Vol.110 | なぜ今、子育てに自己肯定感が求められているのか?

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引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal/2008hj/
船津 徹(Funatsu Toru)『Vol.110 | なぜ今、子育てに自己肯定感が求められているのか?』(株式会社 児童英語研究所、2020年)

国立青少年教育振興機構が、日本、韓国、中国、米国の高校生を対象に行なった意識調査(2018)があります。この中で、「私は価値のある人間である」という質問に「YES」と答えた割合は、日本人は44.9%でした。(韓国83.7%、中国80.2%、米国83.7%)

日本人は謙遜しますから多少色をつける必要がありますが、「自分は価値がある」と答えた高校生が44.9%というのは低すぎる数字です。裏返せば、「自分に価値がない」と感じている高校生が半数以上いるということです。

根拠のない自信を大きく育てる

自己肯定感の定義は様々ですが、この感情を支えているのは、「自分はできる」という「根拠のない自信」であると私は考えています。「自分はできる」と信じている人は、逆境や困難に直面しても、チャレンジを繰り返し、成功体験を積み重ね「根拠のない自信」を「根拠のある自信」に変えていくパワーを持っています。

これとは反対に「根拠のない自信」が小さいと「失敗するのではないか」という「不安」が目の前に大きく立ちはだかり、一歩が踏み出せなくなり、新しい挑戦がしにくい、人生に対して消極的な態度が形成されてしまうのです。

今子育てをしている親の多くは、日本のバブル経済後に社会人になった人たちであり、高度経済成長期の社会が持つ楽観性や明るさを経験したことがありません。日本が自信と活力を失い、未来への夢や希望が描きづらい環境で育ってきた世代ですから、子どもの将来にも漠然とした「不安」を持っているのです。

また今の子どもたちが社会に出る20年後には、第4次産業革命ともいわれるIoT、ビッグデータ、AI等をはじめとする技術革新が進展し、私たちの仕事や生活のあり方を大きく変える超スマート社会が到来すると言われています。その時に子どもたちに要求される技能は何なのか?今のままで超スマート社会に対応できる子どもを育てられるのか?親たちはとまどいを感じています。

さらにグローバル化の進展による人材の流動化は競争の激化をもたらします。グローバル化の本質は、教育、スポーツ、アート、ビジネスなど、あらゆる面において、日本が世界競争へ巻き込まれるということです。国際社会で活躍するには、英語力はもちろん、世界標準の視点、知識、技能を身につけることが要求されます。

以上のように社会が大きく変化しつつある「今」子育てをしている親の多くは、先の見えない時代への「不安」を抱え、何を信じ、何を基準に子育てをすればいいのか分からなくなり、子育てへの自信を失いかけているのです。

そこに登場したのが「自己肯定感」です。自己肯定感を高めれば、負けない子、たくましい子、チャレンジできる子に育てることができる!時代がどんなに変化しても、世の中がどう変わっても、自分らしく、自己実現していける子になる。先行き不透明な時代の特効薬として「自己肯定感」が注目されているのです。

グローバル社会では「自己肯定感」が必須、なぜか?

競争が激しいグローバル社会で活躍するためには 、勇気を持って困難や逆境に立ち向かっていく力、コツコツと努力を継続する力、失敗してもチャレンジし続ける力といった「メンタルタフネス」が求められます。メンタルタフネスの源は「できる」という自信であることは言うまでもありません。

グローバル化がいち早く進んだアメリカの子育てを見ると「自信育て」を強調していることが分かります。幼い頃からスポーツに参加させ競争経験を積ませる。子どもの個性を尊重して自主性を育てる。子どもの小さな達成や成長を見逃さずにほめるなど「自信」を引き出す子育てを実践しています。

近年のアメリカの子育てで注目されているのが「Resilience/レジリエンス」です。グローバル社会では、子どもがいかなる道を目指すにせよ、激しい競争を避けることはできません。上を目指せば目指すほど競争のレベルが上がり、誰でも一度や二度は大きな失敗や挫折を経験します。その時、燃え尽きから子どもを救い出してくれる力が「レジリエンス」です。

「レジリエンス」とは、失敗や挫折など、強いストレスに直面した際の「逆境力」「回復力」「跳ね返す力」「折れない心」という意味で使われる言葉です。レジリエンスは、どうやっても曲がらない鋼(はがね)のような強さではなく、竹のように曲がってもすぐ戻るしなやかな抵抗力であり、失敗や挫折をバネに、さらに大きく成長していける力です。

これからのグローバル競争を生き抜くには「チャレンジ精神」という力強い推進力と、失敗や挫折をバネに飛躍する「レジリエンス」の二つを兼ね備えていることが重要です。これらは異なる力に見えるかもしれませんが、共通する土台の上に成り立っています。それが「自己肯定感」です。

自己肯定感は年齢が上がると削られていく

グローバル競争時代を生き抜くメンタルタフネスを子どもに与えるためには、「自己肯定感」をどっしりと安定したものに育てることが何よりも重要です。自己肯定感が安定すると、その上に成立する「チャレンジ精神」と「レジリエンス」も強くなります。すると、さらにその上に積み上げられる「勉強」「習い事」「人間関係」のすべてが高いレベルで達成できるようになります。

これからの社会では不可欠な自己肯定感なのですが、集団の調和を重視する日本の価値観とは相反する要素を含んでいます。自己肯定感は子どものあるがまま(個性)を受け入れ、尊重することで育ちます。しかし日本では、子どもが集団社会に参加する年齢になると「個性」を抑制し「集団」を優先することが要求されるようになります。当然、「個性」が強い子どもは、ありのままの自分を否定される場面が多くなりますから、自己肯定感が揺らいでしまうのです。

社会性や集団性を育てるための「干渉」が必要以上に多くなると、子どもの自信はしぼんでいきます。もちろん子どもの好き勝手を許すわけにはいきませんが、子どもの行動を制限する時は、自己肯定感の「補充」を忘れないでください。

年齢に関わらず、子どもは自己肯定感が下がってくると必ず「不安のサイン」を出します。親の仕事はこれらのサインを見逃さず「安心」の補充を行ない「自信」を取り戻すことです。以下に「不安のサイン」を紹介しますので、参考にしてください。

【乳幼児期】

・赤ちゃん返り(まとわりつく・おねしょ・夜泣き)

・強い怯え(新しい場所や環境を極端に怖がる)

・強い人見知り(見知らぬ人を極端に怖がる)

・強い母子分離不安(親から一時も離れられない)

・集団に馴染めない、一人で遊ぶことが多い

・目が泳ぐ、目を合わせない、相手の顔を見ない

・声が小さい、はっきり言わない

・人前で発言しない、目立つ行動を避ける

・爪噛み、頻繁なまばたき(チック)

【児童期】

・人と視線を合わせない、相手の顔を見ない

・声が小さい、はっきり言わない

・友だちや周囲の人と関わりたがらない

・孤独を好む、家の外に出たがらない

・指示待ち、自主的な積極性がない

・成績が落ちる、学校に行きたがらない

・親に対して反抗的になる

・「無理」「どうせ」「〜なんか」などネガティブワードが増える

・集中力の欠如、飽きっぽい、人の注意を無視する

・ウソ、言い訳、責任転嫁が増える

・友だちがいない、親友がいない

安心の補充はスキンシップを増やすことで行なう

子どもに自己肯定感が下がっているサインがある時は、親が子どもを受け入れて安心させてあげればいいのです。子どもを安心させるというのは「友だちとケンカしたの?」「誰かにいじめられているの?」などと、言葉をかけることではありません。子どもとの心地よい皮膚接触を多くして親の愛情を実感させることです。

乳幼児の場合、母親との心地よいスキンシップを増やせば、自信はすぐに回復します。抱っこ、添い寝、一緒にお風呂に入る、手足のマッサージをする、など心地よい皮膚接触を通して、「愛され受け入れられている実感」を伝えてあげてください。

小学生以上の子どもにも、抱きしめたり、頭や髪をなでてあげたり、肩や背中をさすったりというスキンシップが有効です。また、子どもと同性の親(男の子には父親、女の子には母親)が子どもの好きなことを一緒にするのも効果的です。男の子であればスポーツで汗を流したり、女の子であればごっこ遊びにとことんつき合ってあげるのです。

子どもが発する「不安のサイン」を見逃さず、親が適切な対応をすれば、自己肯定感はすぐに回復します。一方で「不安のサイン」を放っておくと、不安が大きくなり、行動は消極的になり、自己肯定感はどんどん下がっていくという悪循環に陥りますので注意してください。

船津 徹(Funatsu Toru)

船津 徹(Funatsu Toru)

1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2602年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールを卒業。
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