構いません。しかし、「500円玉何個で100万円になるか」という程度のざっくりとした「嵩」の感覚、つまり、100万円は1万円がいくつあるのか、1万円は500円玉いくつになるのか、といった程度の感覚は身に付けておく必要があるでしょう。
 これをせずに、「速度=距離÷時間」などと公式ばかりで数字いじりをするから、日常感覚としての時間や距離、あるいは量や重さといった嵩の感覚が身に付かないのでしょう。
 我が家では、これを一挙に解決する方法として、料理を積極的に取り入れました。料理は、調理時間や分量など、さまざまな「嵩」の感覚が錯綜した取り組みです。「20人分のチキンカレー」を作るには、何がどれだけ必要で、どれだけの調理時間がかかるでしょう。そのあたりが直感的に分かるような「嵩」の感覚を身に付けさせておくと良いのです。

 さてさて、駆け足で見て参りましたが、最後は、毎度の如く理屈っぽくなってしまったことをお許しください。今回は男子の育児のポイントを、我が子の育児を振り返りながら書いてみました。少しでも参考にして戴き、優れた男子に育てて戴ければ幸いです。

 そして、これで本当の最後になりますが、ひとつお願いがあります。
 これは男子の育児に限りませんが、お子さんを見るときに「悪いところは無視」するように心がけてください。苦手なところ、気になるところを直そうとするのが人の常です。でもその精神が、子ども、特に男子の成長を阻みます。ひとつ「悪いところは無視」、そして「良いところだけを見て」あげてください。これは親にしかできないことです。深い愛がなければできないことなのです。ぜひとも実践して戴きますよう、お願いしつつ、今回はこのあたりでキーボードを叩くのを止めたいと思います。

【編集後記】

今回の記事をご覧になった方におすすめの記事をご紹介いたします。ぜひ下記の記事も併せてご覧ください。
ことばを伸ばす親の話し方
地頭の良い子の育て方
中学受験に英語の時代到来!


【注目書籍】『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)

特集イメージ9 児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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