Vol.162 | 友だちは英語やってないのになぜ私だけ?
自立心が芽生える時期の英語学習をどう乗り越えるか
本記事の要旨
小学校中学年になると、それまで素直に続けていた英語学習を突然嫌がり、「友達は英語をやっていないのに、なぜ私だけ?」と言い始めることがあります。しかし、これは必ずしも英語嫌いになったサインではありません。自立心が芽生え、「親に言われたからやる」ことへの抵抗が生まれる時期でもあります。大切なのは、英語をやめることでも、無理に続けさせることでもなく、学習の「主語」を親から子どもへ少しずつ移していくこと。本記事では、「やらされる英語」から「自分で取り組む英語」へ移行するための3週間の実践方法と、子どもの自立を支える親の関わり方を紹介します。
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引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku/2610pj/
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)『Vol.162 | 友だちは英語やってないのになぜ私だけ?』(株式会社 児童英語研究所、2026年)
「以前はちゃんとやっていたのに」── 小学校中学年前後で急増するご相談
10月に入ると、掲示板やお電話で決まって増えるご相談があります。「小学3年生になってから、急にパルキッズジュニアを嫌がるようになりました。以前はちゃんとやっていたのに。何が変わったのでしょうか」というものです。なかには「『友達は英語やってないのに、なんで私だけやらなきゃいけないの?』と言われて、返す言葉がありませんでした」と、少し困った様子でお話しになる親御さんもいらっしゃいます。
低学年のころは素直に取り組んでいた我が子が、ある日突然「やりたくない」と言い出す。しかも理由を聞いても「なんとなく」「面倒くさい」としか答えない。これまで積み上げてきた習慣が崩れていくようで、親御さんとしては焦りや不安を感じるのも当然のことだと思います。「私の育て方が悪かったのでしょうか」と自分を責めてしまう方もいらっしゃいますが、結論から先にお伝えすると、これは決して珍しいことでも、失敗の証拠でもありません。
「嫌がる」を後退の合図と読み違えていませんか
多くの親御さんは、子どもが英語を嫌がり始めると「せっかく順調だったのに後退してしまった」と受け止めます。ところが、教務の現場で長年見てきた実感としては、この時期の「やりたくない」は後退どころか、むしろ発達が順調に進んでいる証拠であることのほうが多いのです。
実は、小学3〜4年生前後は、子どもの中に「自分で選びたい」「人と比べられたくない」という自意識がはっきりと芽生えてくる時期にあたります。学校での友達関係が濃くなり、「みんなと同じ」であることに安心感を覚える一方で、「自分だけ特別な取り組みをしている」ことに違和感を持ち始めます。つまり「友達は英語やってないのに、なぜ私だけ」という言葉は、反抗心そのものというより、この年齢特有の社会的な比較意識の表れなのです。この時期に何も変えずに以前と同じやり方で「押しつけ」を続けてしまうと、かえって抵抗が強くなり、取り組み自体を手放してしまうご家庭も少なくありません。
自我の芽生えと、習慣の「主語」の変化
このメカニズムを、日本語習得のプロセスに置き換えて考えてみると理解しやすくなります。赤ちゃんのころは、親が読み聞かせる絵本も、話しかける言葉も、すべて「与えられるもの」として素直に受け取ります。ところが成長するにつれて、子どもは「自分で選んだ本を読みたい」「自分の言葉で話したい」というように、言語との関わり方そのものが「受け身」から「主体的」なものへと変化していきます。英語学習も、まったく同じ発達の道筋をたどります。0〜2年目のリズム回路形成フェーズでは、かけ流しという「与えられるインプット」が中心でも問題ありません。しかし3〜4年目の語彙定着フェーズを経て、小学中学年に差しかかるころには、子ども自身が「自分のものとして」取り組みを選び取る段階に移行していく必要があるのです。
ここで重要なのは、「嫌がる」という反応の正体が、英語そのものへの拒否感ではなく、「親に決められたことをやらされている」という構図そのものへの拒否感であるケースが非常に多い、という点です。したがって解決策は、取り組みの量を減らすことでも、無理に説得することでもありません。習慣の「主語」を、親から子ども自身へと移していくことです。これは一朝一夕にはいきませんが、幸い、この移行を後押しするための教材設計はすでに存在しています。
「押しつける」から「自分で開く」へ── 3週間でできる家庭のシフト
それでは、具体的に何から始めればよいのでしょうか。ここからは家庭で実践できる3週間のステップをご紹介します。
Week1:「やらせる」を一度諦める
最初の1週間は、あえて親から「やりなさい」と声をかける回数を減らすことから始めます。かわりに「今日はどのレッスンをやってみる?」「今日は何分だけやろうか」というように、選択肢を子ども自身に渡してみてください。「パルキッズジュニア」は、もともと1日20分という短い時間設計になっていますが、この「20分」を子どもが自分で選べるようにするだけで、取り組みに対する心理的な抵抗感がやわらぐご家庭が多く見られます。
Week2:「達成感」を短いスパンで味わわせる
2週目からは、達成感を短期間で得られる仕掛けを取り入れます。「英検SKILLSオンラインレッスン」のように、1回のレッスンが短時間で完結し、終わった直後に「できた」という手応えを感じやすい教材は、この時期の子どもと相性が良い傾向にあります。「今日はここまでできたね」と、結果よりもプロセスに目を向けた声かけを続けることで、子どもは「やらされている」感覚から「自分で達成した」感覚へと少しずつシフトしていきます。
Week3:「比べない」環境を家庭内に作る
3週目は、「友だちと比べる」発想そのものから距離を置く工夫をします。「みんなやってないのに、なんでうちだけ」という子どもの言葉に対しては、否定せず、まず受け止めることが大切です。そのうえで「これはあなた自身の力になっているものだから、比べるものじゃないんだよ」という軸を、押しつけがましくなく、繰り返し伝えていきます。この時期に無理に反論したり、正論で説得しようとしたりすると、かえって心を閉ざしてしまうことがあるため、あくまで静かに、根気強く伝え続けることがポイントです。
「やりたくない」は、自立の入り口でもあります
「やりたくない」という言葉を聞くと、多くの親御さんはこれまでの3年間の積み重ねが崩れてしまうのではないかと不安になります。しかし実際には、この時期をうまく乗り越えたご家庭のお子さんほど、その後の英検準2級レベルへの到達や、自分から進んで洋書を手に取る姿へとつながっていくケースを、現場で数多く見てきました。「嫌がる」は終わりのサインではなく、子どもが自分の足で歩き始めるための、健全な通過点なのです。
大切なのは、この時期に慌てて取り組みを増やしたり、逆に完全にやめてしまったりしないことです。習慣の主語を少しずつ子ども自身に手渡しながら、達成感を味わえる仕組みを整えていく。それだけで、多くのご家庭は数週間のうちに落ち着きを取り戻していきます。今、目の前で「やりたくない」と言っているお子さんは、決して後退しているのではありません。次のステージに進むための、大切な一歩を踏み出そうとしているところなのです。どうか焦らず、その一歩を後ろからそっと支え伴走してあげてください。
