なぜ会話より読みを重視するのですか?
「小さいうちは、読むことより話すことが先ではありませんか。」
会話を軽視しているのではなく、読みが英語力を大きく広げるからです
確かに、この疑問はもっともです。
母語の発達では、子どもはまず周囲の言葉を聞き、少しずつ話し始め、その後で文字を学びます。
そのため、おうち英語でも、まず英会話をさせ、読みは後回しでよいように感じられるかもしれません。
しかし、家庭で第二言語として英語を育てる場合、母語とまったく同じ環境を作ることはできません。
日本語で生活できる家庭では、子どもが英語を使わなければならない場面は限られます。一方、文字を読めるようになると、家庭にいながら、自分の力で触れられる英語を大きく増やせます。
そこでパルキッズでは、英語音声を聞き取る土台が育ってきた後、文字と音を結び付ける「読み」を重視しています。
聞いてきた英語を整理し、さらに大きく育てるための力です。
家庭では、英語を話す必然性が生まれにくいものです
子どもが英語を理解していても、必ずしも家庭で英語を話すとは限りません。
日本語で話せば、家族へ気持ちや要求をすぐに伝えられるからです。
英語を話さなければ食事ができない、友だちと遊べない、授業へ参加できないという環境でなければ、子どもが自発的に英語を選ぶ必然性は高くありません。
そのため、保護者から見ると、「長く取り組んでいるのに英語を話してくれない」「成果が見えない」と感じることがあります。
しかし、発話が少ないことだけで、子どもの中に英語が蓄積されていないとは判断できません。
読めるようになると、英語の成長が見えやすくなります
読みの力は、子どもの中に蓄積されてきた英語を、目に見える形で表しやすい技能です。
英文を声に出して読める。初めて見る短い単語を解読できる。町中の英語表記を見つけて口にする。絵本の内容を自分で読み取る。
こうした様子が現れると、保護者は、子どもがそれまで英語音声へ触れ、音や語のまとまりを蓄積してきたことを実感しやすくなります。
- 音源で聞いた表現を絵本の中で見つける
- 文字を見て、知っている英語の音を思い出す
- 初めて見る規則的な単語を音へ変換する
- 短い英文を意味のまとまりとして読む
- 一人で読める本の範囲を少しずつ広げる
- 英検などの問題を通して理解度を確認する
発話は、相手、場面、性格、必要性などに左右されます。一方、読みは、文字が目の前にあれば、子ども自身のペースで取り組めます。
そのため、家庭学習では、読みが成長の分かりやすい指標になりやすいのです。
音と文字が結び付くと、単語を整理しやすくなります
人間は、聞こえた音声を録音機のように、そのままの形で保存しているわけではありません。
脳の中では、さまざまな話者や速度、音の高さの違いを越えて、同じ語や同じ音として扱えるように、音声をある程度抽象化して処理します。
そこへ文字の知識が加わると、聞いてきた音と綴りを対応づけ、似た音を持つ単語を区別しやすくなります。
例えば、「hat」「hut」「hot」は綴りが似ていますが、母音と意味が異なる別の単語です。
これらの音をある程度聞き分けられる子どもが文字を学ぶと、それぞれの音声を「h-a-t」「h-u-t」「h-o-t」という異なる綴りと結び付けられます。
文字は音声の代わりになるものではありません。音として知っている語に、視覚的な形と綴りの情報を加え、語の記憶を整理する手がかりになります。
Ehri(1998)は、英語の単語を読む力の発達に、書記素と音素の対応に関する知識が不可欠であると論じています。
| 段階 | 子どもの中にある英語 | 読みが加わる利点 |
|---|---|---|
| 音声に触れる段階 | 音、リズム、語や表現のまとまりとして蓄積する | 英語の音声体系に慣れる土台となる |
| 音と文字を結ぶ段階 | 聞いて知っている語と綴りを対応づける | 語の形や音の違いを整理しやすくなる |
| 自分で読む段階 | 未知の綴りを音へ変換し、意味を推測する | 自力で新しい語や表現に出会える |
パルキッズの「読み」は、日本語訳を作るための読みではありません
パルキッズが目指す読みは、英文を一語ずつ日本語へ置き換えるための読みではありません。
すでに耳で触れてきた英語を文字で確認し、英語の語順のまま意味を捉えるための読みです。
音源で聞いたことのある表現を絵本で見る。絵や場面を手がかりに意味を確認する。文字を見たときに、頭の中にある英語の音がよみがえる。
このように、音声、文字、意味を結び付けることで、聞いてきた英語が読みへ発展します。
聞いてきた英語を英語の文字体系へつなげます。
綴りは、第二言語の音にも影響を与えます
第二言語学習では、文字を学ぶことが音声の捉え方や発音へ影響することがあります。
Bassetti(2008)は、第二言語の綴りが音声入力と相互に作用し、学習者の第二言語音韻表象に影響することを論じています。
また、Bassetti(2017)は、英語の二重子音字を見たイタリア語母語話者が、英語では通常区別されない子音の長さを発音に反映する傾向を報告しました。
これは、綴りが発音や音韻表象を整理する助けになる一方、母語の文字と音の対応規則を第二言語へ持ち込むことで、目標言語とは異なる発音を生み出す場合もあることを示しています。
文字は、音声の後に結び付けることが重要です
英語音声を十分に知らない段階で、ローマ字や日本語式の読み方だけを頼りに英単語を読むと、綴りから作った不正確な音が定着する可能性があります。
先に英語音声へ触れ、目標となる音を持ったうえで文字を結び付けると、綴りを英語の音へ対応づけやすくなります。
文字は、音声の後に結び付けることが重要です
英語音声を十分に知らない段階で、ローマ字や日本語式の読み方だけを頼りに英単語を読むと、綴りから作った不正確な音が定着する可能性があります。
先に英語音声へ触れ、目標となる音を持ったうえで文字を結び付けると、綴りを英語の音へ対応づけやすくなります。
自分で読めるようになると、英語入力が大きく増えます
読みを重視する最大の理由の一つは、自分で英語入力を増やせるようになることです。
音声による学習では、誰かが話す、音源を再生する、動画を見るなど、英語が外から提示される必要があります。
一方、読めるようになれば、子どもは自分で本を開き、自分のペースで英語へ触れられます。
絵本から短い物語へ、短い物語から児童書へと進むにつれて、一度に触れられる語彙、表現、文法、知識の範囲が大きく広がります。
- 絵本を自分のペースで繰り返し読める
- 聞き逃した語へ戻って確認できる
- 初めて出会う語を文脈の中で学べる
- 日常会話では現れにくい語彙や表現に触れられる
- 物語、科学、歴史など多様な内容を英語で学べる
- 年齢が上がっても、自力で英語入力を続けられる
Share(1995)のSelf-teaching Hypothesisでは、子どもが未知の文字列を音韻的に解読する一回一回の経験が、その単語固有の綴りを学ぶ機会になると考えられています。
つまり、基本的な文字と音の対応を身につけると、子どもは新しい単語を読むたびに、その単語について自分で学習できるようになります。
すべての英単語を大人が一つずつ教えなくても、読む経験そのものが、新しい語彙や綴りを学ぶ機会になるのです。
多読は、会話だけでは出会いにくい英語を届けます
日常会話で使われる語彙や文型には、ある程度の偏りがあります。
家庭内の短い会話だけでは、「着替える」「食べる」「遊ぶ」といった日常的な表現が中心になりやすく、抽象的な考えや幅広い知識を表す語には出会いにくくなります。
本には、会話だけでは触れにくい語彙、複雑な文、出来事の説明、人物の心情、科学や社会の知識が含まれています。
読む量が増えるほど、英語の語彙や表現へ触れる機会が増えます。
また、文章は消えずに残るため、分からない部分へ戻ったり、前後を読み直したりできます。会話よりも自分のペースで処理できる点も、学習者にとって大きな利点です。
読みは、英検などの客観的な成果にもつながります
英検では、級に応じて語彙、文法、読解、リスニング、ライティング、スピーキングなどが測られます。
そのため、英検合格は読みだけの成果ではありません。
しかし、問題文や選択肢を正確に読み、語彙や文の意味を理解する力は、多くの級で重要な土台になります。
かけ流しや日々の音声学習では成果が見えにくかったご家庭でも、子どもが英文を読んだり、英検へ合格したりすると、それまでに蓄積されていた力を実感しやすくなります。
ただし、英検合格だけを最終目的にする必要はありません。
検定は、英語力の一部を客観的に確認する機会として活用し、その先の多読、学習、英語による情報収集へつなげることが大切です。
「読む」と「話す」は、どちらか一方を選ぶものではありません
パルキッズが読みを重視するからといって、話す活動を不要と考えているわけではありません。
読む力と話す力には共通する語彙や文法知識がありますが、まったく同じ技能ではありません。
読みでは、文章へ戻りながら自分のペースで意味を処理できます。
会話では、相手の発言をその場で聞き取り、短時間で内容を考え、適切な表現を選び、発音して返す必要があります。
| 技能 | 主な特徴 | 育てられる力 |
|---|---|---|
| 聞く | 時間とともに流れる英語音声を処理する | 音声知覚、語の認識、内容理解 |
| 読む | 文字から音や意味を取り出し、自分のペースで理解する | 語彙、綴り、文法、読解、知識 |
| 書く | 伝えたい内容を整理し、英語の文として表す | 文章構成、語彙選択、文法の正確さ |
| 話す | 相手や状況に応じ、英語を即時に組み立てて発話する | 流暢さ、発音、対話調整、即時処理 |
読んで多くの語彙や表現を知り、書くことによって自分の考えを英語の文へ組み立てられるようになると、自由な発話を支える言語材料が増えます。
ただし、文章を書けるだけで、そのまま流暢に会話できるとは限りません。
会話には、英語を瞬時に取り出す練習、相手の発話に反応する経験、発音やリズムを調整する経験も必要です。
読みと書きで英語を組み立てる力を育て、そのうえで実際の対話へつなげることで、暗記した定型表現だけに頼らない発話を目指せます。
パルキッズが考える英語学習の順序
パルキッズでは、最初に英語音声へ繰り返し触れ、英語の音やリズムを捉える土台を育てます。
次に、聞いてきた英語を文字と結び付け、読む力へ発展させます。
読むことで語彙や表現を増やし、内容を理解できる英語の範囲を広げます。
そのうえで、書くことによって、自分の考えを英語の文として組み立てる経験を重ねます。
最後に、それまでに蓄積した音声、語彙、文法、内容を、実際の会話や発表の中で使えるようにしていきます。
会話だけに偏ると、使える表現が限られることがあります
十分な音声理解や語彙、読みの経験がない段階で、会話練習だけを繰り返すと、決められた質問と答えの暗記が中心になることがあります。
「How are you?」「I'm fine.」「What color do you like?」「I like blue.」といった表現を使えることは大切です。
しかし、自由な会話では、目の前の状況や自分の考えに応じて、既習の語彙や文法を組み合わせなければなりません。
そのためには、日常会話だけに限定されない幅広い英語入力と、文章を理解し、自分で文を作る経験が必要です。
読書によって豊富な語彙や表現を蓄積し、書く活動によって考えを英語にする経験を積むことが、自由な発話の内容を支えます。
結論:読みは、聞いてきた英語を整理し、自力で伸び続ける力へ変えます
パルキッズが読みを重視するのは、話すことを軽視しているからではありません。
日本語で生活できる家庭では、子どもが英語を話す必然性は限られます。一方、読めるようになれば、子どもは自分の力で英語へ触れ、新しい語や表現を学べるようになります。
読みは、聞いてきた英語を文字と結び付け、語の音、綴り、意味を整理する助けになります。
さらに、絵本、物語、児童書、英検問題などを通して、会話だけでは出会いにくい語彙や文法、知識へ触れられます。
ただし、読みだけで会話が自動的に完成するわけではありません。会話には、相手の英語をその場で理解し、自分の英語をすぐに取り出して発話する練習も必要です。
まず聞く力を育て、音声と文字を結び付けて読みへ進み、読むことで英語入力を増やし、書くことで考えを英語として組み立てます。
その豊かな土台を実際の対話へつなげることで、暗記した決まり文句だけではない、内容のある英語を使えるようになります。
読みは、見えにくかった音声学習の成果を見える形に変えると同時に、子どもが将来、自分の力で英語を学び続けるための大切な手段なのです。
REFERENCES
- Bassetti, B. (2008). Orthographic input and second language phonology. In T. Piske & M. Young-Scholten (Eds.), Input Matters in SLA (pp. 191–206). Multilingual Matters. DOI
- Bassetti, B. (2017). Orthography affects second language speech: Double letters and geminate production in English. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 43(11), 1835–1842. DOI
- Ehri, L. C. (1998). Grapheme-phoneme knowledge is essential for learning to read words in English. In J. L. Metsala & L. C. Ehri (Eds.), Word Recognition in Beginning Literacy (pp. 3–40). Lawrence Erlbaum Associates. DOI
- Share, D. L. (1995). Phonological recoding and self-teaching: Sine qua non of reading acquisition. Cognition, 55(2), 151–218. DOI
