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2011年11月号特集

Vol.164 | イメージでとらえる英語術

「右脳英語力」と「左脳英語力」って?

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)



プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業後、言語学の研究者として、日本人の英語習得の在り方を研究中。35年以上、幼児・児童向け英語教材開発の通して英語教育に携わる経営者である一方、3児の父、そして孫1人を持つ親として、保護者の視点に立ったバイリンガル教育コンテンツを発信し、支持を得ている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)など多数ある。


 いきなりですが、まず下の文章を読んでください。

 * * *
 
 「小嬢さまよ」
 と、源爺ちゃんが、この日のあさ、坂本家の三女の乙女の部屋の前にはいつくばり、芝居もどきの神妙さで申し上げたものであった。
 「なんです」
 と、乙女がうつむいて答えた。手もとが針仕事で忙しい。あすという日は、この屋敷の末っ子の龍馬が江戸へ剣術修行に旅立つ。

 * * *

 司馬遼太郎の「龍馬がゆく」の冒頭の一節ですが、読んでみて如何ですか?理解できましたか?もちろん理解できますよね。
 ところで「理解する」。これはどういうことなのでしょう。頭の中で行われた一連の流れを眺めてみましょう。
 まずは目に入った「活字」が「音声」になりましたね。そしてほぼ同時に「音声」が「イメージ」として結像しました。これで「分かった」。つまり「理解」したということになります。
 言語を理解するというのは、イメージできることと同じ一面を持っています。もちろん高度に抽象的なものなど、イメージできないものもありますが、程度の差こそあれ、「イメージ化」が「理解」と同義であるといえるでしょう。
 
 では、次に英文の場合を考えてみましょう。以下の文章を読んでください。

 * * *

 The hottest day of the summer so far was drawing to a close and drowsy silence lay over the large, square houses of Privet Drive. Cars that were usually gleaming stood dusty in their drives, and lawns that were once emerald green lay parched and yellowing – for the use of hosepipes had been banned due to drought. Deprived of their usual car-washing and lawn-mowing pursuits, the inhabitants of Privet Drive had retreated into the shade of their cool houses, windows thrown wide in the hope of tempting in a non-existent breeze. The only person left outdoors was a teenage boy who was lying flat on his back in a flowerbed outside number four.

 * * *

 少し長くなりましたが、これは「Harry Potter and The Order of The Phoenix(ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団)」(J.K.ローリング)の冒頭の一節です。いかがですか?イメージできましたか?
 おそらく、読めるには読めたはずです。Gleaming, parched, drought…(ピカピカした、干上がった、日照り)などなど、高校までは教わらない単語もいくつかありますが、読めるには読めたのではないでしょうか。しかし、この文章を読んだだけで、すっとイメージできましたか?もし一読でイメージが浮かんだのであれば、かなり英語が出来る方ですね。2、3回読んで分かった方も、相当英語が出来る方です。
 さて、試してみてお分かり頂けたように、日本語の場合には、大人が読むような小説でも読めばすぐにイメージできます。しかし、英文となると、小学校高学年の子たちが読むような子ども向けの小説を、読めたとしてもイメージできないのです。
 そこで、必然的に日本語に訳すようになります。
 では、上記の文章を日本語に訳せますか?あまり意味はありませんが、直訳してみると、こんなぐあいになります。
 『この夏の最も暑い日は終わりに近づきつつあり、眠気を誘う沈黙がプリベット通りの大きな四角い家々を覆った。干ばつによりホースの使用が禁じられたため、日頃は陽に輝いている車はほこりをかぶったまま家々の引き込みにじっと佇んでおり、かつてはエメラルドグリーンの芝は枯れて黄ばんでいる。彼らの日常的な洗車と芝刈りの行為を奪われて、存在しないそよ風へのほのかな期待に窓は開かれ、プリベット通りの住民達は涼しい家の日陰に逃れた。外に取り残された唯一の人は、4番の庭にある花壇に仰向けに寝そべっている十代の少年だった。』
 これで、何とか分かりますね。だから日本語に訳すのです。ただ、この学習法には限界があります。
 これをスラスラと訳せるようになるのは、ほんのひと握りの人たちなのです。他の大半の方々は、仮に訳せたとしても随分と時間がかかってしまうのです。ちなみに、私の場合も同様です。英文で読めばそのまま理解できますが、それを日本語に訳して清書すれば、5分くらいかかってしまいます。英語を、一旦日本語に訳す。そして、日本語として理解するわけです。読むだけなら30秒もあれば足りますが、この程度の文章の理解に5分もかかっていては、長文など読めるわけがありません。
 英検などでも「語彙」は得意。でも「長文」と「リスニング」が苦手、という方が多いですね。これは「英語を日本語に訳す」という、ひと手間に対する苦手意識から、「読むこと」に対する生理的といっても良いほどの嫌悪感を抱くようになってしまっているからなのです。


|  英語力のはかり方

 英検について、もう少し触れていきましょう。「パルキッズ」で育った子どもたちには、英検を受験するように薦めています。先日の英検に向けても、7月から「英検チャレンジ」と称して、約3ヵ月間、皆で励まし合いながら学習を進めてきました。
 「パルキッズ」で育った子どもたちは、文法を知りません。英単語は3,000~4,000語知っていますが、それらの日本語訳を知りません。「パルキッズ」には一切日本語を入れていないので、彼らは私たちが学校で勉強してきたように、英単語を日本語訳とペアで覚えることはしないのです。例えば ‘busy’ という単語なら「ばたばたと慌ただしい様子」というようにイメージで理解しています。
 ちなみにこの ‘busy’ という単語、日本語で該当する語は「忙しい」ですが、「忙しい」とはどういう意味でしょう?
 「ばたばたと何やら慌ただしい様子」ですよね。つまり、単語を理解するというのは、耳にしたり目にした単語を「イメージ」出来ることなのです。その意味では、「パルキッズ」で育った子どもたちは、英単語をイメージできるので理解していることになります。
 この「イメージできる能力」と、「日本語に訳す能力」は全く異なります。イメージするためには、英単語の日本語訳を知らなくても良いのです。例えば、アメリカ人は英文を日本語に訳せなくても英語を理解できているわけです。私たちが日本語を理解する時に、他の言語の存在は不要です。つまり、言語を「理解する能力」というのは、その言語をイメージできればよいということであって、「他の言語に置き換える能力」とは全く別物なのです。
 私たちはたまたま、英語を英語のまま理解できないので、仕方なく一旦日本語に置き換えるのですが、可能であれば英語は英語のまま理解すればよいのです。
 先の「ハリー・ポッター」のように、英語を英語のまま理解できれば、日本語に訳す手間が省けるので、相当ストレスが無くなります。日本語の本を読むのと同じ様にして、英語の本を読めるのです。


| 「右脳的英語力」と「左脳的英語力」

 ここで、話を英検に戻しましょう。
 「パルキッズ」で育った子どもたちは、英検を受験させると「リスニング」と「長文」で高得点をあげます。でも、「語彙」が苦手。一般的な学校教育で育った日本人たちとは、まるで逆の傾向が現れます。
 分かりやすくするために、一般的な日本人「語彙」が得意で「リスニング・長文」が苦手な傾向を「左脳的」、としましょう。それと逆に「リスニング・長文」が得意で「語彙」が苦手な傾向を「右脳的」としましょう。
 右脳的な状態での英語の理解とは、日本語に訳さずイメージで理解することです。この特徴は、スピード感です。
 長文といえば、英検よりもTOEICの方が遙かに読むべき文章の量が多いですね。時間内に全ての問題を解ききれない方も、かなりいらっしゃると思います。TOEICの問題はそれほど難しくはないのですが、量が多いので、読み返している時間があまりないのです。文章を読んでサッとイメージして、そして、質問に答える。ここで必要になるのが、1回読んで、もしくは不可解なところは2、3回読んでイメージできてしまう、そんな理解力です。スピード感のある「右脳的な英語力」をひとたび身につければ、TOEICはそれほど手強いものではなくなるのです。
 ところで、幼児たちは「右脳的な英語力」を簡単に身につけてしまうのですが、これは「大人には難しい」と考えられています。もちろん、幼児のように英語を聞き流すだけで、英語の規則性を発見し、単語を抽出できるようになり、その単語をイメージで理解していく、などという技は出来ません。
 しかし、現に英語を右脳的なイメージで捉えている大人たちはたくさんいます。身近な例で恐縮ですが、今回パルキッズのスタッフにも、英検を受験させました。英検資格を持っているスタッフもいれば、一度も受験したことがないというスタッフもいます。しかし、興味深かったのは、答え合わせをしたところ全てのスタッフに同じ傾向が出たことです。3級から準1級まで受験したスタッフたち。最初の「語彙」の部分では、「これはひどいなぁ~」という印象の解答用紙もありました。ところが「長文」になると、明らかに彼らの知らない英単語がいくつも登場しているのにも関わらず、答えは合っているのです。
 日本語の本を読んでみれば分かりますが、仮にいくつか知らない単語が出てきても、全体の理解には大して影響しませんよね。それと同じことが英文の読解でも起きているのです。
 さらに「リスニング」になるとほぼ全員満点。「英語が苦手」というスタッフが、いくつか落としただけでした。
 英検チャレンジに参加した「パルキッズ」の生徒たちの受験結果はまだ出ていませんが、リスニング以外を自己採点された方によれば、高得点を取った方がかなりいるようです。こちらも改めてご報告しますね。


| 日本人の英語力は「砂上の楼閣」?!

 さて、幼児たちが身につける右脳英語。英文を一旦日本語に訳さなくては理解できない我々、左脳英語の人たちからすれば羨ましい限りですね。ところが、この能力、身につけることは意外と簡単なのです。
 中学からの英語学習を少し思い出してください。簡単な文章から入って、文法と併せて、日本語に訳す方法を学んでいきます。同時に、動詞の活用などのルールも覚えます。しかし、リスニングはあまり行いません。これが我々がリスニングが苦手な原因ですが、ではリーディングはしましたか?
 試しに、中学校で使う一般的な教科書の単語を全て書き出して、単語数を数えてみました。すると、3年分の教科書にわずか10,000語しか印刷されていないのです。しかも、本文中に現れるものはもっと少ない。おそらく7,000語ほどでしょう。驚くべきことに、3年間にわずか7,000語しか読んでいないのです。7,000語といっても、どのくらいか分かりにくいので本に換算すると、オクスフォード・ブックワームズ・シリーズやペンギンブックスの初級レベル1冊分より少し多い程度です。あれらが、だいたい1ページで200語平均ですので、35ページ分くらいです。
 「日本語の文庫本35ページ」といったらどうですか?大した量ではありませんよね。30分もかからずに読めてしまうほどの量です。つまり、その程度しか読んでいないのです。こんな少量の英語情報で、英語の基礎が出来るわけがありません。
 そして、脆弱な基礎の上に、高校生になるとアメリカ人でも知らないような複雑な文法を教えられます。「砂上の楼閣」とはまさにこのことですね。これでは、断片的な理解しかできないのは当然のことでしょう。
 
 私たちに足りないのは語彙でもなければ、文法でもありません。必要なのは中学レベルの基本的な英文をたくさん読んで、「頑丈な基礎」を作り上げることなのです。
 幼児たちは生後3年間、日常的に交わされる基本的な日本語の会話を繰り返し耳にすることで、日本語の基礎固めをします。それと同様に私たち大人も、簡単な文章を読むことで、英語の基礎固めをすればよいのです。
 
 さて、「ハリー・ポッター」は少し難しかったですね。では、次の文章はどうでしょう。

 * * *

 It was early in April in the year ’83. I woke one morning to find Sherlock Holmes standing, fully dressed, by the side of my bed. He was a late riser, as a rule. It was only a quarter past seven, so I blinked up at him in some surprise.
 “Very sorry to wake you up, Watson.”
 “What is it, a fire?”
 “No, a client. It seems that a young lady has arrived here very upset…”

 * * *

 これは、英語多読「URLシリーズ」の「Sherlock Holmes」からの一節です。’Late riser’ などは習っていませんが、late(遅い)rise(起きる)などの既知の単語から、「寝坊介」であることは容易に導くことが出来ます。また、blink という単語を知らなくても、文脈全体の理解にも大して影響しません。
 これくらい簡単な中学レベルの文章ならば、読むことが苦痛ではないのです。むしろ、英語の本を読むことに喜びさえ感じられるようになります。読み進めるうちに、いつしか日本語に訳さなくなっている、つまり英語を英語のままイメージできるようになっている自分を見いだすことが出来るのです。
  『心ここに在らざれば、視れども見えず、 聴けども聞こえず、、、』四書の中の大学にこんな言葉がありますね。本来の意味とは異なるのかもしれませんが、英文を読んでも意味が分からない、英語の音は耳に入るのに、聞き取れない。英語はそこにあるのに意味が分からないのです。もったいない話です。
 大量に英文に接する。ただそれだけで英語は身につくのです。子どもはかけ流し、我々大人は多読で、英語のまま理解できる英語の回路を身につけたいものですね。


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引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1111
パルキッズ通信2011年11月号特集『イメージでとらえる英語術』(著)船津洋 ©株式会社 児童英語研究所

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