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2019年6月号特集

Vol.255 | 成果の上がらない学習法の見極め方

お金と時間の無駄を省くための目利きの仕方

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1906/
船津洋「成果の上がらない学習法の見極め方」(株式会社 児童英語研究所、2019年)


特集イメージ1 世の中には、いろいろな英語学習法があります。最も広く行われているのが、言うまでもない学校英語です。文法を勉強して英単語を日本語訳とペアで覚え、その知識でもって英語を日本語に訳したり、逆に日本語を英語に訳したりする学習法です。
 あまり声を大にして言うことでもありませんが、学校英語的な文法・対訳方式は絶望的な成果しか上がらないことは皆さん体験済みでしょう。文部科学省自体が行っている中高生の英語力調査がそれを裏付けているのですから、世話がありません。
 それで「英語はもういいや」とあきらめがつけば、それはそれで幸せなことです。しかし、なかなかあきらめがつかない日本人は少なくありません。「英語が喋れる」ようになりたいのですね。英語に対する一種の「憧れ」のような気分があるのかもしれません。そしてそんな「英語が喋れる」ようになりたいという気分につけ込むかのように、いろいろな英語学習方法が巷にあふれることになるわけです。
 しかし、問題は個人の枠を遙かに超えています。英語が好きとか嫌いとか言っている場合ではないのが現代日本社会。日本の社会自体が「個人の能力を測る指標」としての英語力を求めているのです。各種の試験、特に大学受験では英語力がものを言いますし、就活でも英語ができる人が優遇されるわけです。それで済めば良いのですが、転職でも昇進でもことある毎に英語力が求められます。
 このように、結局は何らかの方法で「使える英語」を身につけなくてはならない状況に追い込まれる人が少なくありません。少しでも豊かな人生を築きたい、少しでも上を目指そうと思うと、そこには「英語」の壁が現れるのです。


あてどなく続く放浪の旅

特集イメージ2 さて、それではどうするかとなると、これがまた一筋縄ではいきません。世の中には英語学習法や教材があふれています。
 文法中心でうまく行かなかった学校英語の反省からか、「やはり英語は実際に使わないと」と英会話スクールへ通う人も少なくありません。それで英語が使えるようになれば、一件落着なのですが、結局英会話でも英語は身に付かないわけです。
 さて、座学ではダメ、実際に使ってみても身に付かなかった。すると今度は、まるで魔法のように「聞くだけ」で英語ができるようになるという教材に走ってみたりします。これで英語ができるようになれば、これまた世話がない話で、聞くだけで英語ができるようになるわけがありません。そこで、オーソドックスに多読を始めてみたりもします。「多読」自体は結構なことですが、そうは問屋が卸しません。結局、数ページで諦めてしまったり…。
 英会話もダメ、聞き流しもダメ、多読も難しい、となると「これだけでできるようになる!」的な本を手に取ってみたりするかもしれません。
 笑い事ではありませんが、私自身も『たった80単語!読むだけで「英語脳」になる本』など書いているので、こんな事を言える筋合いではありません。しかし、まぁ、書籍というのは単なる入り口に過ぎないわけで、その先に英語力があるわけです。あくまでも「手がかり」であって、読むだけで劇的にどうにかなるものではありません。
 それでも、受験や就活、昇進試験が迫ってくれば、結局、各種のノウハウ本に手を伸ばすしかありません。そのたびに、傍らには読み捨てられた参考書が積み重なっていくのではないでしょうか。
 とどのつまり、多くの日本人は、英語を身につけるなら「留学する以外に方法がない」「私には無理」と絶望的な思いを秘めているのかもしれません。しかし、諦めの気持ちを抱きながらも、新しい方法に出会えば、とりあえずそこに薄い望みをかけずにはいられない…。これが日本人と英語の、本当のところではないでしょうか。


英語を身につける方法は分かっている

特集イメージ3 しかし、一方で英語を身につける人は確実にいます。英語を身につけた人と、英語を身につけられない人、その両者を隔てているものは一体何なのでしょうか。
 答えを言ってしまえば簡単です。
 英語ができるか否かの分かれ道は、「入力」ができているか否かにかかっているのです。さらに言えば、①正しい方法を選択しているか、②正しい質の入力をしているのか、そして③十分な量を入力しているのかというポイントが、英語を身につけられるか否かの分岐点になります。
 これは、第二言語習得理論の世界では常識です。学究の世界では、言語習得の研究はかなり進んでいます。しかし、それが民間まで降りてきません。第二言語習得理論については、星の数ほど論文は出版されていて、インターネットでも国会図書館でも探そうと思えばいくらでも探せます。ただ、残念なことに、それらの理論の多くは、英語で書かれています。

 前置きが長くなりましたが、ここからは「入力」という視点から、各種英語習得理論の有効性を確認していくことにしましょう。読者の皆様も、その考え方に慣れていただければ、今後新たな英語教授法・学習法と出会ったときに、それらが効果を上げられるかどうかを簡単に見極められるようになるはずです。


「入力」ができているかどうかが最初の分かれ道

特集イメージ4 「入力」という点に関しては『パルキッズ通信』でも過去に何度も触れているので、詳細は避けますが、ひと口に言ってしまえば以下のようになります。
 「学習の先に外国語の習得はない」「外国語を身につけたければ獲得するしかない」「そして獲得するためには十分な入力をする必要がある」。
 これらは幼児の母語獲得や、移民の外国語習得理論などから導かれています。幼児は一切勉強することなく、つまり積極的に学習することなく、1歳半から2歳で母語を獲得します。日本語の文法など一切教えなくても、また日本語を獲得するにあたり他の言語の助けを借りることなく、生活環境に日本語が存在するだけで、外国人にとっては複雑極まりない日本語を身につけるのです。
 少し振り返って考えてみれば分かることですが、母語においてすら文法教育などは小学生の高学年まで放って置かれます。それにもかかわらず、幼児ですら助詞や格助詞などの文法を誤ることはありません。
 当たり前のようですが、これはスゴいことです。例えば「は」と「が」の違いを説明しようとしたら、それだけでも数十冊の本が出版されています。言語学者すら悩ますような、とても複雑な使い分けをしているのです。試しに皆様も「は」と「が」の違いを考えてみると面白いでしょう。つまり、それだけ複雑な用法なのですが、幼稚園児でも実際の使い分けを間違えることはありません。
 英語も同様です。前置詞の使い方や冠詞の使い方など、日本人の頭を常に悩ませる語や形態素(語のようなもの)の使い方を、英語圏に育つ子なら幼稚園児でも間違えることはないのです。でも、彼らになぜ正しく使い分けるのかを説明することなどできはしません。文法知識の本質とは、教えられるのではなく、身につける以外ないのです。
 これが言語の獲得です。
 学習とはまったく異なる次元で、我々は母語(日本語)を身につけています。そして、それが英語でもできるようになれば良いわけです。
 つまり、英語も日本語と同じように「なんでこうなるのか説明できないけど」正しく使えるようになる、それが英語の獲得です。繰り返しますが、学習の先に獲得はありません。そして、その獲得を促すのが正しい方法、適正な質と量の「入力」なのです。


成功者に習う

特集イメージ5 入力が正しく行われれば、英語を身につけることができる。では、どんな人たちがどんな方法で正しい入力を実践した結果、英語を身につけられたのでしょうか。
 英語の成功者の代表格は、帰国子女でしょう。帰国子女は、基本的に家庭では日本語を使いますが、日中は学校や幼稚園で大量の英語の入力を受けます。1年もすれば十分に英語を理解するようになります。2年もすればネイティブと紛うほどの英語の運用力を身につけます。もちろん、「では私も!」と思ってもできる事ではありませんが、英語を身につけるひとつのパターンであることは間違いありません。
 次に挙げられる成功者は、留学生です。高校で1年間ほどホームステイをすれば、彼らも英語を身につけて帰ってきます。交換留学は、ある意味では帰国子女のように海外赴任する親に付いていくより余程過酷な環境に置かれます。
 つまり、親の赴任であれば家庭では日本語ですが、交換留学、ホームステイのケースでは家庭でも英語、学校でも英語、四六時中英語漬けです。この点では親の赴任のケースよりも早く英語を使い出すようになります。大体3、4ヶ月もすれば日常会話や授業にもついて行ける程度の英語力は身につきます。交換留学はいろいろなプログラムがあるので、「やろう」と思えば実現できないことではありません。
 ここまで読まれて、「やはり海外か…」と感じられた方も少なくないと思いますが、海外に行かなくても英語を身につける人はいます。因みに、「使える英語」のレベルは測定しにくいのですが、敢えて検定試験のレベルに直すと英検で準1級、TOEICで800点、TOEFL iBTで70点くらいと思って差し支えないでしょう。そして、このレベルを「使える英語」の獲得と想定すると、海外経験0でも、少なからずの日本人が到達できています。例えば、純ジャパ(留学経験が無いのに英語を使いこなせる学生)と呼ばれるような人たちです。
 例外的に、言語に天才的な能力を発揮する人もいますが、あくまでも例外としてここでは除外します。このような純ジャパたちに共通しているのは、英語に接する機会が多いことです。つまりモチベーションの高さが共通点です。英語に対する積極性が高ければ、英語の本を読む機会も増えるでしょうし、ドラマを英語で見たりするような機会も増えるでしょう。要するに、「入力」が増える、その結果実用的なレベルの英語力の獲得に至るのです。
 それでは、ドラマをたくさん見て、多読をすれば良いのか、ということになりますが、ことはそれほど単純ではありません。では、どうすればよいのか。
 「正しい方法」で適切な「質」と十分な「量」の入力を行うという視点から、世の中にあふれる英語習得法を「これはクリア」「これは厳しい」といった具合にばっさり切り分けてみることにしましょう。


短期・語学留学

特集イメージ6 大学生や社会人でも、2〜3ヶ月の語学留学をする人は少なくありません。すでに述べたように、高校の交換留学生は3〜4ヶ月で英語を身につけるわけです。それならば、3ヶ月ほどの語学留学でも英語は身につくことになります。
 しかし、実際にはこれで英語を身につける人は稀です。アメリカの大学に留学していた時期に、語学留学で日本から来ていた多くの社会人学生たちに出会いました。しかし、彼ら(というよりほとんどは女性だったので彼女ら)の英語力はお粗末なものでした。長い人は滞在1年にもなるのに、事務的な電話すらかけられないのです。
 それもそのはず。普段は日本人同士で固まって、日本語で過ごしていたのです。英語で話すのは、授業の時くらい。学部生や院生であれば、卒業したり単位を取得したりする必要があるので、桁違いに英語に接する時間が多くなりますが、語学留学だとやはり日本人同士で集まってしまって、勉強自体もおろそかになるので仕方がありません。
 入力の面から見ると、口頭での英語に触れる機会が少ない点と、さらに重要なのは読書による英語に触れる機会が少ない点が挙げられます。学部生や院生は毎日何十ページもの教科書や資料を読みあさらなければなりませんが、語学留学ではそんな必要がありません。つまり、耳からの入力も目からの入力も不十分なのです。


英会話やCLIL

特集イメージ7 留学しないまでも、英会話スクールで英語に触れる人は少なくありません。毎年百万人とかそれ以上の人たちが英会話に通っています。しかし、これもすでに述べたように英語を身につけるには至りません。
 入力の点から考えてみればスッキリします。週に数時間の英会話では、入力が圧倒的に不足しています。英語を身につけるには留学生のように毎日少なくとも7、8時間は英語に触れることが必要ですので、英会話スクールでは決定的に入力の量が足りません。
 この点、英語で保育する民間の保育所(インターナショナルスクールと名乗ったりしています)では、長時間英語に触れ続ける、また低年齢で英語に触れることができるので、子どもたちは英語を身につけることになります。ただ、英語を得られることは間違いありませんが、費用対効果やそれによって失われる時間を考えると、自信を持っておすすめするわけにはいかなそうです。
 さらに、最近流行っている(らしい)CLIL(内容言語統合型学習)に関しても、英会話と同じようなことが言えます。週に数回英語でロールプレイをしても、英語が身につくわけはありません。もちろん、英語に対する抵抗をなくしたり、文法的に正しくない英語でも伝わるということを実感したりする分には、意義が無いとは言えませんが、英語を身につけられるかと問われれば「ノー」と言わざるを得ません。
 そもそもCLILは、政治や経済、文化や歴史、環境や人種問題などを英語で考えたり発表したりしながら、英語を身につけていこうというのがその考え方です。それが、いつの間にか、シチュエーション毎のロールプレイになってしまっているのですから困ったものです。


グロービッシュ、多言語式、ドラマ、洋画

特集イメージ8 最近廃れたようですが、「グロービッシュ」なるものがもてはやされた時期もありました。1500語位の単語で英語を話すという試みです。これはこれで結構なことなのですが、重大な欠点があります。産出(英語を口にすること)ばかりに目が行ってしまって、肝心の知覚(英語を聞き取る能力)がまるっきり無視されている点です。
 日本人が英語を使いこなせな理由は「英語が喋れない」からではありません。日本人の英語下手のそもそもの問題点は「英語を聞き取れない」点と「聞き取れても英語が理解できない」点にあります。
 「英語が聞き取れない」点に関しては、説明するまでもありません。英語音声を聞いたとき意味のある単語単位に切り出すことができないのでは、理解の糸口すら掴めるわけがありません。それを解決できるのは「入力」だけです。しかし、入力ではお金が取れないので、「英語を話せるようになる」と本質をすり替えているのです。これでようやくビジネスになるわけです。
 「英語を聞き取れても理解できない」点に関しては、少し説明が必要です。英語を聞き取れないとは、連続音声の分節(英文を単語の連続として知覚する)能力が必要です。そして、単語の連続として知覚した後にやってくるのが、その英文の理解です。
 英語は分かち書きになっています。つまり、その点では英文を読むことは、単語の連続として英語を知覚することに他なりません。要するに「聞き取り成功」です。では、単語の連続として頭に入ってきた英語を理解できるのかといえば、なかなかそうはいきません。日本人は英語が聞き取れないばかりでなく、単語の連続として知覚できた英文を理解することができないのです。
 ここが本質です。
 グロービッシュでは、知覚の問題は解決できません。また、多言語方式で間投詞やお決まりの会話パターンを学ぶ方法もありますが、これも決定的に入力が足りないことが分かります。また、ドラマや映画をみることに関しては、入力が足りない以前に、重要な点を見落としています。
 そもそも英語が聞き取れないから困っているわけで、聞き取れない英語をいくら流してみても、英語が分かるようになるわけがないのです。もちろん幼児期は別ですが、大人になってからビデオや洋画を始終見ていても、英語ができるようにはなりません。もし、ドラマや映画で英語が分かるようになるなら、映画評論家たちは、英語やフランス語、ドイツ語に中国語等々世界中の言葉を身につけているはずですが、一向にそんな話は耳にしません。
 純ジャパたちは英語の映像を見る機会が多いと言ったじゃないか、と反論されそうですが、実は純ジャパたちは目からの英語に接する機会が多いのです。つまり、多読です。それによって、英語の回路が身についてくる。そうすると、今度は耳からの英語、つまり洋画やドラマも理解できるようになるのです。


聞き流し、洋楽、LL教室

特集イメージ9 すでに答えを書いていますが、幼児期・(早い段階の)児童期を逃してしまうと、聞き流しでは英語を身につけることはできません。
 これには、単純な人間の本能が関係しています。人間は本能的に無駄を省こうとします。最小限の努力で最大限の効果を得ようとする経済性のルールが、人の行動を制限しています。生後11ヶ月で、日本人の赤ん坊はl, rの聞き分けをしなくなるなどと言われますが、これも経済性のルールが根底に働いていると考えることができます。つまり、必要が無いと判断された音には耳を貸さなくなるのです。
 英語が聞き取れないのは、脳が英語の音を「必要の無い音」と判断しているからです。幼児期に耳にした母語以外は、脳によってそのように処理されてしまうのです。そのように「無駄な音」と判断される英語をいくらかけ流してみたところで、それらは「無駄な音」に過ぎないのですから、うち捨てられてしまいます。
 日本語の聞き取りを考えてみれば、よく分かります。日本語は脳が「必要な音」として処理しています。聞くともなく耳にしているラジオの音声やテレビのニュースなども、無意識のうちにイメージ化の処理がされています。それゆえに、どうでも良いことは聞き流しつつも、関心事に関しては途端に意識に上がってくるのです。
 当人の意識とは別の、無意識の次元で、脳が英語を切り捨てているのですから、かけ流しでは英語が身につくわけがないのです。
 LL施設で視覚や聴覚を通して英語を学ぶ取り組みも行われていますが、これも聞き取りがそもそもできないことを考えれば、時間の割には成果の上がらない取り組みであることは明らかです。また、細かい音の聞き取り練習では、絶対的に入力量が少ないので、英語の獲得に至らないことは明らかです。


多読

特集イメージ10 多読も成果の上がらない取り組みの代表格です。すでに述べたように、そもそも書かれている英語を読んでも理解できないのです。理解できない英文を、単に読み進めるのは拷問のようなものです。従って、多読も数ページで終わってしまった、という方も少なくありません。まるで入力にならないのです。
 「純ジャパは多読した」と書いたじゃないかと言われそうですが、その通り。ただ、彼らは多読の前段階である「素読」をクリアしているのです。
 『パルキッズ通信2018年11月号』で詳しく述べているので詳細は省きますが、多読を成功させるためには、素読をしなくてはいけません。ひたすら目の前の英文を音声化する作業です。この段階では、理解が伴う必要はありません。ただ、ペーパーバックなどレベルの高い内容では、まったく理解できないので面白味に欠けます。そこで、中学レベルの簡単な英文を素読させます。子どもでも理解できるような内容の英文を、大量にひたすら音声化することによって、英語を英語のままイメージで処理する回路が身につきます。つまり「単語の連続」を「イメージ」に処理する回路を身につけるわけです。
 そこまでできるようになれば、ようやく多読も意味を持ってきます。そして、多読を通して英語の理解力を向上させ続けると、今度は耳から入る英語も理解できるようになるのです。


絵本、フォニックス、マザーグース

特集イメージ11 絵本は読解力育成には欠かせない取り組みです。しかし、英語の回路を作る教材としては入力量が不足しています。読解力育成の教材として割り切ることが大切でしょう。
 もちろん、基礎概念や情緒を育てる側面もありますが、それは言語自体、つまり英語自体の獲得とは一線を画す教育なので、ごちゃ混ぜにしない方が良いでしょう。
フォニックスは、英語の知覚に必要な音韻情報を学習させるにはとても効果的な方法です。これも『パルキッズ通信2017年7月号』に詳しいので詳細は省きますが、日本語と英語では音素が異なるのです。特に、母音5つの日本語に対して、英語は9の母音があります。英語では意味が変わってしまう母音の差も、日本人は日本語の5つの母音に振り分けて聞き取ってしまうのです。これでは英語が聞き取れるわけがありません。
 フォニックスの学習を通して、英語の音素の存在を理解することは、その母音を知覚できることと直結します。つまり聞き取りができるようになるのです。その点においてフォニックスはとても有効な学習方法です。
 ただし、それで英語が身につくかといえば、これも「ノー」です。フォニックスは英語自体の入力ではなく、英語の知覚力(もちろん産出も)を向上させる取り組みである、と分けて考える必要があるでしょう。
 マザーグースも同様です。英語の音韻に慣れさせるためにマザーグースを使ったり、押韻を身につけさせることで、読解力を育てる意味ではとても有効な教材です。ただ、英語それ自体を身につけさせるには、入力が決定的に足りないのです。

 世の中には様々な学習法があります。しかし、それらを「入力」という視点から眺めてみれば、英語の獲得に繋がるかどうかは見えてきます。
 まずは、そもそも「入力になっているのか」、そして「入力の質」が正しいか、さらに英語を身につけさせるに足る「十分な入力」になっているのか。これらの点から学習法を眺めていくと、今まで見えなかったものも見えてくるかも知れません。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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