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2021年5月号ハワイアン子育てジャーナル

Vol.119 | 知力と非認知能力を兼ね備えた子どもに育てる

written by 船津 徹(Toru Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2105
船津徹「知力と非認知能力を兼ね備えた子どもに育てる」(株式会社 児童英語研究所、2021年)


 2020年から小学校で英語が正式教科となり、プログラミングも必修化されました。「必要なものは小学校で詰め込め!」ということでしょうか?国語、算数、理科、社会、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、道徳の10教科に加えて、英語やプログラミングも学ばなければなりません。
 さらに「アクティブラーニング」「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」などの「考える力」の育成も学校教育に取り入れる機運が高まってきていますから、これからの子どもたちは大変です!
 アメリカでも社会の変化に適応するために、学校教育がここ20年で大きく変わってきています。一昔前の主要教科と言えば、英語、算数、理科、社会、体育、アートでしたが、現在は「コンピューター教育」や「STEM教育/科学・技術・工学・数学」の比重が増してきています。
 社会の変化によって子どもたちが身につけなければならない「新しいスキル」が次々と増えていく中で、今子育てをしている親たちは、自分たちが経験してきた「学び」と、次世代の子どもに要求される新しい「学び」の狭間で、「何を、どう教えればいいのか?」大きな不安を感じていることでしょう。
 でも慌てる必要はありません。世の中がどう変わろうとも、学校や社会で成功する子どもを育てるために親がすべきことは今も20年後も変わりません。それが「知力と非認知能力をバランス良く育てる」ことです。このポイントを意識して子育てにあたれば、どんな変化にも適応できるたくましい子どもに育ちます。


非認知能力とは具体的に何か?

 「非認知能力」とは何なのか?これについては諸説がありますが、具体的な指針として米国の教育学者アーサー・コスタ博士が提唱する「16の習慣」をご紹介したいと思います。
 アーサー・コスタ博士はカリフォルニア州教育省のカリキュラム(日本の学習指導要領)制作委員として、長らく教育改革に取り組んできました。全米の教育者や研究者と議論を重ねる中で、学校や社会で成功する子どもたちにはいくつかの「共通する習慣」があることが分かったのです。
 それら「共通する習慣」をカリフォルニア州の学校に実験的に取り入れた所、たちまち実践した教師、生徒、父兄たちに大きな成果をもたらしました。以来「16の習慣」は全米の学校で子どもたちに指導されるようになりました。
「16の習慣」は良い行動習慣の集大成なのですが、16もありますから、これら全てを一度に身につけさせようとしてもうまくいきません。まずは一つの習慣からスタートし、時間をかけて他の習慣を指導します。以下がコスタ博士の「16の習慣」です。

1 やり抜く習慣・・・・・・・あきらめない、継続する
2 自制する習慣・・・・・・・衝動をコントロールする
3 共感して聞く習慣・・・・・・・注意深く聞く
4 柔軟に考える習慣・・・・・・・多様な見方をする
5 思考を思考する習慣・・・・・・自分の思考の偏りに気づく
6 正確さを追求する習慣・・・・・・・見直す、洗練する
7 疑問を持つ習慣・・・・・・・なぜ? どうして?と問う
8 知識や経験を活かす習慣・・・・・・・過去の経験から学ぶ
9 明晰に考え、伝える習慣・・・・・・・論理的に思考し表現する
10 五感を使う習慣・・・・・・・感性を活かす
11 創造、革新する習慣・・・・・・・ユニークであれ、独創的であれ
12 発見を楽しむ習慣・・・・・・・よく観察する、夢中になる
13 チャレンジする習慣・・・・・・リスクを冒す、勇敢であれ
14 ユーモアの習慣・・・・・・・・・肩の力を抜く、楽観的になる
15 共に考える習慣・・・・・・協力する、共に学ぶ
16 学び続ける習慣・・・・・・・・興味を持ち続ける
(出典「Habits of Mind」Arthur Costa)


「16の習慣」を取り入れたワイキキ小学校の話

特集イメージ3 日本人に馴染み深いハワイ。あまり知られていませんが、ワイキキビーチのすぐ近くにあるワイキキ小学校はアメリカの学校にとって最大の栄誉である「ブルーリボン賞」を2007年と2013年の2回受賞している優秀な学校です。
 優秀校と言っても、最初から優秀な生徒を選抜して入学させる私立学校ではありません。ワイキキ小学校は、地域に住む子どもであれば誰でも通うことができるごく普通の公立小学校です。
 そのような環境にも関わらず、成績優秀者を多く輩出していることを知った私は、その秘密を探るべくワイキキ小学校を訪問しました。そして、幸運にも校長先生から直接お話を伺う機会を得ることができたのです。
 校長先生から紹介されたのが、前述のアーサー・コスタ博士が提唱する「非認知能力」に着目した教育理論でした。ワイキキ小学校は「16の習慣」をカリキュラムに組み込み、非認知能力を鍛える指導を実践し、成績不振校から優秀校へと、生徒の学力を一気に向上させることに成功したのです。
 クラスルームの様子を観察すると、生徒参加型(アクティブラーニング)のエネルギッシュな雰囲気の中で、生徒が自分の感情をコントロールしながら、懸命に思考し、自己表現し、チャレンジしていることが分かります。何より生徒も先生も、皆表情が明るく「学び」を楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。
 ワイキキ小学校の校舎内には「16の習慣」を子どもたちに意識付けるためのスローガン、イラスト、ポスターが所狭しと貼られています。「16の習慣」の中から毎月1つの習慣にフォーカスを当てて、先生と保護者が協力して子どもたちに指導しているのです。もちろん生徒にも習慣を意識することが求められます。
 例えば「やり抜く習慣」がテーマであれば、授業中に分からない問題に出会った時に「あきらめないで!」と生徒たちが声をかけ合います。先生も「考え続けよう!」「他に考えはない?」と声をかけます。家庭でも親が「がんばってやろう」と励ましてあげるのです。
 子どもを取り巻く人たちが同じメッセージを繰り返し伝えることで、その行動が習慣になっていきます。いわば「あいさつのしつけ」のようなものです。親、兄弟、友だち、周囲の大人が「おはよう」と毎日声をかけることで、ごく自然に子どもも「おはよう」とあいさつできるようになりますね。


「知力」と「非認知能力」は互いに高め合う

 「非認知能力」の重要性が世の中に知られるようになり「勉強が先か、非認知能力が先か?」という禅問答のようなやりとりがあちこち行われるようになりました。私はこれについて以下のように答えています。
「勉強も非認知能力も、どちらも大切です。バランス良く育ててください」
 どちらが先か、あるいはどちらかに重点を置くのかではなく、どちらもバランス良く育てていくことが大切です。知力と非認知能力はお互いに絡み合いながら、お互いが影響を与え合って高いレベルへと発達していきます。
 勉強と非認知能力はいわば車の両輪なのです。どちらかに偏っても車は真っすぐに進むことができません。
 例えば非認知能力の中でも重要な「やり抜く習慣」を身につけるには、スポーツや楽器などの技能を上達させるために、単調な反復練習を何年間もやり続けなければなりません。このプロセスなくして「やり抜く習慣」を身につけることはできません。
 世界トップのエリート大学と言えばハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学に代表されるアイビーリーグ大学です。アイビーリーグ大学に合格するには「学力」が高いだけでは不十分です。学校の成績がオールAでも、SATと呼ばれる大学入試テストで満点を取っても、スポーツ、吹奏楽、オーケストラ、演劇などの課外活動に取り組んでいない生徒は、ほぼ合格できないのです。
 次世代のリーダー育成を目的としているアイビーリーグ大学は、長い学校の歴史の中で、どんな資質を持った人材が成功を収めるのか、過去の膨大なデータから分析しています。その答えが、学力と非認知能力を兼ね備えた人材、勉強だけでなくスポーツや音楽などに真剣に取り組んできた人材なのです。
 非認知能力はスポーツ、音楽、演劇など集団の課外活動に従事することで効果的に育てることができます。学生時代に勉強に加えて課外活動に本気で取り組むことは並大抵の努力ではありませ。しかし、忙しい中でも努力を継続してきた学生は、学業でも社会に出てからも、あきらめることなく自己実現に向かって進み続けていくことができるのです。


集団活動が非認知能力を伸ばす!

 東京成徳大学の夏原隆之助教授が小学3年生〜中学3年生までの1581人を対象に実施した「子どもの非認知スキルの発達とスポーツ活動との関連性」調査によって、スポーツ経験のある子どもは、自制心、忍耐力、目標指向などの非認知スキルが未経験者に比べて高いことがわかりました。
 またスポーツの種目による違いでは、「集団スポーツ経験者」の方が、非認知スキルが高い傾向があること、「スポーツ活動歴が長い」子どもの方が非認知スキルが高い傾向にあることが分かりました。
 同教授はその理由を「周囲の仲間の存在や集団への帰属意識が影響しており、協働学習を通じて非認知スキルを獲得していると思われる」と考察しています。
 日本で子どもの習い事というとピアノ、バイオリン、水泳など個人種目を選ぶ傾向があるようです。もちろん個々の技能を向上させる上で個人種目に取り組むことは意義があります。しかし可能であれば、集団の中で技能を向上させる環境を何か一つ子ども時代に与えていただきたいのです。
 非認知能力を鍛えるにはスポーツに限らず、吹奏楽、オーケストラ、ダンス、演劇など芸術系の習い事でも構いません。ポイントは「集団の習い事」です。
 アメリカで子どもの習い事と言えばサッカー、フットボール、バスケットボール、野球などの「集団活動」が中心です。またテニス、ゴルフ、水泳といった個人競技に従事させる場合も、チームに入れて、チーム単位で競わせることが一般的です。
 集団活動では、能力の高い一人がどれだけ頑張っても、周りと上手くコミュニケーションをとり、良い関係を構築していかなければ、チームとしてまとまりを欠き、試合やコンテストで勝つことはできません。
 チームが一丸となり共通の目標に向かって努力していく過程で、周りとうまく人間関係を構築したり、お互いの良い部分を活かしたり、励まし合って技能をさらに伸ばしていく能力を鍛えることができます。
 非認知能力は子どもの一人の努力で身につけていくものではありません。その多くは、幼児期から青年期を通して、両親、兄弟、親戚、友だち、先生など、信頼できる周りの人たちとの関わりの中で身につけていくものです。
 まずは身近な「集団の習い事」に参加させることから始めてみてください。集団の習い事を成功させるポイントは家庭においてもコツコツとした練習を継続することです。親の励ましとサポートがあれば、子どもはどんな技能でもあきらめずに身につけていくことができます。


ハワイイメージ1【編集部より】
船津徹先生の新著『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)全国書店にて発売中。困難に負けない「心の強い子」の育て方を詳しく紹介する一冊です。ポストコロナを生き抜くたくましい子どもを育てる知恵が満載です。ぜひご一読ください。▶︎詳細・お申し込みはこちらをクリック
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プロフィール

船津 徹(Funatsu Toru)

1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2105年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。

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