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2010年5月号特集

Vol.146 | 幼児の言語獲得に必要なもの

最新言語学から子どもの言語獲得の謎を解いてみよう

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1005/
船津洋『子どもはどうしてコトバを身につける?』(株式会社 児童英語研究所、2017年)


| 会話の練習で英語の習得は可能か?

 幼児が言語を獲得するために、必要な要素は何でしょう。会話練習でしょうか?それとも、リスニング練習でしょうか?はたまた、フラッシュカードによる語彙の強化?絵本を読み聞かせたり暗唱させたりするのも良さそうですし、歌で覚えるのも楽しそうです。フォニックスなども良さそうですね。とまぁ、こんな具合に、いろいろな方法が思い浮かぶことでしょう。
 確かに、それらの方法も一理ありそうです。しかし、究極は「日常会話文のかけ流し」なのです。それでは、なぜ幼児期の英語学習の究極の手段が、日常会話のかけ流しなのかを、今回は解き明かして参りましょう。


| 日本人が英語を出来ない理由

 私たちは、数千の英単語を知っていますし、英文法も、ひょっとするとアメリカの高校生より良く知っています。しかし、アメリカ人の3、4歳児程度の英会話すら、まま成りません。逆に、アメリカ人の3、4歳児たちは、私たちほど英単語を知りませんし、ましてや文法知識などは全く有していません。しかし、日常的なやりとりは、普通に取り交わしますね。この両者の差はいったい何なのでしょうか。
 この問いに答えるためには、「私たちが今まで受けてきた英語教育」を振り返ってみる必要があります。私たちは、学校でさんざん英語を勉強してきて、知らず知らずのうちに、なんとなく「読み書きは出来る」が「英会話が出来ない」と信じ込まされているのです。
 仮にこれが真実だとすれば、私たちは、少なくとも「英語の読解力は有している」ことになります。では、洋画のDVDを「英語の字幕」で観てみましょう。音が入ってくると気が散るので、純粋に読解力の有無のみを確認するために消音にしてください。
 さて、いかがでしょう。理解できますでしょうか?
 洋画を観る趣味のない方は、大きな書店の洋書コーナーへ行って、ペーパーバックを1冊パラパラっとめくってください。英語の読解力があるのならば、理解できるはずですよね。
 DVDを字幕で観る、もしくは洋書をパラパラとめくってみる。そして、英語が理解できたのであれば、読解力どころか「英語力」を有していることになります。おそらく、ほとんどの方は、DVDにも洋書にも太刀打ちできないことでしょう。


| ただ、読めるだけ

 でも、いかがでしょうか。洋画の字幕に出てくる単語も、洋書に印刷されている単語も、そのほとんどは「読む」ことが出来るのではないでしょうか。しかし、いくら読めども理解できない。読めるのだけれども、読んだだけではイメージが湧いてこないのですね。読める、すなわち「読力」はあるのだけれども、理解できない、すなわち「読解力」はないのです。
 最近子どもたちの「理解力」が落ちてきています。もちろん「読解力」も落ちています。ただ、子どもたちは、日本語を読むことはできるのです。読めるけれども、よく考えないと理解できない。すなわち、読解力はないのです。まるで私たちの英語力のようですね。
  私たちは、英語は読めるのですが、理解できないのです。私たちは学校でさんざん英語を習ってきましたが、それは、「英語を日本語に置き換えて、日本語として英文を理解する能力」であって、「英語をそのまま理解できる能力」は、まるでトレーニングしてきてはいないのです。従って、英文を読んでも、日本語に訳すまでは、単なる英単語の連続にしか見えないのです。
 これは、興味深い事実を示唆しています。読んでも理解できない英語は、仮に聞き取れたとしても、一体どれだけ理解できるのでしょうか?日本人に足りないのは「リスニング力」かと思いきや、それ以前の問題であることが分かります。


| わずか1,000語

 ここに、とても重要な現実があります。3歳で英会話をこなすアメリカ人の幼児たちですが、仮に日本人の幼児と知悉語彙数が変わらないとすれば、彼らの語彙数は、わずか1,000語前後なのです。また、一般的に、家庭内で交わされる程度の「日常的会話」に使われる語彙は、1,000語程度ともいわれます。このように考えれば、シンプルな会話ならば、大体1,000語でまかなえると考えて差し支えないでしょう。
 さらに、日常的な筆記活動で使われる語彙に関しては、目にする頻度別に並べた場合、最初の100単語で筆記活動の半分がまかなわれ、最初の1,000語で、筆記活動の何と9割近くが行われているという研究もあります。
 すると、英単語を目にする頻度順に、100番目まで覚えれば、洋画の字幕に出てくる単語の半分、さらに頻度順に1,000語を覚えれば、英語の小説に出てくる単語の9割近くを読めることになるのです。事実、皆さんもほとんどの単語を読めるはずです。しかし、理解できないのです。
 これは、何とも奇妙な現象ではないでしょうか?日常会話に出てくる単語の9割以上を知っている。しかし、理解できない。それも、わずか1,000語です。難しい単語などありません。
 余談ですが、中学校ですぐに習う、人称代名詞。例の”I my me mine, you your you yours…”ですが、手元の目にする頻度順の英単語リストによれば、953番目にようやく”mine”が登場します。”yours”, “theirs”に至っては、最初の1,000語にすら入っていません。
 すなわち、皆さんはほぼ間違いなく、アメリカ人たちが日常的に使う英単語の9割以上を知っているのです。なんとも嬉しいような悲しいような、複雑な話ではありませんか。


| 本当に知っているのか?

 単語は知っているけれども、意味が分からない。これは一体どういう事なのでしょうか?
 答えは簡単です。学生時代に単語帳を作った記憶があると思いますが、それが原因なのです。単語帳方式で、「ひとつの英単語にひとつの日本語訳」で記憶していく。これは記憶するのには、とても良い方法です。しかし、このようにひとつの単語に対して、ひとつまたはふたつの日本語訳で記憶していくと、単語の持つ本来の定義が身につかないのです。
 例えば、make は「作る」と記憶します。しかし、「作る」では、次の文章の意味は通じません。
 “What do you make of it?”
 直訳すれば「それで何を作るの?」となります。しかし、会話では「それはなんだと思う?」と言う意味で使われます。次の文章はいかがでしょう?
“Pantyhose sometimes run.”
「ストッキングは時々走る」まさかそんなわけはありませんね。runという単語を見ると直感的に「走る」と浮かんでしまうから、そんなことになるのです。この文章は「ストッキングは時々伝線する」という意味なのです。
 すなわち、我々は既に「知っている」と思っている英単語、しかも、中学時代に習うような初歩的な英単語を知っている気になっているだけであって、それらの単語の本質的な定義は全く知らないのです。だから、単語を読めても意味が分からないのです。


| 「スモールワード」の定義を身につけるには

 それら簡単な単語、日常的に頻繁に目にする単語は、比較的短く、アルファベット数文字で構成されている点から「スモールワード」と呼ばれます。反対に文字数が多く、難しい単語は「ビッグワード」と呼ばれます。そして、辞書をひいてみると傾向が明らかに分かれます。
 「ビッグワード」は定義が細かく、従って意味が非常に狭く限定されているのに対して、「スモールワード」はとても定義が広いのです。それらの単語につく日本語訳は、2、3で終わることが無く、10も20もの日本語訳がついてきます。多い単語だと、実に100個もの日本語訳が、辞書に載っていることさえあるのです。
 その日本語訳を全て覚えることは不可能です。そこで、効果的なのが、日本語訳を覚えるのではなく、その単語特有の定義を身につける方法です。しかし、定義と言っても、辞書には訳ばかりで定義は載っていません。また、英語を操るアメリカ人の幼児達も、親たちから単語の定義を教わったわけではありません。ではどうやって彼らは定義を身につけたのか。実に簡単です。「日常会話」から定義を身につけているのです。


| ポイントは「日常会話」

 「スモールワード」達は、日常会話に頻繁に登場します。それこそ’the, of, to, run, go, make…’などは、日に何十回、何百回と耳にするのです。しかも、同じ文中ではなく、異なった文中で耳にするのです。この作業により、子どもたちは「なんとな~く」単語の定義を身につけていくのです。
 さらに朗報なのは、これら日常会話に出てくる「スモールワード」は1,000語足らず。しかも、’dog’, ‘flower’などの名詞は、感覚で覚える必要はなく、我々は既に身につけています。さらに、人称代名詞、代名詞、冠詞なども分かっています。
 要するに、身につけなくてはいけない「スモールワード」は、動詞、前置詞、接続詞あたりとなります。さらに、動詞の変化形も1,000語の中の1語と考えられているので、単語のリストはグッと小さくなります。「スモールワード」を200語も身につければ、大抵の英語は理解できるようになるのです。

 そこで、冒頭の「日常会話文」に戻ります。要するに、子どもたちが英語を身につけるに当たって、まず必要なのが、スモールワードの定義を身につけること。そして、ラッキーなことに、彼らは大人と異なり、英語を聞き取る耳を持っています。
 従って、「スモールワードの宝庫」ともいえる、「日常会話文」を繰り返し耳にし続けることにより、彼らは、自然と「スモールワード」の定義を身につけることが出来るのです。
 これが、「としおの一日」や「ケイの一日」といった、「日常会話文」の教材を毎日かけ流す意義なのです。これらの教材を、記憶する必要など少しもありません。毎日、子ども達の「耳に届く」ようにしてさえいればよいのです。この点を理解して、日々のかけ流しに精進して参りましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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