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おうち英語・保護者の疑問

いつまで、かけ流しが有効なのですか?

  • 臨界期
  • 音声知覚形成
  • 可塑性
  • 英語かけ流し
  • 年齢
  • 幼児英語
  • 第二言語習得
  • 英語耳
保護者の方からのご質問

「幼児期のかけ流しが大切だということは分かりました。では、いつまでが有効なのでしょうか。」

「かけ流しは小学生になったら遅いのでしょうか。かなが読めるようになったら、もう英語の耳は作れないのでしょうか。」

早いほど有利ですが、年齢だけで期限を決めることはできません

これは、とても良い質問です。

「英語は早ければ早いほどよい」と言われると、すでに小学生になっているお子さんの保護者にとっては、不安材料になってしまうでしょう。

一方で、「いつ始めてもまったく同じです」と言ってしまうと、幼児期に英語音声を入力することの重要性がぼやけてしまいます。

かけ流しの有効性は、ある年齢を境に突然なくなるものではありません。

そのため、ここでは「何歳までなら大丈夫」「何歳を過ぎたら手遅れ」と年齢だけで線を引くのではなく、子どもの音声知覚がどのように変化していくのかという視点から考えます。

かけ流しに明確な有効期限はありません。
ただし、年齢によって効果的な取り組み方は変わります。

英語の音声知覚形成は、早く始めるほど有利です

英語の音声知覚形成は、早く始めるほど有利です。これは、多くの研究でも示されています。

WerkerとTees(1984)は、乳児が生後まもない時期には、周囲で日常的に使われていない言語の音の違いも幅広く聞き分けられる一方、生後1年頃までに、生活環境で使われる母語の音声体系へ適応していくことを報告しました。

Kuhl(2004)も、乳幼児が周囲から受け取る大量の音声入力に含まれる規則性を利用し、それぞれの言語に適した音韻カテゴリーを形成していくと説明しています。

日本語環境で育つ子どもは、日本語の音、日本語のリズム、日本語の語の切れ目に敏感になっていきます。

これは、日本語を身につけるために必要な発達です。

その一方で、日本語の音声体系が強く形成されるにつれて、英語の音も日本語の音の仕組みを通して聞き取りやすくなります。

つまり、乳幼児期には英語を英語の音として受け入れやすい柔軟性がありますが、年齢とともに、すでに身につけた日本語の音声体系の影響を受けやすくなるのです。

日本語と英語では、音を区切るリズムが異なります

日本語には、「モーラ」または「拍」と呼ばれる独特のリズム単位があります。

例えば、「きて」「きって」「きいて」は、日本語では拍の数や配置によって区別されます。また、「さんま」「こんな」「パン屋」に含まれる「ん」も、一拍として数えられます。

Otakeら(1993)やCutlerとOtake(1994)は、日本語母語話者が、日本語の音声をモーラに基づいて分割する傾向を示しました。

このような母語特有の音声処理は、外国語の聞き取り方にも影響を与えます。

例えば、英語の「strike」は英語では一音節ですが、日本語では一般に「ストライク」と表され、5拍に分けて発音されます。

同様に、「desk」は英語では一音節ですが、日本語では「デスク」と3拍に分けられます。

このように、日本語の拍に当てはめて英語を聞こうとすると、本来は連続している英語の音が、日本語的に区切られて知覚されやすくなります。

かな文字の習得は、一つの節目になります

かな文字は、日本語の音をおおむねモーラ単位で表す文字体系です。

子どもは、かなを身につける過程で、日本語の音を拍のまとまりとして意識しやすくなります。

そのため、かな文字による日本語の音の整理が十分に定着する前から英語音声に触れておくことは、英語の音声知覚形成という点で大きな意味があります。

ただし、かなが読めるようになった日を境に、英語の音を聞き取る能力が失われるわけではありません。

かなの習得は、英語学習の「期限」ではなく、母語による音声処理が強くなっていく一つの節目として捉えるのが適切です。

「かなが読めるようになったら手遅れ」
ということではありません。

小学生以降にも、脳の可塑性は残っています

小学生以降に英語を始めたからといって、手遅れになるわけではありません。

その理由は、人間の脳には「可塑性」があるからです。

可塑性とは、経験や学習によって、脳の情報処理の仕方が変化していく性質です。

幼児期とまったく同じ柔軟性ではないとしても、十分な量と質の英語入力を継続することで、音声の捉え方を少しずつ変えていくことは可能です。

Flege(1995)のSpeech Learning Modelでは、成人になった後も、第二言語の新しい音声カテゴリーを形成する能力は完全には失われないと考えられています。

また、Bradlowら(1997)は、日本人の成人英語学習者を対象とした英語の「r」と「l」の知覚訓練によって、聞き分ける力だけでなく、発音にも改善が見られたことを報告しています。

このことは、母語の音声体系が確立した後でも、適切な学習経験によって第二言語の音声処理を変化させられることを示しています。

小学生以降は、かけ流しに別の学習を組み合わせます

もちろん、小学生以降は、日本語の音声体系や、かな文字を使った音の処理がすでに強く働いています。

そのため、幼児期と同じように音声を生活の中で流すだけでは、英語の音の仕組みに十分な注意が向かない場合があります。

小学生以降は、かけ流しをやめるのではなく、かけ流しに次のような取り組みを加えることが大切です。

  • 英語音声を毎日継続して聞く
  • 文字と音を結び付ける
  • 音読やリピーティングに取り組む
  • 多読によって英語の処理量を増やす
  • 内容を理解しながら多くの英語を聞く
  • オンラインレッスンなどで意味を確認する

海外留学のような英語環境を家庭で完全に再現することは現実的ではありません。

だからこそ、多読や大量のリスニング、音読などを日々の生活に計画的に取り入れ、英語に触れる総量を増やしていく必要があります。

脳の可塑性が残っている以上、小学生以降でも、新しい音声パターンを学び直すことは十分に可能です。

学習段階 かけ流しの主な役割 組み合わせたい取り組み
乳幼児期 英語の音、リズム、語のまとまりを自然に受け入れる土台を作る 短時間のオンラインレッスン、絵本、親子の語りかけ
小学生 英語音声への接触量を維持し、音と文字を結び付ける 音読、多読、リピーティング、内容理解
中学生以降 英語を英語の語順と音のまとまりで処理する練習を続ける 多聴、多読、発音練習、会話、読解、語彙学習

幼児期に聞いた英語は、後の学習につながります

幼児期に英語音声へ触れ、歌や絵本、かけ流しなどを通して英語のリズムに親しんできた子どもは、英語の音声知覚形成が途中まで進んでいると考えられます。

途中で英語学習を休んだとしても、それまでの経験がすべて消えて、完全にゼロへ戻るわけではありません。

ただし、使わない期間が長くなれば、聞き取りや発話の力が弱くなる可能性はあります。そのため、再開後は、かけ流しや読み聞かせなどを通して、英語音声に触れる量を再び増やすことが大切です。

それまでに形成された英語音声への感覚を足がかりとして、小学生以降の読みや英語学習へつなげていくことができます。

可塑性の大切な特徴は、一度作られた知覚の仕組みも、その後の経験によって変化し続けることです。

年齢に応じて学び方を発展させます

1 幼児期 かけ流しを中心に、英語の音とリズムを受け入れる土台を育てます。
2 小学生以降 音声に文字、音読、多読、内容理解を組み合わせ、英語力を発展させます。

結論:早く始めるほど有利ですが、小学生からでも遅くありません

大切なのは、「何歳までなら大丈夫」「何歳を過ぎたら無理」と、年齢だけで白黒をつけないことです。

幼児期は、英語の音を柔軟に受け入れ、英語耳の土台を育てるうえで、最も有利な時期です。そのため、可能であれば早い時期から英語のかけ流しを始めることには大きな意味があります。

一方、小学生以降にも、脳には学習によって変化する可塑性が残っています。

遅く始めた場合でも、良質な音声入力を継続し、文字、音読、多読、読解、内容理解へ適切につなげることで、英語の音声知覚と英語力を伸ばすことは十分に可能です。

幼児期は、かけ流しを中心に英語の耳の土台を育てる時期です。小学生以降は、かけ流しだけに頼るのではなく、音声と文字を結び付けながら、学習を次の段階へ発展させていきましょう。

参考文献・引用

  1. Bradlow, A. R., Pisoni, D. B., Akahane-Yamada, R., & Tohkura, Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. The Journal of the Acoustical Society of America, 101(4), 2299–2310. DOI
  2. Cutler, A., & Otake, T. (1994). Mora or phoneme? Further evidence for language-specific listening. Journal of Memory and Language, 33(6), 824–844. DOI
  3. Flege, J. E. (1995). Second language speech learning: Theory, findings, and problems. In W. Strange (Ed.), Speech perception and linguistic experience: Issues in cross-language research (pp. 233–277). York Press.
  4. Kuhl, P. K. (2004). Early language acquisition: Cracking the speech code. Nature Reviews Neuroscience, 5(11), 831–843. DOI
  5. Otake, T., Hatano, G., Cutler, A., & Mehler, J. (1993). Mora or syllable? Speech segmentation in Japanese. Journal of Memory and Language, 32(2), 258–278. DOI
  6. Werker, J. F., & Tees, R. C. (1984). Cross-language speech perception: Evidence for perceptual reorganization during the first year of life. Infant Behavior and Development, 7(1), 49–63. DOI
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