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2018年2月号特集

Vol.239 | 中学受験に英語の時代到来!

小学英語で変わる中学受験事情

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1802/
船津洋「中学受験に英語の時代到来!」(株式会社 児童英語研究所、2018年)


特集イメージ1 また今年も受験の季節がやって参りました。先日、新宿駅を歩いていたら山川出版の『日本史B』を歩き読みしている学生らしきを見かけましたが、受験生とその家族にとっては心安まらない日々が続いていることでしょう。我が家では受験らしい受験といえば、もはや私の大学院受験を残すのみです。上の倅はすでに社会人ですし、下の倅もあと院を1年残すばかりですが、いつもこの時期になると17、8年前に体験した上の子の中学受験を思い出します。
 最近のニュースを見ていると、ここ数年どうやら中学受験が復調傾向にあるようです。ITバブルがはじけ、学力低下の原因として「ゆとり教育」に批判が集まっていたのがちょうど2000年頃。当時は、幼児・小学生の習い事といえば「英語」が五指に数えられていましたが、学力低下の反動で、私立中学や中高一貫教育に親たちの関心がまるで流行風邪のように一気に広がっていきました。その後も中高一貫教育校受験は加熱する一方で、都内の小学校では試験日の集中する2月1日には6年生の半分以上の生徒が欠席するという異様な事態が起こっていたのを、今でも覚えています。最近では受験時期に、それこそ感冒にかからないようにと、学校を休ませる親御さんもいるとか。時代の変化を感じます。
 また当時、受験生の親たちの間では、小学生の子を「英会話」に通わせている、など誰かが口にすれば「ライバルが1人減った」と密かに喜ばれたものです。中学受験を考える親の間では、小学生で英語に時間を割くというのは非常識の象徴(?)とは言わないまでも、スタンダードではありませんでした。当時、すでに全国平均で10%弱、東京都では4人に1人が私立中学へ通っていたわけですから、私立中学受験は一部の特殊なご家庭のみの限られた現象ではなく、あっという間に一般化していたわけです。しかし、それもつかの間、2008年にはリーマンショックを迎えます。「派遣切り」や「年越し派遣村」などという語がひっきりなしにメディアを賑わし、所得格差が広がります。その一方で中学受験者数は漸減していきます。
 それから10年経った今日、中学受験が再燃の兆しを見せています。受験者割合は首都圏で15%とリーマンショック当時の水準まで急速に戻っているのです(日経新聞)。これを好景気のおかげとみるか、または、広がる一方の学歴格差の中で、我が子には置いてけぼりを喰わさないようにと感じる親が増えた結果なのかどうかは分かりません。しかし、高校無償化の流れに乗るようにして、私立中学進学者に対する助成金制度も始まるなどしています。世間一般の流れとしては、今後も中学入試の一般化の傾向は続くであろうと想像しています。


| 様変わり

特集イメージ2 その中学受験事情ですが、我が家が経験した当時とは、ずいぶんと様変わりしているようで、インターネットで申し込みができるようになったり、受験方式も多様化したりしているようです。ネットで申し込みができるのは、親としては手間が省けて大助かりです。
 また、滑り止め校の合格発表とのタイムラグで無駄な手付金(入学金)を払わなくて済むような仕組みにもなりつつあるようです。入学金のタダ取りも、考えてみれば、阿漕な商売のやり方でしたが、改善されつつあるのは歓迎すべきことです。
 また、大学受験にあるAO入試など、いわば一芸入試のような選抜方法を採用する中学もあります。プレゼンテーションやディベートで選抜する学校もあるようで、小学生がそれらに取り組んでいる姿は、想像するだけでも微笑ましいことです。また、なんと予め作成したコンピュータプログラムの内容を、試験会場で説明させるような選抜方法を採用する中学校もあり、実際にプログラミングができる小学生がいたというから驚きです(日経新聞)。
 さて、そうなると、必然的に話題に上ってくるのが「英語」受験ではないでしょうか。先のコンピュータプログラム能力を始めとした、多様性を生徒に求めるような学校運営自体は大変結構なことですが、それは本来公立に任せておけば良いわけで、私立はどちらかといえば大学受験に直結する学力優秀な子を選抜するのが、自然なあり方だと思いますし、そうあるべきだとも思っています(私見ですが)。大学受験を見据えた上での中学受験であることを考えれば、大学受験の合否を左右する「英語力」を、中学受け入れの選抜のひとつの基準とするのは、これまた極めて自然な流れでしょう。


| 親の意識の変化

特集イメージ3 小学生と英語との関係は、ここ20年で大きく変化してきました。冒頭に述べたように、世紀の変わり目辺りから「英語」ではなく「中学受験」を優先するように世の中の潮目は移っていきました。それでは、まずは親たちの英語教育に対する意識の変化を、英語教育の仕組みの変化と共に見て参りましょう。
 2000年頃から加熱する中学受験の中で、幼児や小学生に英語教育を施す親はいなくなってしまったのでしょうか?実は、そんなことはありません。英語教育をする親御さんは、存在し続けてきました。世の中が二極化しているように、子どもに英語教育を施す親たちも、二極化していきました。
 我が子に、習い事的な「+αの英語力」を身につけさせてあげようとする大多数の親と、「英語の実力」を身につけさせようとする少数派の親に別れていきます。つまり、小学校での本格導入に伴い、塾に通わせる感覚で英語を学ばせる親御さんと、英検準1級や1級を目指せるような地に足のついた英語力を目指す親御さんとの分化がくっきりとしてきたのです。そして、極めて少数派であった後者の大学受験やその先の我が子の人生まで見据えるような親御さんたちが、じわじわと増えていきました。
 そのような親たちは、大多数の親たちが「受験、受験」と浮かされているのを傍目に、中学受験にも取り組みつつ、同時に英語にも黙々と取り組んできたのです。しかし、当然のことながら中学受験と英語の2本立てでは、時間に限界があります。そこで、英語に取り組む親たちは中学受験が本格化する前に、ある程度の英語力を身につけさせようと、早い段階で先を見越した計画を立てるようになるのです。
 そんな親御さんのもとに育つ子たちが、おそらく、学年人口の1%程はいるようです。少し古いデータですが、2000年代の最初の10年間で小学生の英検受験率が急伸しており、小学校高学年の10%は英検を受験しています。中学での英語の授業が始まる前に、英検を受けているのですから驚きですが、さらに驚くことに、その中の1%の子どもたちは小学生のうちに英検3級以上を受験しています。また、中学生の英検受験者数が減少する一方で、中学生の2級以上の受験者数は伸び続けており、これまた学年の1%は2級以上を中学生のうちに受験、または取得しているのです(詳しくは『パルキッズ通信2017年6月号』参照)。10年前でこの数字ですから、今日ではどうなっているのか、想像に難くないでしょう。


| 英語解禁!

特集イメージ4 もともと、学校外の習い事として取り組まれていた「英語」があります。それらは上記のように分化していきましたが、同時に学校教育の中でも英語の取り組みが始まります。2000年前後に「外国語活動」として英語が導入され、10年後の2010年前後に英語は「必修化」されることによって、週1~2コマの授業で、子どもたちは英語に触れるようになりました。子どもを取り巻く英語環境の変化は、加熱する「中学受験」の見えないところで「実力英語派」「+α英語派」と「小学校英語」の三つ巴の様相を呈してくるわけです。
 それでは、小学校に英語学習が前倒しされることで、子どもたちの英語力は向上したのでしょうか?これに関しても『パルキッズ通信2017年6月号』で触れていますが、「平成27年度 英語力調査結果」を見る限りにおいては、なかなか思うように進んでいないようです。この調査の対象になっている子たちは、小学校で「必修化」された英語の授業を受けているのですが、4割以上の子たちが「英語が好きか?」の問いに「そうではない」と答えていますし、当然のことながら、4技能ともに文科省が求める目標値には届いていません。
 つまり、小学生で英検を受けるような頑張っている1割のご家庭と、その中でもさらに優秀な1%の子たちがいて、あとは学校にお任せの残りの9割という図式で、少々乱暴ですが、その9割中のざっと半数が「英語は好きでない」と言っていると考えて良いでしょう。我々が過ごした昭和的な昔ながらの「学生と英語」との関係、「一部のできる子」と「数多くのできない子」という図式は、全体的には今日でもあまり変わってはいませんが、ここに新たに「飛び抜けてできる子」という3番目のグループが誕生していたのです。
 さて、ここ20年にわたる親たちの英語教育に関する意識の変化をなぞって参りましたが、今後はどうなっていくのでしょうか?2020年に小学校英語が「教科化」されますが、それに伴い関係者たちは早くも彼らなりの行動を取り始めています。


| 3分の1強が英語入試

特集イメージ5 今年度の中学入試において、英語を入試科目として用意する私立中学は、首都圏では3分の1を超えました。ここ4年でなんと7倍に膨れ上がっています朝日新聞)。
 英語が課外活動のような「外国語活動」から「必修化」されたとしても、それは評価対象でなくある種「道徳」の授業のような教科でした。そんな位置付けの教科を中学入試に課すことは常識的ではありませんが、例えば英検協会のウェブサイトに「入試で英検の級を保持していることを優遇する中学校のリスト」があることからも分かるように、以前から何らかの配慮はされてきました。また、海外からの帰国生徒枠を設けるなどして、英語力を持っている子に対する優遇(救済)措置は、これまでも取られてきたわけです。
 ところが、今後は「必修化」ではなく「教科化」へと格上げされ、成績評価の対象となるのです。もっとも、評価方法に関しては今後も試行錯誤が続くのでしょうけれども、「教科化される」この事実が関係者にとっては重要です。これに関しても『パルキッズ通信2017年6月号』で触れていますが、図式は簡単です。
 公立校では、大学へ進まない子とも歩調を合わせて勉強するので、我が子に大学進学を望む親たちは、大学入試に有利な中高一貫校を選びます。当然、優秀な子たちが集中するので受験戦争は熾烈になります。学校側にすれば、それは結構なことです。競争が激化すればするほど、受験する子どもたちは優秀になり、入学する学生も優秀になるわけです。すると、あとは一貫校の強みを活かして生徒を巧く導きさえすれば、目指す難関大学への道も開かれます。学校にとっては「合格実績」、生徒にとっては「学歴」となり、両者の利害がピタリと一致しているわけです。
 中高一貫校側にすれば、できるだけ優秀な子どもを受け入れたいのは当然ですが、そこに現在の少々独特な大学入試事情が絡んできます。現在の日本の大学入試では、(善悪の程は別として)英語の実力がすなわち進学できる大学を決定すると言っても良いほど、「英語偏重傾向」が続いています。他の教科もそこそこちゃんとやってるという前提で、英語ができれば、まずまず良い大学へ進めるわけです。ということは、一貫校としては学生の英語力の涵養に力を入れなくてはいけません。ところが、従来型の英語教授法では、ずば抜けて英語ができる子がなかなか育たないのです。そこに差し伸べられた手が、小学校英語の「教科化」というわけです。
 この小学校での英語教科化によって、中学側は大手を振って入試に英語を課すことができようになります。平たく言えば、英語ができる子の青田刈りです。今までは救済措置の一部、特殊な例として行われてきた英語力での選抜ですが、「教科化」により事実上「英語入試解禁」となったのです。その結果、首都圏を始め都市圏の中高一貫校が、英語による選抜試験へと雪崩を打った形です。
 ただし、一様に試験科目として英語を課すのではありません。あくまでも「選択制」としています。とある学校では、海外帰国生枠を広げて英語力のみで選抜を行ってみたり、また、従来の4教科での一般的な入試を残しつつ、英・数の2教科を選択可能にしたり、国・英・数の3教科の中から2つを選択させる方式であったりと、中学により方式は様々です。また、英語力を有する小学生は、その保持する資格の内容によって、試験結果に加点されたり、試験を免除されるなどの形で、受けられる優遇措置が多様化しています。
 ここ数年で、この流れは急速に広がっているので、「私立中学入試に英語」が常識となる日は近いでしょう。これは実のところ従来型の中学受験指導体制にとっては一大事なのです。
 今までの中学受験の常識は「四教科受験」です。思い出してください、英語を習っている小学生は、周囲からライバル視されることもなく、中学入試でも苦労していたわけです。しかし時代は変わるもので、今やその図式が一変しました。小学校中学年から「4教科受験」を目指し毎日毎日勉強に追われ、這々の体で受験してきた、そんな親子を傍目に、英語のできる子が、次々と入試で優遇されていくのです。もちろん、すべての中高一貫校がそうなるとは申しませんが、解禁から数年と経ずに、すでに首都圏では3分の1の中学が英語力による入学の道を開いているのですから、今後は「上の上を目指さなくても上の中で良い」という層のニーズも満たされるようになることでしょう。


| どの程度の英語力が評価される?

特集イメージ6 さて、皆様のお子様とその同級生たちも、みな小学生になり、中学生となり、高校生となり、そして半数は大学へと進学していきます。おそらく「パルキッズ」で学習中の子どもたちの大半は、大学まで進学することでしょう。小学校受験は別として、首都圏や都市圏にお住まいであれば、中学受験については早い段階で視野に入れておかなくてはならないことのひとつです。
 パルキッズで学習中のお子様の当面の目標は「小学生で英検準2級」です。小学生になると英語ばかりではなく他の受験科目対策も必要になるので、おそらくそのあたりが現実的なところでしょう。もちろん、中学受験が盛んでない地域にお住まいであったり、余裕がある子でしたら小学生で英検2級も狙えますし、現に小学生のうちに英検準1級を取得している子もいます。しかし、当面は準2級で十分です。英語試験の免除は、大抵は英検3級以上で適用されますし、独自の試験を課されても準2級の実力を持っていれば太刀打ちできるでしょう。
 英検4級でも考慮してくれる中学もありますが、さすがに5級程度ではいけません。やはり、聞いて分かるだけではなく、読んで理解できる力、書いて表現する力、さらには口頭でやりとりできるレベルの英語力が必要でしょう。そのためには5級や4級では不十分です。やはり、準2級に受かるくらいの力を身につけておけば安心です。つまりは、パルキッズで毎日しっかり音の環境を作り出し、英語を英語のまま理解できる英語脳を作り、さらにオンラインレッスンなどで、語彙や表現力を強化していただければ、中学受験はあまり心配する必要はなさそうです。
 とはいえども、「大丈夫」だけでは足りないでしょうから、もう少し具体的に「英語に関して少なくともやっておいた方が良いこと」を下に付け加えておきましょう。


| 「4技能」という言葉が英語教育の本質を見失わせている

特集イメージ7 最近、どうも「4技能」とか、まるで有り難いお題目のようにいろいろなところでささやかれていますが、「4技能をバランス良く」というのはなかなかに難しい。そもそも、言語をコミュニケーションの道具のように扱っていること自体、少々疑問です。言語を使って日常的に行う作業は、何と言っても「思考」です。(チョムスキー信者ではありませんが、この点に関しては彼に賛成です。)
 まずは4技能のうちの「話すこと」と「書くこと」に関して考えてみましょう。例えば、本誌を読みつつ、皆様の頭の中では「なるほど」と頷いてみたり「本当か?」と疑ってみたり「そうではなくて、こうだろう」とロジックを組み立てたりしています。つまり、言語を使って「思考」しています。そして、頭に浮かんでいる、思考によって体系化された概念を順番に産出する手段として、話したり書いたりすることがあるのです。
 つまり、話すことと書くことは別々の技能ではなく、ひとつの技能(体系化された概念を産出する手段)のふたつの側面なのです。話すことと書くことの違いといえば、話す方が「思考されつつ産出される」ので雑然となりがちなのに対して、書く方は「推敲の結果産出される」ので比較的整理されている点でしょう。
 このように「思考」と「産出」を分けて考えてみると、話す練習、書く練習というのは、正しく発音する練習であり、正しい綴りで書く練習と言えます。それ以外は、思考の練習とも言えます。
 この点に関しては、『パルキッズ通信2017年3月号』で書いているので詳しくはそちらに譲りますが、4技能中の話すことと書くことは、同根の「思考」の上に成立していることを強調しておきます。つまり、正しく発音することや、正しい綴りで書くことをしっかりと練習しなくてはいけないし、また一方では、産出する内容を整理する思考の練習が必要になります。
 しかし「4技能」などという言葉でこれらの技術を置き換えてしまえば、「話す練習」として「とりあえずみんなで英語で話してみよう!」とか、「書く練習」のために「なんでも良いから英語を使って書いてみよう」となってしまうことすら考えられます。しかし、実はそんな練習の上に「話す能力」や「書く能力」の向上はあり得ないでしょう。
 日本人の英語が通じない理由は、発音が悪いからではありません。もし、ある人の発音が悪いために、その人の英語が通じないのならば、その人が同じ内容を英語で「書いた」ならば通じることになります。しかし、実はそうではありません。英語を通じさせることができない人の問題は、発音に有るのではなく、統語法にあるのです。
 統語法とはざっくり言い換えれば、文法のようなものです。日本人は英語の統語が分かっていないので、英語が通じないのです。その原因は直訳式の指導法にあります。
 たとえば、「妹がインフルエンザです」「嫌な感じがする」といった日本語を英語に直す際に、 “Sister is influenza.” とか “Bad feeling does.” とそれぞれを英単語に置き換えて、英語の五文型に当てはめれば良い…と思っていると、上のような見事な英文(?)ができあがってしまいます。このような英語の統語知識の無い人に、いくら英語で「話す練習」や「書く練習」をさせても、どれほどの意義があるのかわかりません。
 まずは、単に日本語を英語に置き換えるのではなく、英語の統語法を身につけさせなくてはいけません。それに加えて、産出する内容の吟味が必要となります。日本に生まれて日本に育てば誰でも日本語の統語法は身につけます。しかし、それだけでは単に日本人らしく日本語を話せるに過ぎません。大切なのは産出する内容であることは、疑念の余地がありません。
 それでは、その産出する内容は、日本語を「話す練習」や「書く練習」を通して磨かれていくのでしょうか?そうではありません。産出する内容に磨きをかけたいのならば、思考の整理法、ロジカルシンキングのトレーニングが必要となります。つまり、いくら英語で「話す練習」をしても「書く練習」をしても、根本的な解決にはならず、まずはロジカルな思考術を身につけて、頭の中で混沌としている概念を整理整頓してあげなくてはいけません。そして、それに加えて英語の統語を身につける必要があります。
 ロジカルな思考術と、英語の統語法、このふたつが身についていれば、英語は通じてしまいます。しかし、発音が悪く綴りもめちゃくちゃであれば、通じるだけの稚拙な英語の域を出ません。そこでようやく正しい発音や正しい綴り方が必要となるのです。


| 産出系と受容系

特集イメージ8 産出系の2技能に関しては上記の通りですが、それでは受容系の2技能「聞くこと」「読むこと」に関する本質とはどのようなものでしょうか。「聞く練習」や「読む練習」を通して、英語は聞き取れるようになり、読めるようになるのでしょうか?答えはイエスでありノーでもあります。
 言語を身につけるために大量の入力が必要であることには、異論を唱える向きは無いでしょう。幼児の言語獲得理論の中でも言語体系を身につけさせるためには、限定的ではあれ、繰り返しの大量の入力が必要であると考えられています。また、幼児期以降の第二言語習得理論でも、理解可能な言語の入力が不可欠であると言われます。つまり、幼児期であれそれ以降の年齢であれ、英語を身につけたければ大量の英語に触れなくてはいけないのです。
 ただし、年齢によって入力のソースを選択する必要があります。幼児たちはまだ文字を読めません。しかし、彼らには、耳から入ってくる言語の音素を理解し、音の連続から単語を切り出す能力が備わっています。そんな幼児期には、英語の音声による入力が最適でしょう。また、幼児期を逃してしまうと、音声を聞くことのみから英語を身につけることは困難です。しかし、小学生であれば少々のトレーニングで英語を読むことはできるようになります。また中学生以降であれば、すでに英語は読めるのです。そんな彼らには音声ではなく文字情報による入力、つまりたくさん読ませることが有効な入力手段となります。
 それでは、幼児期の英語教育は別として、日本の英語教育では大量の英語に触れさせているのでしょうか?中学3年間で使用する一般的な教科書の本文に登場する英単語は、大凡7,000語です。これは大量なのでしょうか。ちなみに、2月発売の『7-day English』では、144レッスンに約70,000語を収録しています。『7-day English』は、最短1週間、標準的には半年で終了するプログラムとなっています。最長でも半年分のプログラムで使用されている語のわずか十分の一の量の英語を、中学校では3年間かけてゆっくり学んでいくのです。お世辞にも大量の英語入力とは言い難いですね。
 言語とは不思議なもので、幼児期は当然のことながら、大人になっても大量に触れているうちに何となく分かるようになってくるのです。もちろん、大人の場合は聞くだけではいけません。大量に読まないと外国語は身につきません。しかし、大量の入力がなされると、大人の脳でも自然とその言語を分析して理解するようになるのです。もちろん、大人の場合には、外国語を読んで理解するために、まずは日本語との対訳式である程度の語彙を身につけ、さらに初歩の文法を理解することが必須です。その上で「読む練習」を積み続ければ、英語なり何なりの外国語をそのまま理解できるようになります。つまり、統語法を身につける事が出来るのです。

 ものには順序というものがあります。幼児の言語発達の順序として ‘perception before production’ という考え方は、もはや常識です。つまり幼児たちが自然と言語を身につけていく段階に置いて、まずは ‘perception’(受容)ができるようになり、その後 ’production’(産出)をするようになるのです。少し考えてみれば当たり前のことです。ひとつの言語を身につける段階として、まず聞いて理解できるようになり、その後話すようになる。この順序が逆になることはあり得ません。
 しかし、日本の英語教育はその逆を進めているのです。特に最近気になるのは、「英語を話せるようになるには」どうするかとか「英語を話せるようになると」どうなるなどという表現が、日常的に行われていることです。先出の文科省の「英語力調査」によれば、日本人はそれこそ、バランス良く「4技能が苦手」なのです。学生たち、いや、日本人は押し並べて英語ができません。聞いても理解できないし、読んでも理解できない。小学生レベルの会話を聞いても理解できないし、小学生が読むような本を読んでみてもさっぱり理解できないことを、まず自覚すべきでしょう。そこを飛ばして、「話す練習」とか「書く練習」はナンセンスです。ものには順序が在るのです。
 英語で「話したり書いたり」しつつ自分の考えを人に伝えるには、英語の統語法の獲得が不可欠です。また、英語を「聞いたり読んだり」して理解するためにも、英語の統語法の獲得が必要です。その統語法の獲得は幼児期であれば大量に英語の音を入力することによって達成され、幼児期を逃せば大量に読むことによって達成されます。まずは、この統語法をいかにして身につけさせるのかを考えなくてはいけません。聞いたり話したり、また書いてみたりという、「四技能をバランス良く」トレーニングしたところで、それが効率の良い統語法の獲得にはならないのです。統語法の獲得において何が重要かといえば、小学生以降の年齢であれば「読む練習」をするのひと言に尽きます。
 そして、統語法を身につけさせることを一方で進めつつ、自身の考えを整理して産出するために、ロジカルな思考術が必要になり、また正しい発音を身につけたり、正しい綴り方を身につける事が+αの取り組みとして必要となるのです。
 パルキッズシリーズは、統語法を自然と身につけさせるための教材です。その後(並行して)、絵本シリーズで読解力を身につけさせれば、受容系は満足させられます。残るはロジカル思考の訓練並びに、正しい綴りと発音です。発音と綴りについては『ドリル』シリーズをお使いいただければ十分です。そして、ロジカルな思考法に関しては『パルキッズ通信2017年3月号』に触れているので、そちらを参照しつつ取り組んでいただければ良いでしょう。パルキッズの学習では、特別な「話す練習」や「書く練習」などを行わなくても「4技能バランス良く」という「理想的」な目標を達成することができるのです。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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