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2011年9月号特集

Vol.162 | 英単語を感覚で捉えるために

子どもと大人の英語に対するアプローチの違い

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは無料で引用・転載可能です。引用・転載をする場合は必ず下記を引用・転載先に明記してください。

引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1109
パルキッズ通信2011年9月号特集『英単語を感覚で捉えるために』(著)船津洋 ©株式会社 児童英語研究所


 私たち、大半の日本人が「英語が出来ない」理由は、2つあります。ひとつ目は「聞き取れない」こと。聞き取れなければ、何も始まりませんね。そして、もうひとつは英単語を感覚で捉えず、「日本語に訳してしまう癖がついている」ことにあります。
 使える英語を身につけたいのならば、この2つの問題点の両方を克服する必要がありますが、今回は、リスニングの問題はひとまず手をつけずに、「英単語を感覚で捉える」点について考えていきましょう。


| 言語は訳さずに理解する

 英語を身につけようと思えば、リスニングの練習や会話の練習、さらには語彙の強化などに目が行きがちです。そんな中、「英語を訳さないことが大切」と言われても、ピンと来ないかもしれません。そもそも英語では分からないから、日本語に訳さなければいけないわけで、もし訳さないのならば、英語が分かるはずはありません。
 これは一見筋が通っているように見えますが、本当にそうなのでしょうか?英語は訳さなければ分からないのでしょうか?
 答えはNOです。もちろん、まるで英単語を知らない状態では、ある程度の訳は必要です。進行形や受動態、動名詞や不定詞。その程度までは知っておいた方がよいでしょうし、皆さんも学生時分の記憶から何となく分かるのではないでしょうか。問題はそこから先です。ただでさえ英語が分からなくなっているところに、仮定法だの何とか構文だのと追い打ちをかけられます。通訳にでもなるのならば、そういった厳密な知識も必要ですが、私たちは、英語使いのアメリカ人ですら知らないような英文法の知識を学ばされるのです。
 これらの文法知識は “使える英語” を身につけることとは、あまり関係がありません。なぜならば、 “使える英語” は文法など知らなくても身につけられるからです。これは、アメリカ人ならば、文法を知らない3歳児でも英語を使っていることから明らかです。彼らは、仮定法やら名詞構文などなどを、文法知識無しで自然と使っているのです。


| 語彙を増やすのではなく、掘り下げる

 語彙も、神経質に増やす必要はありません。3歳児の知悉語彙数は1,000語程度ですが、それでも彼らは日常生活に十分な程度の英語を使いこなします。一方、私たちはというと、4,000語知っていても英語が分からない。それ以上に単語を知っていても日常会話は出来ない、という方も珍しくありません。つまり、英語を理解するためには、豊富な語彙は不可欠ではないのです。総合すれば、中学レベルの文法や語彙があれば “使える英語” は身につけられるのです。
 さて、ここで重要なのが、その知識の質です。例えば ‘see’ という単語。この単語を見て、直感的にどんなイメージを抱きますか?簡単ですね。「見る」に決まっています。では、 ‘see’ を使って文章を作ります。
 “I see.” “I’m seeing someone.” “I’ll see.”
 これらの英文を「see=見る」と訳してしまうと、「私は見ます」一体何を見るのでしょう?次は「私は誰かを見ています」状況が想像できませんね。そして、「私は(将来)見ます」これも意味が分かりません。
 これらはそれぞれ、「分かりました」「付き合っている人がいます」「考えておきます」と言う意味です。いずれも「see=見る」ではありませんね。
 さて、seeを「見る」とだけ単語帳方式で理解している人たちは、これらの文章を見たら「お手上げ」になってしまうのです。そこで、辞書を引きます。すると、40ほどの日本語訳が載っていて、その中に上記の訳を見つけることが出来ます。たかだか ‘see’ という単語ひとつで、これだけ苦労するのです。
 ‘see’ には「いろいろな情報や状況が、主に目を通して脳に伝達されて知覚される」意味があります。そして、文中での使われ方によって、該当する日本語は変わってしまうのです。私たちが習った「見る」というのは ‘see’ という単語のほんの一側面でしかないのです。しかし、その一側面で ‘see’ を覚えた気分になって、それを掘り下げていくことをしないのです。
 もちろん ‘see’ は、ほんの一例です。 ‘run’も「走る」とだけ覚えていたら、 “I run a company.” “I’m running for the Presidency.” が「会社を走る」になったり、「大統領職のために走っています」などと、本来の「会社を経営」したり「大統領に立候補」していると理解できません。
 次の文はどうでしょう。 “Take my wife.” “This mattress gives too much.” “Smoking has got me.” “Apples are growing on me.” 「take=取る」「give=与える」「get=手に入れる」「grow=育つ」では、これらの文章は理解できないのです。ちなみに、それぞれ、「うちのかみさんを例に取ると」「このマットレスは沈みすぎる」「喫煙の習慣が身についてしまった」「だんだんリンゴが好きになってきた」との意味です。単語帳方式の記憶法ではあっという間にお手上げです


| 単語は意味ではなく価値で

 極論してしまえば、単語は単体では意味をなしません。‘see’ ひと言では、それ自体に意味がないのです。文脈があって、そして文章があって、ようやくその中に使われている ‘see’ という漠然としたイメージの固まりが、くっきりとした意味を持つのです。
 わずか1,000語しか語彙が無く、しかも文法知識のない英語圏の子どもたちが、英語を使いこなせるのは、我々のようにひとつの単語をその意味の固まりとして習得しているのではなく、その単語の持つイメージで身につけているからなのです。
 日本語に置き換えてみると、分かりやすいかも知れません。例えば「やる」という単語。これ自体に意味はありません。それが、「小遣いをやる」「使いをやる」「宿題をやる」「額に手をやる」「この稼ぎではやっていけない」などなど、英語で言えば ‘give, send, finish, bring, live’ と、いろいろな意味合いがあります。
 さていかがでしょう。「やる」とは英語では何でしょう。ひとつの英単語で表すことは出来ないことがお分かり頂けましたでしょうか。それを無理矢理にひとつの単語と対応させて覚えてきたようなものなのです。
 このように、単語とはその語の持つ様々なイメージでもって形成されているのです。これは日本語も英語も同じことです。そして、私たち日本人は日本語の単語をそれぞれの価値(単語のイメージ)で理解しています。だから、わずか3歳の子どもでも、複雑怪奇な日本語を理解できるのです。
 英語も、同じように基本的な単語を日本語訳ではなく価値で身につければよいのです。しかも、価値で身につけなくてはいけない単語はそれほど多くはありません。なぜなら、私たちがすでに知っている単語「teacher=先生」「college=大学」「chair=椅子」のような名詞や、‘I, you, they, it’ などの代名詞は、価値の幅が狭いので、中学校で覚えた程度の日本語訳を知っていれば、それで十分なのです。また、それらの単語はわざわざ訳さなくても意味が分かります。
 私たちが勉強し直さなくてはいけない基本単語、‘go, come, give, take, get, have’ などの動詞や、‘in, out, up, down’ などの前置詞・副詞は、全体で300語程度しかないのです。そして、それらの単語を日本語に訳すことなく、イメージできるようになると、英文を目にしたり耳にした時に、活き活きとその情景が浮かぶようになるのです。
 余談ですが、ひとつ付け加えておきましょう。幼児に英語を教える際に、日本語を添えてしまうと単語の幅を狭めていることになります。つまり、「run=走る」と言った瞬間に、「play=遊ぶ」と教えた瞬間に、子どもたちは ‘run’ や ‘play’ の持つニュアンスを失ってしまうのです。つまり、日本語訳を添えて教える行為は、良かれと思ってやっていても、結局は我々が英語を理解できない状態を、わざわざ子どもたちの脳に創り出しているようなものなのです。


| 価値化のスイッチ

 では、単語を価値で身につけるためには、どんな学習が必要なのでしょうか。
 簡単です。価値化を促すには、大量の英語に触れればよいのです。大量の英文を頭の中に放り込むことによって、価値化のスイッチがオンになり、脳が勝手に単語の価値をビルドアップし始めるのです。
 大量の英文に触れて、価値化のスイッチがオンになれば、単語の持つイメージが徐々にふくれて行きます。“I go to elementary school.” では「通う」、“I’m going home.” では「行く」、“How’s things going?” では「事が運ぶ」、“What’s going on?” では「起こる」、“She’s gone crazy.” では「なる」と、‘go’ の持ついろいろな側面に気付き、それらを ‘go’ の価値として取り込んでいくのです。
 そもそも私たちは、絶対的に英文に触れる量が少ないのです。中学の3年間でわずか300ページ、しかも英文だけならそれこそ100ページも読んでいないでしょう。繰り返し、同じような文章に触れなくてはいけないのですから、これでは、価値化のスイッチが入るわけがありません


| 「大量に!」これがキーワード

 幼児は良いですね。簡単に「大量の英語に触れること」ができるのです。彼らはラッキーなことに、耳からのインプットが可能です。まだ音に対する敏感性の残っている、7歳くらいまでの子どもなら、CDをかけ流すだけでOKです。
 厳密に言えば、CDをかけ流せば、その瞬間から学習が始まるのではありません。かけ流し開始後、半年から1年間は「リズム回路」を構築する時期です。言い換えれば、その期間は「英語のリスニング能力の獲得」が行われます。そして、ひとたび英語のリズム回路を身につけると、その後は子どもたちの耳に入る英語は、英語らしき音の固まりではなく、「単語の連続」として知覚されます。英語が聞き取れるようになった、ということですね。
 そして英語のリズム回路を身につけると、その後にようやく単語単位の大量インプットが始まります。価値化のスイッチが入るのですね。あとは簡単。毎月新しいCDをかけ流し続ければ、どんどん新しい単語を身につけ、それらの単語の価値をふくらませていくのです。こうして、子どもたちは、英語を日本語に訳すことなく、英語のまま理解するようになるのです。
  では、大人は?
  大人は、幼児のように耳にするだけで、英語を身につけることはありません。すでにリスニングの敏感期を過ぎてしまっているので、大人の脳には、英語の音は単なる英語らしき音の固まりにしか聞こえず、その中からいくつかの知っている単語を、たまに発見できる程度のリスニング力しかないのです。これでは大量インプットは出来ません。
 しかし、言語情報の入力回路は耳ばかりではありません。もうひとつ、強力な入力回路があります。そうです。「視覚」です。大量に聞くのではなく、大量に読めばよいのです。
 大人には、リスニング能力を簡単に身につけられるほどの能力は残っていませんが、それでも大人の脳もバカにできません。大量に読むことによって、価値化のスイッチが入るのです。そして、幼児のように単語をイメージできるようになります。
 ただ、闇雲に何でも読めばよい、というものではありません。難しい単語ばかり出てくれば嫌になってしまいますし、文法レベルが高ければ、価値化どころか「理解しよう」という意識が働いてしまって、結局は日本語に訳してしまうことになるのです。これでは価値化は進みません。
 そこで大切なのは、簡単なレベルの本、中学レベルの文法と単語で書かれているものを、繰り返し読むことなのです。多読のゴールは語彙の構築でもなければ、文法力の強化でもありません。あくまでも、中学レベルの基礎単語の価値化です。それらの単語を、訳さずに感覚でイメージできるようになればよいわけですから、それに適したレベルの本をたくさん読むことが必要となるのです。
 このように多読を進めれば、大人でも単語を価値化することが出来ます。つまり「訳さずに英文をイメージすること」が出来るようになるのです。
 幼児は大量のかけ流しで、耳の刺激から価値化のスイッチを入れる。大人は多読で、価値化のスイッチを入れる。耳と目。インプットの経路は違っていても、大人も子どももやるべき事は一緒ですね。日本語に訳すことなく大量の英語に触れるように心がけましょう。そして、継続することによって、「英語を英語のまま理解できる」ようになります。つまりバイリンガルになれるのです。
 情報を入れ続けることによって、価値化のスイッチはオンになります。「かけ流し」と「多読」。両方とも単調な作業ですが、「継続すること」これを心がけて学習を進めましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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