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2026年9月号ハワイアン子育てジャーナル

Vol.183 | 「英語多読」のススメ

written by 船津 徹(Toru Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2609
船津徹「「英語多読」のススメ」(株式会社 児童英語研究所、2026年)


英語を日常的に話す必要がない日本で、英語をマスターするには「英語多読」が一番確実な方法です。毎日、英語を読む(音読する)ことによって、識字の自動化(意識しなくても英語が正しく読める状態)が促進され、英語がスラスラとストレスなく読めるようになります。この状態でやさしいリーダーズを多読することで、英語を英語のまま理解する力を育てていくことができます。
私が言う英語多読とは、分厚いペーパーバックを、辞書を片手に長い時間をかけて読み解くことではありません。やさしく、読みやすい英語で書かれた薄い本を1日1冊くらいのペースでたくさん読むことです。最初は8ページ程度の超やさしいリーダーズからスタートして、少しずつ読む量を増やしていきます。
英語を読むスピードが上がるにつれ、それまで文字を追うこと(文字を音声化する作業)に使っていたワーキングメモリー(脳のメモ帳)の空きスペースを内容理解に使えるようになり、読解力が向上していきます。その結果、いちいち頭の中で日本語に翻訳しなくても、文脈から意味を推察しながら読み進めることが可能になります。
お子さんが英語の本を辞書なしで楽しめるようになれば、英語が身についた!と胸を張って言えるのではないでしょうか。英語多読は、自分の好きな本を読むだけで「英語の四技能」を同時に鍛えることができる最強の学習法です。


多読を成功させるポイントは?

英語多読に挑戦しても多くの人が挫折してしまいます。その理由のほとんどは「難しすぎる本を読んでいるから」です。分厚く、難解な本を、時間をかけて読むことが多読だと思い込んでいる人が多いのです。残念ならが、辞書を片手に、1行1行、英語を日本語に置き換えながら読み進めても英語力は向上しません。
多読は、読みやすく、やさしい英語で書かれた、短い本を大量に読むことが重要なポイントです。最初は、子どもにとって簡単に読めるやさしい英語で書かれた本で、かつ、「3分以内で読み切れる量」を選ぶことが大切です。
英語の本を読み始めの子どもの読書スピードは、平均で1分間に30〜60単語程度です。文字数で言えば「100語以下」の本からスタートすると、子どもにとってストレスなく多読の練習を積み重ねることができます。
また必ず各ページにイラストが含まれる本を選んでください。子どもにはイラストからイメージを膨らませて内容を理解する力が備わっています。単語の意味を教えなくでもイラストを見るだけで、話しの筋やストーリーの流れを推察できるのです。英語を英語で理解する「英語脳」を鍛える上でもイラストが含まれていることは重要な要素です。 英語多読の重要なポイントが「日本語で意味や理解を確認しないこと」です。単語の意味を日本語で教えたり、「どういうお話だったか教えて」と日本語に訳すことを促すと、子どもは頭の中で英語を日本語に訳すクセがついてしまいます。和訳する読み方が習慣になると、知らない単語に出会った時に全く理解できなかったり、読書スピードが極端に遅くなるという弊害が生まれてしまいます。
子どもに英語の本を読んでもらうには「面白い本を選ぶこと」を意識しましょう。子どもは自分で本を選ぶことができませんから、最初は「親が」子どもが好きそうな本を選んであげてください。教育的な内容よりも、ちょっとふざけた本、少し下品な本、イラストが多いマンガのような本を選ぶと子どもが食いついてきます。真面目な本は子どもにとってつまらないことが多いので注意しましょう。
日常的に英語を話す必要がない日本で英語脳を鍛えるには英語多読が一番効果的な学習法です。和訳せずに英語を英語のまま理解できるようになると、「ハリーポッター」のように分厚い本も、英語のまま一気に読み進めることができ、英語の読書を楽しめるようになります。

お子さんのWPMを知っていますか?

アメリカの教育現場では、子どものリーディング力(読解力)を評価する指標としてWPM(Words Per Minute=1分間に正しく読める語数)が広く活用されています。WPMの算出方法は簡単で、「1分間に読めた総単語数―誤読語数」で算出します。たとえば、1分間で100語読めたが、5語読みミスがあり、3語二度読みがあり、2語を飛ばし読んだら、100-5-3-2=「90」がWPMです。
私の英語塾では生徒の英語力をWPMで評価しています。短時間で実践できる簡単なテストなのですが、かなり正確に今の英語力が測定できます。以下はアメリカの学年別「1分間に音読できる単語数」の平均値です。

学年 音読速度(WPM)
小学1年 53–111 wpm
小学2年 89–149 wpm
小学3年 107–162 wpm
小学4年 123–180 wpm
小学5年 139–194 wpm
小学6年 150–204 wpm
英語を読むスピードが遅い子どもは、単語を正確に読む(音声化)することに集中しており、内容理解まで意識が向きません。「米国立子どもの健康と発達研究所」の責任者リード・リヨン教育学博士(Reid Lyon)は、読みの流ちょうさと読解力の関係について次のように述べています。
「自転車に十分なスピードで乗らないと転ぶのと同様、読み手が十分なスピードで文字を認識できなければ、意味が失われてしまう。読んだ内容を思い出すことができず、ましてや読んだ内容を自分の経験や背景知識と関連付けることなどできない」
識字の自動化(意識せずとも文字を瞬時に音声化できる状態)ができないと、ワーキングメモリーを記憶、想像、推察に使うことができません。つまり、読んでも「理解」が伴わないのです。英語が流ちょうに読めるようになって、はじめて「読解力」が働き始めます。英語・日本語に関わらず、読書教育のポイントは「流ちょうに読む力」の育成なのです。
「読める子はどんどん読めるようになり、読めない子はどんどん遅れていく」読解の研究では、この現象を「マタイ効果」と呼びます。カナダ・トロント大学の認知心理学者スタナビッチ(Stanovich, 1986)が提唱した言葉で、聖書の「持っている者はさらに与えられ、持たない者は持っているものまで奪われる」という一節に由来しています。 なぜそんなことが起きるのでしょうか。早い段階で読む力を身につけた子どもは、自分で本を読むことで、新しい言葉や知識にどんどん出会っていきます。語彙や知識が増えれば文章の理解力が上がり、さらに難しい本にも手が届くようになります。「読む力が、次の読む力を育てる」という好循環が回り始めるのです。
一方、初歩の読みでつまずいた子どもは本を読む機会そのものが減ってしまうため、語彙も知識も増えにくく、差はますます開いていきます。つまりマタイ効果とは、読み始めの時期に生まれたわずかな「差」が、時間とともに雪だるま式にふくらみ、その後の学習全体に長く影響し続ける現象を指しています。

英語を第二言語で学ぶ生徒はWPMが遅い

英語を第二言語として学ぶ子どもたち(L2)は、母語として英語を習得している子どもたち(L1)比べて、どの程度読書スピードに差があるのでしょうか。この点について、プレトリウス&スポール(Pretorius & Spaull) による研究が、実証的データを示しています。
同研究では、南アフリカの児童を対象に、音読時の読みの流ちょうさ(Oral Reading Fluency)を「WPM」で測定しました。報告されている代表的な数値は以下の通りです。

学年 L1(英語母語) L2(ESL学習者)
Grade 1 40–60 wpm 20–30 wpm
Grade 2 90–100 wpm 60–70 wpm
Grade 3 120 wpm 80–90 wpm
Grade 4 140–150 wpm 110–120 wpm
このデータが示す事実は明白です。英語を第二言語として学ぶ学習者は、各学年において平均して約20〜30語/分、母語話者よりも読書スピードが遅いという一貫した傾向があるということです。
繰り返しますが、読書スピードは、子どもの「読解力」を予測する重要な指標であり、英語を第二言語として学ぶ子どもたちにもこの法則はそのまま当てはまります。「速く、正確に読む」練習を取り入れ、早期に「識字の自動化」を実現しなければ、いずれ英語力は頭打ちになるのです。
今の日本の英語教育では、WPMが着目されることはほとんどありません。読書スピードよりも「文法ルールに則って理解しながら読む」ことが重視されます。もちろん文法理解は重要です。しかし、読みの自動化を伴わない学習では、読書スピードは伸び悩みます。そして、スピードが伸びなければ、結果として読解力も伸び止まるのです。読みの自動化なしに高度な読解は成立しません。
「英語を第二言語で学ぶ日本人にはネイティブ並みの読書スピードは必要ない!」そう考える人もいるかもしれません。しかし、現実は異なります。
大学入学共通テストの英語リーディングテストでは、出題語数が増加し、現在は「約6000語」が標準となっています。これはセンター試験時代と比べて約1.5倍に相当し、受験生には「読解スピード」と英語を集中して読み続ける「スタミナ」が求められます。
この出題数に対応するには、「1分間に150語」のペースで英語を読み続ける力が必要であると、早稲田大学の鈴木祐一准教授は分析しています。「1分間に150語」という読書スピードは、ネイティブの小学4〜5年生レベルであり、英語技能で言えばCEFR B2(英検準1級以上)という高い目標です。
この英語の長文化・高速化の傾向は、大学入学共通テストだけでなく、慶應義塾大学や早稲田大学といった上位私立大学の英語試験でも見られます。これらの大学では、20年前と比べて英語試験の出題語数が「2倍程度」になっており、受験生には高い読書スピードが求められるようになってきています。
読書スピードは、もはや補助的能力ではありません。それは、日本の大学入試を突破するための必須条件になっているのです。

どうすれば読書スピードが向上するのか?

では、英語を第二言語として学ぶ子どもたちは、どのようにすれば読書スピードを向上させることができるのでしょうか。結論から言えば、鍵となるのは「フォニックスによるデコーディングの自動化」と「サイトワーズによる語彙の即時認識」です。この二つにフォーカスした訓練を取り入れることで、読書スピードを短期間で向上させることができます。

【1】フォニックスによるデコーディングの自動化

読書スピードが遅い最大の理由は、単語を音に変換する処理に時間がかかっていることです。文字を一つひとつ拾い読みしながら音声化している限り、処理速度は上がりません。
フォニックスではアルファベットの音を教えます。導入段階で「Aは/æ/」「Bは/b/」と教えることは不可欠です。しかし、文字と音の対応を一通り学んだ後も、いつまでも一文字ずつ処理する段階にとどまっていては、デコーディングは自動化されません。そこで必要になるのが、次のステップである「ワードファミリー指導」です。
英単語の多くには「規則性」があります。特に単語の終わりの音(ライム)が共通する単語群は、体系的に整理することが可能です。これを「ワードファミリー」と呼びます。
たとえば「-at/アット」で終わる単語群には「bat, cat, fat, hat, mat, pat, rat, sat」などがあります。これらをバラバラに教えるよりも、グループとして読み方を教える方法がはるかに効率的に、短期間で、正しく文字を音声化できるようになります。
同様に「it/イット」で終わる単語群「bit, fit, hit, kit, lit, pit, sit, wit」を習得すれば、読める単語を一気に増やすことができます。ワードファミリーは語彙増加が目的ではなく、処理方法の拡大によるデコーディングの高速化訓練なのです。
英語圏のフォニックス指導では、ワードファミリーを体系的に習得させるアプローチが主流です。中でも広く参照されているのが「37の主要ワードファミリー」です。
これは、英語の初期読解において特に出現頻度が高く、かつ生産性(他の単語へ応用しやすい度合い)の高いライムパターン(終わりの音が同じ単語群)を厳選したものです。これらを習得すると数百語規模の単語を効率よく処理できるようになります。
この指導の理論的基盤となっているのが、エリ(Ehri)やアダムズ(Adams)が示したオルソグラフィック・マッピング理論です。この理論では、高いリーディング力を示す子どもは、単語を視覚的に丸暗記しているのではなく、文字と音素を結びつけ、音韻単位のまとまりとして長期記憶に保存していることが示されています。
特にCVC単語(cat, hat, rat などの三文字語)は、識字の初期段階において極めて重要な役割を果たします。これらは音と文字の結合を強固にする基礎訓練となり、やがてワードファミリー単位での処理へと発展します。

【2】サイトワーズによる語彙の即時認識

フォニックスでやさしい英単語(CVC,CCVC,CVCC)が読めるようになってきたら、サイトワーズ学習のスタートです。サイトワーズは、英語の文章に高頻出で出現する単語を、出現頻出順に学ぶシンプルな学習法ですが、英文を構成する単語を「速く、正確に」認識するカギとなる役割を果たします。
英語の文章によく出てくるthe、of、to、was、saidなどの頻出単語を、いちいちフォニックスで解読(デコード)していては、ワーキングメモリが消耗してしまい、意味理解に使えるリソースが不足してしまいます。これを解消するために、サイトワーズを集中学習し、「瞬時に読める状態=自動化」へと導くことがサイトワーズ学習の目的です。
ここで誤解してはいけないのは、サイトワーズはフォニックスの代替ではないということです。「瞬時に読むことが大切ならば、単語を分解するフォニックスは教えずに、最初からサイトワーズを覚えさせれば効率的ではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、「フォニックスありきのサイトワーズ」という大原則を知ってください。 フォニックスを介さずに、サイトワーズを教えることは、日本語に例えれば「五十音を教えずに本を読ませる」ようなものです。文字と音の対応がわからない子どもは、同じ文字を繰り返し目にすることで図形的(視覚的)に覚えたり、単語の綴りを頭の中で唱えて(catを「シー・エイ・ティ」とアルファベットの名前で唱える)音声的に覚えたり、綴りを書いて動的に読み方を記憶するという方法に頼るしかありません。
こうした「丸暗記中心」の学習には限界があります。未知の単語が読めない、経験や勘に頼る部分が多く読みミスが多くなる、識字(音声化)処理に負荷がかかり「読解」にワーキングメモリーを使えない、などが起こります。つまり、サイトワーズ学習だけで英文を読ませることは、「読みに流ちょうさ」につながりにくいのです。
フォニックスの欠点の一つに「例外が多い」ことがあります。英語の綴りは、「規則性があるが、例外もある」という構造をしているため、フォニックスのルールでは完全に読めない単語が散在します。たとえば「the、said, are, have」などは高頻出単語であるにも関わらず、フォニックスのルールで正しく読むことができません。
フォニックスで読めないなら、なおさらサイトワーズ式で丸暗記させれば良いではないかという意見もあるでしょう。しかし、サイトワーズに含まれる不規則語も、実はその多くが、部分的にフォニックスのルールに従っているのです。たとえば、サイトワーズ頻出順1位の「the」を見てみましょう。「th=有声音/ð/ズ」と「e=弱母音/ə/アとオの中間」で構成されており、頭のダイグラフ「th」はフォニックス通りの音で、お尻の「e」が例外の音です。
フォニックスを学んだ子どもは、たとえ全てが正確に読めなくても、既知の知識を使って「部分から全体」を推察できるようになります。saidも頻出する不規則語ですが、フォニックスの知識を応用して「s=ス、ai=エイ、d=ドゥ、スエイド?セイド?あ、セッドだ!」と自力で読めるようになります。
他にもサイトワーズにはare、have、some, were、anyなどの不規則語が頻出上位で登場しますが、細かく見ると、フォニックスのルールで読める部分が含まれています。つまり、「フォニックス→サイトワーズ」という学習の流れを作ることで、サイトワーズに含まれる不規則語も、推察力を働かせて、「約80%は音声化できる」ようになるのです。このステップを踏まず、いきなりサイトワーズ式(丸暗記)で英語を読ませると、「勘」や「記憶」に頼る部分が多くなり、「うまく読めない」「英語は難しい!」と失敗体験を積ませる可能性が高くなるのです。

面倒な「識字の自動化」を簡単にするオンライン教材

 私が開発したTLCフォニックスは、「毎日5分の動画レッスン」で「識字の自動化」を段階的に育成するオンライン教材です。正しい発音で英語を読み解くために必要な技能は、すべてこの教材で身につけられます。すでに多くの卒業生が、小中高生のうちに「CEFR B2以上」の英語力を獲得し、グローバルに活躍しています。英語を身につけることによって、子どもは「一生使える武器」を手に入れることができます。学生時代にCEFR B2を習得することは、将来のキャリアと自己実現に直結します。わが子に何か一つ「強み」をつけたい!という方は、以下から無料トライアルにお申し込みください。


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プロフィール

船津 徹(Funatsu Toru)

1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2602年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。

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