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2010年10月号特集

Vol.151 | さよなら!「日本語訳」

英語を英語のまま理解するコツ

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1010/
船津洋『子どもはどうしてコトバを身につける?』(株式会社 児童英語研究所、2017年)


| 読書の秋

 読書の秋ですね。日中も随分と過ごしやすくなってきて、子どもたちも勉強に身が入りますね。なにしろ、公立の学校では冷房が付いていないところもありますから、勉強どころではありません。特に今年の夏は暑かったので、彼らも大変だったことでしょう。  ところで、読書の秋です。ここのところ何度か触れ続けている「読書、多読」に関して今回も少し考えてみましょう。
 今回は、少し遠いところから話をスタートしましょう。
 パルキッズの教材や絵本に関して、たまにこんなお問い合わせがあります。「日本語訳を教えて下さい」。これは困ります。また、それにかぶせて「教えないと意味が分からない」などとも仰られます。こうしたご質問には、「日本語訳を教える必要はありません」「むしろ教えないでください」といった回答を差し上げることになります。
 では、なぜ日本語訳を教えてはいけないのでしょうか?そのあたりから入って参りましょう。
 そもそも英語と日本語は異なります。その異なる言語を訳して理解するには限界があるのです。いまや、受験で成果を出している予備校や進学校の先生達も、「いい加減に、いちいち英語を日本語に訳すのを止めなさい」と生徒達にアドバイスするほどです。
 英文を日本語に訳す技術を教える受験英語の先生ですら、生徒達がある程度の段階に来ると、「訳すこと」を止めさせるのです。優秀な先生であればあるほど、もしくは英語を実際に身につけている先生であればあるほど、「英文和訳」の限界を痛いほど知っているのです。
 反対に、英語が分からなければ分からないほど、日本語訳を付けないと意味が理解できないと考えてしまいがちです。しかし、実のところ、英語は日本語に訳そうとするから意味が分からなくなるのであって、ある程度英単語を身につけたら、逆に日本語に訳さない方が理解が進むのです。
 まず、日本語に訳して意味のないものに、「早口ことば」や「マザーグース」があります。マザーグースでも、ストーリー性が高いものであれば、訳すことで何となく意味が通じます。しかし、その様な文章も訳すことによって微妙なニュアンスが失われてしまうのです。
 たとえば、「良い笑いは家の中の太陽である」。この文章は “A good laugh is sunshine in a house.” 英国の作家サッカレーの言葉です。日本語に訳さない方が伝わりやすいのです。この程度であれば、どなたでも理解できると思いますが、これはどうでしょう。「昨日の私は私とは違った人だから、昨日に戻ることは出来ない」…こうなると意味が分かりません。これは、 “I can’t go back to yesterday, because I was a different person then.” というルイス・キャロルの言葉です。英語はレトリカルな表現が多いのです。言葉をもてあそんでイメージさせる表現は、日本語にはとても変換できないのです。
 それだけではありません。例えばことわざに、 “Too many cooks spoil the broth”, “There’s no use crying over spilt milk”. があります。日本語に直訳すれば「料理人が多ければスープをダメにする」「こぼれた牛乳を嘆いても仕方がない」となります。このまま英語的に理解すれば、「なるほど」と理解できますが、それをわざわざ日本語で該当することわざにヒモ付けて「船頭多くして船山に上る」とか「覆水盆に返らず」などと翻訳します。こうなってくると、英文と意味が随分異なってしまいます。
 なぜ、英語のことわざを日本語のことわざに、わざわざ置き換えなくてはいけないのか、よく分かりません。英語のまま知っていれば、それで事足りてしまうのですから。仮に、日本語のことわざで、それに該当するものを求められたら、その時に日本語の知識の中から探し出せばよいのです。
 また「早口ことば」に至っては、それを訳すことはまるで意味のない作業になります。「痩せた双子のブリキ職人のティム “Tim, the thin twin tinsmith”」「3本の小枝がきつく巻き付いた “Three twigs twined tightly”」と日本語訳を付けたところで、早口ことばですらなくなってしまうのです。そもそも、早口ことばのために作られた意味のないフレーズですので、それを訳しても、さらに意味が無くなります。
 また、早口ことばやマザーグースでは、韻を踏ませるために、日常ではあまり使われない単語も頻繁に使用されます。その様な単語をせっせと覚えてもあまり意味がないのです。


| 英語は英語で!

 落語にある「寿限無(じゅげむ)」を英訳しろ、といわれても、これはかなり難しいでしょう。意味のない単語の連続ですので、直訳しても意味は通じません。また、翻訳すればニュアンスが損なわれます。やはり、日本語は日本語で、英語は英語で理解しなくてはいけないのです。
 パルキッズの学習では、英語を英語で理解できる回路が作られます。パルキッズを終了して、読めるところまで育っていれば、そのままアメリカの学校に入っても落ちこぼれることはありません。それどころか、読書習慣が身についていれば、現地の子より優秀になれます。
 さて、その様なパルキッズで育つ子どもたちですが、彼らは英語を理解しているのでしょうか。もちろん理解していますね。ただ、これまたよく聞かれる質問ですが、「うちの子は、英語を分かっていないようなんです」というものがあります。
 これは何かの拍子で「分からない」という我が子の声を聞いて感じてしまうのでしょう。おそらく、英文を説明したり、意味を尋ねた時にこのような答えが返ってきたのではないでしょうか。本来、これは避けなくてはいけない作業です。
 彼らは英語を理解しています。ただ、英語を英語のまま理解しているのです。
 彼らの耳から入った英語は、すぐにイメージ化されます。 “Let’s go to a restaurant!” と聞けば、レストランで何かを注文したり、食後のデザートを食べている自分をイメージするのです。日本語でも同じことです。子どもたちに同じ質問を日本語ですれば、子どもたちはレストランで食事をしている自分をイメージします。
 これが言語の理解なのです。 “You have school tomorrow.” と耳にすれば、通学している自分、授業を受けている自分をイメージするのです。このように、英文を耳にしたら、その情報を日本語に訳さず英語のままイメージ化する能力を持っています。
 そんな彼らに、英語の「意味」を尋ねると、どんな答えが返ってくるでしょうか。
 彼らの脳には、言語情報はイメージとして残っているのです。そして、それを日本語で質問されると困ってしまうのです。なぜなら、彼らは私たち大人のように、ひとつひとつの英単語を、日本語の単語とヒモ付けて覚えてはいませんので、浮かんだイメージをうまく日本語に置き換えられないでいるのです。そこで、「わからない」と言ってしまうのです。
 彼らは英語が分からないのではなく、英語を聞いてイメージ化された情報を、日本語に変換できないだけなのです。そんな時に、さらに追い打ちを掛けて「何が分からないの?」とやってしまい、その上日本語で説明したり、文法を教えたりし始めれば、分かっているものまで分からなくなってしまいます。
 彼らは「英語を聞いてイメージできる」のですが、それを日本語でうまく表現できるほど、イメージが明確でなく、さらに日本語の能力もまだ低いのです。それを「うちの子は英語が出来ない」と結論づけてしまうのは、かわいそうを通り越して、もったいない状態です。
 その様な彼らに必要なのは、英単語に日本語訳を付けることではありません。ましてや文章を説明することでもありません。それは、耳や目にした英語情報をより正確にイメージする能力なのです。


| 単語の「価値」を狭めないこと

 私たち大人は「apple=リンゴ」式の英語を刷り込まれています。名詞であればこのやり方もまだ良いのですが、動詞や前置詞、形容詞や副詞になると、このやり方で記憶したものでは、実際の英語に接するには、到底歯が立ちません。
 教科書のように、人工的に作られた純粋培養的な英文ばかりの世界ならば通用しますが、実社会に出ればそんなお手本通りの英語だけでは太刀打ちできないのです。
 そこで、大切になってくるのが、単語を「語義」の固まりとして丸暗記するのではなく、ひとつひとつの単語の「価値」を知ることなのです。
 「語義」だけ記憶していたのでは、例えば、 “I’m in on it.!” 程度の簡単な表現さえ訳すことが出来ません。 “Are you up for it?” と尋ねられても、何が何だか分からないのです。ひとつひとつの単語を日本語に訳して、それをどう組み替えたところで、正しい訳にはならないのです。
 映画の中で “Home for good?” と母親に尋ねる娘の気持ちなど分かるわけがないのです。
 こんな簡単な単語の組み合わせすら分からない。この中の ‘for good’ に関しては、辞書でイディオム検索をすれば日本語の意味「ずっと」を見つけ出すことが出来るでしょう。しかし、はじめの2つに関してはなかなか探し出せないはずです。
 もっとも、最近は便利になったもので、電子辞書のフレーズ検索で、これらの意味を発見できます。そして、ようやくそれぞれ『私もやる!』という意思を表示したり、『あなたは乗り気?』といった具合であることが分かるのです。
 しかし、こんな事はアメリカ人なら3歳児でも分かります。それは彼らが単語の「価値」を身につけているからなのです。英単語に「語義」を付けている=日本語訳を付けているようでは、全然間に合いません。さらに、イディオムを覚えても、まだ足りないのです。しかも、それら全てを記憶するとなると、組み合わせは無限です。
 ‘get, take, give, have, see, run…’ このような、簡単な単語達にはひとつの単語につき20~100 もの「語義」があり、さらにそれらが前置詞と組み合わさせば、さらにそれぞれにつき、数十ものイディオムが誕生する…。それを全て記憶することなど不可能です。
 このように「英語を日本語に変換」して理解する学習法には限界があるのです。そこで、日本語と英語をダイレクトに結びつけるのではなく、その間にイメージを入れると良いのです。
 耳にしたり目にしたりする英語をそのままイメージ化できるようにする、そして、そのイメージを日本語化する。そんな回路を育ててあげればよいのです。「イメージを日本語化する」ことに関しては、国語の作文で身につけます。そして、「入力された英語をそのままイメージ化する」には、日本語を通さない理解、すなわち英単語を「語義(日本語訳)」の固まりではなく、その単語自体が持つ意味の幅や深み「価値」で身につけなくてはならないのです。
 その様に単語の「価値」を身につけていくのに最善の方法は、幼児期の場合には「多聴」です。日常会話や絵本など、可能な限り多くの文章を耳にしていくのです。
 そして、読めるように育ったら、そこからは「多読」です。実際に耳にするためには音源が必要ですが、一度読めるように育ててしまえば、それ以降は、音源すら不要です。ひたすら読み続ければよいのです。すると、「この単語はこんな感じ」と単語を「価値」で身につけることが出来るのです。
 さらに、多読によって、読書が苦ではなくなります。読書が苦にならなければ、さらに多読は進みます。多くの学生が、英語の長文読解問題で苦労しているのを尻目に、どんどん新しい語彙を「価値」で身につけていくことが出来るのです。
 こうなってくると、辞書いらずです。皆様方が日本語の文章を読む際に、日本語の辞書を使わなくても、だいたいの意味が分かるのと同じ様に、英語の本を読んでいて知らない単語に出会っても、文脈から何となく感じが掴めるようになるのです。
 そして、その単語にもう一度出会えば、「ああ、この単語はこんなニュアンスもあるのか」と単語の「価値」をさらに広げ、繰り返し異なるコンテクストで同じ単語を目にし続けることで、その単語の新しい使い方を「価値」として身につけていき、最終的には、辞書をひかなくとも語彙として取り込んでしまうことになるのです。日本語の読書と全く同じです。
 このように多読を進めていくことで、「英語を英語のままイメージ化できる能力」を身につけていくことが出来るのです。
 その能力を身につけることの大きな障害となるのが、日本語の存在です。
 せっかく、多聴や多読で単語の価値を身につけ、英語をそのまま理解できるように育てているのですから、目先に日本語変換能力を試すばかりに、英語に対して苦手意識を子どもたちの中に植え付けてしまうようなことは避けなければなりません。
 通訳にでもならない限り「英語を日本語に訳す技術」は不要なのです。「英語を英語のまま理解する回路」を作り出すために、一旦は英語を日本語に訳すトレーニングを経ますが、中学レベルの英語を身につけたら、そこから先は英語を訳さない事が大切なのです。
 英語は日本語に訳して理解するのではなく、そのまま英語で理解する。その点を常に念頭に置いて、学習を進めていきましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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