ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | フォニックス, 読解力育成
2026年6月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.180 | 小学生からの英語はWPMで評価する
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2606
船津徹「小学生からの英語はWPMで評価する」(株式会社 児童英語研究所、2026年)
小学生以上の子どもの英語学習で起こりがちな指導ミスが「翻訳」です。「英語学習=日本語に翻訳すること」そう思っていませんか?実は、この翻訳習慣こそが、日本人の英語習得を難しくしてしまう最大の元凶です。
子どもは学校や学習塾で「翻訳」を習うかもしれませんが、家庭では「英語は英語オンリーで学ぶ」という原則を守ってください。もし子どもが英語を勉強中に「どういう意味」と聞いてきたら、すぐに日本語訳を教えずに「どういう意味だと思う?」と問い返してください。子どもは知っている単語や文脈から意味を推察しようとします。たとえ答えがまちがっていても否定せず、「お母さんはこういう意味だと思うよ」と伝えて、親子で推察ごっこを楽しんでください。
また、小学生の英語学習においては、文法やスペリングの正確さに過剰にこだわる必要はありません。文法については、良質なリーダーズを読む練習の中で、自然に法則を掴んでいけます。ですから文法ミスを指摘したり、正しい文法を「日本語で」教え込む必要はありません。
スペリングについては、最低限のフォニックス単語(規則性のある3〜5文字単語)を正しく書けることが望ましいですが、長い単語(6文字以上)や不規則語(フォニックスのルールで完全に読めない語)については無理に書き取りなどで覚えさせる必要はありません。
最近は、英語検定試験で「ライティング」が重視されるようになりましたが、英語を身につける順序は「英語の本がスラスラ読めること」が先です。ある程度、本が流ちょうに読めるようなってから、正しく書く練習を取り入れると、すでに多読で十分な文字(つづり)のインプットができていますので、書く技能も短期間で上達させることができます。
どうしても子どものスペルミスが気になる!という方のために、ここまでの話を日本語学習に置き換えて考えてみましょう。
アメリカから日本に越してきた7歳の子どもが、日本の小学校に通い始めた時、いきなり日本語のひらがな、カタカナ、漢字を正確に書かせようとすると学習負担が大きいですね。まずは、ひらがな、カタカナ、漢字を「読める」ようにしてあげる。教科書が読めるようになれば、文字を視覚的に確認する機会が爆発的に増えますから、書く力も短期間で伸ばしていくことができます。
同様に、小学生の英語学習でも「書く技能」の導入は急がないでください。子どもにとって書くというのは大きな集中と思考を要するものであり、面倒な作業なのです。まだ英語の文字インプットが十分でない段階で書くことを強制すると、英語学習そのものを嫌がるようになるケースが多いので慎重に取り入れましょう。
プリスクール卒園生を襲う「小一の崖」と「2級の壁」
インターナショナルプリスクールや英語幼稚園を卒園し、流ちょうな発音で周囲を驚かせていた子どもが、日本の小学校へ入学した途端、英語をあっという間に忘れてしてしまう現象があります。これがいわゆる「小1の崖」です。多くの親(や英語教師)は、その原因を「英語に触れる時間の減少」と考えがちですが、根本的な原因は、5歳〜7歳を境に、子どもの脳の「情報処理の仕組み」が変化することにあります。
幼児期までの脳は、環境から無意識に言葉を吸収する「暗示的学習」が主流です。理屈で覚えるのではなく、無意識に「耳」からまるごと情報を吸収し、その中から自然にルールやパターンを見つけ出す情報処理方法です。
しかし、幼児期後期から学童期に入ると、脳は意識的に言葉を操り、論理的に物事を理解しようとする「明示的学習」へシフトしていきます。つまり、小学生以降は「英語を聞かせる」「英会話を楽しむ」という環境作りだけでは、言語能力としての成長が止まってしまうのです。
この崖を乗り越えるには、脳の認知機能の変化に合わせて、学習の焦点を「音から文字へ」移行させる必要があります。このシフトが適切なタイミングで行われないと、幼児期に積み上げた「耳の貯金」は、成長に伴って急速に目減りしてしまうのです。
多くの家庭が、この「崖」を、英検5級、4級、3級と、英検を目標にして、合格し続けることで乗り越えようとします。子どもも合格すれば嬉しいですから、最初のうちは英検の勉強にも取り組んでくれます。しかし、「英検対策問題」の反復演習だけに終始していると、すぐに上達の限界が訪れるのです。
英検に順調に合格してきた子どもが、準2級プラスから2級のレベルで急に難しさを感じ、なかなか合格できなくなる現象が起こります。英検3級や準2級までは、幼少期に培った「耳」の貯金と、日常会話のパターン学習だけで突破できるかもしれません。しかし、2級に挑戦した途端、多くの子が厚い壁にぶつかるのです。この「2級の壁」の正体は、求められる英語力の質が、「具体的」から「抽象的・概念的」へと切り替わることにあります。
・準2級まで:日常会話や身の回りの出来事など、イメージしやすい具体的な内容が中心
・準2級プラス〜2級以上:社会問題、科学、歴史など、イメージしにくい抽象的・概念的な内容が中心
たとえば「environment/環境」「society/社会」といった概念を理解するには、単なる単語の暗記ではなく、文脈から意味を推察したり、理論的に内容を捉える「高度な読解力」が必要です。
例:Environment is the air you breathe, the water you drink, and the plants and animals you see. It’s like a big house for every living thing.(環境とは、吸っている空気、飲んでいる水、まわりにある草木や動物のこと。生き物みんなが住んでいる「大きな家」のようなものだ。という英語から想像力を働かせて意味を理解できるレベルの読解力が必要です。)
壁を突破する唯一の手段:日本語を介さない「リーディング力」
このように、抽象的な言葉を具体的にイメージとして想起できるレベルの読解力は、残念ながら英検対策だけでは身につきません。英語を日本語に翻訳せず、英語のままイメージとして理解する「リーディング訓練」を行うことが必要です。
日本国内でインターナショナルスクールに通わずに、英語力を伸ばし続ける現実的な手段は「リーディング力の育成」以外に見当たりません。会話は一瞬で流れて消えますが、文字は紙の上に留まります。一度読んで理解できなければ、再び読み返すことで構造を分析できるのが読書の強みです。
また、本の文章は、主語、動詞、目的語が明確に示され、接続詞によって論理が可視化された「完全なセンテンス」で書かれています。多読を通じて「完全センテンス」を大量インプットしていくと、子どもたちの脳内では次の変化が起こります。
1. 文法の内面化:感覚的だった英語が、揺るぎない「ルール」として再構築される。
2. 論理的思考の育成:文章の因果関係を追うことで、英語で思考する回路ができる。
3. 抽象概念の獲得:未知の概念を、文脈から推察・理解できるようになる。
2級合格に必要なのは、「英語がなんとなくわかる」から「英語で思考する段階」への移行です。耳で感覚的に覚える英語から、「目で読み、構造を正確に理解する英語へ」学習モデルをアップデートできるかどうかが、英語学習の成否を分けるのです。
*2024年度から新設された「準2級プラス」は、この準2級と2級の間にある難易度のジャンプを埋めるために誕生しました。しかし、本質的な解決策は試験対策ではなく、「英語の本をスラスラ読める(識字の自動化)」状態を作り、ワーキングメモリーを内容理解に使えるようにすることです。
子どもが、自分で自分の学習モデルを変えることは容易にできません。だからこそ、親が音声中心の学習から「リーディング中心の学習へ舵を切る」必要があります。このシフトを幼児期後期から小学低学年の間に行えば、「崖」に阻まれることなく、子どもは英語力を安定して伸ばしていけるようになります。
英語圏でも起こる小四の壁
日本でも「小四の壁/10歳の壁」という言葉が一般化してきました。アメリカには、1983年にハーバード大学のジーン・チャル(Jeanne Chall)博士が提唱した「4年生の壁(The Fourth Grade Slump)」という概念があります。チャル博士は、読解発達のプロセスを次の2段階に整理しました。
9歳まで(小3まで):Learning to Read(読むことを学ぶ)
10歳から(小4以降):Reading to Learn(読むことで学ぶ)
この「Reading to Learn」への移行がスムーズに進まないと、学年が上がるにつれ「読解力格差→学力格差」が広がるというのがチャル博士の理論の中核です。小学4年生になると、学習内容は具体的なものから、抽象語彙や概念が増える内容へとシフトします。このタイミングで「識字の自動化→読解の自動化」が十分に訓練されていない子どもは急に失速するのです。
なぜ読解の自動化が大切なのか?その答えは明白です。学校で勉強する内容の大半は教科書や本を「読むこと」で構成されているからです。「85%の法則」は、「学問的知識の約85%は、教師の講義ではなく、教科書や資料を自分で読むことによって獲得される」というものです。つまり、小学4年生頃までに、読解の自動化能力が育っていないと、学習内容が難しくなるにつれて、学びの中心である「読む情報」を十分に理解できなくなる可能性が高いのです。
読書を通して抽象概念を理解するためには、十分な「認知資源(ワーキングメモリー)」が必要です。英語を「読むこと」にエネルギーを使い過ぎると、意味理解に使えるメモリー容量が残りません。これを防ぐために、アメリカの初等教育では、フォニックスとサイトワーズによる「識字の自動化」、そして、多読による「読解の自動化」が徹底されているのです。
小四の壁は、日本の子どもたちがぶつかる「英検2級の壁」と本質は同じです。学習内容が抽象的・概念的に変化していくタイミングに合わせて「Learning to Read」から「Reading to Learn」へと英語を読む力をステップアップさせる必要があります。
WPMはアメリカの小学生読解力測定の標準指標
アメリカの小学校では、子どもの読解力を測る際に、WPM(Words Per Minute:1分間に読める語数)が広く使われています。これは単なる「読む速さ」の測定ではなく、読みがどれだけ自動化されているかを確認するための重要な指標です。
読解が苦手と感じる子どもは、1語ずつ解読することに多くのエネルギーを使うため、文章の意味理解まで余裕が回りません。一方、流ちょうに読める子どもは、単語認識が自動化されているため、内容理解に集中できます。アメリカでは、この「読みの自動化」が読解力の土台になると考えられています。
そのため学校現場では、子どもに1分間音読をさせ、正しく読めた単語数を測定する「Oral Reading Fluency Test」が日常的に行われています。WPMはRTI(学習支援)や読字障害の早期発見、ELL/ESL生徒の評価などにも活用されています。
重要なのは、WPMは速読競争ではないという点です。目的は「速く読むこと」ではなく、「正確かつ自然に速く読めること」です。読みが自動化されることで、脳は英語を読みながら、同時に、文章理解にワーキングメモリーを使えるようになります。
では具体的にどの程度の速さ(流ちょうさ)で読めれば、「読解の自動化」がスムーズに進むのでしょうか?ここで、私が編集したWPM(1分間に読める単語数)と英語レベルの比較表を見てみましょう。
WPM(1分間に正確に音読できる単語数)が高まるにつれ、Reading Level(英語圏の学年レベル)やLexile Measure(本のレベル)も上がっていきます。読解の自動化ができるようになるには、英語圏の小学3年生〜4年生レベルである「WPM 120〜130」で安定して英文を読み進められることが目標となります。
もちろん、いきなり「WPM130」で読めるようにはなりませんから、コツコツと音読練習を取り入れて、少しずつ読むスピードを上げていくことが大切です。繰り返しますが、英語学習の成否は、脳の成長段階に合わせて学習モデルを更新できるかにかかっています。
・乳幼児期:音中心(暗示的学習)
・幼児後期〜小学低学年:音+文字読み(識字の自動化)
・小学中学年以降:リーダーズの多読(読解の自動化)
これらのシフトを適切な時期に行えば、「小1の崖」や「英検2級の壁」に阻まれることなく、英語力は安定して伸びていきます。英検はあくまで指標であり、ゴールではありません。おうち英語を実践している家庭でまず重視すべきは「英語がスラスラ読める=識字の自動化」です。
「なんとなくわかる英語」から「確実に読み解ける英語」へ。この転換を意識できた家庭から、子どもの英語は本物になります。
面倒な「識字の自動化」を簡単にするオンライン教材
私が開発したTLCフォニックスは、「毎日5分の動画レッスン」で「識字の自動化」を段階的に育成するオンライン教材です。正しい発音で英語を読み解くために必要な技能は、すべてこの教材で身につけられます。すでに多くの卒業生が、小中高生のうちに「CEFR B2以上」の英語力を獲得し、グローバルに活躍しています。英語を身につけることによって、子どもは「一生使える武器」を手に入れることができます。学生時代にCEFR B2を習得することは、将来のキャリアと自己実現に直結します。わが子に何か一つ「強み」をつけたい!という方は、以下から無料トライアルにお申し込みください。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2602年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。



