留学には大きな価値があります。ただし、英語習得だけで費用対効果を決めることはできません
確かに、一年の高校留学で毎日英語を使えば、国内で少しずつ学ぶより早く英語が身につくように思えます。
留学には、英語力だけでは測れない大きな価値があります。
異なる文化や価値観の中で生活すること、自分で問題を解決すること、家族から離れて自立すること、日本や自分自身を外側から見直すことは、家庭での英語学習だけでは得にくい経験です。
私自身も留学生でしたので、若い時期に海外で学ぶ意義はよく分かります。
しかし、「英語を身につけるためだけに留学するのが最も効率的か」という問いには、必ずしもそうとは限らないとお答えします。
留学は英語を浴びるだけの場所ではありません。
それまでに育てた英語を使い、学びや交流を深める場所にもできます。
海外へ行くだけで、自動的に英語が身につくわけではありません
英語圏へ行けば、授業、買い物、交通、友人との会話、校内放送などを通して、多くの英語音声に触れます。
日本にいる場合よりも、英語を聞き、理解し、使わなければならない場面は増えるでしょう。
しかし、同じ国へ同じ期間留学しても、すべての学生が同じ英語力を身につけるわけではありません。
- 留学前にどの程度の英語力があるか
- 現地の授業へどの程度参加できるか
- 英語を使う友人関係を築けるか
- 分からないときに聞き返せるか
- 寮、ホームステイ、学校外で英語を使うか
- 日本語だけで過ごせる環境へ偏っていないか
- 本人が現地で積極的に行動できるか
留学先に日本人学生が多ければ、授業外の大部分を日本語で過ごす場合もあります。
授業の英語がほとんど理解できなければ、教室にいても内容を十分に学べず、発言や質問を避けてしまうことがあります。
留学という環境は大きな機会を与えますが、その機会をどこまで英語経験へ変えられるかは、本人の準備と行動にも左右されるのです。
留学の成果は、言語技能によって異なります
留学では、会話の流暢さ、発話への抵抗感、日常的な聞き取りなどが伸びやすい場合があります。
日々の生活で、素早く英語を理解し、その場で返答する必要があるためです。
一方、文法の正確さ、学術的な読解力、作文力、専門語彙など、すべての技能が同じ速さで自動的に伸びるとは限りません。
Freed(1995)は、留学環境での第二言語習得を扱った研究をまとめ、留学の効果が学習者や使用環境によって異なることを示しています。
CollentineとFreed(2004)も、留学、教室学習、国内の集中学習などの環境が、言語能力の異なる側面へ異なる影響を与えることを論じています。
| 英語力・経験 |
留学で得られる可能性 |
別に必要となる学習 |
| 日常会話 |
毎日のやり取りで即時に聞き、答える経験が増える
|
語彙や文法が不足すると、使える話題が限られる
|
| 流暢さ |
英語を使う頻度が増え、発話への抵抗が小さくなる
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正確さや内容の豊かさは、読書や学習でも育てる必要がある
|
| 発音・聞き取り |
多様な話者と自然な速度の英語へ接しやすい
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聞き分けにくい音には、意識的な練習が必要な場合がある
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| 読解・作文 |
現地授業や課題を通して学術的な英語へ触れられる
|
本を読み、文章を書き、フィードバックを受ける必要がある
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| 専門的な学び |
英語で授業を理解できれば、現地の知識や研究へアクセスできる
|
英語力が不足すると、内容より言語処理に負担がかかる
|
留学初期には、英語を聞き取るための適応が必要です
英単語や文法を学校で学んでいても、現地で自然な英語を初めて聞くと、ほとんど聞き取れないことがあります。
相手の話す速度が速い。単語同士がつながる。機能語が弱く発音される。聞いたことのない発音や表現が現れる。
そのため、留学初期には、英語音声から語の切れ目を見つけ、知っている語を自然な音声の中で認識するための適応が必要になります。
Krashen(1985)が重視したように、第二言語習得では、意味をある程度理解できるインプットへ継続的に触れることが重要です。
現地で英語へ大量に触れることには大きな利点があります。
ただし、英語がほとんど理解できない状態では、周囲の音声が学習可能なインプットになりにくく、授業内容や会話の意味をつかむまでに時間を要することがあります。
おうち英語は、留学の環境を完全に再現するものではありません
パルキッズのかけ流しは、家庭の中で継続的に英語音声へ触れる機会を作る取り組みです。
遊び、食事、身支度などの日常生活の中へ英語音声を置き、英語の音、リズム、語や表現のまとまりへの接触を積み重ねます。
ただし、家庭でのかけ流しと海外留学は同じものではありません。
留学には、相手の発言へ応答する必要性、授業を理解する必要性、自分の意思を伝えなければ生活できない状況があります。
文化的な体験、人間関係、予想外の出来事、意味交渉なども含まれます。
おうち英語は、留学そのものの代替ではありません
家庭での英語音声環境は、留学で得られる異文化経験、自立、対話、現地授業を置き換えるものではありません。
将来そのような環境へ入ったときに、英語の音や基本表現の理解だけで時間を使わず、交流や学びへ進みやすくするための準備です。
幼児期と高校生では、同じ一時間の意味も異なります
年齢が低ければ、短時間でも必ず高い効果が得られるという単純な関係ではありません。
幼児は音声への適応性が高い一方、高校生は、文法知識、読解力、学習方法、既存の知識を使って、意識的かつ効率的に学べます。
Muñoz(2008)は、日常生活全体で第二言語へ触れる自然習得環境と、授業時間の限られた外国語学習環境では、年齢の影響が異なることを論じています。
低年齢で始めたという事実だけで十分なのではなく、接触量、継続期間、入力の質、意味との結び付きが重要です。
| 学習環境 |
主な強み |
注意点 |
| 幼児期のおうち英語 |
日常生活の中で、長期間にわたり英語音声へ触れられる
|
接触時間が少ない、意味理解へつながらない場合は成果が限定される
|
| 高校生の国内学習 |
文法、語彙、読解を意識的に効率よく学べる
|
自然な音声や即時の会話経験が不足しやすい
|
| 高校留学 |
英語を生活と授業で使う必要があり、実践経験が増える
|
英語力不足により、授業や交流へ十分に参加できない場合がある
|
費用対効果は、英語力だけでは計算できません
留学費用は、国、地域、学校、期間、為替、滞在方法、保険、渡航費などによって大きく異なります。
私費留学では大きな費用が必要になる場合がありますが、交換留学、自治体や学校の制度、給付型奨学金を利用すれば、家庭の負担を抑えられる場合もあります。
また、留学によって得られる価値は、英語のテスト得点だけではありません。
- 異文化の中で生活した経験
- 家族から離れて判断し、行動した経験
- 異なる価値観を持つ人との人間関係
- 日本や自分自身を客観視する視点
- 海外進学や将来の進路を考える機会
- 失敗や困難へ対処した経験
これらを含めて考えれば、高校留学が本人にとって非常に価値の高い選択になることもあります。
一方、英語の基礎力だけを得る目的で高額な留学を選ぶ場合は、国内でどこまで準備できるかを先に考える余地があります。
留学の価値は、「英語が何点伸びたか」だけでは測れません。
だからこそ、英語習得だけを目的にする必要もありません。
英語の土台があれば、留学先で使える時間が変わります
留学前に、自然な英語をある程度聞き取れ、英文を読み、基本的な意見を伝えられる状態であれば、現地での経験は変わります。
授業内容を理解しやすくなり、分からない点を質問し、友人との話題を広げられます。
語学の基礎だけを学び直す時間を減らし、次のような活動へ進みやすくなります。
- 現地の通常授業へ参加する
- 部活動や地域活動へ加わる
- 友人と内容のある会話をする
- レポートやプレゼンテーションへ取り組む
- 自分の専門分野や関心分野を英語で学ぶ
- 異なる考え方について議論する
英語がまったく不要になるわけではありません。現地特有の表現、学術語彙、会話の速度などへ適応する必要はあります。
それでも、留学生活の大部分を「英語の音へ慣れること」だけに使わず、英語を使った学びや交流へ振り向けられます。
「英語を学ぶ留学」から「英語で学ぶ留学」へ
留学前の英語力が十分でなければ、留学の最初の目的は、日常生活に必要な英語を身につけることになります。
英語力が育っていれば、留学の目的を、現地でしか得られない経験へ移せます。
| 留学の段階 |
主な時間の使い方 |
留学前にあるとよい力 |
| 英語を学ぶ留学 |
日常表現、聞き取り、基礎語彙、会話への慣れを身につける
|
基礎的な文法、語彙、学習習慣
|
| 英語で学ぶ留学 |
教科、専門分野、研究、議論、地域活動へ参加する
|
授業を聞く力、読解力、作文力、意見を伝える力
|
高校、大学、大学院のどの時点で留学するのが最適かは、一人ひとり異なります。
高校時代に異文化の中で成長することが大きな意味を持つ子もいれば、大学で専門分野を学ぶために海外へ出る子もいます。
大学院で研究環境を求めて海外へ進む人もいます。
大切なのは、「高校まで英語は何もしなくてよい」と考えることではなく、将来の選択肢を広げられる英語力を、それまでに育てておくことです。
パルキッズが考える、留学までの英語の育て方
パルキッズでは、幼児期から英語音声へ触れ、英語の音やリズムを捉える経験を積みます。
次に、聞いてきた英語を文字と結び付け、自分で英文を読める力へ進めます。
読書を通して語彙、文法、知識を増やし、自分の考えを英語で書き、話す力へつなげます。
そのうえで留学すれば、現地での目的を英語習得だけに限定せず、学習、研究、人間関係、異文化経験へ広げられます。
英語を準備し、留学では英語を使って学びます
1
音声を聞く
英語の音、リズム、語のまとまりへ継続的に触れます。
→
2
読む
音と文字を結び、自力で新しい英語を取り込みます。
→
3
書く・話す
自分の考えを英語で組み立て、相手へ伝えます。
→
4
海外で学ぶ
英語を使い、授業、交流、専門分野へ参加します。
留学を選ぶ前に確認したいこと
留学の費用対効果を考えるときは、単に「一年で英語が伸びるか」だけでなく、目的と準備を確認してください。
- 英語習得以外に、留学で何を経験したいのか
- 現地の授業を受けられる英語力があるか
- 本人が留学を希望しているか
- 困ったときに質問や相談ができるか
- 学校や滞在先に十分な支援体制があるか
- 留学後に英語を維持する環境があるか
- 奨学金や交換留学制度を利用できるか
- 費用が家庭の教育計画全体を圧迫しないか
一年間で英語力が伸びても、帰国後に英語を使わなければ、聞き取りや流暢さが低下することがあります。
留学前の準備だけでなく、帰国後も読書、動画、授業、交流などを通して英語を使い続ける環境が必要です。
結論:留学は大きな機会です。英語の土台があれば、その価値をさらに高められます
高校留学には、英語力だけでは測れない大きな価値があります。
異文化の中で生活し、自分で判断し、異なる価値観の人と関わる経験は、子どもの視野や進路を大きく広げる可能性があります。
ただし、海外へ一年行けば、誰でも自動的に十分な英語力を身につけられるわけではありません。
成果は、留学前の英語力、授業への参加、友人関係、英語の使用量、本人の行動、帰国後の継続によって異なります。
また、留学では日常会話や流暢さが伸びても、文法、読解、作文、専門語彙まで同じように伸びるとは限りません。
おうち英語は、留学で得られる異文化経験を置き換えるものではありません。
幼児・児童期から英語音声へ触れ、読み、語彙、理解、表現の土台を国内で育て、将来海外へ出たときに、その英語を使って学び、交流するための準備です。
英語がほとんど分からない状態で留学し、滞在期間の多くを基礎的な聞き取りへ使うのか。
それとも、ある程度の英語力を持って留学し、現地の授業、友人、文化、専門分野へすぐに入っていくのか。
同じ一年でも、得られる経験は大きく変わります。
「おうち英語か留学か」という二者択一ではありません。
国内で英語の土台を育て、その力を使って留学の価値を最大限にする。その考え方が、パルキッズの考える費用対効果です。