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2019年10月号特集

Vol.259 | こうすれば英語は聞き取れるようになる!

想像と現実のギャップは知識で克服

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1910/
船津洋「こうすれば英語は聞き取れるようになる!」(株式会社 児童英語研究所、2019年)


特集イメージ1 しかし、なぜにこれほど日本人は英語ができないのでしょう。原因はひとつふたつではなく、いくつも挙げられます。
 まず、ひとつには日本語と英語が文法において相当かけ離れていることでしょう。日本語は比較的語順に自由で、主語も省けたりします。一方、英語は語順が変われば意味が変わってしまいますし、主語は絶対必要なので、文の内容的に不要なときにも ‘it’ をつけたりする、不自由な言語です。また日本語には、英語の冠詞や複数形に相当する要素(a, the, ~s)が無かったり、時制においても、英語の現在形は習慣や状態を表すのに対し、日本語では一般動詞では未来を表したりします。このように、日本語と英語は文法的にずいぶん異なります。
 また、語を構成する音素やその組み合わせ方が異なります。日本語は開音節の言語で、音素の中の子音は(撥音「ん」などを除き)独立して存在することができません。子音は、その後に必ず母音を伴って成立します。従って、日本語の音節(シラブル=1つの母音を核にして前後に子音が集まっている音の塊)は「あいうえお」の五母音以外も、五十音にみられるように「子音+母音」になっています。一方の英語は子音で終わることができるので「子音+母音+子音」の形がとても多いのです。
 もちろん、これだけではありません。日本語は強弱アクセント言語なので、「箸」「橋」「端」は音韻的にはすべて「はし」ですが、「箸」と「橋」のようにアクセントの置き方で意味が変わります。また、「橋」と「端」のように東京方言では同じアクセントに聞こえますが、その後ろに格助詞を置いてみると「橋を渡る」と「端を渡る」のようにアクセントが異なることが分かります。この点、英語では意味は変わりませんが、品詞が変わったりします。
 まだまだ、日本語と英語の相違点はたくさんあります。それらが複合的に作用して、日本人の英語の聞き取りを困難にしているわけです。
 しかし、先月号の「ボトムアップ処理」の件で書いたとおり、英語の聞き取りを習得する日本人はたくさんいます。言語の習得能力には、もちろん個人差はありますが、その差は微々たるものです。ある人ができるのであれば、私にもあなたにもできるのです。

 ということで、前回に引き続くわけではありませんが、今回も英語の知覚、聞き取りについて、また、どのようにすれば英語を聞き取れるようになるのかについて掘り下げてみましょう。


日本人の考える英語

特集イメージ2 中学生の時分を思い出してください。すでにローマ字は習っているので、アルファベットはそれなりに分かっている段階です。
 余談になりますが、このローマ字とかアルファベットという概念に関して少し整理しておきましょう。
 「アルファベット」と「ローマ文字(ローマンアルファベットとも)」と「ローマ字」を混同されているケースが少なくありませんが、これらはヒエラルキーを成しているレベルの異なる概念です。アルファベットとは、漢字やカナなどの記号の一種で、その中でも「子音と母音を分けて “音素” を表す記号体系」です。日本語のカナは「子音と母音のペアの “音節” を表す体系」ですし、漢字に至っては「単数あるいは “複数” の音節で “意味” を表す体系」です。
 アルファベットには、キリル文字やギリシャ文字などがあります。ハングルも音素レベルを表すのでアルファベットと呼んだりします。ローマ文字はそのアルファベットの中のひとつです。
 そして、そのローマ文字で表される言語もたくさんあります。元祖のラテン語に始まり、イタリア語などのロマンス語系、英語ももちろんローマ文字で表されます。そして、そんなローマ文字で表される言語に日本語も入っているわけです。その「ローマ文字」で表される日本語の体系を、我々は「ローマ字」と呼んでいるのです。
 つまり、アルファベットの中にローマ文字があり、それで表される言語のひとつに日本語(の「ローマ字」)があるわけです。  ああ、ややこしい。
 しかし、ですね、これによって多くの日本人は「ローマ文字を知っている」と勘違いしてしまっているのです。確かに「ローマ文字を使って日本語の音素を著す体系」としてのローマ字は小学校で習いますが、それはあくまでも数ある日本語の音の表記法(例えば、大きな水たまりを「海」、「うみ」、「ウミ」、「umi」などと表す)のひとつに過ぎません。
 つまり、日本人は日本語をローマ文字で表記する「ローマ字」は勉強したものの、英語の音声を表記する際の「ローマ文字」や、その正しい発音に関しては、ほぼ無知なのです。
 しかし、です、これがまたややこしいのですが、日本語と英語に共通する音素も少なくないので、ローマ文字で書かれた英語も日本語のローマ字のやり方で「なんとなく」「ぼんやりと」読めてしまいます。これが問題です。


ローマ字、つまり日本語風に読んでしまう

特集イメージ3 ここで話を戻します。このようにして、ローマ字を知っているが故に、中学で初めて英語と対面した日本人は、ローマ字の知識で英語を読んでしまうわけです。
 好都合なことに、ローマ文字の母音は ‘a, i, u, e, o’ の5つです。これは日本語の「あいうえお」とぴったり合います。しかし、実は英語には短母音だけで11あることなど、英語教師ですら知らないかもしれません。子音に関しても、’f, v, th, l’ などを除けば、日本語と同じか極めて似ています。ローマ文字は日本語を表すにも便利なわけです。そこで、単純に、日本語に存在しない子音の発音にばかり注意が向いてしまいます。つまり、’f, v, th, l’ などの発音の方法です。母音の指導などは置いてけぼり・・・。
 また、冒頭に書いたように、日本語の音節は開音節なので、無意識のうちですが、母音でないと終われない、ところが英語は閉音節で子音で終われます。と、ここで、困ってしまうわけですが、これを「母音添付」という、これまた無意識の作業で乗り切ってしまうのです。つまり、語尾に‘d, t’が来れば、 ‘o’ をつけて ‘do’, ‘to’ に、’j’ は ‘i’ を添えて ‘ji’ に、それ以外の子音で終わる場合、‘b, f, g, k, l, m, p, q, s, v, x, z’ には ‘u’ をつけてしまいます。無傷で(母音添付なしに)発音される語尾は ’n’ くらいのものでしょうか。このあたりも、学校英語では説明すら受けません。
 このようにして、日本人は日本語に置き換えた発音で、しかも皆が適当にではなく一定の規則に則って、英語を読んでいくことになるわけです。だから、日本人の英語の発音は一様に同じです。


英語が上手になりたい!と思う人は・・・

特集イメージ4 ところが、ここに無謀にも「私は英語が上手になりたい」と思う人たちが少なからずいます。さて、彼らはどうやって英語の上達に取り組むのでしょうか。
 英語の音声を正確に知りたければ、音声学を学べば簡単に知ることができます。ウソではありません。実に簡単に、あっという間に理解できます。
 しかし、「音声学」という響きだけで諦めてしまう人が少なくない。また、教科書があまりにもつまらなすぎる。そもそも大学生や大学院生向けの教科書ですから、作り手側に「面白く作ろう」という意識すらありません。
 いや、これは言い過ぎです。最近では何冊か「面白く学んでもらおう」という試みで作られている教科書や一般書籍も見受けられます。もちろん、その志は見上げたものなのですが、いかんせん、執筆者は大学の教授たちです。専門的用語がばんばん飛び出すし、結局はIPA(人が発する音声の地図のようなもの)を覚えなくてはいけなかったり、しまいには物理学の用語まで飛び出したりした日には、せっかくの情報源の教科書もお蔵入りとなってしまいます。
 そもそも、「音声学」などという学問で英語の発音を学べるという核心に到達する人は少なく、「フォニックス」まで至れば、それだけで十分に専門家と言えるでしょう。(因みに音声学は ‘Phonetics’ で、音韻論は ‘Phonology’ です。これらは学問ですが、 ‘phonics’ は子どもたちに英語の音声とローマ文字の関係を理解させ、読解力並びに正書法を身につけさせる教授法ですので、混乱なさらないように。)
 さて、それでは、 ‘Phonetics’ どころか ‘phonics’ にまですら足を踏み入れることがない人たちで、さらに英語の発音を上達させたい人はどのよう学習をしているのでしょうか。
 辞書なんです。かく言う僕も、中高の時分には辞書の発音記号をじっくり研究して、正しい発音を身につけました。いや、正しいかどうかは別として、「これとこれは同じ」、「これとこれは違う」という具合に区別していました。例えば ‘hurt, worm, bird…’ などは同じ「母音+r」で、 ‘heart, warm’ は異なる「母音+r」であるとか、’cut, mountain, brother’ などのアクセントのある母音は ‘cot, pot’ や ‘cat, can’ などとは異なる母音であることは意識していたので、かなり音声学に近いところまではたどり着いていたようです。(今になって思えば、ですが・・・)
 もはや、そんなマニアな学生など絶滅危惧種です。しかし、です、英語の発音を上達させたい人は山ほどいるわけです。音声学やフォニックス、あるいは辞書の発音記号の分析までたどり着かない、大多数の「英語上手になりたい!」人たちは一体どのようにして、英語の発音の上達を試みているのでしょうか。
 察するに「勘」に頼っているのでしょう。
 でも、勘で英語が上達するほど、世の中甘くはありません。(もちろん、幼児期なら話は別ですが・・・)結局、英語っぽく話しているけれど、聞いている方からすれば、まったく意味が分からない発音、そんなことが珍しくないのです。現に、日本人ミュージシャンによる洋楽のライブなど行くと、確かに楽曲はステキ、演奏もステキ、音程もバッチリ、でも、何を言っているのかまるで分からない、などということが珍しくありません。それでも楽しめるので、満足はするのですが・・・。


発音できないのに、どうしてリスニングができるのか?

特集イメージ5 ここで、次の点が問題として掲げられます。「正しく発音できない」「英語の正しい音の知識すら持ち合わせていない」そんな人に「英語のリスニングができるのだろうか?」という点です。
 まぁ、結論から言えば、できるわけがありません。少なくとも論理的には考えられない。
 しかし、世の中広いもので、発音はメチャクチャでも聞き取りは完璧、という人たちがいます。パッと思い浮かぶのは、ロマンス語系やアラビア語などの母語話者をはじめとしたアメリカ移民です。彼らはリスニングはできても、いつまで経っても話し方は上達しません。また、少数派ですが、本誌でもたびたび登場する「純ジャパ」(留学経験のない英語話者)の中には日本語訛りで話しつつ、リスニングはほぼ完璧という人が珍しくありません。
 つまり、音声学を知らずとも、フォニックスで勉強せずとも、(本人たちに確認したわけではないので想像ですが)発音記号の研究すらせずに、英語のリスニングを身につけてしまう人たちがいるのです。
 「地獄に仏」ではありませんが、これは一筋の光明であることは間違いないでしょう。
 ただし、これはもちろん音声学やフォニックスを勉強しなくて良い、という意味ではありません。機会があれば、手を出してみるのは大いに結構なことだと思います。


ヒトの音声に関する知識の脅威

特集イメージ6 人間は幼児期に母語を獲得します。また、中学生以降は文法と語彙を身につけて外国語を攻略しようとしますが、幼児期に身につける言葉の体系は中学で勉強する外国語とは少し異なります。幼児は「シンタクス」と呼ばれる文法のようなものと、「レキシコン」と呼ばれる語彙を身につけることで、母語をはじめとした言語を身につけます。
 文法とシンタクス、語彙とレキシコンは似ていますが、特に文法とシンタクスはずいぶんと異なる概念です。文法もシンタクスも語順のルールですが、「文法を知っていること」と「シンタクスを知っていること」はまるで意味が違うのです。
 例えば、日本語は語順におおらかな言語で、「学生が酒を買った。」という文を、語をかき混ぜて「酒を学生が買った。」と言っても、「酒を買った、学生が。」と言っても、意味が変わることはありませんし、まぁ、「強調している箇所が違うんだなぁ」程度にしか感じません。
 しかし、英語ではこんなことは不可能です。’Students bought some alcohol.’ は ‘Some alcohol bought students.’ とは言い換えられませんし、意味が変わってしまいます。
 さて、そんな自由な日本語ですが、完全に語順から自由なわけではありません。上の文を少し変えて「3人 学生が 酒を 買った」では、「学生 3人が 酒を 買った」、「酒を 学生 3人が 買った」とは言い換えられますが、「学生が 酒を 3人 買った」とは言えません。
 「そんなことアタリマエじゃないか!」という声が聞こえてきそうですし、もちろん日本人なら、このかき混ぜ方はNGである事は分かります。しかも、3歳児でもこのようなルール違反のかき混ぜはしません。
 では、なぜこのかき混ぜがNGなのか?もし、日本語を勉強中の外国人に説明するとしたら、どのように説明しますか?
 このような、無意識の文法知識をシンタクスと呼んで、これをせっせと研究している言語学者さんたちがいらっしゃるわけです。


音に関する知識にはさらに驚かされる

特集イメージ7 上のはほんの一例ですが、ヒトが母語に関して持っている無意識のシンタクスの知識には驚かされるばかりです。しかし、音に関する知識も実はすごいんです。
 例えば、東京方言だと ‘ai’ ‘oi’ は ‘e:’ という音になります。「~したい」が「~してー」とか「うまい」が「うめー」などです。でも、すべての ‘ai’ や ‘oi’ が ‘e:’ にはなりません。「大切なのは愛」と言うときに「大切なのはエー」とか、「とおい」とか「あおい」が「とエー」とか「あエー」にはならないのです。
 このように語順だけではなく、音声に関しても、人は無意識の知識を持っています。その知識によって、今回のメインテーマである「リスニング」を可能にしているのです。そして、聞き取った語や、語に関する情報をレキシコンへと蓄積していきます。
 では、その聞き取りの方略について、日本語と英語を例に見ていくことにしましょう。

 まずは日本語です。私たち、日本語ネイティブたちは、どうやって連続音声から語を発見しているのでしょうか。
 例えば、「ごはん□たべる?」(□=ポーズ)と間を置いて話されれば、「ごはん」と「たべる」が個別の語であることが分かります。もちろん、このように、ボーズがあれば聞き取りは楽です。
 しかし、通常、音声は単語単位に区切られることなく連続体で発話されます。
 「おなかがすいたね。ごはんをたべましょうね」このような音声が耳に入ったときに、どのような処理が為されているのでしょうか。ひとつには、助詞が語の終わりの目印となります。上の例なら、「おなかが□すいたね□。ごはんを□たべましょうね□」といった具合です。格助詞は文中での区切りや、あるいは終助詞は句の終わりを示すことが分かります。
 ただ、日本語は本当に便利な言語で、助詞を消すことができ、主語までも消し去ることできます。
 「おいしいごはんたべよう」の場合には、ポーズもなければ助詞もありません。では、ここからどうやって語を発見するのでしょう。
 と、ここからがすごいところで、「推移確率」(transitional probability)などと呼ばれる、音に関する知識を使っているのです。
 「おいしいごはんたべよう」を切ろうとするとき、「おい」のあとには「しい」が来て「おい・しい」となる確率が高い一方、「しい」のあとに「ご」が来て「しい・ご」になる確率は低いので、「しい」で語が終わると判断されます。同様に、「ご・はん」はあっても「はん・たべ」は確率的に低いので「ご・はん」で切れる。そして、最後は「たべ」で始まって「よう」で終わる。と、このようにして、3つの語に分析するのです。
 ちなみに、生後8ヶ月の赤ちゃんが、この方略でレキシコンを増やしているというのですから、驚きです。


英語はどうなってるの?

特集イメージ8 では、英語の単語の切り出しはどのように行われているのでしょうか。ここは、とても大切なところです。なぜなら、日本語と英語では、音素の並び方のルールとアクセント、ストレスが異なるため、英語には日本語と異なる分節の方略が必要となるからです。
 それでは、英語話者がどのようにして英語を分節しているのか、その一端を見て参ります。
 まず第一に、日本語と同様に、ポーズがあると、そこから新しい語が始まると推測します。これは問題ないでしょう。
 英語の特徴として、ストレス言語である点が挙げられます。日本語はモーラ言語、さらにアクセントの強弱で意味が変わったりしますが、ストレスがありません。従って、欧米人の耳には日本語は単調に「タタタタタタタ・・・」と聞こえるそうです。
 その点、英語は抑揚が激しく、大凡一定のリズムでストレスが置かれます。例えば、
 ‘I want to go.’ は ‘I’, ‘want to’, ‘go’ の3つの塊が大体同じテンポで、最初の音節にアクセントが置かれて話されます。これは、興味深いのですが、このテンポとストレスの置き場は他の要素が入ってきても変わりません。否定文になっても、
 ‘I don’t want to go.’ は ‘I don’t’, want to’, ‘go’ ですし、過去形になっても
 ‘I wanted to go’ も ‘I’, ‘wanted to’, ‘go’ です。
 いずれにしても、 ‘I’, ‘want’, ‘go’ の部分にストレスが置かれます。
 当然の流れとして、ストレスのあるところから語が始まると推測します
 すると、1音節の語は語頭にアクセントがあるので、問題ないのですが、2音節以上で語頭の音節にアクセントの来ない語は、誤って分析されたりします。例えば、
 ’He’s playing the guitar in his room.’ では、 ‘guitar’ のアクセントが第二音節にあるので、’guitar in’ を ‘gui tarin’ と分析することがみられます。 ‘between, attend, invent…’ 等々も同様です。
 さらに、別の方略も使われます。日本語でも「推移確率」を使っていると述べましたが、英語の場合も同じです。ただ、日本語の場合には、音節から音節への確率を推測していましたが、英語の場合にはそれに加えて、子音の配列の規則も目印のひとつとしています。
 英語では、3つまで子音を連続(「子音連結」)させることができますが、その配列には規則があります。例えば、語頭における3子音の子音連結の場合、最初の音は必ず ’s’ になります。また、その後に来る音は、’sp, sk, st’ に限られており、さらにその後に来る子音も ‘l, r, w, j’ に限定されています。この中でも不可能な組み合わせもあります。
 語尾における子音連結も3つまで、さらに配置できる子音にも規則があります。そして、それらの規則を使って、聞き取りが困難な箇所の穴埋めや、それらの音が語頭なのか語尾なのかを判断するわけです。
 これらはすべて無意識のうちに行われています。シンタクスが無意識の知識であれば、語彙項目(レキシコン)に関する知識も無意識の知識です。母語話者は1歳くらいの段階で、それらの知識をすでに持っているのですから、これも驚きです。


ボトムアップ処理はできるようになるの?

特集イメージ9 さて、ここからが問題なのですが、このような無意識の知識を使って英語を次々と単語に切り出していく能力を、日本人の英語学習者が身につけることは、果たして可能なのでしょうか。英語もボトムアップで聞き取れるようになるのでしょうか。
 ズバリ、可能です。
 留学生は数ヶ月でそれができるようになります。純ジャパも留学生よりは時間がかかりますが、結果としてそんな分節能力(聞き取り能力)を身につけます。その獲得法に関しては、すでに様々なところに書いているので、今回は省きますが、ひとつだけ付け加えておくことにします。
 日本語の場合には音素レベルでボトムアップ処理をしていますが、英語の場合には完璧に音素レベルでボトムアップ処理ができるのかというと、そうではないのです。
 確かに、留学生や純ジャパも無意識のうちに英語を聞き取れる、つまりボトムアップ処理はできるようになるのですが、自らの体験や、実際に昨年度行った実験の結果からは、どうやら、ネイティブたちと留学生では違うレベルの処理をしているようなのです。
 つまり、ネイティブが音素レベルでボトムアップ処理ができているのに対して、留学生は音素レベルではなく子音連結規則やその集合である語、さらにはその語の集合である句のレベルでボトムアップ処理をしている様子が伺えます。
 英語学習者における子音の音素レベルの聞き取り実験を行ったところ、留学経験なしのグループよりは、1〜2年の留学組の方が好成績を出しましたが、それよりも海外経験2年以上の帰国子女グループの方が、遙かにネイティブに近い結果を出しました。また、当然ながら、帰国子女よりもネイティブたちの方が正しく音素を判定しています。このように、後天的に習得されたリスニングにおけるボトムアップ処理はヒエラルキーを成しています。
 最後にもう一点付け加えておくと、当該実験において、最高得点をたたき出したグループがありますが、それは英語ネイティブではありませんでした。なんと、パルキッズで幼児期から英語を学習していたグループが、英語の音素における最も高い聞き取り能力を示していたのです。実験に関しての詳細は『パルキッズ通信2019年1月号』をご参照戴ければ幸いです。

 さて、またまた長くなってしまいましたが、今回は英語の聞き取りに焦点を合わせて参りました。先月号とも合わせてお読み戴ければ、英語の聞き取りに関して、より深くご理解戴けると思います。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所・代表取締役。上智大学外国語学部英語学科卒業。実用英語技能検定1級取得。30年以上に渡る幼児教室・英語教室での教務を通じて幼児の発達研究に携わるかたわら、「パルキッズ」などの英語教材を始めとした幼児向け教材を多数開発。また、全国の幼児・児童を持つ親に対して9万件以上のバイリンガル教育指導を行う。講演にも定評があり、全国各地で英語教育メソッドを広めている。著書に20万部のベストセラーを記録した『たった80単語「読むだけで」英語脳になる本』(三笠書房)をはじめ『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)『ローマ字で読むな!』(フォレスト出版)『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)など多数ある。

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