Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2

パルキッズの8つの疑問にお答えします

本記事の要旨


おうち英語は家庭によってさまざまですが、「子どもが小さいうちに英語を身につけさせ、将来の負担を軽減したい」という点は共通しています。一方で、「英語より日本語が大切ではないか」「視覚タイプなら動画の方がよいのでは」「話さないのは成果が出ていないのでは」「高校留学の方が効率的では」といった疑問も生まれます。また、会話やインタラクティブな取り組みを優先すべきではないか、かけ流しはいつまで有効なのかという不安もあります。

結論として、パルキッズが重視するのは、まず大量で安定した英語音声によって音声知覚を育て、その後に読みへ進み、さらに書く・話す力へつなげる順序です。日本語をしっかり育てながら英語音声環境を作ることは両立します。発話がなくても、サイレントピリオドのように内部では学習が進みます。発音のよさも、発音練習より先に英語の音が英語として聞こえる耳が育っていることの表れです。会話や対話は大切ですが、聞こえる耳と理解の土台ができたあとでこそ、本来の効果を発揮します。

その背景には、第二言語習得、音声知覚、音声表象、脳の可塑性といった考え方があります。英語は音声言語であり、母音・子音、強勢、リズム、語の切れ目を処理するには、まず安定した音声入力が必要です。読みは、耳だけでは曖昧な音声を文字で整理し、英語入力の量を増やします。また、幼児期は日本語のモーラやかなによる「日本語フィルター」が強くなる前で、英語音声に触れるうえで有利です。ただし、小学生以降でも脳には可塑性があり、音声、文字、読解、内容理解を組み合わせて学び直すことは可能です。

※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu/english/ouchi-eigo-common-problems/2610/
船津 洋(Funatsu Hiroshi)『Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2』(株式会社 児童英語研究所、2026年)

おうち英語あるある、その2。

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション1

前回(2026年8月号)は「おうち英語あるある」と題して、パルキッズやおうち英語に対する、疑問や悩みについて、お答えしてまいりました。その後、ユーザーや関係者、あるいはスタッフから「いやいやもっとありますよ」ということで、追加の "あるある" を頂戴しました。

たしかに、おうち英語は様々な形態を取りますし、皆さんやっていることはバラバラです。「休暇を楽しもう」といえば、ビーチでぼんやりする人も、マリン・アクティビティに精を出す人もいるでしょう。いやいや、休暇といえばスキーでしょう、いやいや温泉だ、家でゆっくり本でも読むのが一番だ、など人それぞれ。共通点といえば "非日常" くらいでしょうか。そのくらいおうち英語もバラエティーに富んでいます。

ただ、多くの日本人にとっての足かせとなっている英語を、子どもが小さいうちにある程度身につけさせることによって、"将来の我が子の負担を軽減しよう" という点は共通しているのではないでしょうか。

しかし、世の中にはおうち英語反対派もいます。第二言語習得論や、認知科学などから得られる研究成果の、最も重要な前提条件を無視して、結果のみを乱暴に一般化する人もいます。しかし、そのような言説も、インフルエンサーの口から出たり、文字になっていたりすると案外、素直に信じてしまうのも日本人のお人好しの一面。そして、悩むことになります。

ということで、さっそく "あるある" の続きに入っていくことにしましょう。

全然しゃべってくれないから、成果が分からないではないか!

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション2

「何年もかけ流しているのに、子どもが英語を話しません。これで本当に成果が出ているのでしょうか」。

親御さんにとって、これは大きな不安でしょう。発話は、とても分かりやすい成果(?!)です。子どもが英語で答えた。英語で歌った。英語で自己紹介した。そうした姿が見えれば、親は安心できます。反対に、何も話さないと、何も学習していないように感じてしまいます。

しかし、まず確認しておきたいのは、発話とは「発話する必要」があって初めて起こる活動だということです。これは日本語でも同じです。何かを伝えたい。質問に答えたい。相手に分かってほしい。そうした必要があるから、人はことばを発します。必要がなければ、ことばは出てきません。これは「無駄を避けよ」という言語の経済性理論にも適っています。

英語も同じです。日本語で生活している家庭で、日本語を話す親を相手に、子どもがわざわざ英語で話す必然性はありません。親は日本語を理解する。つまり、日本語で用が足りる。その環境で英語を話さないからといって、英語の力が育っていないとは判断できません。

自らの経験から言わせていただくと、帰国した留学経験者にとって、意外に困るのが「何か英語で話して」と言われることです。何を話せばよいのか分からない。しかも、目の前の相手は英語を介さない。日本語で通じる相手に、突然英語で「何か」を話すのは、とても不自然です。海外旅行先で外国人から「何か日本語で話して」と言われたら、皆さんはどう感じるでしょうか。誰に向かって、何を話せばよいのでしょうか。

つまり、発話がないことと、ことばの力が育っていないことは別の問題です。

第二言語習得では、新しい言語環境に入った子どもが、数ヶ月から一年ほど発話しない時期があることが知られています。いわゆるサイレントピリオドです。この時期の子どもは、何も学んでいないわけではありません。周囲の音声を聞き、状況を観察し、ことばと意味の対応を探り、内部で処理を進めています。発話はまだ出ていなくても、理解の土台は着実に作られているのです。

帰国子女や幼少期に海外で育った子どもが、発音よく英語を話すのも、このサイレントピリオドの間に音声が学習されているからです。まず大量に聞き、英語を分かるようになります。すると必要に迫られて発話が出てきます。発音がよいのは、英語の音声知覚が形成されているからです。聞こえるようになった音を、あとから口が再現しているのです。これは留学生も同じです。黙っている期間に学習が進んでいるのです。そして、いざ話すとなったら、流暢な英語が出てくるのです。これは数ある "パルキッズあるある" の代表格でしょう。

おうち英語では、このプロセスがもっと静かに、もっと長く進みます。子どもが話さないからといって、何も起きていないわけではありません。むしろ、話さない間にこそ、英語の耳が作られ、語や表現の蓄積が進んでいます。

パルキッズが最初から「話させること」を目標にしないのは、発話を軽視しているからではありません。発話は、聞こえる耳と理解の土台が育ち、さらに話す必要が生まれたときに自然に出てくるものだからです。大切なのは、無理に英語を言わせることではなく、まず、英語が聞こえ、分かる状態を作ることなのです。

かけ流しの成果は、必ず見えてきます。絵本を口にしたり、読めるようになったり、英検を受けたりするころには、ネイティブ顔負けの発音で英文を読んだり英語で話したりするようになります。入力がすべて。口から出なくても学習は進んでいるのです。

なぜパルキッズたちは発音が良いのですか?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション3

「パルキッズに取り組んでいる子は、どうして発音がいいのですか?」

パルキッズでは、口の形を教えているわけではありませんし、th は舌を歯の間に挟んで、/r/ は舌を巻きましょう、といった発音指導をしているわけでもありません。それでも、パルキッズの子どもたちは、歌を歌ったり、絵本を暗唱したりする段階になると、ネイティブのような自然な発音をします。

発音は単独の技術ではありません。発音の前には、必ず音声知覚があります。つまり、英語の音が英語として聞こえているから、その音を口で再現できるのです。聞こえていない音を正しく発音することはできません。これが日本語なまりの原因のひとつです。反対に、十分なインプットによって英語の音声表象が育っている子は、耳に入った音をかなり自然にまねることができます。

最初のうちは、歌や絵本をそのままコピーしているだけですが、そのコピーの質が高いのです。リズム、抑揚、母音や子音の響きまで、耳で捉えた英語をそのまま再現します。やがて文字読みが始まり、英検に取り組むようになったり、『パルキッズジュニア』や 『7-day English』 の取り組みに入ったりすると、その発音の良さに周囲は驚かされます。

実際、親子留学先で、現地の校長先生から「どこに留学していたのですか」「何年間、英語圏にいたのですか」と聞かれた親御さんもいます。その方が「留学したことはありません。家でパルキッズを流していただけです」と答えると、相手が驚く。この話は、パルキッズの子どもたちが、英語の音声を極めて自然な形で習得していることを示しています。

この背景には、専門的には「運動理論」と呼ばれる、人間に備わっている音声学習の仕組みがあります。音声を聞くとき、私たちは単に耳だけで音を受け取っているわけではありません。聞いた音を、自分の発音器官でどのように作るのかという運動の感覚とも結びつけながら処理しています。簡単に言えば、子どもは耳にした音を聞き取ると同時に、口の中でその音を再生しているのです。

そのため、正しい音声入力が大量にあれば、口の形は「こう」と明示的に教えなくても、子どもは聞こえた音に近い発音を自然に再現します。発音は、口の形を見たり、説明を受けたりなどの明示的なトレーニングで身につくのではありません。耳に十分な英語音声が入り、その音声表象が育つことで、自然と身につくのです。

興味深い現象として、パルキッズの子どもたちの中には、英語の th を f のように置き換える子がいます。たとえば、three を free と発音するのです。これは英語圏の子どもにも見られる発達上の置き換えです。th と f の音響的特徴が近いため、一時的に代用していると考えられています。つまり、パルキッズの子どもたちは、ネイティブの子どもと同じような音声学習の道筋をたどっているのです。

このように、大量で安定したインプットがあれば、人間に備わっている音声学習のメカニズムは自然に働き始めます。パルキッズたちの発音がよいのは、発音練習をたくさんしたからではありません。大量の英語音声を通して、英語の音が耳の中に育っているからなのです。

なぜ会話より読みを重視するのですか?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション4

「小さいうちは、読むことより話すことが先ではありませんか」。

この疑問はよく分かります。母語の発達を見れば、子どもはまず聞き、次に話し、その後で読むようになります。ですから、おうち英語でも、まず会話をさせ、読みは後回しで良いように思えるかもしれません。

しかし、パルキッズでは、音声知覚形成が進んだ後、読みの力、つまり正書法の習得を非常に重視します。理由は、シンプルです。読む力がつくことで、英語の成長が一気に見える形になるからです。

「喋ってくれない」の件で説明しましたが、発話は、発話する必要がなければなかなか起こりません。日本語が通じる家庭では、子どもがわざわざ英語で話す必然性はありません。そのため、親御さんから見ると、「何年もやっているのに、成果が見えない」と感じるのです。

ところが、読みは違います。読めるようになると、英語学習の成果がはっきり見えてきます。英文を見て、すらすら読める。初めて見る知らない単語すら読めてしまう。普通、日本人が目を留めることがない町中の英語の案内すら、自然と読んでしまう。しかも、音声知覚形成が進んでいる子は、発音がネイティブ並みです。親御さんはそこで初めて、「この子は本当は英語を聞いていたのだ」と実感したりします。

さらに、読みの力がつくと、英検などの客観的な成果にもつながります。英語のかけ流しに半信半疑だったお父さんや祖父母が、子どもが英検に合格した途端に、「うちの子はすごい」と言い始めることも珍しくありません。発話は見えにくい成果ですが、読みと検定は、家庭の中で英語の成長を共有しやすい成果なのです。

しかし、なぜ読みが進むと、英語力が見える化されるのでしょうか。

音声は本来、曖昧です。英語の母音は実際には連続した音の中での大体のカテゴリーですし、子音も様々な異音(ひとつの発音ではなく異なるいくつかの発音)の集まりです。日本語ではすべて「ハット」となる、英語の hat, hut, hot の違いを、子どもたちは耳では感じていても、それを明確に整理できないこともあります。ところが文字を学ぶと、h-a-t、h-u-t、h-o-t という視覚的な形が入り、音の違いと語の違いが対応し始めます。耳だけではぼんやりしていた英語の音が、文字によって整理されるのです。

パルキッズでいうところの「読み」は、学校英語のような日本語に訳すための作業ではありません。パルキッズが重視する読みは、英語の音声を英語の文字体系に結びつけるための読みです。耳で入っていた英語を、文字で確認する。曖昧だった音声表象を、綴りによって固定する。すると、英語はさらにはっきりとした存在として処理されるようになります。

読む力がつくと、英語との接点も増えます。耳からだけでなく、目からも英語を取り込めるようになります。絵本、短い文章、英検の問題、やがて児童書へと進むことで、英語入力の量は一気に増えます。これは、会話からは得ることのできない大きな利点です。

そして、聞く・読むという入力系が育ったら、次は書く・話すという出力系へ進みます。これが、パルキッズの考える英語の自然な学習順序です。ここでひとつ重要なポイントは、書ける子は話せる、という点です。英語を聞いて分かり、読んで分かる子が、自分の考えを英語で作文できるのであれば、あとはそれを声に出せばよいのです。内容を英語で組み立てる力がすでにあるので、話すための特別な訓練は大して必要ありません。

反対に、聞けず、読めず、書けない状態で、会話だけを練習しても、英会話の能力は定型表現に限られます。自由に話すためには、まずは英語を聞いたり読んだりして理解する力と、英語で文を組み立てる力が必要なのです。

読みを重視することは、話すことを後回しにしているのではありません。聞こえている英語を文字で整理し、読める英語を増やし、さらに書ける英語へつなげることで、最終的に話す力の土台となるのです。

会話は、相手とやり取りする必要が生まれたとき自然発生します。しかし、その前に、英語が聞こえ、読め、書ける状態を作っておくことが大切です。聞こえないし分からない状態での会話より、聞こえて理解できるうえでの会話に意味があるのは、専門家でなくても分かることでしょう。

読みは、見えにくかった音声知覚形成を、親にも子どもにも分かる成果に変え、さらに話す力へつなげてくれるのです。それが、英検や大学入試などでも大いに活かされることはいうまでもありません。

インタラクティブな取り組みは効果的ではないのですか?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション5

「インタラクティブな取り組みが効果的だと聞きます。なぜパルキッズは、最初から英会話や対話練習を中心にしないのですか」。

これは、もっともな疑問です。言語は思考の手段であると同時に、コミュニケーションの道具でもあります。相手がいて、意味のやり取りがあり、分からなければ聞き返し、言い換え、反応する。こうした相互作用が言語の習得を助けることは間違いありません。ですから、インタラクティブな取り組みそのものを否定する必要はありません。

ただし、問題は順番とコストです。

最初期に必要なのは、まず英語の音が英語として聞こえるようになること、つまり、音声知覚形成です。この段階を飛ばして、いきなり英会話や対話練習を中心にすると、子どもは聞こえていない(分からない)英語に反応を求められることになります。

留学生のように英語環境へ強制的に放り込まれれば、音声知覚形成は進みます。毎日、授業・宿題・友人関係の中で英語にさらされ、1000時間ほどで英語が分かり始め、3000時間ほどで日常的な英語の聞き取りができてくる。あるいは、英語に強い関心を持った "純ジャパ"(海外経験がないにも関わらず、英語を高いレベルで身につける日本人)が、英書を読み、TED Talkを聞き、海外ドラマを見続けることで、留学生と同じように英語の音声知覚形成を育てていくことができます。

では、幼児・児童期の家庭では、どのような英語学習に取り組むのが、もっとも合理的なのでしょうか。

答えは、使える英語の習得に不可欠な、音声知覚形成を "先取り" することです。小学校中学年以降になると、中学受験や学校の勉強、宿題、習い事が増え、毎日まとまった時間のかけ流しを続けることは難しくなります。また日本語が完成してくるので、英語の音声に対する敏感性も徐々に失われていきます。だからこそ、比較的時間に余裕のある、幼児期から小学校低学年のうちに、日本語や他の習い事に影響しない範囲で、英語の音声環境を作っておくことに意味があるのです。

極端な英語漬けにする必要はありません。たとえば、『パルキッズプリスクーラー』で1日90分のかけ流しを2年間続ければ、およそ1000時間の英語音声入力になります。これは、留学生が英語を分かり始める段階に相当する量です。そこに『アイキャンリード 』などの絵本の取り組みを加えれば、1500時間程度までブースト&時短できます。さらに、その後、『パルキッズキンダー』の取り組みを2年間積み上げれば、4年間で1年留学生並の3000時間規模の英語入力を達成できるのです。

留学生が現地で時間をかけて経験する音声知覚形成を、家庭で先取りする仕掛けです。しかも、英会話教室に毎日通わせる必要も、親が英語で話し続ける必要もありません。家庭の生活の中に、無理なく英語音声を置くだけです。これほど費用対効果の高い音声知覚形成の先取り学習は、そう多くありません。

一方、インタラクティブな活動は、効果はあっても時間がかかります。週1回60分の英会話で、子どもが実際に英語を聞いている時間、話している時間はどれくらいでしょうか。順番を待ち、日本語の説明を聞き、ゲームをしているうちに終わることもあります。楽しい時間ではありますが、音声知覚形成に必要な大量入力としては、量が圧倒的に足りません。

また、初期段階で対話練習に偏りすぎると、英語が「答えなければならないもの」になってしまうことがあります。聞こえていないのに答えさせられる。分からないのに反応を求められる。そして、'Maybe,' 'I guess,' 'Ah-huh.' が口癖になる。これは、子どもにとって負担です。

パルキッズでは、まず大量で安定した音声入力によって英語が聞こえる耳を育てます。次に読みへ進み、英語を文字でも処理できるようにします。そのうえで、書く、話す、インタラクティブに使う段階へ進めばよいのです。

会話や対話は大切です。しかし、それは最初に行うものではありません。聞こえる耳と理解の土台ができた後でこそ、インタラクションは本当の意味で効果を発揮するのです。

英語より日本語でしょう?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション6

「小さいうちから英語をやらせるより、まず日本語をしっかり育てるべきではありませんか。英語より国語が大切なのではありませんか。日本語もまだ十分でない幼児に、英語を聞かせる必要があるのでしょうか」。

この疑問は、早期英語教育の話になると必ず出てきます。さらに、「英語を聞かせすぎると、日本語が遅れませんか」「英語と日本語が混ざって、どちらも中途半端になりませんか」という不安もよく聞かれます。たしかに、セミリンガルとかダブルリミテッドという現象を知ると、英語が日本語の発達を邪魔してしまうのではないかと心配になることもあるでしょう。

日本語は大切です。母語は思考の土台であり、社会生活の土台です。日本語の語彙を豊かに育てること。親子で会話を重ね理解力を高めること。日本語の絵本を読み、物語を楽しみ、気持ちや考えをことばにすること。これらは、子どもの認知発達、社会性、学力に深く関わっています。日本語を軽視してよいはずがありません。

ただし、「日本語が大切である」ことと、「英語を幼児期に聞かせてはいけない」ことは別物です。近年、子どもたちの国語力や読解力の低下が指摘されることがあります。そのため、「英語に時間を取られるから、日本語が弱くなるのではないか」と考える方もいます。しかし、国語力の問題を英語のせいにするのは、いささかナイーブに過ぎます。国語力に大きく関わるのは、家庭での会話量、読書習慣、語彙に触れる機会、長い文章を読む経験、自分の考えを順序立てて説明する経験などです。日本語の文章を読む時間が減り、親子の会話が減り、短い動画や断片的な情報ばかりに触れる生活になれば、英語とは関係なく、国語力は育ちにくくなるのは必然でしょう。

国語力を育てるために必要なのは、英語を排除することではありません。日本語の豊かな入力と出力を、家庭の中でしっかり確保することです。日本語の絵本を読む。親子で会話する。なぜそう思ったのかを聞く。物語の続きを想像する。知らない言葉を放置せず、使える語彙にしていく。こうした日々の積み重ねこそが、国語力を支えます。

生活の一部に英語音声を置くことは、日本語を奪うことではありません。問題になるのは、日本語を犠牲にしてまで英語漬けにすることです。家庭内で無理に英語だけにする。日本語の読書や会話を減らす。日本語で考えたり、気持ちを伝えたりする時間を削ってまで英語を優先する。しかも、それがカタコト英語であれば目も当てられません。

パルキッズのかけ流しは、日本語生活を壊す取り組みではありません。日本語で生活しながら、背景に英語音声環境を作る方法です。毎日90分、英語をかけ流したとしても、子どもの一日は英語だけにはなりません。朝起きて、親と日本語で話す。食事をする。園や学校で日本語を使う。友だちと遊ぶ。絵本を読む。生活の圧倒的大部分は日本語です。この環境で、英語を耳にしたからと言って、日本語が育たなくなるとは考えにくいでしょう。

また、子どもは言語を混同するのではないかと心配されることもあります。しかし、冷静に考えれば分かることですが、仮にそれが正しければ、世の中のバイリンガルたちは立つ瀬がないでしょう。幼児は周囲の音声の違いに敏感です。日本語には日本語のリズムがあり、英語には英語のリズムがあります。家庭で日本語を使いながら英語音声を聞いても、日本語の発達に影響はありません。それよりも、その考え方によって、音声に敏感な幼児期に外国語の音声から遠ざけてしまうことの方が、失うものは多いのです。

したがって、「英語より日本語でしょう」という問いには「もちろん日本語は大切です」と答えるのが妥当でしょう。そのうえで、「だから英語音声環境を作ってはいけない」という結論にはなりません。日本語をしっかり育てながら、英語の耳も育てる。それが、おうち英語の現実的な考え方なのです。

うちの子は視覚タイプだから、動画のほうが学習効果が高いのでは?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション7

「うちの子は耳で聞くより、見て覚えるタイプです。英語の音声だけを流すより、動画を見せた方が学習効果が高いのではないでしょうか。YouTubeやアニメなら集中して見ていますし、楽しそうです。視覚タイプの子には、動画中心の方が合っているのではありませんか」。

このような疑問を持たれる方も少なくありません。英語の動画は無限にあります。歌、アニメ、読み聞かせ、ネイティブの子ども向け番組、知育動画。しかも、子どもは動画をよく見ます。親から見ると、音声だけのかけ流しより、動画の方が子どもが集中しているように見えるでしょう。

しかし、「視覚タイプだから動画の方が英語が身につく」ことはありません。子どもに「見る方が好き」「聞く方が好き」という好みがあることは否定できません。しかし、その好みに合わせて教材を変えると学習成果が上がる、という考え方には十分な学術的根拠がありません。

いわゆる「視覚タイプ」「聴覚タイプ」「体感覚タイプ」という分類は分かりやすく、保護者にも受け入れられやすい考え方です。しかし、教育心理学では、学習者の好みに合わせて教え方を変えれば成績が上がるという仮説、いわゆる meshing hypothesis は、十分に支持されていません。つまり、「視覚タイプの子には映像で、聴覚タイプの子には音声で」という分類は、子どもの好みを表す言葉としては使えても、教育法を決める科学的分類としては信頼に欠けます。

さらに、動画を見ていることと、英語音声を処理していることは同じではありません。人間の視覚注意は、動くもの、突然現れるもの、色や音の変化に引き寄せられやすい性質を持っています。子どもが英語動画をじっと見ていると、親は「英語に興味を持っている」「英語を聞いている」と感じるかもしれません。しかし、実際には、画面の動き、キャラクターの表情、音楽、効果音、場面転換に注意を奪われているだけかもしれません。

子どもが英語のアニメを見て笑っていると、親は「英語が分かっているのかな」と思うかもしれません。しかし、子どもは、セリフではなく、キャラクターの動き、場面、表情、音楽に反応しているのではありませんか?特に、展開が速く、効果音が多く、コントラストの強いアニメ動画では、注意の中心は音声ではなく視覚刺激に向かいやすくなります。子どもは「英語を聞いている」のではなく、「動く画面を見ている」のです。

もちろん、映像がすべて悪いわけではありません。英語の耳が育ち、語や表現が少しずつ分かるようになってからであれば、映像は理解を助けます。絵本の絵や場面、表情、動作は、英語の意味理解を支える手がかりになります。問題は、初期段階で派手な動画に頼りすぎることです。

英語は言うまでもなく音声言語です。英語を聞き取るには、母音・子音、強勢、リズム、語の切れ目などの音声・音韻を処理する必要があります。ここで必要なのは、派手な視覚刺激ではなく、安定した音声入力です。そのうえで、絵本や文字読みを通して、音声と意味、音声と文字を結びつけていく。つまり、視覚か聴覚かを選ぶのではなく、音声を土台にし、視覚情報で整理していく順番が大切なのです。

したがって、おうち英語では「うちの子は視覚タイプだから動画で」という分類を出発点にするのは少々危険です。大切なのは、英語の音声知覚を育てることです。最初に安定した音声環境を作り、その後、絵本、文字、動画、読み物、興味のある内容へ広げていく。この順番であれば、視覚情報も英語学習の助けになります。

結局、高校生になってから留学させるのがコスパが良いのでは?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション8

「幼児期から毎日英語をかけ流したり、教材に取り組んだりするより、高校生になってから一年間留学させた方が早いのではないでしょうか。留学すれば英語環境に入れますし、実際に英語を使わざるを得ません。おうち英語を何年も続けるより、留学の方が費用対効果が高いのではありませんか」。

これは、よくある疑問です。たしかに、留学には異文化経験、自立、視野の拡大という大きな価値があります。私自身も留学生でしたので、若い時期に海外で学ぶことの意義、つまり文化やメタ認知で自分や祖国を見る視点の獲得はよく分かります。しかし、「おうち英語の代わりに、英語を身につけるために留学する」と考えるなら、話は別です。

おうち英語は、留学生が現地で体験する音声知覚形成を、家庭の中で先取りする取り組みです。英語圏に行けば、毎日大量の英語音声にさらされます。その中で、最初は雑音のように聞こえていた英語が、少しずつ語やフレーズのまとまりとして聞こえるようになります。つまり、留学初期に起こっているのは、まず英語を英語として聞き取る耳、音声知覚の形成です。パルキッズは、この部分を国内で、幼児・児童期に作ってしまおう、という考え方です。

ですから、英語習得だけを目的にするなら、高校留学は必ずしも最も効率のよい選択ではありません。高校生の一年留学でも、費用は少なくとも200万円以上、行き先や制度によっては300万~400万円程度かかります。実際、2026年時点の高校留学費用の相場として、年間約200万~400万円という目安が示されており、カナダの年間高校留学では参加費だけで300万円という例もあります。

大学での留学は、さらに費用面の問題が大きくなります。日本の国立大学であれば、標準的な授業料は年額55万円程度、入学料は30万円程度です。私立大学でも、文部科学省の2025年度調査では、私立大学学部の初年度学生納付金の平均は約150万円です。一方、米国の大学では、2025-26年度の平均年間予算が州外公立大学で 50,920ドル、私立非営利四年制大学で 65,470ドルとされています。1ドル150円で計算すれば、年間約760万~980万円です。英国でも、留学生の学部授業料は年11,400~38,000ポンドが目安です。

しかも、英語ができない状態で大学へ留学すると、最初に語学学校や準備課程に入ることが要求されます。そこで日本人同士で固まり、授業外では日本語ばかり使ってしまう。現地にいるのに英語が伸びない。私自身が大学での留学時に、そのような人たちを少なからず目撃しています。留学すれば自動的に英語が身につくわけではないのです。英語が聞こえないまま海外に行けば、貴重な時間と費用の多くを、ひょっとすると英語の雰囲気に浴する為だけに浪費するのです。

だからこそ、幼児期からの音声知覚形成が大きな意味を持ちます。国内で英語の耳を育て、小学生のうちに読む力へつなげ、英語を英語として処理できるようにしておけば、英語習得のために高額なコストをかけて留学をする必要はなくなります。国内大学に進めば、学費は海外大学とは比べものにならないほど抑えられます。そのうえで、さらに専門性を深めたい、最先端の研究に触れたいという段階になったら、大学院で海外へ出ればよいのです。

大学院留学なら、目的は英語ではありません。研究です。すでに音声知覚が形成され、英語で読み、聞き、議論する土台があれば、留学先で時間を無駄にすることなく、専門分野の学びに入ることができます。英語を身につけに行くのではなく、英語を使って学びに行く。語学留学と大学院への留学、この両者の間には埋めがたい差が横たわっているのです。

したがって、「高校で留学させればよい」という考え方は、英語習得にかかる費用と時間を過小評価しています。おうち英語は、留学生が現地で苦労して作る英語の耳を、家庭で "先取りする" やり方です。英語のための留学を不要にし、将来、本当に海外で学ぶ必要が出てきたときに、英語でつまずかず専門に集中できる状態を作る。これが、パルキッズの考えるコストパフォーマンスなのです。

いつまで、かけ流しが有効なのですか?

Vol.343 | “おうち英語あるある” をスッキリ解決 Part.2 セクション9

「幼児期のかけ流しが大切だということは分かりました。では、いつまで有効なのでしょうか。小学生になったら遅いのでしょうか。かなが読めるようになったら、もう英語の耳は作れないのでしょうか」。

これは、とても良い質問です。早ければ早いほどよいと言われると、すでに小学生になっているお子さんの親御さんには不安材料でしょう。一方で、いつまでも大丈夫と言い切ってしまうと、幼児期の音声入力の重要性がぼやけてしまいます。ですから、ここでは「何歳までなら大丈夫」「何歳を過ぎたら手遅れ」と境界線を引くのではなく、音声知覚の変化として整理する必要があります。

英語の音声知覚形成は、早ければ早いほど有利です。これは確かです。人間の乳幼児は、生まれた直後から世界の言語音に対して広く開かれた知覚能力を持っています。しかし、成長とともに、周囲で日常的に聞いている母語の音声体系に適応していきます。日本語環境で育つ子どもは、日本語の音、日本語のリズム、日本語の語の切れ目に敏感になっていきます。これは日本語を身につけるうえでは必要な発達です。

ただし、その発達は同時に、英語の音を英語として処理する柔軟性を少しずつ狭めることにもつながります。日本語の「拍」や、かな文字による処理が強くなると、英語の連続音声も日本語のリズムで聞こえてしまう、いわば音声入力に対する「日本語フィルター」のようなものが形作られていくのです。

日本語には、モーラと呼ばれる「拍」の単位があります。「きて」「きって」「きいて」は、音の数だけで見れば似ていますが、日本語では「っ」や長音が意味の違いを作ります。また、「さんま」「こんな」「パン屋」などの「ん」も、日本語では一拍として感じられます。

このような日本語の耳が強くなると、英語の音も日本語の拍に割り振って聞くようになります。また子音のあとに母音がつかないと落ち着かないのが日本語です。strike は英語では一音節ですが、日本語では「ストライク」と母音が割り当てられて五拍になります。desk も英語では一音節ですが、日本語では「デスク」と三拍になります。英語の連続音声をこのように日本語的に解釈してしまうと、本来の英語とはまるで異なる音声として聞こえてしまうのです。

とくに、かなの獲得はひとつの節目です。かなは日本語の音を整理する文字体系です。子どもは、かなを学ぶことで、日本語の音声を拍単位で意識します。「チヨコレイト」のように、拗音や長音も一拍になります。これは英語を聞くときには、厄介なフィルターになります。したがって、かなが定着する前から英語音声に触れておくことには、音声知覚形成の面で大きな意味があります。

ただし、だからといって小学生以降は手遅れというわけではありません。理由は、人間の脳には可塑性があるからです。可塑性とは、経験や学習によって、脳の処理の仕方が変化していく性質のことです。幼児期ほど柔軟で吸収が早い時期ではなくても、十分な量と質の入力があり、継続的に英語音声に触れれば、音の聞き取り方は少しずつ変わっていきます。

もちろん、小学生以降は、日本語の耳や、かなのフィルターがすでに強く働いています。そのため、幼児期とまったく同じように、英語音声をただ置いておけば自然に吸収される、というわけにはいきません。まさか、留学生のように英語漬けにすることは不可能なので、"純ジャパ" のように積極的に英語の音声や多読に取り組む必要があるのです。しかし、脳の可塑性がある以上、小学生以上でも新しい音声パターンを学び直すことは可能です。これは、幼児期を過ぎた留学生や "純ジャパ" が英語のリスニングを身につけることからも事実でしょう。

また、すでに英語音声に触れていた子、歌や絵本で英語のリズムに慣れていた子、耳からの入力に抵抗が少ない子は、「音声知覚」が形成される途中で止まっているだけなので、小学生以降でも十分に伸びます。可塑性の最大の特徴は、変化するが元には戻らない点にあるのです。

大切なのは、「何歳までならよい」「何歳を過ぎたら無理」と線を引かないことです。早く始めれば有利です。しかし、遅く始めても、入力の量と質、読みへの接続、継続の仕方によって成果は変わります。幼児期は有利な時期です。しかし、小学生以降にも、可塑性という学び直しの力があります。だからこそ、小学生以降は、かけ流しだけに頼るのではなく、音声、文字、読解、内容理解を組み合わせて進めることで、英語の力を育てることができるのです。

さて、先月号に引き続き今月号も「おうち英語あるある」を取り上げて、あるいは学術的に、あるいは常識的に、あるいは経験則を用いて論理的解説を試みました。もうこれ以上はないかな?と書いてまいりましたが、まだまだ疑問はあると思います。そんな方は是非とも「これにも答えよ」と疑問を投げかけていただければ、喜んでお答えしてまいりたいと思います。

前回と合わせて、今回の特集が少しでも皆様の「おうち英語」の指針、あるいは安心感へと繋がることを祈っております。

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。
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