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2015年11月号特集

Vol.212 | 子どもに本当のことを伝えますか?

サンタクロースって本当にいるの?

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1511/
船津洋『子どもに本当のことを伝えますか?』(株式会社 児童英語研究所、2015年)


| お子さんの未来、どこまで見ていますか?

 大学の夏休みとは長いもので2ヶ月間。そんな長い夏休みも終わり、10月より秋学期が始まりした。この春からいい年をして大学に戻ったものの、「学生とは、かくも勉強するものだったのか」と最近の学生たちの勉強熱心さに感心するとともに、この道を選んでしまったことに観念しつつ、そして宿題に追われつつもせっせと日々過ごしています。
 そんな学生生活ですが、やはり情報の量と質、さらには種類が俗世間とは違います。言語学の授業では教授の「幼児がどのようにして言語を身につけるのか、その仕組みは未だ分かっていない」などという発言を聞くと、なるほど学究の世界とはなんとも正直なものだと感心してしまいます。
 さらに興味本位でちょいと履修してみた日本の中世史の講義にしても、「へぇ~、そんな考え方があるのか」とか「それで日本史Bはああなっているのか」などなど驚きの声を心中漏らし続けています。
 そんな中、授業の一環で、とあるエッセイ投稿サイトを紹介され、いろいろ目を通していたら、面白い記事を見つけましたのでご紹介します。

This I Believe / Telling Kids the Whole Truth
https://thisibelieve.org/essay/39780/

 このエッセイは「子どもに本当のことを伝えること」をテーマに書かれています。投稿サイトの制限から、わずか500語ほどなので舌足らず感がありますが、日々の親子のやりとりで戸惑いを感じる部分に「あれこれ隠そうとせず、とにかく本当のことで対応しなさい」と一定の答えを与えてくれています。僕の考え方と通じる部分もあるので、今回はこの記事に触発されて、僕の育児における「どこまで子どもたちに伝えるべきか」に関する考え方を書いてみます。

| immortals

 以前、といってもうん十年以上も前の話ですが、とある葬儀の場でのこと。通夜だったのですが、故人のご遺体と対面しつつ、生前に受けたご恩などに思いを馳せていました。かなりの人で混雑している中、ご遺族らしき幼稚園児くらいのお子さんが近づいてきました。すると突然その子の母親らしき女性が現れ「ダメ見ちゃ!」と言うのです。
 とてもセンシティブなトピックなので、あくまでも「僕の場合」という前提付きで書きます。
 人の死とは、当然のことながら自然の一部です。誰でも必ず死にます。生の数だけ死があるわけです。そして、人は生きていれば、必ずこの現実に遭遇します。そのような自然なことを子どもながらに知ることは勉強にもなりますし、覚悟にもなります。そして、それらを子どもから隠す理由が、僕の場合には見つけられないのです。子どもたちの祖父母が亡くなれば、「おじいちゃん死んじゃったね」「優しかったね」と話し合えばよいのです。3歳児でも、何となく、死ぬということが理解できるのだと思います。
 一方で、隠す気持ちも分からないではありません。子どもに遺体を見せるとショックを受けるかもしれない、泣くかもしれない、トラウマが残るかもしれない…、などなど様々な思いがよぎるのでしょう。しかし、「死」は極めて自然な現象です。また、子どもたちは大人が思っているよりはよほど精神的にも強い存在です。本人の様子を覗いながら、声をかけながら、最後のお別れをさせてあげるのは、僕には有意義なことにしか思えませんが、いかがでしょうか。


| 赤ちゃんはどこから来るの?

 のっけから暗い話で恐縮です。しかし、育児をしていればこのような事はいくらでもあるでしょう。子どもたちからの質問に戸惑いを覚えたり、子どもに本当のことを伝えるべきか否かと思い悩んだりするという問題は、親であれば誰でも経験することのひとつでしょう。もう少しいろいろな例を見て参りましょう。
 子どもたちに伝えるべきか否かで迷うことには、どんなことがあるでしょうか。人の死やそれに直接関わるような病気は、もちろんそんな事柄のひとつでしょう。先に紹介したエッセイは、ご主人が前立腺がんに冒され、それを子どもたちに伝えるべきか、という質問を受けるところから始まっています。かくいう私も、傍らに常に薬があったり、何をするにも「よいしょ」と声が漏れたりと、そろそろいい年ですので人ごととは思えません。
 また、どこから赤ん坊は生まれてくるのか、これもまた子どもからの質問の定番です。お腹が大きくなった、その中に赤ちゃんがいるのは分かりますが、どうやって出てくるのか。素朴ながら鋭い質問ですね。さらに、お腹が大きくなるためには、どうやってお腹の中に入ったのか。つまり赤ちゃんはどこからやってくるのか。これも答えに困るかもしれません。まさかコウノトリが運んでくるはずはありませんし、それは事実でもありませんから。
 そのような質問には、子どもが理解できる範囲で、納得できる範囲で、本当のことを教えてあげればよいでしょう。あまり直接的な単語を使用すると、子どもたちは真似ますから避けた方が賢明であることは言うまでもありません。


| パパがサンタさん?

 さらに定番といえば、そうです。これからが旬のサンタさんです。ちなみに全然関係ありませんが、日本では「サンタクロース」と呼びますが、英語では “Santa Claus” の最後の ‘s’ は有声音の [z] で発音します。つまり「サンタクローズ」です。閑話休題。
 親として、子どもが喜ぶ顔を見ることほど幸せな瞬間はありません。小さいうちは実家でお年玉やお小遣いを貰ってもあまりうれしそうな顔はしません。やはりうれしいのは誕生日やクリスマスのプレゼントでしょう。
 かくいう我が家でも倅たちが小さい頃は、それとなく彼らの欲しい物を聞き出して、買い物に走ったものです。当時はAmazonなどという便利なお店はありませんでしたので、玩具を手に入れるのもひと苦労。玩具売り場を何軒もはしごして見つかれば良い方で、どうにも手に入らないことが珍しくありませんでした。確か、店で予約するのが最も確実な入手法だったような…。
 いずれにしても、苦労のあげく手に入れた玩具をどうやって渡すのか。「はいっ」とあげてしまっては面白くも何ともない。そこで、イブの夜に子どもたちが寝入ってから、枕元に置いてみたり、いろいろ工夫したものでした。ある友人などは、念の入りようが見事で、用事を装い、外へ出て、庭から隣室へ回りプレゼントを仕込みます。そして、ガタガタと物音を立ててから、「庭に赤い服着たおじさんがいたよ」などと言いながら玄関から帰宅する。これではサンタクロースを信じないわけにはいかないでしょう。
 しかし、いつかその日はやってきます。「ママ、サンタって本物?」とか「サンタはパパだよね?」などと問われたとき、なんと答えましょうか。質問されるまでは、信じさせておけばよいのでしょうけれども、情報の出所は別として、疑念を抱いたのであれば、ここは正直に答えてやればよいでしょう。我が家の場合には上の子より下の子の方が、すんなりとこの事実を受け入れていました。上の子にしてもショックで寝込むようなことはなく、翌年からは直接父親に「あれが欲しい」と言うようになったものです。今になれば懐かしい話です。


| お金の話

 先月号のパルキッズ通信に「男と女の話」を書きました。最近の若者たちの異性に対する、いわゆる「食欲減退」感には危惧の念を抱かずにはいられません。また、最近若者たちと会話する機会が増えてきて、いろいろ彼らに聞いてみるのが「お金」の話です。
 いくらお給料をもらえれば、生活を維持できるのか。結婚してもしばらくは共働きで余裕があるが、子どもができて収入源がひとつになったらどうするのか。…などなど、いろいろ想像して答えてもらいますが、やはり現実感を伴った答えを見いだすのは難しいようです。お給料などは年収300万円もあれば十分だ、と考えている子たちが少なくありません。
 確かに、親元で暮らすのであればそれで事足りるかもしれませんが、一人暮らしとなるとずいぶん窮屈な生活になるでしょう。学生でも一人暮らしをするとなれば、お金は相当かかります。地域にもよるでしょうが、家賃と水道光熱費、食費と定期代にお小遣いだけでも月に15万円とすれば、年間200万円近くはかかるでしょう。これとは別に学費がかかるのですから、大学生の親になるのは並大抵のことではありません。それにしても、年間200万円ではキツめの生活であることには間違いないでしょう。社会人になってお給料を年間300万円貰ったとしても、税金や年金、保険料などを天引きされれば、学生に毛の生えたような生活しかできないかもしれません。
 このような「お金」のことをお子さんと話し合っていますか?
 例えば、家族旅行をします。仮にハワイへでも行ったとしましょう。一体いくらかかるのでしょう?または国内旅行でも、交通費に宿泊費、食費にお土産、家族4人の2泊3日の旅行でも相当お金がかかります。それを子どもたちと話し合いますか?
 「普段から妙にリアルなお金の話をしなさい」とお勧めしているわけではありませんが、旅行や学費、塾の費用や合宿費、その他もろもろ、機会あるごとに話し合ってみるとよいでしょう。子どもたちは意外と頭がよく、小学2・3年生でも、「家族4人のハワイ旅行だと100万円くらいはかかりそうだ」とか「3日間の沖縄旅行でも50 万円くらいかかりそうだ」などと予想します。それに対して自分のお小遣いがいくらで、お年玉がいくらだから…、何年分貯めても家族旅行には当分行けないようだ、と分かるでしょう。また、時給1000円で働いたとすると、沖縄旅行までには500時間、つまり3ヶ月ほど働き続けて一銭も使うことなく貯金する必要がある、ハワイ旅行ならその倍の半年間かかる…など、身近な事柄で具体的に「お金の重み」を感じさせればよいのです。
 といっても、中学生や高校生になってから突然こんな話をすると、恩着せがましく感じて、話し合いどころか単に反発を招くだけでしょうから、小学生のなるべく早いうちから、少しずつ話しかけてやればよいでしょう。


| 夢の話

 ロマンチックな話が悪いわけではありませんが、きれいな言葉を並べて世の中を美化する傾向が一部で行われています。「夢は叶う」、「努力は報われる」、「勉強がすべてではない」、「お金がすべてではない」などなど。確かに、「夢は(人の何倍も能力があって、さらに日々の努力を怠らなければ)叶う(かもしれない)」し、もちろん「お金がすべて」ではないことは言うまでもありません。しかし、単純に上の言葉を真に受けてしまえば大変なことになります。
 これらの「きれいな言葉」たちを総合すると、どういったことになってしまうのでしょうか?
 「勉強がすべてではないから苦手なら勉強しなくても良いし、仮に稼げなくてもお金がすべてではないから問題ない。さらに、夢に向かって進んでいる限りは、その夢は叶う、つまり努力は報われるはずだ。」…このあたりで終わればよいのですが、最近では「夢が叶わない」「努力が報われない」のは「私のせいではない(周りが悪い)」などと感じる人たちも一部にいるようです。
 夢は夢です。はじめに抱いた通りに夢を叶えることができる人は、ほんのひと握りでしょう。しかし、小さいうちから夢に向かって不断の努力をすることで、その夢が叶わないまでも、限りなく夢に近いところで、豊かな人生を送ることができるでしょう。そのためには、「きれいごと」ではなく、世の中の本当のところ―これから足を踏み入れていく世界のこと、そこではどんなことが必要とされて、どんなことをして生きなくてはいけないのか―を話し合ってあげることが大切でしょう。

 最近、パティシエになりたい女の子が増えているようです。例えば、パティシエになるためには、何をどこで学ばなくてはいけないのか、どのようにしてお金を稼ぐのか、自分の店を持つのか、また、そのためにはどれだけの精神的、時間的、金銭的なコストを覚悟しなくてはいけないのか…など、子どもたちの夢を壊すことなく彼らが理解できる範囲で、より明確なイメージが湧くように話し合えば良いのです。

 お子さんに本当のことを伝えていますか?本当のことを伝えず、世の中の事象のきれいな面だけを伝えることで、子どもたちを守っているつもりが、逆に彼らの未来に暗い影を落とすことになっているかもしれません。
 繰り返しますが、「すべて」を伝える必要はありません。使用する単語も選ばないといけません。彼らの意欲をくのではなく、逆に生き生きと夢に向かっていける助けとなるような、「本当のところ」を伝えていけばよいのです。
 子どもたちは、大人が思っている以上に、タフで賢くて、受容力と理解力に富んでいます。子どもたちを信じて、機会があれば一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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