ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | フォネミック・アウェアネス, 語彙
2026年8月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.182 | 英語は科学!才能は無関係
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2608
船津徹「英語は科学!才能は無関係」(株式会社 児童英語研究所、2026年)
「うちの子、英語の才能がないのかも……」と感じたことはありませんか。あるいは「日本にいるままでは、本物の英語力はつかないのでは」と不安に思っている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
でも、安心してください。英語の習得は、才能でも環境でもなく、正しい方法と積み重ねによって、誰でも確実に身につけられる技術です。そして、その「正しい方法」には、科学的な根拠があります。
今回は、言語習得研究や認知科学によって効果が裏づけられた「科学的リーディングの5つの柱」をご紹介します。この5つを日常に取り入れるだけで、日本国内にいながら、子どもの英語力は着実に伸びていきます。
英語の勉強というと、「話す練習をしなければ」「単語を覚えなければ」と思いがちです。でも、言語習得の研究者たちが長年にわたって示してきた事実があります。それは、「読む力が、すべての英語力の土台になる」ということです。
言語学者のスティーブン・クラッシェン氏は、大量の読書が語彙・文法・読解力を同時に伸ばすもっとも効率的な方法であると提唱しました。読むことで自然に語彙が増え、文の構造が体に染み込み、やがて聞く力・話す力・書く力へとつながっていきます。リーディングは英語の「入り口」ではなく、英語力全体を底上げする「土台」なのです。
科学的リーディング:5つの柱
第1の柱:フォネミック・アウェアネス(音素認識)〜英語の「音」の最小単位に気づく力
日本人にとってわかりやすい例が、「しりとり」です。しりとりをするには、言葉の最初の音と最後の音がわかっていなければなりません。「めだか」の最後の音は「か」、だから次は「か」から始まる言葉を探す。これをごく自然にやっているとき、私たちはすでに「音素を聞き分ける力」を使っています。
英語のフォネミック・アウェアネス(音素認識)も、まさにこれと同じ感覚です。「cat」という単語が /k/ /æ/ /t/ という3つの音の粒でできている。最初の音を /b/ に変えると「bat」になる。こうしたことを耳だけで感じ取る力を指します。
この力が大切なのには、しっかりとした科学的な裏づけがあります。全米読書パネル(National Reading Panel)が2000年に発表した大規模な報告書では、フォネミック・アウェアネス指導が読み書き能力の発達に最も強い影響を与える要素のひとつであると結論づけられました。また、読み書きに困難を抱える子どもの多くが、この音素認識の弱さを持っていることも、多くの研究で繰り返し示されています。文字の読み方を教える前に、まず「英語の音」に慣れることが、すべての出発点になるのです。
日本語を母語とする子どもがこの感覚を身につけるには、実はひと手間必要です。日本語は「こ・ん・に・ち・は」のように音節(モーラ)単位で言葉を捉えますが、英語は /k/ /æ/ /t/ のように音素単位で捉えます。この「音の感じ方の違い」を、まずは英語の音の大量インプットを通して体験させてあげることが大切です。英語の童謡(マザーグース)や韻を踏んだ絵本(Dr. Seussシリーズなど)をかけ流したり、「cat・bat・hat・mat」のように語尾の音が同じ言葉(ライム)を探すフォニックス遊びをしたりすることが、その第一歩として非常に有効です。
第2の柱:フォニックス〜文字と音のルールを知る
英語の文字を教えるとき、多くの方が「エービーシー……」とアルファベットの名前を順番に覚えさせることから始めます。でもそれだけでは、英語の本を「読む」ことにはつながりません。必要なのは、「この文字はこの音を表す」というルールを知ることです。これがフォニックスです。
たとえば「c」は「/k/(クッ)」 という音を表すことが多く、「sh」は /ʃ/(シュッ)を表します。こうしたルールを知ることで、見たことのない単語でも「音にして読む」ことができるようになります。日本語に置き換えると、ひらがなの「あ・い・う・え・お」が「あいうえお」という音を表すとわかれば、「あい」「あお」「うえ」などの言葉が読めるようになりますね。フォニックスは、英語版の「ひらがなの読み方」を覚えることに近い感覚です。
全米読書パネルの報告書では、フォニックスを順序立てて教える「系統的なフォニックス指導」が、読み書き能力の向上に非常に高い効果を持つことが明示されています。フォニックスのルールを知らないまま英単語を丸ごと暗記しようとするのは、非常に非効率であることも、この報告書は示しています。
日本では、「Jolly Phonics」や「松香フォニックス」といった教材が市販されており、音と文字の対応を歌やゲームを通じて楽しく学べるよう工夫されています。YouTubeで「phonics song」「phonics lesson」と検索すると、質の高い無料動画も多数見つかります。毎日10分程度の短い練習を積み重ねるだけで、半年ほどで基本的なフォニックスのルールは身につきます。アルファベットの「名前」と「音」は別物だということを、保護者の方もぜひ意識してみてください。
第3の柱:ボキャブラリー〜サイトワーズ(頻出単語)を起点に、言葉の世界を広げる
ボキャブラリーの習得というと、「とにかくたくさんの単語を覚えなければ」と途方に暮れてしまう保護者の方も多いかもしれません。でも、ここに合理的な近道があります。それが「フライ・インスタントワーズ(Fry Instant Words)」の活用です。
フライ・インスタントワーズとは、教育研究者のエドワード・フライ氏が膨大な英語テキストを分析し、使用頻度の高い順に並べた単語リストです。「the」「of」「and」「a」「to」といった、文章の骨格を支える「機能語」を中心に構成されており、その特徴は数字に表れています。上位100語を覚えるだけで、あらゆる英語テキストのおよそ50%がカバーできます。さらに上位1000語まで覚えると、その割合は90%以上に達します。英語には数十万語の単語が存在すると言われていますが、たった1000語であらゆる英語の9割以上が読めるようになるという事実は、語彙学習のあり方を根本から変えてくれる視点です。
言語学者のポール・ナション氏の研究によれば、英語のテキストをストレスなく読み進めるためには、そのテキストに出てくる単語の95〜98%を知っている必要があります。1000語で90%以上をカバーできるなら、残りの数%を埋めるのに必要な語彙はそれほど多くありません。
さらに、残り10%以下の知らない単語については、文脈やイラストから意味を想像する力、つまり「イメージ力」が補ってくれます。前後の流れから「こういう意味かな」と推測しながら読み進める経験は、子どもの想像力と読解力を同時に育てる、とても豊かな学びです。知らない単語があるたびに辞書を引いて立ち止まるより、文脈から推測しながら読み続ける方が、長期的な語彙力と読解力の伸びにつながることも、複数の研究で示されています。
家庭での実践としては、フライ・インスタントワーズの単語リストを子どもの目に入る場所に貼って、毎日少しずつ覚えるのが効果的です。サイトワーズ学習アプリやゲームも多く開発されていますので、ぜひ活用してください。また、サイトワーズを多く含む「Scholastic Sight Words Readers」や「Bob Books」シリーズなどの絵本は、繰り返し読むうちにお子さんが自分で「読めた」と感じやすいよう設計されており、自信と意欲の積み重ねにもなります。
なお、サイトワーズは意味を覚えるより「読めること」を優先してください。機能語が多く含まれるため、日本語に置き換えにくい単語が少なくありません。「the」を「それ」と日本語で覚えるより、「The cat in the hat.」という文章を自然に読めるようにしてあげる方が、theの正しい用法が身につきます。
また、知らない単語が出てきたときは、すぐに答えを教えずに「どんな意味だと思う?」と問いかけ、親子で絵や文脈から意味を一緒に推察してみてください。その一言が、語彙力と読解力を同時に伸ばす豊かな練習になります。
第4の柱:フルエンシー(読みの流ちょうさ)〜リーダーズの多読で読む力を自動化する
英語を読むとき、一語一語をたどるように読んでいると、文章全体の意味がなかなか頭に入ってきません。これは英語力の問題ではなく、「読むこと」に脳のメモリーを使いすぎているために、意味を理解する余裕が残っていないからです。フルエンシー(流ちょうさ)とは「文字を音に変換する作業」が自動化され、努力せずとも、正確に、速いスピードで、自然なリズムで読める状態のことです。
認知科学では、人間の脳が一度に処理できる情報量には限りがあると考えられています。英語の文字を読みながら内容を理解するという二つの作業を同時に行うことは、本来、脳が苦手とするところです。しかし、読む作業が自動化されると、その分の脳の余力が「理解すること」に回せるようになります。
読書研究者のS.ジェイ・サミュエルズ氏が1970年代から積み上げてきた「自動化理論」がこの考えの基盤にあり、読みの流ちょうさを育てるためには大量の読書経験が不可欠であることが確認されています。そして、そのための最も合理的な方法が「やさしいリーダーズの多読」です。
リーダーズとは、学習者のレベルに合わせて語彙・文法・テキスト量を調整した短い本のことです。Oxford Reading TreeやI Can Readシリーズ、Penguin Young Readersなど、段階的にレベルが上がるよう設計されており、子どもの今の力に合ったものを選びやすくなっています。
ここで大切なのが「少し簡単かな」と感じるくらいのレベルを選ぶことです。やさしいリーダーズなら、文字の音声化に脳のエネルギーをほとんど使わずにすみます。すらすら読める文章を次々と読み進めるうちに、英語の活字への心理的な抵抗感がなくなり、読む作業が自動化され、自然と英語のリズムが体に染み込んでいきます。
難しい本を1冊じっくり読むより、すらすら読めるやさしい本を大量に読む方がフルエンシーは着実に伸びる。これは多読研究の世界で繰り返し確認されてきた事実です。
最近は英語多読用リーダーズを充実させる図書館が全国で増えてきました。お子さんと一緒に近所の図書館に足を運び、やさしいリーダーズに挑戦してみましょう。また、音声つきのリーダーズやYouTubeの朗読動画を活用して、お手本の音声を聞いた後に真似して読む「シャドーイング読み」も非常に効果的です。「うまく読めた」という成功体験を積み重ねながら、毎日少しずつリーダーズを読み続ける。それが、フルエンシーを育てるもっともシンプルで確かな方法です。
第5の柱:コンプリヘンション(読解)〜チャプターブックの精読で読解力を育てる
最後の柱であるコンプリヘンション(読解)は、英語学習の最終的な目標であり、同時にここまでの4つの柱すべてが土台として必要になる力です。音が聞き分けられ、文字が読め、語彙力があり、スラスラ読めるようになって初めて、「書かれていることを深く理解する」という段階に到達できます。そしてこの読解力を本格的に育てるためには、多読で量を積み上げるだけでは十分ではありません。ここで必要になるのが、チャプターブックを使った「精読」です。
チャプターブックとは、章ごとに区切られた、リーダーズより長く、大人向けの小説より短い児童書のことです。Magic Tree HouseやDiary of a Wimpy Kid、Charlotte’s Webといった作品が代表的で、登場人物の感情の変化、伏線、場面の描写など、リーダーズでは味わいにくい「物語の深み」が詰まっています。リーダーズの多読によって「読みの自動化」が実現されると、今度はその余力が「内容を深く考えること」に向かいます。チャプターブックの精読は、まさにその余力を活かす場です。
読解研究者のイザベル・ベック氏やデイヴィッド・ピアソン氏らの研究は、読解力は受け身に文章を読むだけでは育たず、積極的に意味を考えながら読む「能動的読解(Active Reading)」によって伸びることを示しています。チャプターブックは能動的読解を自然に引き出してくれる素材です。「次はどうなるんだろう」「なぜこのキャラクターはこうしたのだろう」と、お子さんが自分から考えたくなる仕掛けが、章分けされた物語の中に、随所に散りばめられています。
家庭での実践として、チャプターブックは一度にたくさん読む必要はありません。1日1章、少しずつ読み進めるペースで十分です。読み終わったあとに「今日はどんなお話だった?」「主人公はなぜそうしたと思う?」と、日本語でもいいので一言話しかけてみてください。その短い会話が、読んだ内容を自分の言葉で整理する力を育て、次の章を読む楽しみにもつながります。
リーダーズで「量」を積み、チャプターブックで「深さ」を育てる。この二段階の読書習慣が、コンプリヘンション(読解力)を着実に高めていきます。
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私が開発したTLCフォニックスは、「毎日5分の動画レッスン」で「識字の自動化」を段階的に育成するオンライン教材です。正しい発音で英語を読み解くために必要な技能は、すべてこの教材で身につけられます。すでに多くの卒業生が、小中高生のうちに「CEFR B2以上」の英語力を獲得し、グローバルに活躍しています。英語を身につけることによって、子どもは「一生使える武器」を手に入れることができます。学生時代にCEFR B2を習得することは、将来のキャリアと自己実現に直結します。わが子に何か一つ「強み」をつけたい!という方は、以下から無料トライアルにお申し込みください。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2602年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。



