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2015年07月号特集

Vol.208 | 不完全雇用ショック

いま、大卒の半数以上が学位を無駄にしている

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1507/
船津洋『不完全雇用ショック』(株式会社 児童英語研究所、2015年)


特集イメージ1 昨今「リケジョ」と呼ばれる「理系女子」が企業に人気のようです。それはそうです。男子に比べて女子はコツコツと働く傾向にあり向上心も強い、しかもIT革命以来、コンピュータプログラムやデータベースの知識がある、もしくはそういったIT技術と親和性の高い「理系」の人材を企業は求めているのですから、理系の女子に採用活動の焦点が当たるのは当然の流れでしょう。
 ところで、最近気になる少年犯罪が目につきます。もっとも、これはマスコミの恣意的な誘導によるもので、少年犯罪を含めた「犯罪」自体は、我が国においては減少傾向にありますし、殺人や放火、強盗、強姦などの凶悪犯罪も年々減少傾向にあります。とはいえ少年犯罪は現存するので、その傾向を少し突っ込んで調べてみました。
 少年犯罪のリスク要因は、個人の能力や資質、家庭環境、学校での行動、交友関係、居住地域など様々ありますが、やはり最も影響力が強いのが家庭環境です。その家庭環境に潜在するリスク要因を挙げてみると、貧困、親子関係の希薄さ、躾の厳しさ緩さの極端さ、壊れている家屋、親との別離、児童虐待、児童放棄…など様々です。しかし、その内容を見ていくと、どうやら「貧困」が少年犯罪起因の直接の原因、または遠因となっていることが見えてきます。
 専門家ではないので、少年犯罪のリスクに関してはこの程度にしておきますが、日本でも貧富の格差が広がる傾向にあります。「一億層中流」などと暢気なことを言えた昭和は随分と遠い昔の話です。平成の初年度には60万程度だった生活保護受給世帯数は、三十年たった現在162万世帯へと2.5倍ほどに膨れあがっています。児童の貧困率も6~7人に1人。資源の乏しい我が国としては「人材」ほど重要性の高い資源は無いはずです。その次世代の人材となるべき子どもたちが貧困に陥る…。対策が急がれます。


| 貧困と教育

特集イメージ2 さて、その「貧困」は、どのようにして生まれるのでしょう。これに関しておもしろい記事を見つけましたので、かいつまんでご紹介します。この記事では、アメリカにおける「大学生の学位と職業との関係」について興味深い考察を行っています。( “Current Issue” ニューヨーク連邦準備銀行の調査レポートより)
 まず、大学の学位が、就職状況にどのような影響をもたらすのかを、(1)新卒生(卒業後5年以内)(2)卒業生(卒業後6年以上)(3)学位なし(4)総体の、4つのグループに分けて比較しています。
 1990年以降、「失業率」は全体としては上昇傾向にありますが、卒業生では4%、新卒で6%に対して学位なしのグループは12.5%となっています。結果全体の失業率を8%に引き上げています。どうやら、学位を持っていることが失業を防ぐ有効な要因のひとつであることは間違いなさそうです。
 同時に「卒業生の失業率の経年変化」をみると、1990年と2000年の新卒の失業率は4%でしたが、5年程経過し彼らが20代後半に入る頃には2%まで改善し、その後はあまり変化を見せずに推移します。一方、2010年前後の大不況下では、新卒の失業率は10%に達し、その後同じような傾向をたどり彼らが20代後半に入る頃には4%代まで回復。しかし、そこからはあまり回復しないという傾向を見せています。就活の時点で不利な状況に陥ると、その後の社会生活にも長く影響を及ぼすようです。
 と、ここまではどこにでもあるような話ですが、この研究ではここから「学位と職業の関係」へと話を進めます。すると「学位を全く必要としない職業に就いている」(この状態を*「不完全雇用」と呼ぶそうです)卒業生の割合が意外に高いのです。ちなみに、専攻した学位と直接は関係がなくても、大学生活で培われる認知能力、知識や情報処理能力が必要とされている職業は「不完全雇用」ではありません。たとえば、飲食店の給仕係やレジ係、バーテンダーや単純労働などに就労しているケースが不完全雇用に該当します。


| 不完全雇用

特集イメージ3 2010年前後の大不況下では、22歳の新卒では不完全雇用の割合は56%と、なんと半数以上の学生が学位を全く必要としない職業に就いています。もちろん、この不完全雇用の比率も年齢とともに下がりますが、新卒(5年以内)で40%、卒業生(卒業後6年以降)で33%と高止まりしています。特に2000年以降には、新卒の不完全雇用率はコンスタントな上昇傾向にあります。これは80年代、90年代の「IT革命」が2000年以降成さらに熟度を増していることに起因します。IT革命の成熟により認知能力を求められる従来の職業が、次々にコンピュータプログラムに置き換えられていった結果です。
 ところで、もちろんのことながら、不完全雇用のすべてが低賃金や貧困と繋がっているわけではありません。不完全雇用でも雇用期間が長くなれば昇進もあるでしょうし、また売り上げなどの成果、能力に応じては高い賃金を得られる場合もあります。これを「良い不完全雇用」とします。そして、その逆のケース、低賃金での労働が継続するケースを「低賃金不完全雇用」とします。2012年の平均でみると、「良い不完全雇用」では4万5千ドルの所得を得ているのに対し、「低賃金不完全雇用」の場合には2万5千ドルしか収入がありません。
 そして問題は、両者の推移です。2000年からの10年間で「良い不完全雇用」の就労率は50%から35%へと急速に減少しているのに対し、「低賃金不完全雇用」は10%前半から20%へと、じわりじわりと上昇傾向にある点です。
 これは由々しき問題です。アメリカでも大学の学費は決して安いものではなく、学生を持つたいていの家庭では、子どもたちの大学入学以降、家計が黒字から赤字に転落します。それだけの投資をしながら、半数以上の卒業生が不完全雇用に陥り、その中の2割、つまり卒業生全体の1割が、低賃金不完全雇用者となるのです。
 我が国では、新卒生の初年度の平均所得はざっと300万円ほどですが、500~800万と高所得を得る一部の学生が全体の平均値を引き上げるので、新卒全体の年間所得の「中間値」はおそらく250万に満たないでしょう。つまり新卒生の半数は、年収250万円に満たない所得で社会生活をスタートすることになります。そして、この調査結果を見ると、低所得での社会人デビューはそのまま将来の所得にも影響していく傾向にあるのです。


| 理系と専門職

特集イメージ4 「不完全雇用」の背景には、様々な要因が考えられます。学生が身につけるスキルと、企業が学生に求めるスキルがマッチしていないことも考えられますし、既出のようにIT革命による職業のコンピュータ化も大きな要因のひとつでしょう。
 冒頭の「リケジョ」人気もそんな傾向の表出のひとつです。同じく ”Current Issue” では、「失業率」「不完全雇用率」「学位とマッチした雇用率」の3つを、卒業学部ごとに比較しています。
 もっとも「失業率」が低いのは、教育関連と医療・健康関連の学部で3~4%となっています。逆に失業率が高いのは、建築や一般教養学部で8%と高止まりしています。これは、この記事の執筆当時のアメリカでは、長引く不況で住宅着工数が低かったことが影響しているのかもしれません。また一般教養の学部に関しては、これまで人力で行われていた認知作業が、コンピュータ化により減少している影響を受けているとみられます。
 「不完全雇用率」では、観光・レジャー・接客に関する学部が63%と最も高く、続いて農業・資源の57%、テクノロジーの55%と続きます。コミュニケーションでも54%、ビジネスでも50%、社会科学でも48%など、多くの学部で半数またはそれ以上の学生が不完全雇用者となっています。
 一方、「学位とマッチした就労」のトップはエンジニア系の75%、教育の75%、医療・健康系も75%、続いて数学系の65%と、理数系や教育・医療などの専門分野、もしくは成長分野で高い比率をスコアしています。傾向としては、数量や解析を伴う能力を有している学生が就職に有利となっています。これはIT革命やコンピュータ化の流れに漂う、企業の人材欲求を如実に表していると言えるでしょう。


| コンピュータ化

特集イメージ3 過去に特集したことがありますが、オクスフォードマーティンスクールで行われた研究 ”The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerization” (雇用の未来:コンピューター化が職に与える影響) でも似たような結果を見いだしています。
 さかのぼって考えてみれば、我々が子どもだった頃にあった職業で、もはや存在しない職業がどれほどあることか。それらの消えていった職業のほとんどはコンピュータやインターネットの普及の影響を受けています。
 たとえば、デスクトップ ミュージック(DTM:DeskTop Music) の出現により、今では音楽家一人で作曲から録音まで手がけられます。スタジオの必要性すら限りなく低下しています。また、デスクトップ パブリッシング(DTP:DeskTop Publishing)により、印刷業界も大打撃を受けました。それはそうです。印刷会社の手を借りるまでもなく、個人や企業が印刷物のデザイン、レイアウト、面付け、出力まで出来るようになっているのです。そして、デスクトップビデオ(DTV:DeskTop Video)。今や誰もが映像プロデューサです。スマホひとつで映画まで作れてしまう上に、それを広く世界の人たちに公開することもできるようになりました。このように、コンピュータ化の流れは、知らず知らずのうちに「専門家」たちの手から次々と職業を奪っていったのです。
 それだけではありません。パソコンが広く普及することによって、タイピストの手を借りるまでもなく、今や社長までが自分で企画書を作ってしまう時代です。販売管理、財務管理、在庫管理などのデータ管理・集計もパソコンひとつで簡単にできるのです。企業としては、以前ほどの社員数がいなくても、従来以上の業務をこなせるのですから、いわゆる「サラリーマン」自体のニーズが低下しています。
 加えて、アメリカではすでに小売りの7%にまで達し、年々120%成長を続けている「E-コマース」があります。我が国でも同様の成長を続け、昨年度では小売り全体の4%弱をマークしています。これはあくまでも物販を中心とした小売りの話ですので、データ販売やオンラインサービスなど、もともと存在しなかったサービスを含めれば、4%では到底済みそうもありません。
 かくいう我が社でも、IT技術の向上の恩恵を受けています。2008年には「パルキッズ通信」の郵送を中止しダウンロードへと移行させ、同年に「エデュマート」を立ち上げ教材のデータ販売をスタートしました。さらに昨年からは、従来存在しなかった「オンラインレッスン」を提供できるようになっています。これらの管理はすべてデータベース上で自動処理させるので、24時間稼働可能、しかも最小限の人数で管理できるようになっています。以前は10数名で行っていた教務指導が、現在ではコンピュータプログラムによるオンラインレッスンとなっている、つまりそれを管理・アップデートする数名のスタッフで事足りるのです。しかも、以前よりはるかにコンスタントで高い質の教育を提供できるのですから、企業としてはこんなにありがたい話はありません。
 当然の結果として従来のサラリーマン的な中間管理職を中心に、企業運営に必要となる人員はどんどん減少するのです。


| コンピュータプログラムやデータベースとの親和性

特集イメージ4 代わって、圧倒的に必要となる「人材」があります。それは、コンピュータやITの知識、データベースの概念を持ち合わせている人材です。
 これはよく知られる事ですが、インフルエンザの流行などは、医療機関からの患者報告数の厚生省統計と、いわゆる「ビッグデータ」の解析結果が一致する傾向にあります。つまり、厚労省の報告を待たずとも、今どこでインフルエンザが流行しているのかが、インターネット上に溢れる「データ」の解析で分かるのです。日本人のほとんどがインターネットを利用する時代、人々が発信する膨大なビッグデータの解析から、様々なことが見えてきます。世の中のトレンド、地域ごとの傾向など、企業側が「欲しい」と思ったデータは、すでにそこにあるのです。後はその「解析」をどう行うかです。
 そこで必要になるのが、その解析のアルゴリズムを作ったり、データベース化したり、必要なプログラムを組んだりできる人間です。そして、そんな人間に必要とされるのが、理系アタマ、つまり物事を論理的に、根気よく考えることができ、数量的に世の中を把握できるようなアタマの持ち主です。それらは理系の学生に比較的多くみられます。
 もっとも、「理系・文系」というこの日本流の分類の仕方には限界があるでしょう。たとえば、経済学や言語学、考古学など、どちらにも当てはまらない、もしくはどちらにも当てはまる学問もあるので、この分類の仕方自体が、日本の学生たちの理系アタマ獲得への足かせとなっているのかもしれません。
 アメリカでは、2007年にcode.orgによって始まった “Computer Science Education Week(CSEdWeek)” が今年も行われます。このNPOはコンピュータ化の著しく進む現代において「学校教育の場でも、コンピュータサイエンスを必修のカリキュラムとして子どもたちに学ばせるべきである」との信条のもと活動を続けています。アメリカ政府も梃入れして、2012年の “CSEdWeek” はオバマ大統領のスピーチで幕を開けました。コンピュータサイエンスの教育がいかに重要であるのか、その重要性を物語っています。
 日本でもようやく、高校の後にITや金融などの専門知識を身につけさせる高等教育機関の創設が言われ始めました。しかし、アメリカのこの流れとの違いは “CSEdWeek” が「幼稚園から12年生までのすべての学年」を対象としていることに対して、日本では「高校卒業者」を対象にしている点でしょう。高校までのカリキュラムを変えるとなると大仕事なので、できるところから、という意味合いなのかもしれません。日本においては、学校教育の成果と企業の求める能力とのマッチングは、なかなか難しいのかもしれません。

 さて、長々と書いて参りましたが、どうやら日本の経済もコンピュータ化の流れにすでに乗っているようです。我々の世代はもうどうしようもありませんが、我々の子どもたち、またはその子どもたちは、この流れから逃れることはできません。つまり、理系アタマを持った子に育ててあげることが、彼らが「低所得不完全就労者」となることを防ぐ、有力な手立てのひとつなのです。
 お国がやってくれないのなら、自分でやるしかありません。就職にマッチした学位の取得・安定した社会生活・子どもたちへの教育投資、そしてこれらを次の世代にも繰り返していくこと。この「プラスのスパイラル」を、まずは親である私たちが常に意識し作り出すように努力し続けなければいけないのかもしれません。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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