2025年12月号パルキッズ塾
Vol.152 |教育コンテンツとエンタメを正しく仕分けし、成果につなげる家庭の学び設計
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2512/
小豆澤宏次『教育コンテンツとエンタメを正しく仕分けし、成果につなげる家庭の学び設計』(株式会社 児童英語研究所、2025年)
幼児期は、どんな時間も学びにつながっています。食事、遊び、会話、移動中の何気ない景色、テレビや絵本など、子どもは日々のすべてを吸収しながら生きています。だからこそ保護者の方は「せっかく触れるなら何か学びになるものを」「この時間をムダにしたくない」という想いを抱きます。
しかし、この「良かれと思った教育意識」が、気づかぬうちにエンタメと教育を混ぜてしまい、結果としてどちらの価値も下げてしまうことがあります。たとえば、絵本に「学べるポイント」を求めすぎたり、海外アニメを英語で見せて「ついでに英語力が上がれば」と期待したり、旅行や体験学習に「成果」を求めてしまうケースです。
これらは一見「教育に良さそう」ですが、実は子どもが楽しむ権利を奪い、親自身も“成果が出ない”とモヤモヤしてしまう原因になります。
今回のパルキッズ通信では、教育として扱うべきものと、楽しむためのエンタメを明確に分け、成果につながる家庭学習の優先順位を解説します。特に、時間のない共働き家庭でも実践できる内容として整理しています。
教育コンテンツとエンタメの線引きが家庭教育の質を決める
まず最初に必要なのは、教育コンテンツとエンタメの線引きを意識の中で明確にすることです。この線引きが曖昧なままだと、いくら熱心に教育をしても成果は安定せず、子どもにとっても、親にとってもストレスの原因になります。
児童英語研究所が提供する教材――パルキッズ、アイキャンリード、アイラブリーディング、幼児教室プログラム、国語教室プログラムなど――は、成果を生むことを前提に設計された「教育コンテンツ」です。ここでは語彙の蓄積、音声認識、概念理解、読解力の下地作りなどが体系的に行われ、その結果として「身につく」ことが狙いになっています。したがって、教育コンテンツには成果を求めて良いのです。
一方で、絵本、子どもが好きなアニメ、テレビ番組、旅行、体験学習といったものは「エンタメ」です。これらは子どもが心から楽しむために存在しています。ここに教育的成果を求めると、子どもは純粋に楽しめなくなり、親は成果が出ないことにストレスを感じ、誰も得をしません。
「教育として扱うもの」と「楽しむためのもの」。
この二つの目的を丁寧に切り分けることが、家庭教育を成功させる第一歩です。
家庭のコンテンツを「仕分ける」ことが最初のステップ
線引きが理解できたら、次に行うべきことは「家庭内コンテンツの棚卸し」です。
お子さまが日々触れているものをすべて書き出していくと、思っている以上に多様なコンテンツに囲まれて生活していることに気づきます。テレビ、YouTube、絵本、公園遊び、工作、旅行、ゲーム、家族との会話、そしてパルキッズや幼児教室プログラムなど。まずはこれらの「実態」を可視化します。
次に、それらを教育コンテンツとエンタメに分けてみます。
すると、親の意識の中に自然と「使い分け」が生まれます。
「教育として扱うのはこの部分で、あとは思い切り楽しめばいいんだ」と気づくことで、家庭教育のストレスは格段に軽くなります。逆にこの仕分けがないと、「これは教育的にどうだろう?」と常に評価モードになり、親子ともに疲れてしまいます。
棚卸し→仕分け――この二つを行うことで、ご家庭全体の教育方針とエンタメ方針がすっきり整理され、その後の「優先順位づけ」がとても楽になります。
成果を最大化する「学びの優先順位」:まずインプット、次に理解力、最後にエンタメ
家庭教育において最も大切な考え方は、「何を先にするか」です。とくに幼児期の学びは、優先順位のつけ方によって成果が大きく変わります。
最優先は、言うまでもなくパルキッズを代表とするインプット教材です。プリスクーラーやキンダー、アイキャンリードなどは、大量の英語音声・語彙・構造を「脳の中に入れておく」ことを目的としています。同様に、幼児教室プログラムや国語教室プログラムも、日本語の語彙や概念、読解の土台をインプットするための教材です。これらは幼児期だからこそ最も効率よく吸収できる領域です。
このインプットがある程度溜まってくると、次に「理解力」や「読解」に進むことができます。文章を読んだり、意味をとったり、説明する力を育てる段階です。しかし、インプットが不十分なうちに理解を求めても、子どもは「わからない」という感覚に陥ってしまい、学ぶ楽しさを感じられません。インプット→理解の順番が守られて初めて自然な成長が起こります。
そして最後がエンタメです。エンタメは教育のためではなく、純粋に楽しむためのものなので、この位置で良いのです。教育コンテンツが確実にできていれば、あとは思い切りエンタメを楽しませてあげる方が、子どもの心のエネルギーが満たされ、学びへの意欲も自然と高まります。
エンタメに教育成果を求めてはいけない理由
エンタメは、子どもの心がリラックスし、情動が豊かに動く時間です。この「楽しさの時間」に教育的意図が入り込むと、子どもは自然と緊張したり、評価されているように感じたりしてしまいます。本来ならばただ楽しむだけで満たされるところを、「正しく見なきゃ」「理解しなきゃ」という気持ちが生まれ、楽しいはずの時間が「学習の場」に変わってしまうのです。
絵本にしても、アニメにしても、子どもが「おもしろい!」と感じているときは、脳がもっとも柔らかく開いている時間です。このときに親の質問攻めや「理解してほしい」という期待が入り込むと、子どもの集中はそがれ、楽しさも半減します。親が良かれと思って「これは何?」「どう思う?」と聞くことが、実は子どもの楽しみを奪ってしまうことがあるのです。
また、英語アニメを英語で見せる場合も同じです。英語がまだインプットされていない段階でこれを行うと、子どもは内容を理解できません。理解できないものは楽しめませんし、楽しめないものを学習として扱おうとすると、子どもはただ疲れてしまいます。逆にインプットが十分に入っている子は、親が指示しなくても自分から英語で見始めます。つまり、エンタメの時間は、理解できる言語で、純粋に楽しむべき時間なのです。
エンタメの本質は「楽しむこと」。
楽しむからこそ、心が満ち、結果的に教育コンテンツにも前向きに向かえるようになります。
だからこそ「エンタメは学びの代替ではなく、学びを支える土台」として扱うのがもっとも理にかなった方法なのです。
今日からできる家庭の学び設計:インプット中心の生活リズムをつくる
ここまでを踏まえ、忙しいご家庭でも今すぐ実践できる学びの設計を紹介します。
まず、毎日のインプット時間を先に確保します。パルキッズのかけ流しは、朝起きてすぐONにしてしまうのが最も簡単で負担のない方法です。朝は比較的、急な予定が入ることが少なく、ルーティンを作りやすい時間帯です。親が何かをする必要もなく、ただ流しているだけでインプットが進むので、共働き家庭でも無理なく続けられます。
次に、レッスンを隙間時間に組み込みます。幼児教室プログラムや国語教室プログラムのレッスンやプリントは、ご飯前の5〜10分でも十分に成果があります。アイキャンリード、アイラブリーディングは平日5分、といったように、短い時間で回せるように設計されています。
そしてエンタメは、子どもが心から楽しめる形で与えてください。絵本もアニメも、100%理解できる言語で楽しませてあげることが大切です。親が教えようとせず、子どもが見たいものを選び、その時間を味わえるようにします。この「楽しむ時間」が子どもの心を満たし、学びへの前向きさを支えてくれます。
教育は短く、毎日、インプット中心に。
エンタメはたっぷり、100%楽しむために。
このバランスが、幼児期の学びを最も豊かに育てる家庭設計となります。
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小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。



