YouTubeに無限にある音源を使えば済むのでは?
「たくさん英語を聞かせることが大切なら、YouTubeで十分ではありませんか?」
英語学習にYouTubeを使うこと自体は悪くありません
これは、今の時代ならではのご質問です。
YouTubeには英語の歌やアニメ、絵本の読み聞かせ、ネイティブスピーカーによる動画など、数え切れないほどの英語コンテンツがあります。しかも、その多くが無料で利用できます。
これだけ豊富な教材があるのなら、わざわざ専用教材を使わなくてもよいのでは、と考えるのも自然でしょう。
もちろん、英語教育の一環としてYouTubeを使用することが悪いわけではありません。
英語の音声知覚がある程度育った子どもにとっては、さまざまな話者やアクセント、話す速度、表現に触れることは、実践的な英語力を伸ばすうえで大きな意味があります。
どの段階で、どのように使うかです。
英語学習の初期段階では、多様性より規則性が重要です
しかし、英語耳がまだ十分に育っていない初期段階では、話は少し違います。
この時期に大切なのは、多様な英語を無作為に聞かせることよりも、子どもの脳が英語の「規則性」を見つけやすい音声環境を作ることです。
人間の脳は、聞こえてきた音を一つひとつ個別に覚えているのではありません。繰り返し現れる音の並びやリズム、強弱、語の切れ目などから規則性を見つけ出し、音のカテゴリーを少しずつ作り上げていきます。
このような学習は「統計的学習」または「統計・帰納的学習」と呼ばれています。
Saffran、Aslin、Newport(1996)は、8カ月児が音節の並びに含まれる統計的な規則性を利用し、連続した音声から語に相当するまとまりを見つけられることを示しました。
さらに、Kuhlら(1997)は、乳児に向けた発話では、大人に向けた発話よりも母音の特徴が明確に示される傾向があることを報告しています。乳児に向けた明瞭で特徴のある発話は、言語の音の違いを捉える手がかりになります。
その意味で、最初に必要なのは、できるだけ多くの種類の英語を浴びせることではありません。
同じ話者による、聞き取りやすく、繰り返しの多い音声環境です。
こうした音声環境を繰り返し経験することで、子どもの脳は英語の音の分布や語の切れ目、よく現れる音のまとまりを見つけやすくなります。
この積み重ねによって、英語の音声知覚の土台が少しずつ形成されていくのです。
YouTubeは動画ごとに音声環境が変わります
一方、YouTubeでは、動画を変えるたびに話者も話し方も音質も変わります。
話すテンポも異なれば、効果音やBGMの使い方もさまざまです。自動再生やおすすめ機能によって次々と異なる動画が表示されるため、子どもが毎日まったく違う音声環境に触れることも珍しくありません。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただし、英語の音韻体系がまだ十分に形成されていない時期には、あまりにも変化の多い入力に触れると、音の規則性よりも、映像や場面の変化へ注意が向いてしまうことがあります。
| 比較項目 | 初期段階の専用音源 | 一般的なYouTube視聴 |
|---|---|---|
| 話者 | 一定の話者を中心に設計されている | 動画ごとに話者が変わりやすい |
| 音質 | 明瞭で安定している | 録音環境によって差がある |
| 語彙・表現 | 計画的に繰り返される | 動画ごとに内容が変わる |
| 学習の目的 | 音声知覚の土台を作る | 娯楽や情報提供など目的が多様 |
| 視聴の流れ | 一定の順序で継続できる | おすすめ動画によって変化しやすい |
多様な話者の英語は、土台ができた後に役立ちます
日本人学習者を対象とした英語音声知覚の研究では、新しい音韻カテゴリーを形成する際には、話者の違いも学習に影響することが報告されています。
Lively、Logan、Pisoni(1993)は、日本人の英語学習者を対象に、複数の話者による英語の「r」と「l」の聞き分け訓練を行い、話者の多様性が新しい音声カテゴリーの学習に果たす役割を検討しました。
つまり、さまざまな話者の英語に触れることには重要な意味があります。
ただし、この研究の対象は乳幼児ではなく、すでに母語の音韻体系を身につけている成人の英語学習者です。
多様な話者による発話を聞くことが効果を発揮しやすいのは、学習の基礎となる音声知覚をある程度形成した後だと考えられます。
赤ちゃんが日本語を身につける過程と同じです
赤ちゃんが日本語を身につける過程を考えてみると、分かりやすいでしょう。
赤ちゃんは、毎日、世界中のさまざまな日本語をランダムに聞いて母語を覚えるわけではありません。
家庭の中で、主に親や家族が話す比較的安定した日本語を繰り返し聞くことで、日本語の音のまとまりやリズム、語の切れ目を少しずつ身につけていきます。
また、乳児は大人同士の会話よりも、大人が乳児に向けて話す、ゆっくりとして抑揚の豊かな発話を好んで聞くことも知られています。
Fernald(1985)は、4カ月児が成人向けの発話よりも、乳児に向けた抑揚豊かな発話を好んで聞くことを報告しています。
パルキッズは、家庭に安定した英語環境を作ります
パルキッズの音源は、このような音声知覚形成の仕組みを家庭の中で再現することを目的に設計されています。
まずは、明瞭で安定した英語を毎日繰り返し聞くことで、英語の音の骨格を作ります。
その土台ができたら、YouTubeや映画、海外の動画など、より多様な英語へと広げていけばよいのです。
結論:YouTubeは、英語耳が育った後に世界を広げる教材です
YouTubeは「英語学習の入口」として無作為に使うのではなく、安定した英語音声によって英語耳の土台が育った後に、英語の世界を広げる教材として活用するのが理想的です。
最初は、同じ話者による明瞭で安定した英語を、一定期間繰り返し聞かせます。その後、YouTubeや映画などを使って、さまざまな話者やアクセント、話す速度、表現へと広げていきます。
YouTubeを使うこと自体が問題なのではありません。音声知覚形成の順序を踏まえて活用すれば、YouTubeは非常に優れた英語学習ツールになります。
REFERENCES
- Fernald, A. (1985). Four-month-old infants prefer to listen to motherese. Infant Behavior and Development, 8(2), 181–195. DOI
- Kuhl, P. K., Andruski, J. E., Chistovich, I. A., Chistovich, L. A., Kozhevnikova, E. V., Ryskina, V. L., Stolyarova, E. I., Sundberg, U., & Lacerda, F. (1997). Cross-language analysis of phonetic units in language addressed to infants. Science, 277(5326), 684–686. DOI
- Lively, S. E., Logan, J. S., & Pisoni, D. B. (1993). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: II. The role of phonetic environment and talker variability in learning new perceptual categories. The Journal of the Acoustical Society of America, 94(3), 1242–1255. DOI
- Saffran, J. R., Aslin, R. N., & Newport, E. L. (1996). Statistical learning by 8-month-old infants. Science, 274(5294), 1926–1928. DOI
