ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 取り組み, 英語教育

2025年6月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.167 | おうち英語を成功させる秘訣
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2506
船津徹「おうち英語を成功させる秘訣」(株式会社 児童英語研究所、2025年)
「おうち英語」がブームです。インターナショナルスクールに通わず、海外留学もせずに、家庭教育だけでバイリンガルキッズを育てる。そんなご家庭が増えています。背景には、「グローバル化で英語の重要性がますます高まる一方で、学校教育だけでは実用的な英語力が身につかない」という現実があります。これに不安と疑問を感じた保護者の方々が、子どもの将来を見据え、自宅で英語に触れる環境を整えようとしているのです。
とはいえ、自分自身も英語が話せないという親が多い中で、本当に「おうち英語」で、子どもに高度な英語力を身につけさせることができるのでしょうか?今回のコラムでは「おうち英語」を成功に導く秘訣について解説いたします。
おうち英語のゴールは?
「おうち英語」を成功させるために最初に行うことは「ゴール設定」です。英語教育のゴールを明確にしなければ、目についた教材をなんとなく使ってみたり、ママ友の言動やインターネット情報に右往左往したり、一貫性のない教育環境を作ってしまうことにつながります。「おうち英語」を成功に導くには、親と子が同じ方向を見て、共通のゴールに向かって足並みを揃えることが重要です。
「バイリンガルになってほしい」「英語ペラペラになってほしい」という願いは素晴らしいですが、ゴールとしてはあいまいで具体性に欠け、日々の学習行動に落とし込みにくいという弱点があります。
英語教育を成功させるには5年、10年という長く、地道な努力が必要です。子どもが学習を継続するためには「明確なゴール」を設定すること、さらに言えば、上達のステップが子どもにもわかるよう「可視化」することが大切です。たとえば、水泳では「帽子の色」、空手では「帯の色」というように、自分のレベルアップが視覚的にわかるほど、子どもにとって強いモチベーションになります。
英語教育の目標レベルを設定する際におすすめしたいのが、CEFR(セファール)という世界標準の英語力基準です。CEFRは英語学習者の技能レベルをA1、A2、B1、B2、C1、C2という6つのレベルに分類しています。セファールは、日本で一般的な「英検」と以下のように対応させることができます。
英語教育のプロが勧めるゴールは「CEFR B2」
私はこれまでにたくさんの「おうち英語」を実践する保護者と子どもをサポートしてきました。中には日本から一歩も出ることなく、家庭学習だけで「小学6年生で英検1級」に合格したお子さんもいます。
また、これとは反対に、高額な教材を購入しても学習が進まず、挫折してしまったケースや、子どもに英語を無理にやらせた結果、英語そのものを嫌いになってしまったケースも数多く見てきました。
このような成功と失敗の分かれ道にあるのが、「正しいゴール設定」と「その達成のための戦略」です。私がプロの立場から強くお勧めしたいのが「CEFR B2/英検準1級」を「高校時代までに達成する」ことを長期的なゴールとして設定することです。
CEFR B2レベルとは、単なる日常会話を超え、専門的・学術的な文脈を理解し、使いこなせるレベルを意味します。具体的には以下のような技能です。
【読解力・聴解力】自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。
【会話力】母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流暢かつ自然である。
【作文力】幅広い話題について、明確で詳細な文章を作る(書く)ことができる。
上の説明を見てわかる通り、CEFR B2レベルは日本国内では「英語の達人」です。世界標準では中上級の英語力ですが、日本人でこのレベルに到達できれば、英語力を武器に、受験やキャリア形成で大きなアドバンテージとなることがご理解いただけると思います。
CEFR B2を親子共通の目標に据えることで、進学、学問、キャリア形成で使える「実用的な英語力」を手に入れることができるのです。子どもの将来の可能性を最大限引き出すためにも「CEFR B2」を「おうち英語の最終的なゴール」とすることを、私は専門家として強く推奨します。
おうち英語で「CEFR B2」を達成するカギは?
でも本当に「おうち英語」でCEFR B2を達成できるのでしょうか?上記の説明をもう一度見てみましょう。重要なポイントが、【読解力・聴解力】です。自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できる。
このレベルに到達するには「読書」を通して語彙力と文法力を鍛え、幅広い知識を獲得していかなければなりません。私はアメリカで学習塾を運営し、多くのバイリンガルを指導していますが「英会話」には何ら問題がない子どもでも「読書力」が低いと学校の勉強についていけなくなります。友だちと日常会話ができるようになっても「読書力」を鍛えなければ、専門的・学術的な話題についていけなくなってしまうのです。
「おうち英語」を実践する多くの親は「会話力」を重視しています。しかし日常的に英語を話す環境がない日本で、「会話中心の英語教育は現実的ではない」ことを理解してください。さらに言えば、英会話で身につけられる英語力というのはCEFR A1〜B1レベル止まりです。CEFR B2で要求されるレベルの英語力は「英会話だけでは身につかない」ことを知ってください。
以上から、「おうち英語」でフォーカスすべきが「英語の読書力の育成」です。英語の本が正しい発音で、スラスラと読め、同時に理解できる。この力を育成することで、日本から一歩も出ることなく、CEFR B2レベルの英語力(会話力と作文力を含む)を身につけることが可能です。以下に読者からの体験談をご紹介します。
『息子はインターナショナル幼稚園を卒業後、公立の小学校に入学したため、英語力の維持にかなり苦労していました。しかしながら船津徹先生の著書「世界で活躍する子の英語力の育て方」に出会えてからは全てが変わりました。息子と同じ卒園生の子たちが園のアフタースクールに通っているにも関わらず、みるみる英語を忘れていき、全然話せなくなっていく中、息子はこの本の内容を実践することで、英語力は維持どころか、どんどん力が付いていきました。先日7歳で英検準2級を取ることができました。本当にこの本には感謝しかありません。
追伸:先日9歳で英検2級に合格しました。この本に書いてある通り、本人の好きそうな洋書を買ってくるだけです。勉強せずにこんなにも英語力がつくものかと驚きです。』
英語オンリーの環境を家庭で作る
「おうち英語」で注意すべきが「日本語を介在させないこと」です。日本の学校教育では、一般的に、英語を日本語に訳して理解する「訳読法」を学びます。訳読が習慣になると「英語→日本語→理解」「日本語→英語→表現」というように常に「余計なプロセス」が入ってしまいます。すると、CEFR B2が目指す「自然で流ちょうなやりとり」ができるようにならないのです。
「おうち英語」は「直接法」が原則です。家庭内で英語オンリーの環境を作ることによって子どもは「英語を英語で理解する力」を身につけることができます。このようにお伝えすると、親が英語で話しかけたり、英語の本を読んであげなければならないの!と思う方もいるでしょう。
しかし、実際には「直接法」で教えることは「訳読法」よりもはるかに簡単なのです。親の仕事は毎日英語の動画を見せたり、英語の歌を聞かせたりするだけです。親が英語で話しかけたり、読み聞かせる必要は一切ありません。親の仕事は英語環境を「家庭で」作ってあげるだけです。
乳幼児期から児童初期の子どもの仕事は「環境適応」です。親が英語環境を作ってあげると、子どもの頭脳はせっせと「英語情報」を吸収していってくれるのです。この言語習得能力のおかげで、英語圏に移り住んだ子どもは、親が教えなくても、ごく自然に英語が話せるようになるわけです。
訳読法に関連して「おうち英語」で多いミスが記憶や理解を「日本語で」確認する行為です。「りんごは英語で何て言うの?」「アップルは日本語で何て言う?」このような日本語を介在する質問を繰り返していると、子どもに「訳読思考」を植えつけてしまいます。同様に「これはappleよ」と日本語と英語を混ぜて教えるのもNGです。
英語が得意という親であっても「This is an apple. There is a red apple.」というように、子どもには「英語オンリー」で教えることを心がけてください。バイリンガルの人は、頭の中で言葉を翻訳することはありません。日本語を話す時は日本語で、英語で話す時は英語で考えています。このバイリンガル思考を育てるカギは「直接法」です!
親の仕事は「環境作り」と「励まし」
子どもがCEFR B2レベルというゴールに向かって、長い学習の道のりを歩んでいくためには、「親のサポート」が欠かせません。ここでいうサポートとは、教科書の内容を教えることや英語を完璧に話すことではありません。親の役割は主に二つ――それは「環境作り」と「励まし」です。
まず、「環境作り」とは、日常の中で英語が自然に触れられるような場を整えることです。英語の絵本や動画、音楽、アプリなどを上手に活用し、子どもが楽しく英語に触れられる空間を家庭内に作ることが重要です。英語が“勉強”ではなく“生活の一部”になるような工夫が、長期的な学習継続を支えます。
英語の環境作りのポイントは「ルーティン化」です。わかりやすい例をあげれば「毎日朝7時に、10分のレッスンに取り組む」というように、同じ時間に、同じ量の英語に触れることをルーティン化するのです。これを1ヶ月2ヶ月と継続していくと、英語が当たり前になり、英語に取り組むことが苦でなくなります。
いけないのが、週末に1週間分の学習を詰め込んだり、毎日異なる時間に英語学習に取り組ませたり、今日は単語、明日は会話、明後日は作文というように一貫性のない英語学習に取り組ませることです。ルーティン化を意識していないと子どもは英語学習を面倒くさがるようになるので要注意です。
次に、「励まし」は、子どもの努力や成長を日々認めて、思い切りほめてあげることです。目に見える成果が出ない時期にも、親が根気よく応援し、小さな進歩を一緒に喜ぶことで、子どもは安心して学びを続けることができます。「今日も英語に取り組んでえらいね」「こんな言葉まで知ってるなんてすごいね」といった声かけは、子どものやる気を支える大きな力になります。
ある程度子どもに英語力がついてきたら英検にチャレンジさせて、目に見える成果を体験させてあげることもお勧めです。英検にチャレンジする際は合格できるレベルを受験するようにしてください。失敗すると「もうやりたくない」となるケースがありますので、受験するからには合格することを前提に進めましょう。
英語力は一朝一夕では身につきません。だからこそ、親が「環境作り」と「励まし」を通じて、子どもの学びを長く、温かく支えていくことが、成功へのカギとなるのです。(続きは次回のコラムをお楽しみに!)
面倒な「おうち英語」を簡単にするオンライン教材
ここまでご説明してきたように、「おうち英語」を成功させるためにはゴール設定と達成のための戦略が非常に重要となります。英語は子どもの才能や特性とは無関係の「技術」であり、正しい順序と方法で指導すれば、どの子もCEFR B2レベルに到達することができます。私が開発したTLCフォニックスは「毎日5分の動画レッスン」で「英語を読む技術」を積み上げていくためのオンライン教材です。正しい発音で英語を読むために必要な技能は、すべてこの教材だけで身につけることができます。ご興味ある方はこちらからフリートライアルにお申し込みください。
「強み」を生み出すノウハウを解説する本
拙著【強みを生み出す育て方】は、強みの見つけ方・伸ばし方を、科学的エビデンスをベースに、家庭で簡単に行える35の具体的なメソッドに落とし込んだ1冊です。「この世に強みのない子など、いない。すべての子が“強みの芽”を持って生まれている!だからこそ、1人1人に合った“強み育て”が大切だ」。これが、本書でお伝えしたいことです。
前半では、わが子が生まれながらに持つ「気質5タイプ」「才能5タイプ」と「ピッタリの習い事」を判定し「強みの芽」を見極めます。さらに、全タイプの強み育てにおいて不可欠な「やる気の引き出し方」「学業と習い事の両立方法」について具体的ノウハウを体系化しています。
幼児から小学生のお子さんを育てている方、子どもの「強み」がわからない、どんな習い事が向いているのかわからない、何が得意なのかわからないという方におすすめです!ぜひご一読ください。
『強みを生み出す育て方』ご購入は以下から
パルキッズ通信限定特典「わが子の強み発掘シート」
今回、パルキッズ通信の読者限定で、こどもの隠れた特性がわかる!【わが子の強み発掘シート】をダウンロードにてご提供させていただきます。ダウンロードいただいた「わが子の強み発掘シート」と書籍を活用しながら、お子さまの強みを見つけていきましょう。以下から!【わが子の強み発掘シート】がダウンロードできます!ぜひお子さんの強み探しにご活用ください!
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2506年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。